こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
71話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 感謝②
「結論から申し上げますと、大成功です。今年は大豊作でした。」
グレンとナディアが領地に戻った頃には、収穫作業のほとんどが終わっている状態だった。
執事のゴードンは驚いた表情で口を開け、他の使用人たちも同様に活気に満ちた様子だった。
「奥様が改良された農具のおかげです。それに加えて、肥沃な地域の生産量は、私たちの予想をはるかに超えていました。」
「効果が良いなんて、ありがたいことね」
ナディアは、米が持つ別の機能を知ることとなった。
それは、倉庫に山積みされた米を見るだけでも、人々を幸せにするということだ。
他の人々の表情を見ても、喜びが彼女だけに現れているわけではないことは明らかだった。
ウィンターフェル領地はみんなの努力によって、さらに豊かになっている。
そして、もう一つ目を引く変化があった。
「・・・キーッ。」
「・・・。」
「キーッ?」
「モンスターはもともと・・・こんなに早く成長するものなの?」
「ええ、成体になれば家屋よりも大きくなるでしょう。人間の成長速度と比べてはいけませんね。」
生まれた時は大きな猫くらいだったものが、いつの間にかライオンくらいの大きさに成長していた。
「キーッ。」
「ゲホッ!」
それにしてもかなり重い。
まだ自分が猫くらいのサイズだと思っているのか、以前のように飛びかかってきた途端、絶叫が響き渡った。
「おや。」
グレンが困っているナディアの上にある大きな脚をどけてくれた。
これで彼女はようやく呼吸をすることができた。
「はぁ・・・もう少しで人間よりも大きくなりそうですね。」
「そうなると室内では飼えなくなるでしょう。仕方なく外に専用のスペースを作ってあげるしかないですね。」
仕方ないと言いつつも、その言葉を口にする表情はどことなく嬉しそうだった。
「成体になったら城の外で飼わなきゃいけなくなるかもしれませんね。」
「そうですね。家よりも大きくなるでしょう。」
「キーッ?」
状況が不利に傾き始めた雰囲気を感じ取ったのか、ノアの目が大きく見開かれた。
「キー・・・」
ナディアとグレンを交互に見つめた後、ノアは何かを決心したかのように真剣な表情を浮かべた。
そして、突然軽やかに跳び上がる。
「え?」
「うん?」
4本の足でカーペットの上に着地したとき、ノアは以前と同じ猫くらいの大きさに戻っていた。
もちろん、驚くべきことであった。
すべての視線が揺れ動いた。
「ゴ、ゴードン。」
「はい、奥様。」
「この子・・・こんな特技を持っているなんて知ってた?」
「ええ、そうですね。モンスターの中には、自分の体を自由に調整できる種類がいると聞いたことがあります。ドラゴンもモンスターの一種ですから・・・種族的な特性ではないでしょうか?」
グレンは、その未知の生物の正体を解き明かすチャンスを逃さなかった。
「人間の言葉をよく理解するやつだから、いろんな才能があるのかもしれない。ひょっとしたら、私たちが知らない場所で話をすることだってあるだろう。」
「まあ、それはそうですね。」
体を小さく縮めたノアが再びナディアの腕の中に潜り込んだ。
ゴロゴロと喉を鳴らしながらうれしそうにしているその姿は、まるで黒い猫のようだった。
「まあ、かわいい。」
「・・・」
グレンは愛嬌を振りまいている黒い生き物をじっと見つめていた。
こちらには目もくれず、ただ愛嬌だけを振りまいている。
その様子が、さらに謎めいて見えた。
いつかもっと手のかかるドラゴンの本性をあらわす日が来るのだろうかと彼は考えた。
彼はその思いを胸の中で秘めながら、内心で覚悟を決めていた。
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「領主様、おっしゃっていた品物を持ってきました。」
扉が開く音とともに、グレンが持ってくるよう命じていた品物が到着した。
使用人たちが両腕で抱えているのは、豪華な箱だった。
中身を見ずとも、その用途が推測できる。それは宝石箱だった。
(なんだか見覚えのある品物だけど・・・)
どこで見たんだっけ?ナディアが眉をひそめる。
「グレン、これはあなたが持ってくるよう指示したものですか?」
「そうだ。」
「それ、何ですか?いや、宝石箱だってことはわかります。でも、なんで急にそれを?」
「宝石箱で間違いない。どこかで見たことがあるんじゃない?」
「そう言われると、そんな気がしてきますね・・・」
「母が使っていたアクセサリーを収めていた箱だ。多分、執事が見せてくれたんだろう。」
「ああ。」
そういえば、ウィンターフェルに来て間もない頃、執事が屋敷内を案内してドレッシングルームを紹介してくれた。
その時に見た記憶が蘇ったのだ。
時が経つにつれて古びた服とは異なり、宝石箱は代々使用されることが多い。
(あの時は、前の主人のものなんて気にしている余裕はなかったから・・・)
崩壊しかけていた屋敷の財産を守ることが急務だったためだ。
そのため、前の公爵夫人の所有物なんて気にかけることすらできず、時が経つにつれ、それらは心の片隅で忘れ去られてしまった。
「あなたがうっかり忘れていたみたいですね。母が使っていた部屋にそのまま残っていました。」
グレンが宝石箱を開けながら言った。
「前の奥様の物を受け取るというのは象徴的な意味があります。これを機に一つ選んで身につけてみてはいかがですか?」
「これで私を公爵夫人として認めない人なんていると思います?とはいえ、いずれ返さなければならない物ではありませんか?自分の物でもないのに、無駄に傷つけたくはありません。」
「私は大丈夫ですよ。母の遺品の一つですし、私が使う間にもし傷がついたとしても、それで何か問題が?私があなたを粗末に扱うようなものより、多少傷がつくくらいのほうがマシですよ。」
「うーん・・・そういうことなら、まあ。」
ナディアはすぐに応じた。
彼女は他の人たちの目には、グレンが妻の能力を利用して生きているように映るかもしれない、という考えに至ったのだ。
「では、指輪を一つだけ選びます。」
選択肢が多ければ多いほど選ぶのは難しくなるものだ。
ナディアは数十個の指輪の前でしばらくの間ため息をついて迷っていた。
彼女がなかなか指輪を決められずにいると、グレンが助け舟を出すために口を開いた。
「好きな色はある?」
「緑色が好きです。私の瞳の色ですから。」
「では、好きな色の宝石を選んでみてはどうですか?」
「それはいいですね。特に翡翠が好きなので。さて、どれにしましょうか・・・。」
ナディアは自分の希望する物を探し、目を皿のようにして見回した。
そして、すぐにそれが無いことに気が付いた。
「翡翠は無いみたいですね。」
「・・・そうみたいですね。」
「翡翠はあまり人気のある宝石ではないので、仕方がないですね。それに、カレインもいつも翡翠は選ばなかったようです。だからこそ私がそれを受け取ることができたのでしょうけど・・・。」
彼女の唇にほのかな微笑みが浮かんだ。
「考えてみれば、私が翡翠を好きなのは、そのためかもしれませんね。私が持つことができた、数少ない物だったので。」
緑色の宝石といえば、通常エメラルドが思い浮かぶが、前代侯爵夫人の遺品の中に翡翠が含まれていないのも不思議ではなかった。
そのとき、グレンが口を開いた。
「僕は好きだよ。他のどんな宝石よりも輝いていると思う。」
「何の話ですか?翡翠のことですか?」
ナディアが驚いたように顔を上げ、彼を見た。
「誰よりも」なんて言葉に思いを巡らせながら。
まるで宝石ではなく、人を選ぶもののように感じないだろうか?
「そうだな、もともとは関心がなかったんだ・・・。1年して半年くらい経った頃だ。それから目が向くようになった。」
「・・・」
その言葉に、ナディアは反射的に視線を上げ、彼を見つめるしかなかった。
(1年して半年前って・・・私たちが結婚する頃じゃない?その頃から翡翠が好きになったって?)
視線を合わせると、グレンと目がぴったり合った。
どういうわけか、不思議な気持ちが胸に広がる。
(さっきのニュアンスが少し・・・宝石の話をしているの?)
明らかに翡翠の話題なのは間違いない・・・間違いないけれど・・・なぜこんなに不思議な感じがするのかは分からなかった。
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もう少し確かめるため、ナディアはグレンを見上げながら尋ねた。
「好きなんですか、翡翠が?」
「ああ、一番好きだ。」
「宝石の中で翡翠が一番好きだなんて人、初めて見ました。」
自分と同じ嗜好の人がいるなんて、ナディアは驚きを隠せなかった。
普通、貴族たちには一番人気がある宝石ではなかったからだ。
「どんな宝石の種類か尋ねられたら、もっと高価な種類を選ぶのが普通でしょうけど・・・」
(どうせ翡翠はそれほど価値のある宝石ではないから・・・)
そんなことを考えていた時だった。
ファビアンがまるで凍りついたように話し出した声が聞こえてきた。
「わあ・・・うちの領主様も翡翠派なんて・・・ああ、足が!」
文を言い終えることもなく、足をつまずきながら跳ねるように走り去るファビアンを見て、視線が彼女に向けられた。
「急にどうしたんですか?」
「足にできた瘤のようなものね。じゃあ、仮にエメラルドの指輪をはめるのはどう?商人たちに翡翠を探させるように命じておいたら?」
しかし、その問いに答えたのはファビアンではなく、グレンだった。
自然に彼女の注意を引くことに成功した彼は、目の前にエメラルドの指輪を一本差し出した。
ナディアが何かを答える前に、グレンが彼女の手を掴んでその指輪をはめてくれた。
「ぴったりですね。」
「本当にぴったりだ。」
薬指には結婚指輪が、そして剣には金の瘤があるようだった。
エメラルドの指輪、そして手首にはフレイから贈られたブレスレットがはめられていた。