こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
143話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 元凶
シュペリオン城は緊張感に包まれていた。
突然やってきた皇帝とその騎士たちにより、妙な緊張感が城中を覆っていた。
シュペリオン公爵は彼らを城内に迎え入れた。
望まなかったが、どうしようもない。
たとえ小さな領地の領主とはいえ、ペルセウスは皇帝だ。
実質的に拒否する権利はなかった。
おまけに、負傷した騎士たちを治療してほしいという要請まであり、さらに困惑させられた。
数人の騎士たちは重傷ではなかったものの、傷はひどかった。
道中で戦闘でもあったのかと尋ねたが、騎士たちは答えなかった。
皇宮の応接室。
ペルセウス皇帝と、ただ一人のシュペリオン公爵の表情は暗かった。
「どれくらいぶりの再会か……」
公爵はぞっとしながら考えた。
公式的には、ペルセウス皇帝の即位式以降、初めてのことだ。
正直に言えば、シュペリオン公爵は彼が嫌いだった。
娘を守れなかった無能な男だと思っていた。
『まったく話にならんな。』
しかし、かつては美男子だった顔がやつれ、憔悴した姿を見ると、いつの間にか恋人を失った者に対する同情心が芽生えた。
とはいえ、生き返った娘を再び送り出すなんてことは、あり得なかった。
そんなことは絶対に起こり得ない。
「……」
シュペリオン公爵は表情を隠し、緊張を押し殺していた。
まだペルセウス皇帝は、エリザベスが生きて戻ってきたという事実を知らないのだ。
幸いなことに、ちょうどエリザベスは現在アティアスとともに外出中だった。
ペルセウス皇帝の知らせを聞いた後、公爵はすぐに使者を送った。
「アティアスに伝えろ。しばらく城には戻らず、ジェノの邸宅で過ごすようにと。必ず伝えなければならない。わかったな?」
「はい、公爵様。」
だが、万が一ということもある。
公爵は不安を隠しながら、冷静な皇帝を見つめた。
「お顔色がよく見えて安心しました、シュペリオン皇帝陛下。」
「公爵。公爵夫人もご健在とのことで、何よりです。」
「……はい、陛下。しかし、いかなるご用件で……」
本題に入ると、皇帝の表情はさらに暗くなった。
「レリアが……」
「……」
「神殿であの子を聖皇にしようとしていると、聞きました。」
「……はい、陛下。」
「ありえないことです。あの子が聖女だなんて、あの子は……」
「……」
ペルセウスは簡単には言葉を発することができなかった。
罪悪感で目の前がかすんだ。
公爵の前でその子の名前を口にするだけでも、大きな罪を犯すような気がした。
「皇城に留めて強要するつもりはないが、中立地域は……」
ペルセウスは気まずそうに口をつぐんだ。
中立地域だけにはもう二度と送りたくなかった。
死んだライディオスが強制的に送り込んだあの場所へ、レリアをまた送るとは。
レリアはあそこで過ごした時が一番幸せだったと語っていたが……彼には到底そうとは思えなかった。
「神殿があの子を振り回すようなことは、させられません。」
「……」
「あの子がそれを望んでいるのですか?」
ペルセウス皇帝が小声で尋ねた。
シュペリオン公爵は寂しげな表情だった。
彼は静かに答えた。
「その点についてはレリアもまだ悩んでいるところです。私はその子の決断にすべて従うつもりです。」
「しかし、公爵……」
「あの子の決断を誰も止める権利はありません。」
「……」
「陛下も、私も。誰も同じことです。」
公爵の鋭い一言に、ペルセウスは口をつぐんだ。
彼の目が揺れた。
実のところ、このシュペリオン城に足を踏み入れた瞬間から、彼は何も考えられなくなっていた。
エリザベスが生まれ育った場所であり、彼女と初めて出会い、一目で恋に落ちた場所でもあった。
「レリアもまだ決断を下したわけではありませんから、ひとまず監禁を解いてください。」
「……」
公爵の説得に、ペルセウス皇帝はついにうなずいた。
しかし、夜までにこの城から送り出すつもりはなかった。
最近、彼の発作は夜になると現れる。
大神官に会ってからは発作の頻度もやや減り、時間もある程度安定してきたが、完全には消えていなかった。
知ってはいけなかった。
毎晩、彼の騎士たちが皇帝の遺影に祈りを捧げ、密かに哀悼していることなど誰も知ってはならなかった。
心情としては、ここに数日滞在しながらエリザベスとの思い出を振り返りたいが、そうもいかない。
亡くなったとはいえ、あの祖父の前で剣を振るうわけにはいかないのだから。
ペルセウス皇帝は「明日また来よう」と言った。
「いや、なぜ… 城にお泊まりにならないのですか?」
シュペリオン公爵は、皇帝の「城に泊まらない」という言葉に目を見開いて驚き、うろたえた。
「…事情がございます。城の外に宿を取りましたので、ご心配には及びません。」
「……でも……」
シュペリオン公爵は皇帝の断固とした態度に、内心ため息をついた。
そして急いで侍従長を呼び、命令を下した。
アティアスとエリザベスが今どこにいるのかを調べさせる内容だった。
皇帝が当然、城に滞在するだろうと予想していた。
『だからエリザベスが城に来られないように塞いでおいたのに……』
シュペリオン公爵は、もしかしてという思いから、食事だけでもと引き留めるように皇帝の腕を取った。
皇帝は結局、断ることができなかった。
夕食の準備が整うまでお茶を飲むことにして応接室で待った。
ペルセウスは応接室の内部を見回しながら立っていた。
皇城から脱出したレリアはここで育ったのだ。
自分が知らなかったあの頃のレリアはどんな子だったのだろうかと気になった。
当然、自分のそばで育ってくれていればもっとよかったのだが……。
すでに後悔したところで取り戻せるものはなかった。
「レリア!」
「おじさま。」
領地に戻ったレリアはカリウスの手を握る。
どれほど緊張していたのか、カリウスおじさんの手は氷のように冷たかった。
「お母さん、お母さんは?」
「アティアスと一緒に外にいる。」
「よかった。じゃあ、皇帝は?」
「応接室に……それより、お前は大丈夫か?顔色があまり良くないぞ。」
カリウスは心配そうにレリアの髪を撫でた。
レリアは気まずそうに笑う。
「私よりおじさんの方が顔色が悪いように見えますよ。大丈夫なんですよね?」
「……私が大丈夫じゃない理由があるか。」
そう言った叔父の顔色は青ざめて、今にも倒れそうだった。
「応接室に行ってきます。」
「だ、大丈夫か?」
レリアは叔父を安心させるために軽く笑った。
落ち着いた態度だった。
ペルセウス皇帝に再び会うつもりはなかったが、こうなった以上、仕方がなかった。
はっきりと言うつもりだった。
もう二度と領地に来ないでくださいと。
自分が聖皇になろうと何であろうと、構わないでほしいと。
応接室へ向かうレリアの後ろを、三人の人物が静かに従った。
レリアは気づいて彼らを振り返った。
大柄な男3人が彼女をじっと見つめていた。
自分について来ている3人の男たちを見た瞬間、急に心強くなった。
「レリア、心配するな。これからは皇帝が君を探しに来られないように俺たちが守るから。」
彼女が不安がっていると察したロミオが、きっぱりと言った。
グリピスはまだ感情が整理できていないようで、ぎこちなく立っていた。
そしてカーリクスは――
「……なあ、お前はもう結婚したんだから、夫が保護者だ。皇帝は君の保護者じゃないんだから心配しなくていい。一緒に入って俺が言ってやるよ。」
「……」
いつ自分が結婚したことになったんだろう。
レリアは反論する力もなく、そのまま戻った。
そして友人たちに「ドアの前で待っていて」と伝え、ノックして応接室の中へ入った。
「………」
ペルセウス皇帝は窓の前に立ち、暗くなり始めた空を見つめていた。
レリアがゆっくり歩いていくと、ペルセウス皇帝は遅れて彼女に気づいた。
その体は時間が止まったかのように固まった。
「神殿にいるものと思っていたが… 違ったか。」
「どうしてこちらにいらっしゃったのですか。」
レリアのきっぱりとした口調に、皇帝はかすかに笑みを浮かべた。
「…お前が皇后になれないようにシュペリオン公爵を説得しに来たのに、お前に会えるとはな。運がいいな。」
「………」
レリアは息をのんだ。
最後に交わした会話がまだ鮮明だった。
皇帝も同じ内容を覚えているはずなのに、平然と「運がいい」と言うとは。
「聖女になるかどうかはお前の意思次第なのか?」
「…答えなきゃいけませんか?」
「皇帝として聞いている。少なくとも、今はまだ中立区域ではなく、私の帝国の領土なのだから。」
…はあ。
レリアは苦笑しながらため息をついて、言った。
「私が聖女になろうと、他国の奴隷になろうと、そんな資格はありません。まだそれを受け入れるのが難しいのですか?」
「そうだ、難しい。私は…!」
「陛下の事情には興味ありません。こうして向き合っても、お互いに傷つけ合うだけです。だからもう…」
「君も、君もそうなのか?」
レリアは言葉を止めた。皇帝の表情が歪んだ。
「………」
「君も私のように傷ついたのか?こんなにも胸が引き裂かれるように痛むのか?」
ペルセウスは一瞬、当惑したような表情を浮かべた。
苛立ちが込み上げた。
勘違いだったとはいえ……何か一言言おうとしたその時、ペルセウス皇帝の背筋がぴんと伸びた。
彼は窓の方に体を向けたまま、涙を拭っていたようだった。
レリアはため息をついた。
再びはっきりと話そうと口を開いた瞬間、部屋の空気が凍りついた。
ペルセウス皇帝の背中がぴくりと震えるのが目に入った。
「………」
なに?急にどうしたの?
レリアは眉をひそめながら彼を見つめた。
何も言っていないのに、急に雰囲気が…。
その時だった。
さっきまでしっかりと立っていた皇帝がすぐに彼女のそばを通り過ぎて応接室の扉を開けて出て行った。
まるで何かを見つけた人のように。
「……」
レリアはその瞬間、思い浮かんだ考えにすぐさま窓の方へ駆け出した。
遠くの方で叔母と一緒に本城の建物に向かって歩いてくる母の姿が見えた。
『だめ……!』
レリアは遅れてペルセウス皇帝を追いかけて応接室の扉を開けて出て行った。
扉の前に立っていた友人たちが怪訝な表情で彼女を見つめた。
「レリア、ちゃんと終わらせてきたの?皇帝が夢中で逃げていったけど?」
カーリクスの言葉に返事もできないまま、レリアは1階へと駆け降りた。
その時になってようやく何かがおかしいと気づいた友人たちが彼女の後を追った。
レリアは必死に走った。
『だめ、だめ…!』
涙で視界がにじんだ。
目の前が真っ暗だった。
皇帝が母に再び会うことだけは絶対に避けなければならない。
ただその思いだけだった。
巨大な1階の城門を開けて外に飛び出し、階段を駆け下りた。
遠くにペルセウス皇帝の後ろ姿が見えた。
だがすでに遅かった。
丸まった皇帝の背と肩越しに、母の顔が見えた。
地上で出くわしたペルセウス皇帝と母は、まるで時間が止まったかのように互いを見つめ合っていた。
母の隣にいたアティアスおばの顔は真っ青になっていた。
「だめ…だめ…!」
レリアが駆け寄って母の前に立ちはだかろうとした時だった。
「きゃああああっ!」
突然、母が引き裂かれるような悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。
そして倒れたまま、後ずさりした。
まるで地獄の業火から現れた悪鬼を見たかのような表情だった。
「エ、エリザベス……」
ペルセウス皇帝は一歩近づこうとして、立ち止まった。
エリザベス、彼女だった。間違いなく。
死んだと思っていた彼女が生きていたなんて。
一体いつから? 似た人なのか?
しかし、まぎれもなく彼女だった。
見間違えるはずがない。
生きていたのだ。
全身の神経が総立ちになった。
神が自分の祈りを聞き届けてくれたのだ。
一体いつからここで暮らしていたのだろう?
レリアだけでなく、妻の生死まで欺いていたという事実に、シュペリオン公爵に対する怒りがこみ上げた。
しかしそれ以上に、エリザベスの反応が不可解だった。
その時、皇帝の横を誰かが素早く駆け抜けた。
レリアだった。
エリザベスのそばまで駆け寄ったレリアは、彼女をぎゅっと抱きしめて落ち着かせた。
アティアスも驚いてエリザベスをそっと抱きしめた。
「レリア、一体皇帝がどうして、どうして……」
アティアスが言葉を失っていた。
祖父が使用人を通じて連絡したと聞いていたが、その話が伝わっていなかったようだ。
レリアはその事実をひとまず脇に置いて、まずは母の様子を確認した。
だが、どうして母がここまで……。
「……うっ……うう……」
「セナさん、なぜ、どうしたんですか。しっかりしてください……」
「うっ……うう……」
まるで非常に恐ろしいものを目撃したかのようだった。
しっかり抱きしめているのに、彼女の体が小刻みに震えていた。
その瞬間。
ああ、まさか——。
稲妻のようにひとつの考えが頭をよぎった。
レリアは大きく見開いた目で母の肩をつかんだ。
「…セナ様、まさか。まさか….」
「そ、その人が… ううっ… 私を、私を….」
それが最後だった。
取り乱した様子で震えていた母は、そのまま崩れ落ちた。
レリアの手の中で、母の手は冷たくなっていった。
「レリア!」
ゆっくりと首を回すと、遠くから祖父とおじ、友人たちが近づいてくるのがかすかに見えた。
祖父は青ざめた顔で倒れている母を見つけ、急いで中へ運ぶように叫んだ。
叔父が母を背負って城へ向かった。
レリアはまだ動けないまま、ペルセウス皇帝を見つめていた。
少し前のエリザベスとペルセウスのように、レリアも同じだった。
皇帝とレリア、二人は互いだけを見つめ、時間が止まったかのようだった。
「あなた… あなたなの?」
レリアの口から小さな声が漏れた。
唇を噛みしめながら涙があふれた。
全身が熱くなり、火照るようだった。
ペルセウス皇帝は困惑した目で、まだじっと彼女を見つめていた。
まるでこの状況が信じられず、理解できないかのように。
「……エリザベスが……」
彼が小さくうわごとのようにつぶやいた。
レリアは震える体を引きずり、一歩一歩彼に近づいていった。
「あなただったのね… あのとき、あのとき母を斬ったのは……」
「なにを……」
ペルセウスは狂ったように変わっていくレリアの目を見て、言葉を失った。
「中立区域近く、辺境の森の中で──あなたが母を剣で斬ったのよ……」
「………」
レリアの言葉に呼応するかのように、何かの記憶がふと彼の中をかすめていった。
ああ。
足に力が抜け、ペルセウスの体が崩れ落ちた。
本能的にレリアの言葉が何を意味しているのか分かったようだった。
ああ、違うはずだ。
彼は自分の口を塞いだ。
あの日の出来事が脳裏に鋭く突き刺さった。
擦り切れ、血が出るまでえぐられた。
「私には父など必要ありません。」
「これまでもそうやって生きてきたし、これからもきっとそうでしょう。」
「だから陛下に出会ったときも……そうして膝を折って願い出たのです。空腹が嫌だったから。再び枷をはめられて生きるのが嫌だった… 皇城から逃げ出した理由も、まさにそれです。」
「だから私にとってここが地獄のように感じられるのは当然です。こんな状況でも私がここにとどまることを望むのですか?」
レリアの非難のまなざしから逃れるように、彼はその場を離れた。
森の中へと駆け込んだ。
そして見つけたのが、あの暗い扉。
その扉を見た瞬間、これを開ければ過去に戻れるかもしれないと思った。
妻が笑って迎えてくれるのではと期待して、そう思った…。
しかし扉を開けたとき、彼を迎えたのはライディオスの歓迎だった。
「お前の手で兄を殺した天罰を、今受けるのか。」
口をゆがめて笑うその幻影に向かって剣を振った。
ある瞬間、ライディオスの面影が、死んだ妻のようにも見えた。
幻影だと思っていた……確かに幻影だと思っていたのに……でもあまりにも鮮明すぎて、その後ずっとそのときの記憶が彼を苦しめた。
あまりにも鮮明で。
ペルセウスは自分の手を見下ろした。
そのとき手と剣先に付いていた血の跡がよみがえった。
護衛騎士が負傷したのかと思っていたが、違った。
宿所に戻るとすぐに、気を失ったかのように倒れ、目覚めた後に部下たちの報告を聞いた。
森を捜索したが、負傷者は見つからなかった。
あの暗い小屋で血の海は見つけたが、遺体はなかったと。
辺境の村の医者に助けを求めたようだという部下たちの言葉を深く考えずに聞き流したまま、忘れていた。
だが、あの時の出来事…あの時、自分が剣で斬ったのは…ライディオスではなく……
「あなただったんだ、あなたが自分の手で直接斬ったのよ!」
レリアがペルセウスの服の襟をつかんで揺さぶった。
絶望に満ちた目と声が鋭く突き刺さった。
ペルセウスは到底信じることができなかった。
柄を下ろすと、手が血まみれだった。
あの日、手と剣先に付いていた血痕が幻のようによみがえった。
「違う、この血は……。しがみついていたその血が妻のものだったなんて。」
一瞬で吐き気が込み上げてきた。
「違う、ダメだ……私は……!」
息が詰まった。
ペルセウス皇帝は見開いた目で激しく震えた。
遅れて皇帝の側近たちが駆けつけた。
彼らはたとえ当事者であっても、皇帝の狂気が爆発するのではないかと恐れた表情をしていた。
皇帝の目から血のように赤い涙が流れた。
側近たちの心配とは異なり、幸いにも彼は苦しみの呻き声をあげながら
その場で意識を失った。
「陛下!!」