こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
52話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 仮面舞踏会
「も、申し訳ありません!」
使用人が直ちに膝をついて謝罪した。
私は冷たい目つきで足元の使用人を見下ろす。
靴と手袋を選んでいた使用人たちも、突然の状況に驚いて固まっている。
「ベルティウムではお客様への接待をこんな風にしているのね。装身具一つきちんと付け替えることも出来ず、あまつさえ体を傷つけるなんて」
頭を下げていた女性が、私の言葉にもう一度謝罪する。
「も、申し訳ありません、お嬢様。私が未熟なせいで、お嬢様の大事な体を傷つけてしまいました。どうかお許しを・・・」
「血を拭くものをちょうだい」
隣で装身具を整理していた使用人が素早くハンカチを手渡してきた。
そのハンカチで血の出ている耳を押さえて止血する。
耳に触ったら血が出るようにわざと出した傷だったので、これ以上彼女たちを責めるつもりはなかった。
「気分が下がったわ。身なりはこの辺にして」
無表情な顔で席を立つと、私の言葉に使用人たちがまだ着用していないイヤリングとブレスレットを片付ける。
「他のものは必要ないから、あらかじめ選んでおいた手袋をちょうだい」
「はい、準備しておきました」
私は手袋をはめた後、装身具を着用していた女中に言った。
「今回は見過ごすわ。次は気をつけるようにして」
「許して下さりありがとうございます、お嬢様」
彼女は私の言葉に安堵したように感謝の意を表した。
私を見上げる顔には喜びと安心の感情が見られる。
それは周囲にいた他の使用人も同じだった。
しかしそれを見た瞬間、さっき外で感じたような奇異な感覚が再び私を通り過ぎる。
私は眉間に皺を寄せて部屋を出た。
「宴会場までは私がご案内させていただきます、ロクサナ様」
部屋の外でダンテが私を待っていた。
彼も私のように宴会に相応しい礼服に着替えている。
ダンテの表情はさっきよりも疲れているように見えたので、さっきノエル・ベルティウムの部屋で見た光景を思い出す。
「ベルティウムはかなり面白い場所ですね」
「そうですか?ノエル様が聞いたら喜ばれると思います」
「ええ、ここまで虚と実の境界にぎりぎりに跨っている場所は見たことがありませんから」
隣で歩いていたダンテの視線が私の横顔に落ちる。
彼は私の言葉に驚いたような気もするし、また少し慌てたような気もした。
「もちろん、私のために用意された贈り物は虚像ではないのでしょう?」
そんな彼を見つめながら、私は唇の先を持ち上げて微笑する。
そのように笑っていても、私の言葉に込められた内容は警告に近かったし、ダンテも私の冷たい目つきを通じてそれに気づいたことは明らかだった。
「こんなに期待しているのだから、せっかく見たのが偽物なら失望も本当に大きいでしょうね」
「それは・・・」
固く閉ざしていた唇を、ダンテはすぐに開く。
「ロクサナ様の眼目で直接判断しなければならないと」
そうして彼と私は黙って視線を交わした。
「その通りね。私が直接判断するわ」
私が先に彼から顔を背け、その後ダンテと私は何の会話もなく宴会場に向かう。
そうしてホールの巨大な扉の前まで到着したとき、ダンテがエスコートしていた私の手を置いて丁寧に挨拶した。
「私はここまで許されております。では、どうぞ中で楽しい時間をお過ごしください、ロクサナ様」
その後、音もなく扉が開き、私はダンテを後にして明るい光の中に一歩踏み出す。
完全に中に入ると、背後から静かにドアが閉まった。
私は目の前の光景を見て、足を止めた。
宴会場の中では軽快な音楽と明るい笑い声が入り混じって波のように強烈にうねっている。
「あははは!」
目の前では数十組の男女がペアを組んで明るく笑いながら踊っていた。
彼らはみんな顔に仮面をかぶっている。
「ベルティウムの仮面舞踏会へようこそ!」
その時、踊るように流麗な動きで近づいてきた誰かが私の前に片膝をつく。
「今日の主人公である美しい淑女の方にプレゼントを」
その様子も、その言葉も、全部が芝居をしているかのように滑稽に誇張されていた。
彼は黒い燕尾服を着て、頭全体を包むオウムの仮面をかぶった男性。
彼が私に差し出したのは蝶の形の仮面。
無表情のまま受け取ると、オウムの仮面をかぶった男が立ち上がって再び誇張した挨拶をした後、人々の波の中に包まれて消えた。
仮面を壊したい衝動を抑え、私は仮面を顔につけた。
この笑えもしない寸劇に付き合っている理由は、私もノエル・ベルティウムに気になることがあったため。
そうでなければ、このような不快な空間に足を踏み入れるはずがない。
ベルティウムの城は楽園のように美しかったが、ここには奇妙な違和感が霜のように敷かれていた。
私はその違和感の正体に気づいている。
この城にいる殆どの人は人形だった。
私を迎えてくれた人たちも、また私の装いを手伝ってくれた使用人たちも、そしてこの仮面舞踏会場で今踊っている人たちの大部分、いや、もしかしたら全部だ。
彼らは身の毛がよだつほど人間と同じ外見をしていたが、どこか妙な不自然さを持っている。
彼らは最善を尽くして人間の真似をしているように見えた。
しばらく興に酔って踊っていた人たちが一人二人と私の前で別れ始めていく。
まるで私に道を開いてくれているように。
彼らの望み通りに道の端にいる相手に向かう。
「ルナ」
ついに現れたホールの中央には黒い山羊の仮面をかぶった男性が。
「こうしてまた会えて本当に嬉しいよ。その間どれだけ会いたかったか分からない」
白い燕尾服を着た彼が両腕を広げる。
「私の王国、ベルティウムへようこそ!」
美声の声には胸いっぱいの喜びが込められていた。
まもなく仮面を脱いだ男はすでに予想したように、ノエル・ベルティウムだった。
明るいオレンジ色の髪がシャンデリアの明かりの下で蜜が流れるように輝いている。
黄緑に近い明るい緑色の瞳にも、彼の声に込められたような感情が溢れるように満ちていた。
「ルナって?」
私は首を斜めに傾けて反問する、
書信には私の名前がきちんと書かれていたのを見ると、私は他の人と勘違いしたわけではないし。
じゃあ、もしかして今まで一人で勝手に私のことをそう呼んでいたの?
自分の人形たちに勝手に名前を付けるように?
その上、今の私に対するノエルの態度に躊躇いは見えない。
私はそれが気に障った。
彼を見る私の目つきは、この上なく冷ややかに沈んでいるに違いないだろう。
しかし、ノエルはかなり浮かれていたため、私の状態に気づかなかったようだ。
「ああ、本当に。この瞬間をどれだけ待ちわびてきたのか分からないよ」
彼は自分の感情を抑えきれない様子で私に近づいてきて、ギュッと手を握ってくる。
少年のような顔のため知らなかったが、こんなに近くで見ると彼の背はかなり高い。
「そうだね、まずは歓迎の意味であなたのために準備したプレゼントを見せてあげよう!」
彼の手を振り払おうとしたが、すぐ耳元に突っ込んだ言葉に動きを止めた。
「来る間も、あなたが期待していたとダンテから聞いたよ。私のプレゼントをあなたが気に入ってくれて本当に嬉しいな」
初めて手紙を送る時とは違って、ノエルはこれ以上このことで私を脅迫したり、時間をかけるつもりはないようだ。
彼はすぐに、「あらかじめ準備していた贈り物をあげる」と言って明るく笑った。
「ニックス!」
ノエルが誰かを呼んだ。
いつの間にかホールの中に鳴り響いていた音楽の音が綺麗に止まっていた。
「まったくノエルは」
事前に準備された観覧客のように集まっていた男女の間に誰かが現れる。
さっき私に近づいてきたオウムの仮面をかぶった男だ。
「私の順番は最後にしてほしいのに。すでに持っている札を全部ひっくり返したら、残りの歓迎パーティーは何の楽しみがあるの?」
「でもルナが気になってるじゃん!だから早くこっちに来て、仮面を脱いでよ」
「まあ、仕方がないか」
ノエルの言葉に、オウム仮面の男は仕方がないかのように薄笑いする。
続いて彼の手が動いた。
頭全体を覆っていた仮面が、ついに男の顔から落ちていく。
彼が髪を細かく振ると、曲がりくねった金髪が少し乱れた。
微かに微笑んでいる顔がとても綺麗で美しい。
瞳は片方が紫色で、もう片方が湖のように澄んだ青色。
繊細に組まれた目鼻立ちと顔全体に敷かれた穏やかな雰囲気が見慣れない。
いいや、正確には網膜に刻まれたように慣れていた。
なぜなら・・・。
それは私が夢で毎回見ていたアシルの姿だったから。
「こんにちは、ロクサナ」
一瞬、心臓が痺れるほど懐かしい笑みを浮かべて、彼が口を開く。
「会いたかったよ、私の妹」
ああ・・・。
今この瞬間、もし私の目の前にラント・アグリチェが生きていたら、私の手で直接殺してしまったに違いない。
ロクサナがペデリアンを離れる数時間前。
オルカはすぐにフィペリオンに戻らず、ペデリアンの境界に隠れていた。
「今頃出発したかな?」
彼はリセルとカシスがペデリアンを離れるのを待っていたのだ。
オルカはユグドラシルの会議に出席する意思も、またフィペリオンに素直に帰る気もなかった。
このような危険なことをする理由は、当然ロクサナのため。
自分があれほど探し回った毒蝶の主。
これまでオルカは望む魔物を得るために、その主人を殺すことも躊躇なく犯してきた。
しかし、今回はたとえ殺して奪うことが可能だとしても、それをしたくなかった。
オルカは「毒蝶の主人であるロクサナ」という女性自体に、今まで人を相手に一度も持ったことのない途方もない興味と魅力を感じていたのだ。
ペデリアンの庭で毒蝶を使っていたロクサナの姿を思い浮かべると、今も背筋がピリピリする。
このような感覚は、オルカが普段魔物たちにだけ感じてきた感情だった。
自分でも信じられないことに、彼は毒蝶だけでなく、その主人である彼女も一緒に欲しくなった。
しかし、よりによって青の貴公子の女性だなんて、相手があまり良くない。
「私が堂々と色仕掛けを使って誘惑したのに・・・」
ペデリアンを離れる前にロクサナと交わした会話を思い出すと、自然と眉間に皺が生まれる。
自分に興味がないとハッキリ言われるなんて。
考え直しても不愉快だった。
しかしオルカは、欲しいものは必ず手に入れる男だ。
そのためには、一旦ロクサナをペデリアンの外に引っ張り出さなければならない。
「会議の日程に間に合わせるには、遅くとも今日の日が暮れる前までにユグドラシルに出発するだろう。夕方頃に動いてみようか」
ロクサナがカシスの保護を受けていないとき、オルカは彼女を外に誘うつもりだった。
もし状況が不如意ならば、もう一度城門を越える危険を甘受する考えも。
もちろん、どれだけ計画を徹底的に立てても、ペデリアンの城に侵入するのは容易なことではない。
しかし、リセルとカシスが席を外した隙なら、一度は試してみる価値があった。
数時間後、ロクサナがベルティウムに行くために自分の足でペデリアンを出ることを知っていたら、当然このような苦労はしなかったはずだが。
オルカは顔をしわくちゃにしながら、噛んでいた干し肉を吐き出す。
「ペデリアンで豪華なものを食べていたから、全然食べれないな」
彼はペデリアンで食べた料理を思い出しながら舌鼓を打つ。
すると、奇妙な感覚がオルカの後ろ足を掠めて通り過ぎた。
まるで・・・、何かが彼に後ろに寄り添って立っているような感覚。
一瞬で、全身の産毛が鋭敏に逆立ち、腕に鳥肌が立った。
しかし、そんなはずがない。
さっきまで何の気配も感じられなかったのに。
ヒュッ!
振り返ろうとした瞬間、鈍い力がオルカの首に後ろを容赦なく殴りつけた。
彼は足音も出せず意識を失う。
side カシス・ペデリアン
不意に急所を殴られたオルカは呆気なく気絶する。
カシスは彼を冷たい目で見下ろした。
「気配を消す呪術陣か」
オルカに向けたカシスの視線は終始一貫して冷たい。
ただでさえオルカはペデリアンの中で、ずっとカシスの目に障ることだけを犯した。
ましてや、今回は境界にこっそり隠れているのを発見したので、カシスの機嫌が悪くなるのも当然だろう。
実際、カシスはオルカがフィペリオンに素直に帰ると言った時も信じていない。
最初からロクサナのいる別館に近づこうと躍起になっていた彼のことだ。
それだけではない。
ロクサナを露骨に誘惑したという事実もイシドールを通じて伝えられていた。
今回の意図も明らかだろう。
自分が離れている隙を狙っていたのは明らかだった。
「せっかく丁寧に送り出したのに、こんな真似をするなんてね」
オルカの体から取った装身具の宝石が、カシスの手の中で無惨に壊れていく。
その瞬間、オルカとマムルの間の刻印が一気に切れた。
魔手師なら誰もが血の涙を流すことだろう。
フィペリオンで使用する宝石は特殊制作のものだ。
一般的には外部的な理由で破損する危険性が極めて低い。
しかし、カシスはオルカが持っている宝石をすべて素手で破壊した。
もしオルカに意識が残っていたら、カシスの残忍非道な蛮行に泡を立てて気絶していただろう。
宝石をすべて破壊し、オルカを見下ろすカシスの顔には、一点の罪悪感も込められていない。
今オルカがこのような結末になったのも、彼自身が自ら招いたことだ。
素直にフィペリオンに戻れば、今ここで自分に遭遇することはなかったのだから。
カシスはオルカをこのまま魔物生息地に捨てたいという衝動を感じながら、足元にいる彼をじっと見下ろした。
しかし、オルカ・フィペリオンがペデリアンで目撃されたことを最後に行方不明になった時に訪れる反響と、それによって起きる面倒なことを考えれば、それは良い方法ではない。
「運の良いやつだな」
カシスは舌打ちしながら、オルカに再び手を伸ばす。
しばらくしてカシスは森から抜け出した。
「そ、それは白の魔手師じゃないですか」
カシスの命により森の外で待機していたイシドールが驚きの声を上げる。
彼の顔には動揺と困惑が入り混じっていた。
オルカは四肢を縛られた状態でだらりと垂れ下がって、荷物のようにカシスの肩に担ぎ込まれた状態だ。
「森に隠れていた」
リセルは先にユグドラシルに出発した後だった。
カシスが警戒周辺を一度偵察すると言った時、イシドールはあまり気にしていなかった。
しかし、まさか白の魔手師がいたとは。
カシスは彼らにオルカを投げつけ、フィペリオンへの移送を命じる。
「ユグドラシルに向かう途中で倒れているのを偶然発見し、ペデリアン側で保護したと伝えてくれ」
「はい、分かりました」
どう見ても白の魔手師があんな姿になったのはカシスの仕業であることは明らかだが、部下たちは知らないふりをして彼の命令に従う。
「私たちも出発しましょう」
イシドールの言葉に、カシスはちらっと目を向けてどこかを眺めた。
彼の視線が届いた場所はペデリアンの邸宅がある方向。
彼の瞳が浅く沈む。
ベルティウムがペデリアンに向かって動いているという事実を既に報告されていた。
先日、ロクサナが黄の首長から書簡を受け取ったことも。
彼女は自分がいない間にベルティウムに行くつもりなのだろう。
カシスはロクサナが見た目ほど弱くないことを知っている。
しかし、それでも気が楽でないのは仕方なかった。
ロクサナがこのまま何もせず、自分の胸の中でいつまでも安全に保護されてほしいという考えをしなかったわけではない。
けれど、ロクサナはそのような方法を望まないだろうと思ったのだ。
カシスが知っている彼女は、もし彼が阻んでも何とかして自分の意志を貫いてしまう女性だから。
しばらくして、カシスは遠くを眺めていた視線を断ち切る。
「予定より時間が遅れたから急ごう」
「はい」
カシスも同様に、万が一の状況に備えて対策を取っておいた。
だから多分大丈夫だろう。
しかし、そのように思いながらも、カシスは出来るだけ早くユグドラシルでの仕事を終えなければならないと、もう一度心を固めた。
「・・・私の兄なの?」
ロクサナは小さく唇を動かして囁いた。
周りが奇異なほど静かだ。
宴会場の中にいる全員が息を切らずに彼らを注視している。
「それは、お前が本当に知っている兄だってこと?」
目の前の少年は、15歳で死んだアシルと同じ姿をしていた。
波打つような派手な金色の髪。
整った白い顔。
アーチ型を描いている眉毛とその下に位置する澄んだ青い瞳。
細い顔に刺さった繊細な目鼻立ちや、その下に垂れ下がった特有の柔らかい微笑も記憶の中の兄と鳥肌が立つほど似ていた。
そのため、目の前にいる人が人形なのか、人なのか見分けがつかない。
まるで彼一人だけ止まった時間の中に存在するようだ。
ロクサナの問いに、アシルの顔をした少年が笑顔で答える。
「私の死んだ肉体をノエルが蘇らせたんだ」
それは彼女の質問に対する答えだったが、核心的な本質では食い違っている説明。
「残念ながら、私には私の前までの記憶はないけどね」
少年はロクサナが尋ねた自分の根源に対する返事はせず、妙に遠回しに答える。
けれど、ロクサナは本能的に知ることができた。
彼が明らかに兄ではないことを。
今、彼の名前が「アシル」ではなく「ニックス」であるかのように。
それでも彼はロクサナ自らさえ驚くほど、彼女から強烈な動揺を引き出していたのだ。
しばらく向かい合っていた顔をじっと見つめていたロクサナの唇が再び広がる。
「死んだ肉体を甦らせるなんて、それは人形術師ではなく死霊術師の領域ね」
「ああ、それは違うよ。人形術と死霊術は原理自体が違うから。気になるなら、私が詳しく説明してあげるよ、ルナ」
ロクサナとニックスの出会いを楽しく眺めていたノエルが割り込んでくる。
「ところでニックスの昔の名前はご存知のようだね。そんな愚鈍な名前よりもニックスという名前が似合うよ」
彼は兄妹の久しぶりの再会に満足しているような顔をした。
二人を眺める瞳がこの上なく無邪気で明るく輝いている。
「そんな風に一緒に立っていると、私の思った通りそっくりだね。本当に素敵だよ。とても完璧な絵だ!」
ノエルの浮きだった声が歌声のように宴会場の中に広がった。
両側に分かれた人々も合わせたように拍手をする。
パチパチパチパチ!
雷のような騒音が容赦なく鼓膜を突き刺す。
まるで舞台上の演劇俳優たちに賛辞を送る観客のようだった。
本当に・・・、笑わせもしない行為ね。
ロクサナは微笑みかけたアシルの顔を視界から遮るように目を閉じる。
「ノエル・ベルティウム」
その後、再び姿を現した彼女の瞳には、先ほどまで残っていた感情の残骸が綺麗に収められていた。
ノエルを見つめる視線は氷海のように冷たい。
その瞳に正面から向き合ったノエルが情熱的に拍手をしていた手を中途半端に止めた。
「うん?」
「今日の宴会は、この辺で終わらせた方がいいと思うのだけど?」
それは勧誘や了解を求めるのではなく、一方的な通達。
「今言えなかった話は明日またすることにしましょう」
そう言ってロクサナは振り返る。
靴の踵が大理石に床にぶつかる音がホールの中に響き渡った。
白いスカートの裾と長く垂らした金色の髪の毛が影のように残像を残す。
彼女は一度も振り返らず、真っ直ぐ宴会場を抜け出した。
「・・・え?」
ノエルはそのようなロクサナの後ろ姿をぼんやりと見守っていたが、一歩遅れてぼんやりと口を開けてしまう。
要点を3つにまとめます。
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仮面舞踏会での再会と「ニックス」の正体
主人公ロクサナはベルティウムの宴会場でノエルに迎えられ、かつて死んだはずの兄「アシル」の姿をした少年「ニックス」と対面します。彼はノエルによって蘇らされたと語りますが、記憶はなく、ロクサナは彼が本物の兄ではないことを見抜きます。
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カシスによるオルカの拘束
一方その頃、ロクサナの動向を探っていた白の魔手師オルカは、彼女の隙を突こうとしたところをカシス・ペデリアンに不意打ちされて気絶させられます。カシスはオルカの魔手師としての刻印をすべて破壊し、部下を通じてフィペリオンへ送還します。
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宴会の打ち切りとロクサナの冷徹な判断
ベルティウムの仮面舞踏会で繰り広げられる人形のような人々の滑稽な振る舞いや、ノエルの演出に嫌悪感を抱いたロクサナは、これ以上の茶番に付き合うことを拒絶します。彼女はノエルの言葉を遮り、冷徹にその場の解散を一方的に通達して宴会場を立ち去ります。