３１話

プレゼントが漏れなく到着したことを確認したリプタンは、直ちに捕虜たちの状態を確認するために外に出た。

マックは前日の騒動でまだ終わっていない織物の注文書を書き始める。

下女たちと十分に相談した末に几帳面に目録を作成した後には、冬に食べる保存食を作ることがきちんと進行しているかを確認するために台所に向かう。

どの城も晩秋から初冬まで最も忙しいのは当然だ。

本格的に気温が下がり始めると、新鮮な野菜を手に入れることが難しくなり、肉類の値段も数倍に上がるため、厨房の使用人たちは長く保管できる乾肉と果物漬けの燻製．ソーセージ、そして精米所で大量の小麦粉を準備してくるために、しばらくも休む暇なく働かなければならず、それ以外の時間には家畜に食べさせる餌を準備しなければならなかった。

「冬には家畜に食べさせる草を手に入れるのが難しくなるので、一定の割合だけ残して屠殺をします。焼肉屋で牛と豚を捕まえて血を抜いて内臓を手入れしてお城に送ってくれば、厨房で精肉は燻煙処理をして保存し、内臓はきれいに洗ってソーセージを作るのに使います」

マックはルディスの説明を聞きながら、油のにおいがする台所の中をずっと見回した。

普段もいつもごたごたして慌ただしい厨房だったが、ここ数日間はほとんど戦場を祐彿させるほどだ。

片方の壁に立てておいた広い食卓には、3、4人の使用人たちが大きなたらいと皿を積んでソーセージを作っており、その反対側では血をきれいに抜いた大きな肉の塊をのこぎりを利用して小さく切っている。

煙のにおいが鼻先をつき、彼女は鼻の甲にしわを寄せながら首をかしげた。

開けっ放しのドアの外に石を積んで作った臨時のかまど４個が見える。

6人の使用人がその上に大きな金網を置いて肉の塊を燻製していた。

そのとてつもない量に彼女は呆然とした表情を浮かべる。

「こ、こんなにたくさんのに、肉は初めて見ました」

「しばらくの間、食べる量を多めに用意しました。ですが燻製焼きはそんなに長く保管できないので、ほとんどは乾肉にしようと思います。ジャーキーは、騎士様が遠征に出かけり、三、四日討伐に出かけたりする時にもとても便利ですからね」

「こ、これを全部、乾肉でつ、作るんですか？」

マックは好奇心に満ちた目で壁にかかっている肉の塊を見た。

ルディスが渡した記録帳には、毎年貯蔵する食糧の重さと今年備蓄する食糧の重さが細かく書かれている。

「騎士団が遠征から帰ってきただけに、昨年の2倍を用意しました。本当は気温が下がる前に準備すべきだったのですが・・・」

「じ、時間がたくさんか、かかるのですか？」

「肉を塩漬けにして数日間水気を切った後、薄くスライスし、また数日間日陰で乾燥しなければなりません。結構手間がかかる方ですね」

城を飾るために冬の準備が遅れたようで、マックは申し訳ない気持ちになる。

そのような不便な気持ちを読み上げたのか、ルディスが急いで付け加えた。

「それでも人手が増えたので、気温がさらに下がる前に準備を終えることができるでしょう」

「そ、それならそれでいいんだけど・・・」

彼女は汗をかきながら働く使用人たちを見て言葉じりを濁した。

お城の生活を隅々まで監督するのが女主人の役割だ。

そしてこれまで見守ってきたところによれば、使用人たちの労働量は実に途方もないものだった。

彼女は食料の貯蔵方法について説明を聞きながら、今後の作業量を測る。

どうやら、リプタンに使用人をもっと雇用できるか聞いてみなければならないようだった。

城の使用人たちは食べ物を作るのはもちろん、兵士たちのために防寒服を作って家畜の世話をして城を隅々まで掃いて拭くなど、一日中背中が曲がるように仕事をしているのだから。

「私、明日すぐにでも、は、働き手たちを、あ、斡旋してくれるかどうか、聞いてみないと・・・」

「奥様！」

話を終える前に突然元気な声がした。

首をかしげたマックは目を丸くする。

肉を焼くかまどのそばに、6人の見習い騎士たちが汗に濡れた顔をして立っていたのだ。

彼らの前に立ったユリシオンが彼女を見て嬉しそうに走ってくる。

「昨日大変なことを経験されたと聞きました。どこか怪我はありませんか？もう出ていても大丈夫なんですか？あの天下の悪者たちが貴婦人に害を及ぼしたのでは・・・！」

「わ、私は・・・、大丈夫ですよ」

そそっかしいユリシオンの質問に驚いて目をばちばちさせて答えると、彼の相棒ガロウが小さくため息をつく。

「ユリ、ちょっと落ち着いて。奥様が当惑しているじゃないか」

「でも、ガロウ・・・。私は今回ほど騎士爵位を受けられなかったのが恨めしかったことがないよ」

ユリシオンは不機嫌そうに言った。

そのだらりとした姿にそっと笑いが出る。

まるで血統の良い大きな子犬がしっぽを垂らしているような姿だった。

「心配してくれて、ありがとう・・・。で、でも私は大丈夫でした。へ、兵士たちが怪我はしたけど・・・、お、折しも・・・、領主様も、お着きになったんですよ」

「私もその話は聞きました。卑怯な奴らがカリプス卿の勢いに怯えてすぐに投降したそうですね？情けない臆病者たちです。もっとも！リバドンのあのネズミのようなやつらが、カリプス卿の相手になるわけがないでしょう」

マックは困った顔で目を転がす。

この少年は、リプタンの称賛を一度始めれば、なかなか止まることがなかった。

彼のそばに立ったガロウは、すでにうんざりしているかのように首を横に振っている。

マックは興奮した少年の言葉を注意深く切り、苦笑いする。

「と、ところでちゅ、厨房には何の用事で・・・？」

やっと気がついたように、ユリシオンが自分の後ろにぼんやりと立っている他の見習い騎士たちを振り返った。

「肉を焼く匂いを到底我慢することができません。訓練中にこっそり抜け出してきました」

それで皆あのように狼狽感が幼い顔をしていたようだ。

マックは、もしも女主人が団長に告げ口をするのではないかと恐れている少年たちに安心してという意味で笑みを浮かべる。

「い、今ソーセージをゆ、茄でていました。コック長、この方々に一皿だ、出してくれますか？」

きれいに洗い流した豚の腸に中身をぎっしり詰め込んでいたシェフが、赤くなった顔を上げてにっこりと微笑んだ。

「今あちらの釜戸で焼いています。さあほら！ここにソーセージを一皿いっぱい詰めて持ってきて！」

飢えた少年たちがどっとそこに押し寄せた。

マックは彼らが軽食を楽に楽しめるようにこっそりと席を外してあげた。

台所の外に出ると、廊下のあちこちに灯りをつけている使用人たちの姿が見えた。

昼が短くなったため、あらかじめ灯りをともしておかないと、あっという間にお城が真っ暗になるのだ。

事故が起きる可能性もあるので、中央ホールと階段には早い時間から灯りをともしておかなければならなかった。

新しく注文した壁灯をあちこちにぎっしりとつけていたため、城は2倍明るくなったが、使用人たちの手は2倍に忙しくなったわけだ。

マックは廊下を通り過ぎながら、固く誓った顔で話す。

「私、明日にでもすぐに、もっと仕事を求めなければなりません」

「別にそんなことしなくても・・・」

「いいえ、違います。このように大きな城を管理するには、より多くの召使いが必要です。世話をしなければならない人も多いし・・・、す、少なくとも今より、三十人はもっと必要だと思うのですが・・・、住まいはじゅ、十分でしょうか？」

「そうですね、１階に使用人が使う空き部屋がたくさん残っています」

「そ、それでは今日中に、領主様と相談してみます」

マックは最後に納屋を見学し、部屋に戻り簡単な日記を書く。

自分の城のように大きな城の暮らしを立てるためには、城の隅々で何が起こっているのかを把握している必要があった。

「奥様、領主様が先に夕食をとるようにという伝言をお送りしました。食堂に料理を作りましょうか？」

どれほと机の前にくっついて座っていただろうか、しばらく外に出て帰ってきたルディスが慎重な音声で注意を喚起させる。

マックは窓の外を見た。

しばらくの間で、外は真っ暗になっていた。

彼はこの時間まで外にいるのだろうか。

いくら鋼鉄のような男とはいえ、心配になった。

少しでも休憩をとらなければならないのに・・・。

「奥様？」

「へ、部屋まで持ってきてく、ください」

マックはルディスの不審な視線に急いで答え、席から立ち上がる。

彼女は何の意味もなく薪をかき混ぜながら暖炉の中で燃え上がる炎を見た。

カリプス城での一日はとても長くて短かった。

忙しい時にはつらい思いをしたが、父の城で死んだような時とは比べ物にならないほど満足している。

リプタンも満足しているかな？

昼間にルースが言った言葉を思い出し、マックは顔色を曇らせた。

リプタンが自分の父親にどれほど不当な待遇を受けたかは、騎士たちの態度だけを見ても分かることができる。

彼が自分を恨んでも仕方のないことだった。

でも彼はむしろ、なんとかもっとよくしてやろうと努力している。

率直に言って、そのような行動がよく理解できなかった。

どう考えても自分には人の心を引くようなところがなかったからだ。

自分には輝かしい美貌もなく、並外れた才能もなく、オ気あふれるものもない。

せいぜい、公爵家の長女という血統だけだった。

しかし、それさえも王女の前では大したことのない身分だ。

一体、あの人は私のとどんな面をそんなに気に入っているのだろうか。

「理由が何であれ・・・、私にとって身に余る幸運であることは間違いない」

彼女は父の言ったことを苦々しく思って決心する。

あれほど惨めに思っていた父親の暴挙が、思いがけない幸運になって帰ってきたわけだ。

マックは、この幸せが去らないように全力を尽くすと固く誓った。