こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
今回は306話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
306話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最後の一戦②
「お手伝いします」
ジェームズを制圧したヒュレルバードが挟み撃ちに加わると、主導権が一気に変わる。
動物的で本能的なレンの剣術、剣術教本に近いシアンの完成型剣術、急所を狙うヒュレルバードの実用的な剣術まで加わると、超人に近いフランチェ大公としても持ちこたえることができなかった。
その上、3人の挟撃は数十年間、息を合わせたのではないかと疑われるほど完璧。
目を虜にし、隙間を作り、急所を狙う過程が一糸乱れぬまま、水が流れるように自然に続いた。
「大公殿下!」
いくつかの騎士が守勢に追い込まれたフランチェ大公を助けるために飛び込んだが、彼らとしてはカ不足だった。
格の違う強さを持つ者たちの対決なので、むしろ邪魔になるだけで、役に立たない。
「お父様・・・!」
フランチェ大公が押されると、ベロニカが爪をぎゅっと噛んだ。
極度の焦りに唇がからからに乾いていく。
一度も考えたことのない最悪の結末が実現するのではないかと不安だった。
挟撃を受けるフランチェ大公の顔からは余裕が消えて久しい。
計算ミスだった。
シアンとレンを見ても、一時代に一人生まれるのが難しい強者であるにもかかわらず、ヒュレルバードまでいるとは予想できなかった。
すべてを失う恐れがあるという切迫感がフランチェ大公に焦りを募らせる。
死んだらすべてが終わりだから。
彼も、ベロニカも、数百年間、盛勢を続けてきたフリードリヒ大公家も。
(バランスを崩さないと)
無理をしてでも一人を殺さなければならない。
その過程で、片方の腕を失っても、この対日構図を作ることができれば、再び勝機をつかむこともなかった。
そのような下心を予想できない3人ではなかった。
彼らは無理にフランチェ大公の猛攻に立ち向かうよりは守備に集中し、大公の体力が落ちるのを待つ。
その一方で、隙が見えれば、いつでも威嚇的な攻撃で敵の肝胆を冷やした。
「はあ、はあ・・・」
フランチェ大公の息が切れた。
体力が落ち、剣先も少しずつ鈍くなっていく。
細かい傷が増えたのがその証拠だった。
「カースティン、ファレル!私を助けてくれ、早く!」
フランチェ大公はその近くで戦闘中の騎士を呼び出す。
戦力の差が大きく、それほど役に立たなくても、少しの時間を稼いでくれれば体力を保存できるからだ。
しかし、3人はそれさえも許さなかった。
老いて弱くなった獅子のあがきに合わせて最後の一撃を加える。
シアンの剣がそのままフランチェ大公の左胸を貫いた。
一度も渡したことがなかった大公の後ろを取ったレンの剣が軌跡を描きながら背中を斜めに切ってしまった。
すき間を狙っていたヒュレルバードは首の血管を切った。
「お、お父様!」
ベロニカの叫びと同時にフランチェ大公の体から血の噴水が噴き上がる。
フランチェ大公は首筋をつかんでよろめいた。
手のひらの間から流れる血筋を防ぐために、あくせくとした。
未練の残るあがき。
死を容れぬ眼差し。
生きるための哀れな身振りにもかかわらず、ゆらゆらしていた肉体が崩れ落ちた。
地面に伸びたフランチェ大公の指がうごめく。
このように死ぬことができないかのように、エレナを睨んでいた彼の体から力が抜けた。
青筋が立った目を開けたまま死んだのだ。
「大公」
エレナは息が切れるまで彼から目を離さなかった。
一時代を風靡した大公の退場にしては、あまりにもみすぼらしく、虚しい死。
「あなたとでも違いはありません。死ぬとはそういうことだから」
エレナは淡々とした目で彼の最後を目に入れる。
死はそれほど遠い話ではなかった。
誰もがみんな同じなのだから。
それで今、フランチェ大公の心情がどうなのか十分に知っていた。
ましてフランチェ大公は「帝国の空」と称する大公家の首長。
失うものが多い人ほど、人生に対する愛着がより強くなるものだ。
息の根が切れるまで数秒に過ぎなかったが、その瞬間、彼が感じた絶望は言葉で表現できないほど大きかっただろう。
「いや、そんなはずがない。これってあり得る?起きてください。何してるの?早く起きてあの子たちを殺さないと!」
馬から降りたベロニカが、現実を否定するように大声で叫んだ。
遅い足取りで父親に近づく間も、フランチェ大公はびくともしなかった。
「た、大公殿下!」
遅れて主君の死を認知した第1騎士団のジャン・ペリンが背中を見せてしまった。
リンドン伯爵がその隙を逃さず、ペリンの肩から脇腹まで斜めに剣を引いてしまった。
ぼろぼろになった体でふらついていたペリンが横に倒れ、死んでしまった。
絶命だった。
フランチェ大公だけでなく、騎士団長のペリンとジェームズが皆死ぬと、大公家の騎士たちが戦闘意志を失ったように動揺する。
「降伏しろ。抵抗するなら斬る」
シアンが出て脅し文句を言うと、意志を失った大公家の騎士たちが誰を問わず剣を捨てて降伏した。
その姿を見守っていたベロニカが声を上げる。
「どうかしてるの?何してるの!もう一度剣を持って!私、ヴェロニカ・フォン・フリードリヒが生きているじゃん。ほら、私が新しい大公よ。だから剣を持って。早く!」
「おい、いとこのお姉さん。それくらいにしてよね、すごく見苦しいんだ」
レンがにやりと笑って皮肉ると、ベロニカが体を震わせた。
「私の声が聞こえないの!」
ベロニカの命令にもかかわらず、騎士団員たちは頭を下げたまま再び剣を握らなかった。
ベロニカは彼らに信頼を与えたり、見せたりしたことはない。
彼らはただ血筋だという理由で従い、命をかけたくなかった。
「すみません、公女殿下」
「これ以上の戦いは意味がありません」
騎士たちは「誰」を問わずそっぽを向く。
その姿にベロニカが悪に打ちのめされた。
「ろくでなしめ!主君が死んだのに剣を置くの?お前たちはそれでも騎士なの?フリードリヒ家の騎士と言えるかと!」
「いい加減にしろよ?みっともない」
「黙れ」
ベロニカが殺しそうにレンを睨みつける。
今彼女には悪しか残っていない。
頼もしく自分を守ってくれたフランチェ大公も、後ろ盾になってくれた騎士団さえも背を向けた今、茫々たる大海原に一人残された孤独が彼女を蝕んでいた。
「全部あなたのせいだよ。あなたのせいだ」
ベロニカは腰につけていたレイピアを引き抜きながらエレナを殺そうと睨みつける。
装飾用に近い剣だったが、刃が立っているために十分に威嚇的だった。
「ベロニカ」
エレナは静かに彼女を呼び、馬から降りる。
剣についた血を払い落としたヒュレルバードがすぐ後ろについてベロニカの突発的な状況に備えた。
「殺すべきだった。お前さえ殺していたらこんなことは起きもしなかった!」
「そんなことはできなかったじゃない」
皮肉なエレナの声は氷の上よりも冷たかった。
状況は変わったが、今エレナが感じる感情は回帰前、閑散とした監獄の延長線にある。
イアンを奪い、利用されて死んでいくエレナをあざ笑い、それだけでは足りずイアンの死まで取り上げた悪魔。
その悪魔が今、全く逆の状況でエレナの前にいた。
「できたように話さないで」
「お前!」
侮辱的な無視にベロニカの目がひっくり返った。
うまく掴めないレイピアを持ってエレナに向かって飛びかかる。
後ろにいたヒュレルバードより先にいたレンが割り込んでこっそり足を出した。
前だけを見て飛びかかっていたベロニカが足に引っかかってみっともなく倒れる。
土ぼこりにまみれた彼女が首を回してレンを殺すように睨んだ。
「イ、イ!」
レンが肩をすくめると、元気いっぱいのベロニカがレイピアを再び手に取り、進んだ。
彼女にはこれらすべての元凶であるエレナヘの憎しみだけが残っていた。
しかし、それをじっと見守るレンではなかった。
素早く体をひねってベロニカが気づく前にまた足をかけてしまった。
今度は土ぼこりではなく、死んだ遺体の前に倒れ、血でびしょ濡れになってしまった。
ついに倒されたフランチェ大公。
最後は呆気ない死でしたが、それでも3人を相手にしていた彼は怪物でしたね。
作中最強の人物はフランチェ大公で間違いないでしょう。
全てを失ったベロニカですが、エレナの復讐はまだ終わっていません。