メイドになったお姫様

メイドになったお姫様【121話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【メイドになったお姫様】まとめ こんにちは、ピッコです。 「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

121話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 教養と知識

皇后主催の宴が始まった。

巨大な宮殿の扉が開かれ、華やかに着飾った貴族の令嬢たちが次々と入ってくる。

四人の皇妃たちから招待状を受け取って来た女性たちは、花のように美しく、宝石のように輝いていた。

まともな男なら誰でも心を奪われ、恋に落ちてしまいそうなほどに。

だが——その令嬢たちを推薦するよう四人の皇妃に頼んだ当の皇后の眼差しは、冷え切っていて、まるで温度を感じさせなかった。

「花のような女性がいくらいようと、ラシードは欠片ほども興味を示さないでしょう。」

皇后は自分の息子のことをよく理解していた。

ラシードは気難しい。

どれほどの美貌を持つ女性でも、帝国屈指の名門の出でも、輝く知性や春風のような穏やかな気品を備えていたとしてもラシードの心を奪うことはできない。

(心どころか、視線ひとつすら向けないでしょうね。)

それを十分に承知していながら、あえてこの宴を開いた理由があった。

皇后は目を伏せ、静かに問いかけた。

「ラシードとシアナが一緒に出席すると聞いているけれど?」

皇后の傍らに立っていたイヴリンが、こくりと頷く。

宴には決して出ないと断言していたラシードに対し、皇后はまるで一歩引いたような口調で、穏やかに言葉を続けた。

「あなたが望むなら、シアナと一緒に出席しても構わない。」

ラシードはあっさりとその提案を受け入れた。

(シアナにすっかり惹かれているのだから、きっと良い機会だと思ったのでしょうね。)

自分が選んだ女性を人々に見せる場になる、と。

その単純な考えの先に、シアナがどんな目に遭うかも知らずに。

(どれほど礼儀正しく優れていようと、所詮はただの侍女。)

華やかで高貴な令嬢たちを前に、シアナは自分と並ぶことすらできず、身をすくめるだろう。

そしてやがて、思い知る。

(私は皇太子殿下にふさわしくない人間なんだ——)そう感じるように仕向ける。

それが皇后の狙いだった。

シアナが疲れ果て、自らラシードのもとを去るように。

だが皇后は目を大きく見開き、宴の場に現れたシアナを見つめた。

長くほどかれた蜜色の髪。

わずかに伏せられた目元の下で輝く、エメラルドのような瞳。

淡い黄色のドレスをまとい、上品に施された化粧。

その姿は、誰が見ても心を奪われるほど華やかな美しさを放っていた。

——それだけではない。

「高貴なる皇后陛下にご挨拶申し上げます。このように素晴らしい宴へお招きいただき、誠にありがとうございます。」

両手でドレスの裾をつまみ、優雅に礼をする所作は、非の打ちどころがないほど洗練されていた。

皇后は思わず言葉を失った。

(この子が侍女でありながら、礼儀に長けているのは知っていた……。だが、ここまで完璧だなんて——)

驚きを隠せず、ただシアナを見つめることしかできなかった。

そのとき、隣にいたラシードが口を開いた。

「母上、早く挨拶を受けてください。シアナの小さくて丸い頭が落ちてしまいそうです。」

「……っ!」

あまりにも突拍子もない言葉に、皇后は思わず言い返しそうになった。

だが人前で取り乱すわけにもいかず、必死に感情を抑えながら短く答える。

「……ええ。」

まるで待っていたかのように、シアナは優雅に腰を伸ばした。

淡い黄色のドレスをまとい、柔らかく微笑むシアナ。

そんな彼女を、愛おしげに見つめるラシード。

その光景に、皇后の胸はざわついた。

(なんてこと……)

込み上げる感情を押し殺しながら、皇后は手を軽く振る。

「客人たちがお前たちに強い関心を示している。行って相手をしておやりなさい。」

もちろん、それは純粋な配慮などではなかった。

どこまで恥をかかせられるか、試してやろうというつもりだった。

(見た目は侍女でも飾ればどうにかなる。礼儀も教えれば身につく。でも、社交の場での会話だけは別。)

貴族たちの前でも引けを取らない教養と知識、そして堂々とした振る舞い。

それは短期間で身につくものではない。

(無理に入り込もうとして、結局は恥をかくだけ。そもそも、入り込めるのかしら?)

——皇后の予想通りだった。

人々はシアナに近づいてきた。

だが、その視線はどこか値踏みするようなものばかり。

「高貴なる皇太子殿下にご挨拶申し上げます。クロイテン伯爵家のレイチェルと申します。」

レイチェルは華やかに微笑み、ラシードに優雅に頭を下げた。

だが、その動きは自然に——まるで当然のように——ラシードの隣へと寄っていく。

ラシードはゆっくりと口を開いた。

「クロイテン伯爵家の庭園は帝国でも名高い。春になれば、一面に咲き誇るチューリップがまるで絵画のようだと聞いている。」

静かな声だったが、その場の視線が一斉に集まった。

レイチェルは一瞬、目を見開いた。

まさか皇太子自ら話を広げるとは思っていなかったのだ。

ラシードはそのまま続ける。

「シアナが興味を持つのも無理はないな。機会があれば、ぜひ招いてやってほしい。」

その言葉は穏やかだったが、意味ははっきりしていた。

——シアナは、自分の隣に立つにふさわしい存在だと。

ざわり、と空気が揺れた。

先ほどまでシアナを軽んじていた貴族たちの視線が変わる。

戸惑いと、探るような色が混ざっていた。

レイチェルは一瞬言葉に詰まり、すぐに優雅に微笑みを取り戻した。

「……もちろんです。喜んでご案内いたしますわ。」

だが、その声の奥にはわずかな動揺が滲んでいた。

シアナはそんな様子を横目に見ながら、小さく息を吐いた。

(助けてくれた……)

胸の奥が、ほんの少しだけ温かくなる。

レイチェルを見ながらそう言った。

「機会があれば、私の“子リス”と一緒に、あなたの領地に招いてくれると嬉しい。」

「えっ!?」

レイチェルは目を大きく見開き、思わず声を上げた。

ラシードは次期皇帝に最も近い存在。

彼に取り入ろうとする貴族は後を絶たない。

だが当の本人は社交の場にほとんど顔を出さず、縁を結ぶこと自体が難しい人物だった。

そんなラシードが、自ら訪問したいと口にしたのだ。

——この機会を逃すわけがない。

レイチェルはすぐに表情を整え、優雅に微笑んだ。

「殿下がお望みのとき、いつでもお越しくださいませ。クロイテン伯爵家は、殿下と……」

一瞬だけ言葉を区切り、ラシードの隣に立つシアナをじっと見つめる。

そしてにっこりと微笑んだ。

「殿下の“子リス様”も、心より歓迎いたします。」

「まあ、嬉しいこと。」

レイチェルの頬がふわりと緩んだ。

先ほどまでの警戒や打算の色は薄れ、純粋に褒められたことへの喜びがにじむ。

「よくお分かりになりますわね。この香り、最近とても評判なんですの。」

シアナはにこりと微笑んだ。

「ええ、とても上品で……甘すぎず、でも印象に残る香りです。きっと多くの方に好まれると思います。」

その言葉は決して大げさではなく、聞く者の心を自然とくすぐる絶妙な褒め方だった。

レイチェルは思わず一歩、シアナに近づく。

「あなた、本当に面白い子ね。どこでそんな言葉を覚えたの?」

「本で読んだり、少し観察したり……です。」

控えめな返答だったが、その場にいた貴族たちは思わずシアナを見直した。

ただの“侍女”ではない。——会話の間合いを知っている。

ラシードはそんなやり取りを横で見ながら、わずかに口元を緩めた。

(やっぱりな……)

シアナはただ守られるだけの存在ではない。

自分の力で、この場に立っている。

そしてその事実に、誰よりも早く気づいたのは——他でもない、彼自身だった。

シアナの素直な褒め言葉に、女性は思わず頬を染めた。

柔らかく和んだ空気の中、ラシードが一言添える。

「私の“子リス”の鼻をここまで喜ばせるとは、相当な品だな。アイリス男爵家の香水、種類ごとに皇宮へ届けてくれ。」

「……えっ!?」

女性は驚きに目を見開いた。

皇宮に納める——それだけで価値は跳ね上がる。

貴族社会において、これ以上ないほどの“お墨付き”だった。

つまり今の一言で、アイリス男爵家の香水事業は大きく飛躍することになる。

女性は込み上げる興奮を抑えながら、すぐに深く頭を下げた。

「光栄に存じます。特に“子リス様”にお似合いになる香りも調合し、共にお届けいたします。」

「ふふ……楽しみですね。」

シアナは嬉しそうに微笑んだ。

その無邪気な笑顔に、周囲の空気がさらに和らぐ。

——ただのやり取りのようでいて、一つの商家の未来が大きく動いた瞬間だった。

誇らしくなるほど明るい笑顔だった。

会話がこのように進んでいくにつれ、次第に多くの人々がそっとラシードとシアナのもとへ近づき始めた。

最初は、この機会を借りて一言声をかけるのも難しかったラシードと話すことが目的だったが、気づけば皆同じことを考えていた。

「子リス様、かわいい。」

もちろん、大勢の客の中の一部に過ぎないが。

それでも、依然として多くの者がシアナに対して敵意を抱いていた。

円を描くように集まった女性たちは、人々に囲まれて笑っているシアナを横目に見ながら、ひそひそと囁いた。

「侍女だからかしら、ずいぶんとおべっかが上手ね。」

「まったくですわ。皇太子殿下の寵愛のおかげであの場にいるくせに、それを恥じる様子もないみたいで。」

今すぐにでもシアナに近づいて、侍女のくせにどこで貴族の真似を覚えたのかと皮肉を言ってやりたかった。

しかし、シアナの隣にいるラシードのせいで、それは叶わなかった。

しかもラシードは、ただそこに立っているだけではない。

その視線は終始シアナの顔に向けられており、シアナが動くたびに、彼の体も自然とそれに合わせて動いていた。

どんな鈍い人でも、『私はこの女性に夢中です。とても好きなんです。』と全身で語っているのが分かるほどだった。

だからこそ、女性たちは余計に面白くなかった。

帝国の多くの女性たちがそうであるように、彼女たちもまたラシードに想いを寄せていたからだ。

「殿下はいったい、あの侍女のどこがそんなにお気に召したのでしょうね。」

もちろんシアナは、美しい容姿をしており、侍女とは思えないほど所作も優雅だったが、それだけで高貴な血を引く皇太子を虜にできるはずがなかった。

「平凡な侍女が殿下を惹きつけられる理由なんて、何があるっていうの?『私は他の世俗的な貴族令嬢とは違います。殿下を心から愛しています』なんて言って告白でもしたんじゃない?顔が純真そうだから、そういう台詞も似合いそうだし。」

「それとも、はしたなく服でも脱いで、いやらしい笑みを浮かべて誘惑したとか?」

もしシアナが聞いていたら、「違いますよ!?私がされたんですけど!?」と叫びたくなるような言い草だった。

だが、どれだけシアナを貶めるような話を並べても、胸の中のもやもやは消えなかった。

そんな中、一人の女性が「あっ」と何か思いついたように口を開いた。

「ねえ、私たち“あれ”をやってみない?」

その言葉に、集まっていた女性たちの目がすっと鋭くなった。

鋭く光った。

シアナは目を大きく見開いた。

耳に入ってきた令嬢たちの声のせいだ。

シアナから少し離れた場所にいた令嬢たちは、扇子を揺らしながら会話をしていた。

だが、彼女たちの話している言葉はまったく聞き慣れないものだった。

「ÆDHIL LØDHP ÆDHIL LØDHP。」

「LØDHP DHIL LÆD ÆDÆD ØDHP。」

シアナの隣にいたラシードがぼそりと呟いた。

「グランシア語だ。」

グランシア語は、はるか昔に滅びた古代国家で使われていた言語で、現在では使われていない。

しかし貴族たちは教養の一環としてグランシア語を学び、時折それで会話することもあった。

(たいていは、自分たちの知識をひけらかしたくて、ろくに分からない時に使うものだけれど……今はそんな単純な目的ではないでしょうね。)

シアナは、彼女たちの意図を一瞬で見抜いた。

(どうにかして私に恥をかかせたいのね。)

やはりシアナの考え通りだった。

ラシードの隣に立ち、唇をきゅっと結んだシアナを見て、令嬢たちはくすくすと笑った。

「私たちが何を話しているのか、気になって仕方ないでしょう?」

「これがあなたと私たちの差よ。ここはあなたのような卑しい者が入り込む場所じゃないの」

「話の流れが分かったなら、さっさと去りなさい。」

――しかし、その直後、思いもよらないことが起こった。

シアナがラシードを見つめ、口を開いたのだ。

「ØDHP DHIL ÆD PÐH IJL ÆDÆD ØDHP.(殿下、さすが帝国の貴族の方々はお見事ですね。これほど難しいグランシア語を流暢にお使いになるなんて)」

これ以上ないほど完璧な発音だった。

ラシードは舌を刺されたように目を見開き、口元をゆっくりと持ち上げた。

「ÐÆDØÐH ÆDØIJL IJL ØDH ÆDØIJÐØÐ Ø IJØDH.(そうだな。厳しい教師に鞭で打たれながら覚えた言葉だが、こんな場所で使うことになるとは思わなかった)」

シアナは同意するようにくすりと笑った。

というのも、シアナもまた、あれこれと無遠慮に教え込んできた継母のおかげで身につけた言葉だったからだ。

微笑むシアナを優しく見つめながら、ラシードは続けた。

「ØDH ÆDØIJLØDH, ÆDØIJ? IJL……(それにしても、どうして急にこんな真似を?退屈だったのか?それとも……)」

ラシードの視線は、先ほど会話していた貴族たちの方へと向けられた。

「ÆDØIJL ØÆDØIJ IJ?(私の“子リス”を試そうというのか?)」

「……!」

その瞬間、ラシードと目が合った令嬢たちの心臓がどくりと跳ねた。

こちらを見つめる紫の瞳は、ぞっとするほど冷たかった。

そんなラシードの背を軽く叩き、シアナは目元をやわらげて言った。

「お客様に怖い顔を見せてはいけません、殿下。」

氷のように冷えきっていたラシードの視線が、一瞬で春の日差しのようにやわらいだ。

「……ああ。」

その様子を見た人々は、まるで石のように固まってしまった。

それほど衝撃的な光景だった。

この場にいる誰もが、ラシードがシアナにどれほど深く惚れ込んでいるかを思い知らされた。

驚きに満ちた表情の人々を見渡しながら、シアナは口元をふっと緩めた。

(この場に来た甲斐があったわね。)

シアナがここへ来たのは、単に皇后に呼ばれたからだけではなかった。

皇后の神経を逆なでするためではなかった。

人々に、ラシードと自分の関係を見せつけるためだったのだ。

(そして、今日の宴で私が手に入れるものは、それだけじゃない。)

シアナはそっと視線を送った。

その視線を受け取ったのは、向こうに立っていたグレイス皇女だった。

グレイスは軽くうなずくと、隣にいた第三皇妃ライラに何かを耳打ちした。

ライラ皇妃の瞳がきらりと光り、すぐに優雅に歩き出した。

彼女が向かった先は、宴会場の一角に用意された席で、貴族たちと歓談していた皇后のもとだった。

ライラ皇妃は、猫のようにしなやかに細めた目元をやわらかくほころばせながら、口を開いた。

「皇后陛下、私は本当に驚きましたわ。」

ライラ皇妃は、理由もなく軽々しく皇后に話しかけるような人物ではない。

だからこそ皇后は、わずかに警戒しながら問い返した。

「何のことだ?」

「シアナという侍女、心配していたのが嘘のように、とても立派なお嬢様ではありませんか。美しい容姿に完璧な礼儀、さらには貴族たちと会話を交わす力量まで。本当に感嘆せずにはいられません。」

その瞬間、皇后の片眉がぴくりと上がったが、ライラは気にも留めず続けた。

「それに何より、あれほど他の女性には冷淡だった皇太子殿下が、あのように優しい眼差しでご覧になっているなんて……。もしかすると、皇太子妃がもう決まっているのではないかと思ってしまいますわ。」

「ライラ皇妃!」

ライラはわざとらしく小さく悲鳴を上げた。

「突然お声を荒げられて、驚いてしまいましたわ、皇后陛下。」

ライラのとぼけた様子に、皇后は眉をひそめつつ声を整えて言った。

「あなたがあまりにも軽率なことを言うからでしょう。」

「軽率、でございますか?」

「そうね。」

ライラ皇妃は似つかわしくないほど冷ややかな表情を浮かべた。

「そのようにお感じになられたのであれば、申し訳ございません。私はただ、皇后陛下が皇太子殿下をどれほど深く愛し、大切にされているか――普段はなかなか表に出されないそのお気持ちが、私と同じなのではないかと思い、つい口にしてしまったのです。」

その言葉で、ようやく皇后は周囲から向けられている視線に気づいた。

会場にいる多くの人々が、彼女の様子をじっと見つめている。

その視線に込められていた感情の大半は、ラシードが侍女と親しげにしている様子を見て、皇后がどれほど気を悪くしているのか――それを案じるものだった。

しかし一方で、ライラ皇妃の言葉にうなずく者も少なからずいた。

もし皇后が、息子を心から愛し、下の者にも慈しみを向ける人物であるならば――その心が揺らいでもおかしくはない、と。

皇后はこめかみに鈍い痛みを感じながら、唇を結んだ。

「ラシードの気持ちは分かるわ。あの二人を宴に招いたのも、その優しさゆえでしょう。けれど、私が許容できるのはそこまでよ。」

「そうでございますか?」

眉を下げたライラ皇妃の問いに、皇后はきっぱりとうなずいた。

「ええ。いくら淑女としての教養を身につけていようと、所詮は出自のはっきりしない侍女。そんな者を、尊き皇太子妃の座に据えることはできないわ。」

ここで引けばよいものを、ライラ皇妃はさらに一歩踏み込んだ。

「では、もしシアナが侍女ではなく、相応しい身分を持っているとしたら――皇太子殿下の伴侶としてお認めになるのですか?」

皇后にとって、このやり取りはあまりにも不快だった。

周囲から向けられる視線――それは、彼女が他の権力者の母親とは違うのではないか、という妙な期待を含んだものでもあった。

一刻も早くこの会話を終わらせたかった。

だから、心にもない返答をした。

「そうね。もしそうだとしても、私が反対する理由はないでしょう。」

その瞬間、ライラ皇妃の口元がわずかに吊り上がった。

まるで魚をくわえた猫のように。

ライラは目を輝かせて問いかけた。

「ですが、皇后陛下。こうしてお話ししていると、ふと気になってしまいますの。シアナは外国人だと聞きましたが、故郷ではどのような身分だったのでしょう?」

実のところ、皇后はすでにシアナの身元調査を終えていた。

シアナは、帝国に滅ぼされた小国クラティンの没落した商家の娘だという。

だが皇后は、自分がその調査を行ったことを悟られたくなかったため、あえて曖昧に答えた。

「中級の侍女として働いているのだから、平民の出でしょう。」

宮中にいる下級侍女や中級侍女の大半は平民だ。

貴族は上級侍女として働くのが一般的で、まれに貴族が中級侍女になることもあったが、極めて珍しく、すぐに噂になるほどだった。

しかし、ライラ皇妃は納得いかない様子で首をかしげた。

「これほど礼儀正しく、貴族とも対等に会話できるだけの教養を持つ者が平民だとおっしゃるのですか?」

「平民の中にも、教育によって一定の水準に達する者は多くいます。」

「それでも、もしかすると私たちの想像以上の家柄かもしれませんわ。この場で確かめてみてはいかが?」

「何ですって?」

皇后が目を見開いたまま言葉を発する前に、ライラ皇妃は侍女をラシードとシアナのもとへ向かわせた。

しばらくして、ラシードとシアナが皇妃と皇后のもとへやって来た。

まるで呼ばれるのを待っていたかのように。

その時点で皇后は、何かがまずい方向に進んでいると感じた。

しかし事はあまりにも一瞬で進み、止める暇もなかった。

険しい表情の皇后をよそに、ライラ皇妃が口を開いた。

「大したことではございません。皇后陛下とお話ししているうちに、少し気になることがありまして、お二人をお呼びしましたの。」

ライラの視線がシアナへ向けられる。

「シアナ様は外国から来られたのですよね?」

「はい、そうです。」

「どこのご出身ですの?」

――クラティン王国。

だがシアナは、皇后の想定とは異なる答えを口にした。

「アシルンド王国です。」

皇后は目を見開いた。

ライラ皇妃が尋ねた。

「平民でしたの?」

――しかし今回も、シアナの答えは皇后の予想とは違っていた。

「いいえ。」

「では、貴族でしたの?」

「いいえ。」

皇后の顔が険しく歪む。

シアナは澄んだ声で続けた。

「私はアシルンド王国王室の第一王女です。」

その瞬間、ざわめいていた会場が静まり返った。

そして次の瞬間、爆発したかのような騒ぎになった。

 



 

 

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