影の皇妃【２３４話】ネタバレ

サロンのメインホール。

「あら、本当に知的ですね。そんな話、今日初めて聞きま・・・、え？うん！？」

「あ、あなたは！？リリ・・・、はっ！」

カリンは思わず相手の名前が飛び出そうになると、すぐに口をつぐんだ。

リリーと呼ばれそうになった令嬢も慌てた様子が歴然だった。

「来ないって言ってなかった？」

「そ、そういうあなたは？平民たちと付き合えば格が落ちるからって」

「それはただ言ってみただけで・・・」

確かに一昨日会ったティータイムの時、カリンとリリーはサロンのルールを指摘し、二度と訪問しないことを約束した。

ところが、その約束が色褪せるほど早く二人はサロンで出会ってしまったのだ。

おかしなことに、そんな人が一人や二人ではないということだ。

昨日まではサロンは身分制の根幹を揺るがすと指摘して閉鎖措置ができるように皇室に意見を申し上げなければならないと声を一つにしていた者たちでさえサロンを訪問した。

しかし、誰もそのような矛盾した行動を指摘しない。

エレナはそれさえも過渡期として受け入れた。

特権意識と優越感に浸っている貴族がサロン文化の間で乖離感を経験するのは当然だ。

小雨で服が濡れるように貴族の認識が変化するほど、平民と和合することになるだろう。

「殿下が望む帝国ね」

平民ではなく、市民が支える国家の縮小版がシークレットサロンだと言っても過言ではない。

その日以来、サロンに関する悪口や非難は雪解けのように社交界から姿を消した。

一度くらいは目を瞑って見過ごすことができるが、持続的な矛盾は結局避難の対象になるからだ。

結局、サロンは再び軌道に乗った。

いや、雨が降った後に土地がさらに硬くなるという言葉のように、むしろ以前より地位が急騰した。

しかし、エレナはそこで満足していない。

「サロンは常に話題の中心にあるべきです。途切れては困ります」

大公家は元の時間軸よりも早くノブレス通りの一部改装を急いでいた。

サロンの影響力が大きくなり、バシリカまで完工が迫っているため、危機意識を感じたのだ。

「社交界に噂を流してください。私が、Lが社交界デビューをするって」

再び首都が揺れた。

神秘の女性Lの美貌をついに見られるということに社交界だけでなく帝国民皆の関心が集中する。

果たして彼女は噂通り美女なのだろうか？

傷跡があるから仮面をつけているという噂は？

年齢は？

２０歳か３０歳？

それとも１０代？

これまでベールに包まれて好奇心をそそったLに全ての耳目が集まり、一緒に人々の口にサロンも再び上がる。

すべてが順調だった。

エレナはベロニカについて行った追従者と親しく過ごす周辺貴族の令嬢たちをサロンに招待した。

中には追従者たちの幼馴染もいれば、姉のように頼る存在もあり、負けず嫌いなライバルもいた。

追従者たちとの関係は多様だったが、レンが調査したところによると、最も近くて影響力を多く与える人々だと明示した。

「突然の招待に驚いたでしょう？」

蝶の仮面をかぶったエレナが優しく会話を主導する。

「正直ちょっと驚きました。Lと別に近い間柄でもありませんから・・・」

「私もです。Lから招待を受けるとは想像もしていませんでした」

「私はサロンを訪問したのも今日が初めてなので」

エレナはゆっくりと紅茶を飲みながらしばらく時間を過ごした。

そして、優雅な手振りで茶碗を下ろしてから唇を開く。

「ここにお招きした方々は皆、社交界の評判がいいんですよ」

「あの、私たちがですか？」

「若くて美しく、行いは貴族令嬢の模範にしてもいいほど優れているそうです。そして・・・」

エレナの称賛に令嬢たちの表情が変わった。

形式的な称賛であるため、招待の理由と考えるには曖昧なためだ。

「ファッションの目と感覚が優れているんですって。首都流行の中心にいらっしゃるという定評まであります」

その時になって、ようやく疑問が消えた令嬢たちに満面の笑みが広がる。

「あ！そうだったのですね」

「それなら・・・」

「今になって少し理解できますね」

「人よりもう少し気を遣って飾るというのがつい・・・」

貴族の令嬢なら、年齢を問わず飾り付けに精魂を込める。

自らを表現する個性であり、他人と差別する第一歩なのだから。

そのため、ファッションに一見識があるとか、人より上手だという言葉を皆好きなのだ。

他人がそっぽを向いても、本人自らは個性があると勘違いをする。

エレナの招待理由に彼らが喜んだ理由だ。