こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
51話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- カシスなき旅路の果て
数日後、グリセルダからの連絡が。
彼女が送ってくれた手紙には私が欲しがっていた情報が入っていた。
もしかすると、ノエル・ベルティウムが私に送ったのは母親の髪の毛で、また彼が母親を口実に私を脅迫したことが事実なら、何があってもこのことを後悔させてしまうだろう。
冷めた心を抱いて、グリセルダから届いた手紙を開けてみる。
その中には誰かの名前一つだけが書かれていた。
「・・・!」
自分が今何を見たのか分からない。
目を疑って紙に書かれた名前を確認したが、それが変わることはなかった。
一瞬息をするのも忘れてしまう。
急に体内からぐらぐらする熱が毒のように立ち上がった。
周囲の騒音が一気に静まる。
目の前の黒い文字が、白い紙の上で私を嘲笑うように挑発していた。
あらゆる懸念が嵐のように頭の中で浮上する。
それらは私の体内を掻き回して引っ掻きまくっていた。
しばらく経ってから私は息を深く吸い込んだ。
そして、すぐにそれをゆっくり吐き出し、騒がしかった心を徐々に落ち着かせる。
グリセルダが送ってくれた手紙は、既に私の手の中でぐしゃぐしゃに。
霜焼けのように胸がヒリヒリする。
ノエル・ベルティウム。
確認のためにも、私は彼に直接会わなければならない。
「行くの?」
カシスがペデリアンを去る日。
「行ってくるよ」
彼が別館を出る前に、私たちは短い挨拶を交わす。
「カシス」
私はカシスをじっと見つめながら彼の名前を呼ぶ。
すると、カシスが続く言葉を待つかのように私を静かに見つめた。
「あなたの言葉のように、あの日、私を見つけた人がもしも他の人だったとしても、私はついて行ったかもしれないわ」
ある夜に、カシスが私に言った言葉に対す返事だ。
「けれど、あなたじゃなかったら」
カシスは私に答えを求めていなかったが、私は彼が去る前に言いたかった。
「あの時死なずに今生きていて良かったと、思うことはなかったわ」
その瞬間、カシスの目つきが変わる。
浅はかな波紋が広がる金色の瞳が、ただその中に私だけを盛り込んでいる。
「だから、結局は私もあなたじゃなければ嫌だったってこと」
私はカシスの顔を見ていて、ゆっくりと瞼を下げた。
「私もただ言っておきたかっただけよ」
そして、何気ない口調で呟く。
まるで今私が告げた言葉に何の意味もないというように。
その後、再び彼に視線を合わせてニッコリ笑った。
「じゃ、行ってらっしゃい」
カシスは玄関脇に立って微動だにせず私を凝視する。
「ロクサナ」
さっきの私のように、カシスが私の名前を呼ぶ。
「もしあの日、アグリチェで君を発見できなかったとしても、私はきっと君を見つけただろう」
確信のような断固たる口調の声が耳元に響いた。
私に向かっている彼の瞳もそれだけ真っ直ぐだ。
「これからも、もし君が私の目の前で消えたら、私は世の中の全てを探してでも君をまた探し出すよ」
私の前に近づいてきたカシスは、私を見下ろす。
「だから君は、何でも君の望み通りにしろ」
体がピッタリとくっつく。
カシスは私を抱きしめ、私の耳に唇を当てたまま小さく囁いた。
「私もそうするから」
まるで熱い烙印を押されているようだ。
暖かい温もりが全身を包む。
カシスが何を知ってこのような話をするのか、それとも先ほど私が言った言葉に対するもう一つの返事をしただけなのか分からなかった。
分からなかったけど・・・。
(そっか。私はもう本当にこの人じゃないとダメなんだ)
開いていた窓の小さな隙間に細い糸風が吹いてきたように、本当に突然そんな考えが私の胸に染み込んだ。
やがて私は腕を上げてカシスをギュッと抱きしめる。
当初から彼の元を去るつもりはなかったが、やっぱり私が戻ってこなければならない場所は、この人の側だった。
いつにも増して強く、そんな確信があった。
ペデリアンに来て以来、カシスがこのように席を外すのは今回が初めてだ。
私とこのように長く離れたのも同様に。
そのため、カシスは少し前からほぼ一日中くっついていながら、腫れ物のように活気を吹き込んでくれた。
そのおかげで、私の体調は最上の中で最上だ。
おそらく、このままなら少なくともカシスが戻ってくるまでは問題なく生活できることは明らかだった。
だからこそ、カシスも私を置いてペデリアンを離れることができたのだろう。
そうしてカシスが席を外して、約束した時間が近づいてきた。
私は別館を出る準備を終えて部屋を出る。
そんな私を見て、オリンが近づいてきた。
「散歩に出るのですか?」
「いいえ、今度は少し遠くまで出かけようと思って」
「遠くと仰いますと?」
「ベルティウム」
「・・・え?」
向き合った彼女の目が一瞬で丸くなる。
「招待されたのよ」
すでにジャンヌには状況を伝えてある。
ペデリアンの首長リセルとカシスは一緒にユグドラシルに向かった。
だから彼女に知らせを伝えることは当然だ。
もちろん、だからといってベルティウムから私に送られてきた手紙の内容とか、私がベルティウムに行くことにした本当の目的を話すことはできなかった。
だから、ただベルティウムの首長に招待されて、しばらくの間訪問することにしたという線で状況を説明している。
密かに去ることも出来たが、そのような方法は使わないことにした。
私が黙っていなくなれば、ペデリアンの人々はかなり困惑し、また心配するに違いない。
何よりもカシスに私が彼を置いて去ったと思わせたくなかったのだ。
別館を出る前にカシスが私に見せた態度を思い出した。
彼は自分がいない間に、私がここを離れるかもしれないと思っていたようだった。
それでも彼は、何でも私の望み通りにしろと言ってくれた。
もちろん、それは私をそのまま放置するという意味では決してない。
カシスは私がどこにいようと必ず私を迎えに行くと言った。
彼のその言葉は・・・、何度も振り返ってみても、その度の信じられないほど私を充満させてくれた。
反面、ノエル・ベルティウムが送った書簡の内容を思い出す時は、内側から生臭い笑みが溢れる。
「それでは私も一緒に」
「いいえ、大丈夫よ。ベルティウムから人が派遣されるでしょう」
オリンが同行すると言ったが、ペデリアンの人々をベルティウムに連れていくつもりはない。
しかし、私の拒絶にも、オリンは簡単に諦めなかった。
もう一度自分を連れていくことを勧めるオリンを後にして別館を出る。
「こんにちは。黄の首長であるノエル・ベルティウム様の腹心、ダンテと申します」
その日の午後、群れがペデリアンに到着した。
「いらっしゃいませ、ベルティウムのライオン」
その場には私だけでなく、ジャンヌとシルビアの姿も。
ペデリアンの女主人であるジャンヌが、ベルティウムから訪れた人たちを一番前で迎える。
「ベルティウムでは、今回のユグドラシルの会議に出席しない予定のようですね」
「はい、私たちの主張は元々そのような公式的な席とは縁がありませんから」
群れの代表と見られる白髪の青年は、私たちに向かって丁寧に挨拶した後、話し始めた。
リセルとカシスは5家門の集まりのためにユグドラシルに向かったところだが、黄の首長はのんびりと私を招待しているので、ジャンヌが疑問を持つのも当然のことだろう。
しかし、ダンテの言葉を聞いてすぐに納得するのを見ると、やはりノエル・ベルティウムは普段からそのような集まりに顔を出さなかったようだ。
ダンテはジャンヌとの短い挨拶を終えて、私に視線を動かした。
「招待に応じてくださって、心から感謝しています、ロクサナ様。ベルティウムまで快適で安全にご案内いたします」
私の状況を知っているのか、彼は私をアグリチェ嬢とは呼ばなかった。
自分をダンテと紹介した男は、以前のユグドラシルでの和合会の時、ノエル・ベルティウムとともに宴会場に登場した人物だ。
しかし今考えてみたら、その時以外にも一度だけ顔を合わせたことがある。
あの日、ユグドラシルを離れる前に私を訪ねてきて花を渡した男のようだが・・・。
私は心の中で考えていることを表に出さず、口元を上げた。
「黄の首長が直接書簡を作成し、招待の意思を明らかにしてくださっただけでは足りず、このように腹心を送って改めて招待してくださるので、どれほど感謝すべきことでしょうか」
私の笑顔を見たダンテの目が一瞬細くなる。
私の言葉の中に棘があるという事実を知っているはずだから当然のことだろう。
実際、今の状況はノエル・ベルティウムが最初に予想していたものとは非常に違うはず。
そもそもベルティウムでは秘密裏に私に会おうとしていた。
彼らの計画によると、私がペデリアンの中から抜け出すことも、ベルティウムの人たちと接触することも、他の人たちには知られないうちに密かに行われなければならなかった。
けれど、私がどうして彼らの望み通りに動かなければならないのか。
グリセルダの書簡を見て確認する点があるからベルティウムを訪問することに決めたが、だからと言って私が無闇に彼らの意見に従うと考えているならば、それは大きな誤算だ。
まず私は、ノエルが望むこととは反対にベルティウムの招待を公式的なものにした。
このようにペデリアンに直接人が来たことも、私がノエル・ベルティウムに要求したことだ。
無条件に自分の意見に従うと思っていたノエルからすれば、私の対応は予想外だっただろう。
しかし、「私の意思に従わなければベルティウムには行かない」と強く言うと、ノエルは「分かった」という返信を送った。
彼はよっぽど私をベルティウムに呼び込みたいのだろう。
「私のために珍しいプレゼントを準備されたんですって?期待していますね」
そうして、ノエルは私のいるペデリアンに公式的に人を送り、私を来賓として迎えることになったのだ。
「私のために珍しいプレゼントを準備されたんですって?期待していますね」
微笑ましい表情でダンテに言った。
けれど、彼を見る私の視線はこの上なく冷たいに違いない。
ダンテは私の言葉に丁寧に頭を下げる。
「おそらく失望しないでしょう」
そうしなければならない。
ノエル・ベルティウムは非常に大きな仕事をやり遂げた。
私を久しぶりに直接動かせる気になったから。
だからこそ、もし彼が私を失望させたら、私はかなり腹が立つに違いないだろう。
「ロクサナ。やっぱりお兄様が来たら一緒に行った方がいいんじゃないですか?」
私を見送りに来ていたシルビアが心配の消えない顔で見つめる。
小さく囁く声には、たくさんの心配が込められていた。
けれど、そこにカシスを連れて行くことはできない。
あくまでもこれは私の個人的なことだったし、また私のせいで彼とペデリアンの人々に迷惑をかけたくなかったから。
私はシルビアに安心するように小さく笑う。
「大丈夫よ。そんなに長くいるつもりはないから」
それでもシルビアはまだ諦めていないのか、再び唇を震撼させた。
けれど、ダンテの言葉の方が早い。
「申し訳ありませんが、ペデリアン様。私たちの首長が招待したのは、ロクサナ様だけです」
その瞬間、シルビアの眉毛がうごめく。
私を説得しようとする哀れな表情をダンテに向けた瞬間、彼女の表情は猛然となる。
これまで私の前ではいつも柔順な顔ばかりしていて分からなかったが、こう見るとシルビアもただ大人しい性格ではないようだった。
確かに、シルビアは幼い頃からお転婆な女性だったわ。
「それでは行ってきます」
出発する前に、私はジャンヌとシルビアに最後の挨拶を残す。
「彼女はペデリアンの大切な方でもありますので、ベルティウムに滞在中は十分に待遇してくれると信じています」
ジャンヌの言葉にダンテは頭を下げた。
頭を下げる前に、彼の瞳に少しの困惑が含まれているのを目撃する。
こうなればベルティウムが私に望むことが何であれ、彼らの行動に規制がかかることは明らかだ。
デタラメなことをするのも難しくなるだろう。
私は内心で冷笑しながら馬車に乗り込む。
そうして私は、カシスのいないペデリアンをしばらくの間離れることになった。
ベルティウムまで行く道は静かだった。
白の魔術師オルカがペデリアンから離れる直前に残した言葉のため、何気に気まずかったが、無駄な杞憂だったのかと思う。
ペデリアンの城門を越えてペデリアンの地から離れた後も、ベルティウムの行列には何の問題も発生しなかった。
それで私は誰にも邪魔されずに一人で考えに浸ることができた。
オルカが私に関心を持っているのは毒蝶のせいだったとしても、ノエルは一体何だろうか?
和合会の日、私を見て鼻血を流しただけでは足りず、その後も腹心を通じて花束をプレゼントした。
それから彼は、私をベルティウムに招待しようと躍起になっていた。
まるで何とか私に会いたくてヤキモキしているかのように。
その部分がおかしい。
「奈落の花」でロクサナ・アグリチェはラントの命でシルビアの男たちを誘惑しようとしたが壮烈に失敗したという。
ところが、なぜ今は私が何をしなくても、このように勝手に拗れるのか全く理解できなかった。
もちろん小説の人物と現実の人物の間の同一性は立証されたことがない。
しかし、どうであれ、私にとっては嬉しくないことだ。
「面倒くさい・・・」
そう思いながら私は窓の外を眺めていた視線を落とす。
たった今ペデリアンを抜け出したばかりなのに、早くも戻りたくなった。
別れたばかりのカシスに会いたい。
おそらくベルティウムに行こうとする私の目的を彼が知っていたら、絶対に私を一人で行かせようとしなかっただろう。
しかし、これは私とアグリチェの問題。
だから彼をここに割り込ませてはならなかった。
出来るだけ早くベルティウムでの仕事を終えて帰ろう。
カシスがユグドラシルから戻る前に。
揺れるカーテンを見て、私は目を閉じた。
再び目を覚ました時、カシスのいるペデリアンだったら嬉しいと思いながら。
「到着しました」
ようやくベルティウムに着いた。
馬車のドアを開けた瞬間、鼻が痛くなるほど甘い香りが真っ先に五感を刺激する。
その次に、白い花びらがドアの隙間に飛んできた。
ドアをもう少し押すと、視界いっぱいに咲き乱れた花々が宙から雪のように舞っている光景が。
四方が一面、地上の楽園のような花の天地だった。
濃い香りが、満開の花々の間から流れ込む。
薄い絨毯のように床に敷かれた花びらを踏んで、私は降りる。
やはり家門ごとに外観にも大きな差があるようだ。
アグリチェがどこか陰湿で閉鎖的な感じだったとすれば、ペデリアンは静かで端正な雰囲気。
一方、ベルティウムはアグリチェやペデリアンとは違った華やかな姿をしている。
「ベルティウムへようこそ、ロクサナ様。訪問を歓迎します」
「ベルティウムへようこそ、ロクサナ様。訪問を歓迎します」
ダンテがそう言うと、いつの間にか近づいてきたベルティウムの使用人たちが列をなして頭を下げて挨拶する。
人々の雰囲気もベルティウムの景観に相応しく、暖かくて活気に満ちていた。
しかし、私は彼らを眺めているうちに、少し眉をひそめてしまう。
「短くない旅程で疲れていると思いますが、とりあえずゆっくり休んでください」
「黄の首長と先に挨拶したいのだけど?」
「夕方にロクサナ様のための歓迎宴会が開かれる予定です。首長はその時に正式に挨拶すると仰いました」
私はその話を聞いて、一旦今は退くことにした。
小さく頷くとダンテがそばにいた使用人たちに目を向ける。
「女中たちが部屋までご案内いたします」
「こちらへどうぞ、お嬢様」
ダンテは後ろに退き、代わりに3人の女性が私に近づいてきた。
この場にいる他の人々と同じように彼女たちも優しく笑っている。
彼らは一様に美しく、もう一つ微妙な違和感を漂わせていた。
私は黙って彼らについて行く。
案内してくれた場所は一目で見ても「とても念入りに飾られている」という気がする部屋だった。
もっと率直に言えば、派手さが過剰で吐き気がするほど。
けれど、どうせここに長く泊まるつもりはなかったから、部屋なんかどうでもいい。
使用人たちが退いた後、私は蝶を呼び入れる。
どんな方法かは分からないが、ノエル・ベルティウムは私がアグリチェを離れてペデリアンにいるという事実をかなり早いうちに突き止めた。
だからもしかしたら私が毒蝶の主人だという事実も知っているかもしれない。
けれど、イヤリングが反応しないのを見ると、部屋に変な細工はしていないようだ。
今、私の耳にかかったイヤリングは今回グリセルダから受け取った物で、もし近くに呪術陣のようなものがあれば察知して効果を減少させる機能を持っていた。
グリセルダの性格は独特で、奇怪な女性だ。
彼女がアグリチェを没落させるのに一助したのも、単純に面白そうだというのが理由だった。
今回もグリセルダはベルティウムとの関わりに、かなりの興味を抱いている様子だ。
おそらく今頃、彼女も私についてベルティウムの近くを彷徨いているに違いない。
いずれにせよ、私としては便利なことだった。
毒蝶たちをベルティウムのあちこちに密かに飛ばす。
私がこんなに会いたくてヤキモキしたのに、夜の宴会の時に顔を合わせようって?
これまで何をしようとしているのか調べるつもりだった。
また、彼が私をここに呼び込むのに利用した餌についても。
もちろん最善の注意を払って。
光沢のある紫色のカーテンを少し開いて窓の外を眺める。
依然として外は武陵桃源といっても信じられるほど美しい風景だ。
しかし、それを眺める私の感情は冷たいだけ。
ノエル・ベルティウムは自分の部屋で着飾っていた。
服を数百着も取り出して着たり脱いだりし、ベルティウムに戻ったばかりのダンテと使用人たちを磨き、自分に最も似合う服装を選びなさいと、それこそ聖火を奮っている。
毒蝶を通じてあまり知りたくないことを知ってしまった私は、思わず顔を歪めてしまう。
その後、他の場所に注意を集中した。
宴会場の見える場所では、さっきダンテが言った通り、歓迎パーティーが準備中のようだ。
彼らは皆、顔に仮面をかぶっている。
他の場所を見てきた蝶々も同じ光景を私に見せてくれた。
ノエル・ベルティウムの部屋にいる人以外は、全員が顔に仮面をつけている。
それを確認して、私は口元を捻って笑ってしまった。
そうね、簡単に知っては駄目ということね。
この辺で十分なようなので蝶を引き入れた。
コンコン。
時を合わせて部屋のドアを叩く音が聞こえる。
「お嬢様、失礼します。パーティーのための準備を手伝いに来ました」
「入って」
間もなくドアが開き、女中たちが部屋に次々と入ってきた。
彼女たちの手には派手なドレスやアクセサリー、靴などが。
人形遊びでもするつもり?
私は内心ヒヤヒヤしながら彼女たちの手に身を委ねる。
当然ながら、私はその全てを身につけるつもりは全くない。
それで結局、一番最初に着てみた白いドレスで決定した。
女中たちはとても残念な様子だったが、私の冷淡な態度に仕方なく諦める。
そのためか、彼女たちはアクセサリーに心血を注ぐ様子だった。
「ではイヤリングもネックレスとペアのものに取り替えます」
「ええ」
装身具の着用を担当した使用人の言葉に、私は単調な声で答えた。
まもなく彼女の手は私の左耳に触れる。
その瞬間、私は眉をひそめて呻き声を上げた。
彼女が手を出した私の耳からは赤い血がポタポタ落ちていた。
-
ベルティウムへの訪問と歓迎
ロクサナはグリセルダから得た情報とノエル・ベルティウムの真意を確認するため、カシスが不在の隙を突いてペデリアンを離れ、公式な招待客として花の溢れるベルティウムへと到着する。
-
毒蝶を使った裏工作
ベルティウムに到着したロクサナは、部屋の安全を確認しつつ毒蝶を放ち、夜の歓迎宴会の準備が進む様子や、服装選びに躍起になっているノエル・ベルティウムの裏の動きを密かに探る。
-
メイク中の不穏なアクシデント
夜の宴会に向けた準備が進む中、使用人たちに身を委ねていたロクサナだったが、イヤリングを付け替えようとした際に耳から出血するという不審な事態が発生する。