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59話




 

こんにちは、ピッコです。

今回は59をまとめました。

 

 

 

 

 

ネタバレありの紹介となっております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...

 




 

59話

58話 こんにちは、ピッコです。 今回は58話をまとめました。 ネタバレ...

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 水の季節の訪れ

酷い寒波が去り、アナトールには水の季節が近づいていた。

マックはその間、防御魔法を新たに学び始め、吃る癖を根気よく直していった。

最初はなかなか進まなかったが、落ち着いた態度で執拗に練習を重ねた結果、最近は手探りで詩を一小節詠めるように。

もちろん幼い頃に習った難しい古代詩ではなく、流れ者の吟遊詩人たちが好んで歌う簡単な文章だけで構成された詩だ。

それでも初めて完璧な文章を言った時は、感激で涙がぽろぽろと流れた。

ルースの言う通り、リラックスしてゆっくりと話す練習をするのが役に立ったのだ。

難しい発音や長い文章を話すのはまだ大変だが、それでも意識的に多くの対話をしようと努力したおかげか、症状は少しずつ良くなっている。

最近は、ルースが作ってくれた文章を声を出して読みながら、時々硬い舌をほぐす運動も始めた。

普段あまり使わない筋肉を使ったせいか、まるで針を噛んでいるように舌が凝って痛かったが、彼女は毎朝欠かさず練習を繰り返した。

吃ることを直すことさえできれば、剣を口に咥えていろと言われても従うことができるだろう。

「2階・・・、テラスの下に・・・、花園を作りたいんだけど・・・、どれくらいかかりますか?」

一つの副作用があるとすれば、正確に言おううとして間を空けると、あまりにものろのろとした話し方になってしまうことだ。

ルースは時間が経てば徐々に良くなると言ったが、マックは依然として他の人が自分の話をもどかしく思わないか気になった。

造園計画書を几帳面に読み上げていたマックは、頭を上げて向かい側に座ったアデロンの表情を見る。

商人は図々しい人らしく、丁寧な態度で答えた。

「すぐにそんなにたくさんの苗を手に入れるのは簡単ではありません。一応小さな苗木を植えるのはどうですか?クロフネッッジの苗木なら、こちらの商団から難なく手に入れることができると思います。美しい赤い花が咲き乱れるように咲きますよ」

「でも・・・、花壇も埋めたいのですが・・・」

「水仙の苗ならすぐに手に入ります。私が庭を管理する使用人たちに言っておきます」

お茶を注いでいたロドリゴが一言手伝った。

マックは頭の中で絵を描いてみる。

荒涼とした庭に質の良い土壌を敷き、芝生や各種の苗木を植えた後、色とりどりの花や造園物を飾っておけば、見違えるほと素敵になるだろう。

しかし、費用も考えざるを得なかった。

庭園を管理する使用人たちももっと雇用しなければならず、花と木を植える作業にも多くの費用がかかる。

マックは注文書にサインする前に、もう一度ルースに検査を受けた方がいいと思い、計画書をテーブルの上に置いた。

「もう少し・・・、考えてみます」

「分かりました。私はその間、できるだけ多くの苗を手に入れるように気を配ってみます」

「では、お願い・・・、します」

マックは笑顔で席から立ち上がる。

日が少しずつ暖かくなり始めると、アナトールにも再び市場が開かれ、商人たちの訪問が始まった。

騎士によるとアナトリウム山地北側の向こうに盤龍の生息地があり、彼らが東面から目覚める時期に合わせて傭兵が集まってくるという。

ドラゴンの亜種の魔物は非常に危険だが、彼らの鱗と魔石、そして骨は魔導具の材料として非常に有用である。

だから値段が高く取り引きされるということだった。

そのため、自然に一攫千金を狙う傭兵たちがアナトールを訪れ始め、彼らが手に入れてきた魔石と骨を購入しようとする商人たちも春になると列をなして訪問してきた。

本格的な水の季節に入ると、きっともっと多くの人が集まってくるだろう。

「その前に造園工事を全部終わらせたいんだけど・・・」

春になれば宴会も開くだろうし、流れ者の吟遊詩人や流浪劇団を招待することもあるだろう。

彼らが全大陸に名声を博したカリプス卿の城に呼び出されてみると、荒涼として索漠としていたという噂を広めることだけは阻止したかった。

何よりリプタンが貴族たちに侮られないか心配だった。

彼女はできるだけ庭を綺麗にすることを決意する。

「庭園」とは、訪問者に城の第一印象を植え付ける重要な場所ではないか。

「奥様、ここにいらっしゃったのですね」

考え込んだまま階段を下りていくと、女中の一人が彼女を呼び止めた。

マックは不思議そうな顔で上を見上げる。

年老いた女中が丁寧な口調で話した。

「旦那様が、執務室に来てほしいとのことです」

「何か・・・、問題でも・・・?」

「正確に何のために探しているのかは言ってくれませんでした」

リプタンが明るい昼間に執務室に留まることも稀だったが、このようなやり方で呼び出すことはさらに稀だ。

マックは何事かと急いで階段を上る。

リプタンの執務室は図書館の上階、階段の向こう側に位置していた。

彼女は濃い茶色の絨毯の上を素早く歩き、広いマホガニーの門の前に立つ。

後ろをついてきた女中がドアを叩いて彼女の到着を知らせてくれた。

「どうぞ」

ドアの向こうから彼の大きな声が響き渡ると、女中が慎重な手で取っ手を引っ張る。

マックはふわふわのカーペットが敷かれた広い部屋に、注意深く足を運んだ。

バタバタというけたたましい羽ばたきの音が聞こえてきた。

マックは好奇心に満ちた目で明るい光に囲まれた部屋を覗き込む。

正面にある大きな窓のそばには彼女の背丈よりも高いかごがあった。

その中には伝書鳩として使われる白くて小さな鳩たちがびっしりと座り、グーグー、と鳴き声を出しており、部屋の左側には果たして人が使えるのかと思うほど巨大な盾と剣がかかっていた。

「座らずに何をしているの?」

マックが門の端に立って執務室を見物することだけに気を取られていると、机の前に座って何かをしばらく書いていたリプタンが催促してきた。

マックは彼の前をゆっくり歩いて彼の顔を見る。

何度も荒々しくかき上げたように、彼の真っ黒な髪の毛はたくさん乱れており、インクがつかないようにまくり上げた袖の下に露出した筋肉質の腕には筋が立っていた。

マックは心配で顔を曇らせた。

「何か問題でも・・・、起きましたか?」

「ドラキウム宮殿から電報が届いた。前もってあなたに伝えておくべきだと思って」

「私に・・・、でしょうか?」

リプタンは息を切らしながらため息をつく。

「数週間以内に王宮からお客さんが訪ねてくるだろう。少なければ20人から、多ければ30人ぐらい。彼らが泊まれるように一番良い部屋を準備しておいて、ささやかな歓迎式も用意してほしい」

突然の言葉にマックは目を丸くする。

春が訪れればお客さんが訪問してくるということは知っていたが、予想よりも早い便りに当惑が押し寄せた。

「お客様・・・、は・・・、どんな・・・?」

「ルーベン王が送る視察団だよ。王室直属の騎士と・・・」

リプタンは言葉を濁して彼女の顔をちらりと見る。

彼の感覚的な唇は複雑な考えで微妙に歪んでいた。

しかし、すぐに彼は感情を排除した顔に戻り、平然と口を開く。

「アグネス王女が来る」

 



 

マックは息を止め、リプタンの顔をぼんやりと見つめる。

一時、彼と縁談が交わされた貴婦人が訪ねてくるというが、一体どんな反応を見せればいいのか分からなかった。

彼女が返事をしないでいると、彼は少しいらいらした口調で付け加えた。.

「もちろん、王命を受けてアナトールを視察に来るだけだよ。それでも私と親交があり、レムドラゴン騎士団とも友好的な王族はアグネスだけだから」

「そ・・・、そうなのですね」

マックは乾いた唾を飲み込んだ。

親交があるという、そうでもない言葉に神経が尖ってしまう。

彼らはドラゴン討伐の仲間だった。

当然、親交があったはずだろう。

ルースの話によると、誰もが当然リプタンが彼女と結婚すると思ったくらいだというから、十分に近い間柄だったはず。

胃腸が苦しそうにもつれてきた。

しかし、嫌な気配を見せたら、嫉妬に目がくらんだ女性のように映るのではないかと思い、マックは努めて平然とした笑みを浮かべる。

「い・・・、一番いい部屋を・・・、か、飾っておくように・・・、い、言いますね。他に、準備す・・・、することはありますか?」

「・・・使用人たちにお客さんを迎える準備を徹底しておくように伝えておけばいい。あなたがこれ以上気にする必要はない」

察するように彼女の顔をじっと見つめていたリプタンが無愛想に返事をしては再び卓上に視線を下ろした。

妙に冷たい態度だったが、そこまで気を使う暇がなかった。

彼女は感情的に乱れた様子を見せる前に急いで席から立ち上がる。

「それでは・・・、今すぐ言っておきます」

「お願い」

リプタンは頭も上げずに言った。

マックはすぐに部屋を出て階段を駆け下りる。

ロドリゴを呼んでリプタンが知らせてくれた便りを伝える間も頭の中は複雑だった。

彼女は混乱の中でアグネス王女の訪問の知らせを噛み締める。

縁談を断られた貴族女性が、自分を断った男性の領地を訪れてくるのは一般的なことなのだろうか。

王女は何を考えてリプタンを訪れるのだろうか。

もしかするとルーベン王は、リプタンを王族の一員にすることをまだ諦めていないのかもしれない。

視察は言い訳に過ぎず、王女は彼の心を変えるために来るのかもしれない。

その考えにマックは恐怖に怯えた。

リプタンが現在離婚する気がないからといって、今後も離婚する気が生じないという保障はない。

アグネス王女が決心して彼を説得しようとしたら、私はどうすればいいのだろうか?

「奥様、お顔が青白いです。もしかして体の具合が悪いですか?」

彼女の顔色を見たロドリゴは心配そうな顔で尋ねる。

マックは慌てて首を横に振った。

「ちょ、ちょっと・・・、疲れているみたいで・・・」

ぼんやりしている場合ではなかった。

彼女は急いで不安な考えを捨て、やるべきことに集中しようとする。

王室から客が訪れるのだから、みすぼらしい姿を見せることはできなかった。

彼女は手から布巾のようにしわくちゃになった計画書を見下ろした。

ルースと膝を突き合わせてゆっくり検討する余裕はなさそうだ。

「もう一回・・・、アデロンをよ、呼ばないと。彼に・・・、すぐに造園を・・・、始めてほしいって・・・、伝えてもらえますか?グレートホールの入り口だけでも・・・、急いで飾っておかないと。あの、庭に木を・・・、何本か植えておけば・・・、いいですね」

「すぐに連絡を取ります」

「そ、それから・・・、お客様が泊まる・・・、部屋に、華やかなタペストリーと・・・、豪華な寝具を・・・、よ、用意しておいてほしいです。お客様を・・・、丁寧にお迎えできるように・・・、下女たちも、格別に教育をさせなければならないし・・・、お城の隅々の・・・、掃除を・・・」

「仰せの通り申し上げます」

それ以上、どのような指示を下さなければならないのか、何も思い浮かばなかった。

マックは唇をバタバタさせてため息のように吐く。

「問題が生じたら・・・、お、教えてください」

彼女は使用人に指示を出して部屋に戻り、魔法の本を習慣のように開いた。

しかし、どんな文字も目に入ってこない。

彼女はいらだたしくページをめくるのを止めて、唇をかんだ。

リプタンと自分の間にはまだ子供の消息がなかった。

彼らの結婚は今からでもリプタンが心を変えれば羊皮紙一枚よりも簡単に破れることができた。

最近、彼のよそよそしい態度が思い浮かぶと、彼女の不安は倍増する。

彼は、「結婚誓約を簡単に捨てることはできない」と言ったが、人の心はいつでも変わることができた。

まぶしく美しい女性が誘惑してくるなら、リプタンも考えを変えるかもしれない。

「彼の言う通り、ただ視察に来るだけかもしれないじゃないか」

マックは大きくなる不安の暗雲を必死に追い払った。

リプタンは頑固な男だ。

葦のように簡単に心を変えることはないだろう。

悪い想像ばかりするのはもうやめよう。

リプタンはルーベン王の後を追う騎士だ。

今後も王族と顔を合わせることはしばしばあるだろう。

その度にこのように萎縮して不安に震えることはできないではないか。

彼女は危なげな心をかろうじて落ち着かせる。

幸いなことに、急いで客を迎える準備を始めて、悩んでいる余裕はなくなった。

マックは魔法の勉強も差し置いて、商人たちを集めて部屋を飾る装飾を慎重に選び、庭を飾る監督をした。

今すぐ広々とした庭園を全て飾る時間がなかったため、随所に低木を植えて彫刻像を建てる作業から始めることに。

凍りついた土地が数日前から柔らかく溶け始めたおかげで、作業するのに心配したほど多くの時間はかからなかった。

商団から送ってきた慟き手たちがシャベルを持って地面を深く掘って均ーな間隔で木を植える間、使用人たちは花壇に苗を植えてあちこちに花の種を蒔く。

少し早い時期ではあるが、腐葉土を混ぜて土を柔らかくしておいたので、天気が暖かくなればすぐに根を下ろして芽を出すだろう。

マックは客が到着する前に少しでも庭が荒涼とした姿を脱いでほしかった。

「王室のき、騎士たちは・・・、別館に泊まる予定で・・・、王女様とお供・・・、そして直属の侍女は・・・、グレートホールで・・・、泊まります。不便なく過ごせるように・・・、みんなが・・・、格別に気を配ってください」

「わかりました、奥様」

「食べ物にも・・・、香辛料を惜しまずに・・・、食器もすべて銀と金でできたものだけ・・・、出しましょう。高価なワインを十分に用意しておいて・・・、足りない食材は、お、惜しみなく注文してください」

「肝に銘じます」

マックは使用人たちに几帳面に指示を下し、一日に何回も城を隅々まで回りながらお客様を迎える準備がきちんとできているかを調べた。

女中たちは幾重にも伏せた雨戸をばっと開けた後、ぼやけた窓をピカピカに磨き、使用人たちは顔に炭をつけながら灰が積もった暖炉を掃除し、火鉢を取り出して焼けた跡を洗い流した。

それだけではなかった。

女中たちは一日中井戸水を汲み上げて、古い垢で汚れたカーペットと絨毯を洗濯し、窓のカーテンも取り外して綺麗に洗う。

マックはそれらすべてを監督し、毎日注文書を作成するのに忙しかった。

ルースも魔導具の製作で忙しいため、すべてを彼女一人で処理しなければならなかった。

だからといって文句を言うつもりはない。

他の人たちは自分より何倍も忙しかったのだから。

 



 

ルースはほとんど毎晩夜を明かすようで、リプタンと騎士たちは春から始まる道路工事計画で夜明けから夜遅くまで働いた。

港とアナトールを結ぶ広い道路を建設することは、とてつもない人力が入る大工事だ。

リプタンは一日中地図を見ながら騎士たちと最も安全で速い経路に関して議論し、工事に必要な人材と建築資材を確保することに全神経を傾けていた。

そのため、夫婦の間に寝床を持つ回数が目立って減っている。

リプタンは真っ暗な夜になってようやく部屋に戻り、マックは早朝から城の隅々を歩き回りながら夜になると疲れ果てて眠ってしまった。

さらには、彼が夜遅く帰ってきて、少しの睡眠を取って夜明けに出かけてしまったため、一日中顔も見ることができなかったこともある。

マックはそのような時間が続くほど、激しい欲求不満に包まれた。

リプタンの腕にしっかりと抱かれて、温かく柔らかいキスをしてもらいたかった。

彼の丈夫で広い胸の上に横になって猫のように顔をこすり、彼の大きな手が髪の毛を撫でるのを感じたかった。

むしろ安息の季節が永遠に終わらない方がましだと思ってしまう。

薄暗く寒い城の中で、一身のようにくっついて過ごした日々が懐かしかった。

そのような寂しさが積もると、努めて引き締めておいた不安感が再び膨らんだ。

彼はひょっとして自分に飽きてしまったのではないだろうか。

自分への情熱が冷めてしまい、生ぬるい態度を見せているのかもしれない。

ベッドに横になって彼を待っている時は、そんな考えで気が狂いそうだった。

むしろ、何も考えられないほど忙しい昼間の方が良かった。

広いベッドの上で冷たく冷めた隣の席を手探りしている時には、あらゆる否定的な考えが集まってきて彼女を苦しめるから。

マックは夫の笑顔を見たい欲求で、彼と一緒に馬に乗って城の外に出て二人きりの時間を過ごしたい欲求でやせ細っていく気分だった。

予告していた客が到着したのは、そんな不満足な気持ちが極に達していたとき。

春の気配がピークに逹したのどかな午後、庭園の造園を監督していたマックは、王室の印章を持った騎士たちがアナトールの門を通過した知らせを間いて体をこわばらせる。

庭園は低木を随所に植えておいたため、荒れ地のような姿をやっと脱ぎ捨てた状態だ。

非常に満足できるほどではなかったが、疲弊した格好で王室視察団を迎えることができなかっただけでも幸いだと思い、彼女は慌てて客を迎える準備をした。

女中たちを慌ててグレートホールの入口をできるだけ綺麗に整理するよう命令を下し、部屋に入って身なりを見回す。

派手でいい服を着ていたが、どこか物足りない気がした。

彼女は宝石箱を開け、普段あまりしないブローチをつけ、ネックレスと指輪で飾った。

そして、ルディスに髪をもう一度触ってほしいと頼んだ。

夫と縁談が交わされた女性にみすぼらしい姿を見せたくはない。

ルディスも彼女のその気持ちに気づいたのか、いつもの数倍は精魂込めて髪を結い上げ、絹と宝石で飾った冠をかぶせてくれた。

しばらくして、遠くからお客様の到着を知らせる長いコッヘルの音が聞こえてきた。

マックは派手なショールを肩にかけ、下女たちを従えて階段を降りる。

心臓が鈍くて重たいようにドキドキし、背筋には冷や汗がにじんだ。

カリプス城の女主人として初めて迎える客。

ところが、よりによってその最初のお客様がアグネス王女という事実に彼女の緊張は数倍に増えた。

どんな人だろうか。

ロゼッタのように冷たくて傲慢な人だろうか。

自分を「大したことのない女」として軽んじたりするのではないか。

彼女は裾に濡れた手のひらをこすりながら、お客様が開いたドアの前に姿を現すのを待つ。

遠くから人々の声だけが聞こえてくるのをしばらく、まもなく華麗な服装をした人々が階段を歩いて上がり始めた。

マックはすぐにアグネス王女を見つけることができた。

彼女は女中と思われる2人の若い女性と5、6人の男性、そして銀色の鎧を着た騎士たちを連れてグレートホールの入り口まで堂々と歩いていた。

その横にはレムドラゴンの騎士が並んでいて、王女の横にはリプタンが呼び寄せるように立って彼女をエスコートしている。

マックは腰を曲げてお辞儀をすることも忘れ、その姿を見守った。

アグネス王女の姿は実に型破りだった。

彼女は男性が着そうなズボンの上に長いブーツを履いていて、膝までの長さの紫色のチュニックに長いマントを羽織っている。

艶のある煌びやかな金髪を長く垂らした王女が、日焼けした金色の顔いっぱいに自由奔放な笑みを浮かべたまま、軽快な足取りで近づいてきた。

予想していたのとは違う気さくながらも活力あふれる女性に、マックは当惑した顔で向き合う。

彼女は派手なアクセサリーを身に着けていなかったが、鮮やかな青い瞳が光を放っているようだった。

「お会いできて嬉しいです。アグネス・ドラキナ・ルーベンです」

「お会いできて・・・、光栄です、殿下・・・。マクシミリアン・・・、カリプスです」

少しだらだらしたが、これまで密かに練習してきた通り、マックは落ち着いて挨拶をすることができた。

「どうか、いらっしゃる間・・・、安らかにお過ごしください」

彼女がスカートを広げてそっと腰を曲げると、後ろに待機して立った下女たちがついて丁寧に頭を下げる。

アグネス王女は陽気で上品な笑みを浮かべた。

「突然の訪問に戸惑ったと思いますが、このように歓迎してくれてありがとうございます」

「騎士たちは私が案内する。あなたは王女殿下を客室に案内してくれ」

リプタンが王女の前に立ちはだかるように、一歩前に出てきて言った。

光に背を向けて立ったため、彼の顔は普段よりも厳粛で威厳があり、ほとんど藍色に近い濃い青色のチュニックと鍍灰色の軽甲は、いつにも増して彼の丈夫な体格を引き立たせていた。

「はい・・・」

マックは額や頬に軽くキスしてくれることを期待して彼を見上げる。

しかし、リプタンは一歩離れた場所でじっと眺めて、騎士たちに向かってさっと身を向けた。

「ついて来い。休める部屋に案内しよう」

それから別館と続く裏門に向かって、つかつかと先を歩き始める。

王室の警備兵たちが後に続くと、待機していた使用人たちが客の世話をするために一人一人追随した。

マックは失望を隠しながらメイドたちに随行員たちをそれぞれ部屋に案内するよう指示する。

メイドたちは急いで荷物を運び始めた。

「グレートホールの2階に・・・、あの、殿下が泊まる部屋を・・・、準備しておきました。随行員たちの部屋も・・・、同じ階に用意しておいたのですが・・・、大丈夫でしょうか?」

「もちろんです。気を使ってくれてありがとう」

「Fへ、部屋に・・・、ご案内いたします」

マックは向きを変えて、赤い絨毯を敷いた階段を上る。

王女がその横を歩きながら興味深い視線で城を見回した。

「お城がとても素敵ですね。予想したより規模が大きくて驚きました」

親近感のある口調にマックは何と答えたらいいか分からず、困った視線だけを送る。

 



 

ついにアグネス王女との対面!

気さくな性格のようですから、マックも打ち解けやすいのでは?

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