こんにちは、ピッコです。
「言葉遣いには気をつけてください、聖女様!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
21話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 完璧すぎる先回り
「ここ、壁が動いています」
「壁が?」
「はい。どうやら秘密の通路みたいです……」
「ところで、さっきの二人、どうしてここを確認しなかったんだろう?」
『ああ、職員たちも知らない通路なのか?』
どうやらそのようだった。見たところ、館長はこの迷路を改造したらしい。職員たちさえ認知していない隠し通路が存在していても、何の不思議もなかった。
私たちは息を潜め、壁の向こうに広がる暗がりを進んだ。
そして、たどり着いた場所は――
『ここは何だ……』
まるで牢獄だった。
蟻の巣のように狭い部屋が隙間なく並び、その中に無数の人々が横たわっている。
「うははは! うぅ……うぅ!!」
「た、助けて……誰か助けて……!」
「イヒヒヒ! 死ね、死んでしまえ!」
あちこちから、正気を失った狂気じみた叫び声が鼓膜を刺す。
人々は皆、焦点の定まらない虚ろな目をしており、その全身はどす黒い気配に覆われていた。
まさにミッションが言っていた「バグ」に侵された者たちの姿――そして、私が夢の中で目にした、あのゾンビたちのようでもあった。
『黒い気配が、まるで霧みたいに……』
これが不運の塵の次の段階、「不幸」という状態なのだろうか。
胸騒ぎを覚えた私は、そっと隣のヒルデオンを振り返った。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……その、お体の具合は大丈夫でしょうかと思いまして」
「え?」
「背中がむずむずするとか、心の奥底から黒い衝動が湧き上がってくるとか……何かおかしな感覚はありませんか?」
「いいえ。特に何もありませんよ」
「……それならよかったです」
ふぅ、と小さく胸を撫で下ろす。
安堵しつつ再び周囲を見回していると、ふと足元に転がっているものが目に入った。
鮮やかな青い丸薬だ。
『これがあの薬……?』
この惨状を見る限り、彼らがこんな姿に変貌してしまった原因は、間違いなくこの薬と深い関係があるはずだ。
私は手早くそれを拾い上げ、ポケットへ押し込んだ。これで二つ目の証拠を確保したことになる。
「この人たちは全員、伝道布教団の被害者なんですよね?」
「そうでしょうね。……本当に許せません」
漏れ出た声を聞くだけで、ヒルデオンの中に燃え上がる強い怒りが伝わってきた。
「とにかく、あまり時間がありません。神託が言っていた『浄化しなければならない人たち』とは、この人たちのことに違いないわ。人数が多いから、急いで浄化しないと」
「方法はあるのですか?」
「はい。私が聖水を振りかければ大丈夫です」
私は魔法のポーチに手を差し入れ、一瓶の聖水を取り出した。
先ほどミッションから手渡されたものだ。
『それにしても、フェズブリアって一体なんなの……』
まさか聖水が、洗練されたスプレーボトルに入っているとは思いもしなかった。見た目だけなら、まるで高級なルームフレグランスのようだ。
まあ、そのおかげで格段に撒きやすそうではあるけれど。
『あ、こうなったなら……ここで使ってみようかな?』
良いアイデアを思いついた私は、作業で両手を使うため、繋いでいたヒルデオンの手をそっと離した。
「あ……」
彼は小さなため息をつき、離れた私の手をじっと見つめた。
まるで、約束を破られてしまうのではないかと不安がっている子どものようだ。
私は「大丈夫」という気持ちを込めて、素早く彼の腕に自分の腕を絡めた。
驚いたように、彼の体がぴくりと強張るのが伝わってくる。
「両手を使いたいので、少しだけこのままでいさせてくださいね」
「……あ、お好きなように」
私の取って付けたような言い訳に、ヒルデオンは少し照れたように頷いて答えた。
私は手際よく準備を進め、聖水を散布する態勢を整えた。
「準備はできましたか?」
「はい。では、始めましょう」
もう一度彼と腕をしっかり組み直し、私たちは足早に動き出した。
幸いなことに牢扉には格子窓がついていたため、中の人々に聖水を吹きかけるのはそれほど難しくなかった。
シュッ。
「うわっ!? な、何だ……!?」
シュッ、シュッ。
「お前、何を……うわああっ!」
顔面に勢いよく水を浴びせられた人たちが、正気に戻ったかのように困惑の声を上げる。
そして時間が経つにつれ、聖水を浴びた者たちは徐々に興奮を鎮め、穏やかな落ち着きを取り戻していった。
その身を包んでいた黒い粉末のような気配も、一緒に霧散していく。
『これで薬そのものが解毒されるわけじゃなさそうだけど……』
おそらくバグが消去され、一時的に精神状態が安定したのだろう。
<隠しミッション:不幸を取り除け!>
― ミッション進行度:35%…… 43%…… 52%……
・
・
― ミッション進行度:82%
残っている牢も、あとほんのわずかだ。
『はぁ……ただ撒いて回るだけでも結構大変……』
額に浮き出た汗を拭い、小さく息を吐き出す。
「私が代わりにやりましょうか?」
あまりに疲れて見えたのか、ヒルデオンが心配そうに覗き込んできた。
本当にどこまでも優しい人だ。
けれど、こればかりは誰かに任せるわけにはいかない。
「浄化は、私にしかできないんです」
「そうですか……浄化は、あなたにしかできないことなのですね」
「はい。だからヒルデオン様は、見張りに集中してください」
彼の優れた五感を頼りに、周囲を警戒してもらうのが一番の役割だった。
「外はまだ騒がしいですか?」
「はい。もうすぐここにも人が押し寄せてくるかもしれません」
「それは大変……急がないと」
侵入者の存在に気づいた職員たちが、館内を躍起になって捜索しているようだった。
幸い、まだこの隠し部屋まではたどり着いていないが……。
『私たちが外で見つからなければ、間違いなくここも捜索される』
その前に終わらせなければ。私は必死で聖水を振り撒き続けた。
<制限時間:00:03:12>
ふぅ、と息を漏らす。残り時間はわずか3分。
シュッ。
「うっ……!」
ついに、最後の一人まで浄化を終えた。
<隠しミッション:不幸の除去!>
― ミッション達成率 100%!
【条件を達成したため、ミッションを完了します】
ピロン!
<ミッション成功!「不幸の除去!」>
倉庫に閉じ込められていた人々のバグを無事に除去しました!
『違法書類の原本』の証拠収集に成功しました!
【成功報酬】
-
評判 +10
-
ボーナスステータス +5
-
レアアイテム(???)獲得
ピロン!
<ミッション成功!「ヒルデオンがバグに侵されるのを防ごう!」>
周囲のバグを無事に除去し、ヒルデオンは暴走せずに済みました!
【成功報酬】
-
ボーナスステータス +5
-
ヒルデオンの呪いの弱体化
-
命の保全
立て続けに視界へ表示された成功通知を目にして、私はようやく深いため息をついた。
『はぁ……本当に心臓がもたないよ』
大きな山場を乗り越えた安堵感から、脱力感が押し寄せる。
これで、もう彼と手を繋ぎ続けている必要もない。
私はそっと組んでいた腕を解き、言った。
「ミッション……いえ、神託の遂行に成功したみたいです」
「もう終わったのですか?」
「はい」
「……もう少し時間がかかると思っていました。ほぼ二時間めいっぱい使うのではないかと」
「ふふ、私も思っていたよりずっとスムーズに進んで驚いているくらいです」
確かに、想像していたよりも遥かに順調だった。
証拠も速やかに手に入り、館内に警戒が敷かれたとはいえ、敵と直接鉢合わせることもなかった。
『でも前世でも、「今日はお客さんが少ないですね」なんて言った日に限って大激広するジンクスがあったっけ……』
なぜ今そんなことを思い出してしまったのか、自分でも分からない。
けれど、いつだって嫌な予感というものは嫌になるほど当たるのだ。
ガタンッ!
「見つけたぞ! 侵入者だーっ!」
荒々しい音とともに扉が弾け飛び、黒服を身に纏った職員たちが雪崩れ込んできた。
どこを探しても見つからなかったため、最後に全員でこの隠し部屋へやってきたのだろう。
「捕まえろおっ!」
目を血走らせた男たちが怒号を上げ、一斉に襲いかかってくる。
だが、私の心には大した焦りはなかった。
さっきまでは制限時間内にミッションを終わらせられるかどうかに必死だっただけだ。
今となっては――
第一印象こそ最悪だったものの、隣にはあのヒルデオンがいる。
どうにでもなるはずだ。
かつてバスティオンで見せたあの時のように、状況は一瞬で、実にあっけなく片付いた。
悲鳴と打撃音が入り混じる惨状の中でも、彼はまるで散歩でもしているかのように平静だった。
あまりの頼もしさに思わず拍手したくなったが、必死でこらえた。今は下手に目立つべきではない。
「……もういないか?」
ヒルデオンが低く呟く。
普段の穏やかな話し方とは明らかに異なる、氷のように研ぎ澄まされた威圧感。
相手もそれを肌で感じ取ったのだろう、かろうじて意識を保っていた数人の顔が青ざめていく。
そのうちの一人が、膝をガクガクさせながら這い上がった。
「うっ……怪物め……だが……!」
「だが?」
男は捨て身の動作で、部屋の隅へと躍り出た。
そこには、無骨な鉄製のレバーがひとつ。
「ふふっ……果たして、これも止められるかな……!」
ちょっと待って。
その、いかにもな悪役セリフは何!?
高笑いの響きまで完璧に三流悪役そのものじゃない。
私が心の中で猛烈にツッコミを入れている間にも、男は狂気じみた力でレバーを引き下ろした。
ゴゴゴゴ……!
重厚な機械音が空間に鳴り響く。
音の正体は、部屋をいくつも仕切っていた鉄格子だった。
ギギギギ……!
不快な金属音を立てて、人々を閉じ込めていた格子が一斉に持ち上がっていく。
それを見た職員は、恍惚とした表情で叫んだ。
「くははは! こいつらは痛みすら感じない兵隊だ! どれだけ殴られようが嬉々として襲いかかってくる! 自分が傷ついていることすら分からないのだからな!」
全く、どうしてこの手の人たちは親切に全部ネタばらしをしてくれるのだろう。
私は彼の体の陰からこっそり顔を出し、尋ねてみた。
「もしかして……あの青い薬のせいですか!?」
「よく分かったな! その通りだ! あの薬は甘美な幻覚を見せる! だがその代わり、薬が切れている間はひたすら苦痛と不幸に苛まれるのだ! 精神の激痛があまりに強すぎて、肉体の痛みなぞ感じなくなるのさ!」
……ご丁寧な解説、ありがとうございます。
『だから夢の中のあの人たちは、ゾンビみたいに群がってきたんだ……』
倒しても倒しても、痛みを感じず起き上がってくる。
ヒルデオンも、薬の被害者に過ぎない彼らを殺すわけにはいかず、剣の腹で防戦一方になるしかなかったのだ。
職員が饒舌に語っている間に、すべての牢の鉄格子が開かれ、無防備な空間となった。
「チッ……」
短く舌打ちしたヒルデオンは、瞬時に私の前へ立ちふさがり、背中を向けた。
「私の後ろにぴったりついていてください。絶対に離れないように」
そう言うと、彼は私の手をとって自分の背後へ庇い込んだ。
『まあ……』
不意の行動に驚きつつも、引かれるまま身を寄せる。
それを見た職員は、くつくつと不気味に笑いながら私たちを指差した。
「さあ、立ち上がってあいつらを始末しろ! 始末できない者には薬は与えんぞ!」
「うおおおおッ!」
職員の煽りに応するように、ひとりの男が牢の奥から猛然と飛び出してきた。
そして――
「……え?」
それだけだった。
飛び出してきたのは、後にも先にもその一人だけ。
しかもその人物すら、ヒルデオンの容赦ない一撃であらぬ方向へ吹き飛ばされ、そのまま気絶してしまった。
『いきなり連携が崩れたわね……』
「こ、これは一体どういうことだ……!?」
さっきまで自信満々に叫んでいた職員が、目を見開いて呆然と呟く。
私はヒルデオンの背中からひょっこりと顔を出した。
「それね、私が全部仕込んでおいたんです」
「何だと……!?」
「こうなると思って、あらかじめ手を打っておいたのよ」
そう、私は聖水の中に睡眠薬を混ぜておいたのだ。
本格的にトウモロコシ畑へ踏み込む前、アイテムショップで購入していた<強力な液体睡眠薬>。
<強力な液体睡眠薬>
液体状の強力な睡眠薬。肌に触れるだけで即効性あり。
※皮膚に直接触れないよう取り扱い注意!
「それって何に使うものなんですか?」
「護身用よ」
即効性があり、離れた場所からでも散布して使用可能。まさに護身用としてお誂え向きの品だった。
『私みたいな薬師には、こういう持参薬が一つくらい必需品なんだから』
万が一の危険に備えて使うつもりだったが、この道具には最初から別の使い道が用意されていたのだ。
隠し部屋に入り、まるで夢遊病者のように彷徨う人々を目にした瞬間――
『今こそ、あの睡眠薬を使う時だ!』
ひらめきが走った。
詳しい仕組みは分からなくても、この農場の主が彼らを都合のいい奴隷として操っていることだけは確実だった。夢の中と同じように「侵入者を排除しろ」という命令で動かそうとするはず。
ならば、ゾンビ化を防ぐ最も確実な方法はひとつ。
『どんな命令も聞こえないくらい、深く眠らせてしまえばいい』
そう考えて、あらかじめ聖水へ睡眠薬を混ぜ込み、全員へ満遍なく振り撒いておいたのだ。
「私、とっておきの効果抜群な睡眠薬を持っていたんです」
「なるほど。そういうことでしたか」
職員への説明より遥かに大雑把な私の解説に、ヒルデオンは納得したように頷いた。
「ま、まったく話にならん……!」
私たちと、床で静かに寝息を立てる人々を交互に見比べ、職員の顔は見る見るうちに土気色へ変わっていく。
男はしばらく脅えるように目を泳がせていたが――
「ひ、ひいいっ! 助けてくれぇえ!」
ついに耐え切れなくなったのか、悲鳴を上げて扉へ向け脱兎のごとく駆け出した。
……が、次の瞬間。
バキッ!!
凄まじい衝撃音と共に、男はまるで見えない壁に弾き飛ばされたかのように逆噴射してきた。
「ぐはっ……!?」
そのまま壁へ豪快に激突し、ダラリと崩れ落ちて気を失う。
断言してもいい。今日見た中で、間違いなく一番派手に吹き飛ばされた大賞だった。
気絶させた手際のスムーズさでも、歴代一位を更新している。
直後、男が飛んできた扉の向こうから、聞き覚えのある人物が姿を現した。
「この男は何者ですか? 急に飛び出してきたので驚きましたよ」
待ちに待った、なんとも頼もしい人物の登場だった。
「それと、警備隊も手配しておきました。こんな夜遅くまで本当にお疲れ様です……。夜勤手当と危険手当、それに特別ボーナスもたっぷり付けてあげてくださいね」
そう言って爽やかに微笑んだのは、ヘスティンだった。
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【不運の「バグ」の浄化とミッション達成】
隠し牢獄で「不運の塵(バグ)」に侵され正気を失っていた人々へ、スプレーボトル状の聖水を撒くことでバグを除去し、限定アイテムや証拠書類の確保とともにミッションを無事成功させた。
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【主人公の機転によるゾンビ化の阻止】
敵の職員が鉄格子を開放して被害者たちを凶暴な兵士としてけしかけようとしたが、事前に主人公が聖水へ混ぜておいた「強力な液体睡眠薬」の効果により、全員を深い眠りにつかせて暴走を完璧に防いだ。
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【ヘスティンの到着と事件の鎮圧】
迫り来る警備兵をヒルデオンが瞬時に退けた後、逃亡を図った悪あがきの職員を駆けつけたヘスティンが一撃で撃退。警備隊の手配も完了し、騒動は無事に解決へと向かった。