こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
55話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 人形の皮をかぶった悪意
ニックスは先ほどテーブルを挟んで向かい合った顔を思い浮かべながら、ふーっと低い声を出した。
「あのアグリチェの男にロクサナに対してもう少し聞けば良かった」
当時はロクサナに個人的な関心がなかった。
そのため、当時気になっていたロクサナの行方と事実に関する情報だけを男に聞いたことが、後になって残念に思う。
ただ平凡な女性だと思っていたロクサナに魔物を使役する能力があるのも少し気になった。
しかし、その後ダンテが別に調査した結果、ロクサナ・アグリチェが持っている魔物は、あの不思議な蝶一つだけだと言ったので。それだけ注意すれば大した問題になることはないはずだった。
「準備しておいた薬なんだけど、明日はもっと沢山入れてもいいと思う」
ニックスは、彼女の上品な顔が失望と悲しみに染まるのを見たいと考えて微笑む。
「慎重に仕事を進めるのも結構だけど、やっぱり今日準備した量は少なすぎたよ。一滴だけ摂取してもすぐ効果が現れると言ったのに、デタラメじゃないか。彼女が普通に歩いて出て行くのをお前も見ただろ?」
ダンテはニックスの言葉に否定的な反応を示す。
「しかし、そうするうちにミスでもしたら・・・」
そのミスというのは、第一にロクサナが薬について気づくことと、第二に定量以上の薬を摂取して副作用が現れることを意味した。
「どうせ機会がそれほど多いわけでもないじゃないか。ノエルが望む通りにしようと思ったら仕方ないけど」
ノエルはニックスが思っていた以上にロクサナを気に入っている。
衰弱した彼女をノエルにプレゼントするつもりだ。
その後、ノエルが幸せの頂点に立っている時、彼の手に握られたものを壊してしまうのも面白そうだった。
おそらくノエルは怒り、また挫折するだろう。
ああ、その姿を見て笑ったらノエルはどんな表情を浮かべるのだろうか?
ニックスの顔に子供のような悪戯っ子が浮かぶ。
ダンテが酷く嫌う表情。
今ニックスが何を考えながら笑っているのか分からないが、なぜか背筋が寒くなる。
ダンテはしかめた顔でニックスをじっと見つめていたが、すぐに我慢できず本心を吐き出してしまう。
「ニックス、おそらくあなたの中に入っているのは悪魔でしょう」
「お褒めの言葉をありがとう」
ニックスはニッコリ笑って席を立つ。
「でも言葉には気をつけないと、ダンテ」
ニックスの視線が毒蛇のようにダンテに巻き付いた。
「ノエルの美しいルナがいる間、私は彼女の優しいお兄さんであるアシルなのだから」
踊るように歩いてダンテに近づいたニックスが、優しく彼の肩を軽く叩く。
その後、彼は応接室を出て行った。
「ルナ、本当にごめんね!」
ノエルは夕方になってやっと目が覚めた。
彼は起きるや否や、あたふたとロクサナの元を訪ねる。
「本当は朝早く私が先に訪ねて行こうとしたのに!だけど、何日もベルティウムで君を迎える準備をして徹夜したら私も知らないうちに眠ってしまって!で、でもダンテがこの時間まで私を起こさなかったから!」
ダンテが聞いていたら、悔しさを滲ませた表情を浮かべていただろう。
ノエルは弱腰に感じられるほど途方に暮れて、ロクサナに謝罪と言い訳を繰り返した。
手紙のやりとりと昨日の宴会でも感じたが、彼は自分の顔色をかなりうかがっている。
よほど自分の機嫌を悪くさせたくないようだ。
ノエルの気兼ねのない態度や呼称が非常に気になったが、「ノエル・ベルティウム」という人物を把握するには役立つだろう。
ロクサナはそれほど長く悩まず、ノエルに対する態度を決めた。
「どうして謝るの?まだ約束した一日が過ぎたわけでもないのに」
昨日とは違って、温もりのこもった優しい声がノエルの鼓膜に食い込んだ。
彼はボーッとロクサナを見つめる。
そして初めて見る彼女の笑顔に心を奪われてしまった。
ノエルが憂慮したこととは異なり、ロクサナは怒っても不快にも見えない。
柔らかくて甘いクリームのような笑顔がノエルを迎えてくれた。
ノエルは昨日、ロクサナが宴会場で冷たい姿を見せたことを今この瞬間に全て忘れてしまった。
ロクサナがわざと敬語を使わずに言葉遣いを無邪気に変え、彼との距離感を一瞬にして狭めたことも認識できなかった。
「ちょうど良かったわ、ノエル。あなたの人形について考えていたところだったの」
「え、わ・・・私の人形?えっと・・・、ニックスのこと?」
ノエルは少し頭が回っていないようだ。
彼は苦労しながらニックスの名前を思い浮かべることに成功する。
「ええ、それについて聞きたいことがあるの」
ロクサナはそんなノエルにそっと囁きながら近くに来いと言わんばかりに手を差し出す。
「な、なんでも聞いてよ!ルナが知りたいことなら私が全部教えてあげるから・・・!」
ノエルが赤く上気した顔でささっと近づいてきた。
ロクサナの手を握った彼は、彼女の前にひざまずいて座り込む。
その姿はまるで主人に尻尾を振っている犬のよう。
ノエルの顔の上をチラッとジェレミーの顔が掠めた。
2人の姿が少し似ているような気もしたが、それでもノエルには遺影が届かない。
ロクサナの立場では当然のことだ。
それでも彼女は冷ややかな内心を隠し、ノエルに向かって微笑む。
繊細な手つきが楽器を演奏するようにノエルの頬を撫でると、彼はまるで酒に酔ったようにフラフラしていた。
「あなたがどうやってニックスを作ることになったのか、詳しく説明してほしいの」
静かな囁きは、溶けた蜜のように空気の中に流れ落ちていく。
「それが、当時私は本物の人間で人形を作ることができないのか気になって、その部分について研究していたんだ」
ノエルは、何かに取り憑かれた人のように、ロクサナが望んだ通りに説明し始めた。
「もともとベルティウムでは実際の人体を成す構成要素を研究し、出来るだけそれと似たように組み合わせて人形を作ってきた」
ロクサナはノエルの言葉に耳を傾けているという意味でうなずく。
彼女の激励に支えられ、ノエルはさらに興奮して口に翼がついたように言葉を続けた。
「けれど、いくら本物のような肉体を作るとしても、それは完璧な人体ではないだろう?そのせいか、私の人形は完璧に美しくなかった。私はその点をいつも残念に思っていたんだ」
「そうだったのね」
「そんな中、ラント・アグリチェがベルティウムの人形術に関心を示して接近してきたんだ」
その瞬間、ロクサナの目に異彩が通り過ぎる。
「しきりに会おうとうるさいから一度時間を割いたんだけど、うーん・・・、あの時黒の首長が何を言ったのか思い出せない。ダンテに覚えているかどうか聞いてみようか?」
「いいえ、その説明は必要ないわ」
「あ、そう?じゃあ良かった。とにかく、そのうち私が進行中の人形術の研究に対する言葉がちらっと出てきて、ラント・アグリチェが私を助けてくれるって言ったんだ。それはハッキリ覚えているよ。それでその後、彼が私に研究に使う材料を提供してくれたんだ」
ノエルの話を聞けば聞くほど、ロクサナの胸には閑散とした風が吹き荒れる。
「生きている人間にすぐ人形術を試みるのはまだ難しそうだったから、先に死んだ人間の肉体を使って色々実験してみるつもりだった。だけど、簡単に手に入る材料じゃない。だから、ラント・アグリチェがくれたものを実験に使ったのさ」
「・・・」
「アグリチェ用語で「廃棄処分を受ける」って言うのかな。そんな死体も何体かベルティウムに運ばれたよ」
やはり、アシルの姿をした人形があるという事実を知り、彼女が推察した内容と変わらなかった。
ニックスの体がアシルを模して作った偽の肉身ではなく、その体自体が本当にアシルのものだという事実は疑いの余地がないだろう。
もし彼の体が偽物なら、もともとアシルの体から損傷していた部分まで移す必要はないのだから。
例えば傷跡が残った右手や、死ぬ直前に最後に行った月例評価の時に大怪我した左目のような。
結果的に、ラント・アグリチェは廃棄処分で死んだ子供たちの死体をベルティウムに渡したという話だ。
不死の人形軍団に関心が高かったラントだから、ノエルの新たな研究にも興味があったのだろう。
そうでなければ、ただリサイクルが不可能なゴミをばら撒くふりをして、ベルティウムとの繋がりをきずくつもりだったのかもしれない。
どちらにせよ、ラント・アグリチェは本当に吐き気のする人間だったということ。
「実は、私は最初にラント・アグリチェが私の好みに合う美しい肉体を探してくれると言った時はあまり期待していなかったが、実際に受けてみたら思ったよりとても立派だったんだ」
しかし、ロクサナがノエルに本当に聞きたかったのは、死体の提供者に対する内容だけではない。
「特にニックスは本当に私の想像以上だった。見るや否や一目惚れするほどだったんだから」
ノエルが朧げな声で付け加えた瞬間、ロクサナの瞳には今までとは違う寒気が光った。
時期上、ラントとノエルが会って人形の研究に対する話を交わしたのは、アシルが死ぬ前でなければならない。
アグリチェでは廃棄処分された遺体を保管しないのだから。
しかし、アシルの空いた肉体は魔物の飯として投げられず、ノエルの手に入った。
それなら万が一のケースとして、ラントがノエルのお気に入りの美しい遺体を手に入れるためにアシルを殺した可能性があるのではないのだろうか?
または、ノエルが先に生きているアシルを見て惚れて、彼の肉体をくれとラントに頼んだ可能性は?
「ノエル・ベルティウム。あなた」
ロクサナの手は徐々に滑り、ノエルの首筋に触れる。
「もしかして、アシルが生きている時に彼を見たことがある?」
「もしかして、アシルが生きている時に彼を見たことがある?」
ノエルを凝視するロクサナの顔には依然として春の日差しのような微笑が描かれていた。
しかし、撫でるように優しく彼の首筋を徘徊する手には明白な殺意が込められている。
そうするうちに彼女の指先が今すぐにでも触れ合っていた肌を破ってその中に深く入り込もうとした瞬間・・・。
「いいや、私が見たのは棺の中に入っている遺体だけだよ」
ノエルの表情には物足りなさが見られた。
「蓋を開けたとき、天使のような人間がいてどれほど驚いたか分からないよ。それで目を覚ました姿を見たくて、それまで以上に熱心に努力したんだ!」
ノエルは称賛を望む子供のようにロクサナを見つめる。
ロクサナの赤い瞳が真意を把握しようとするように向かい合った顔を鋭く見抜いていた。
そして、ノエルの首の後ろに音もなく潜んでいた手がゆっくりと離れていく。
(そうよね。考えてみると、それは合理的な方法じゃないわ)
ラント・アグリチェがいくらベルティウムの人形術に興味を持っていたとしても、ノエルにあげる遺体を用意するためにわざと子供たちを殺すようなことはしなかっただろう。
もちろん、その理由はラントにそのような最小限の人間的良心があったためとは考えられなかった。
単に収支の採算が合わないためだろう。
むしろ拉致や人身売買を通じて美色の優れた少年少女たちを手に入れるほうが簡単だったはず。
そこに廃棄処分された子供たちを入れたのはオマケのようなもの。
とにかく、ノエルもラントに劣らず非常に驚くべき人間だった。
ラントから遺体を譲り受けた当時はノエルも幼かったはずなのに、人の遺体を対象にした実験を考えるなんて。
ベルティウムの家門は代々短命なことで有名で、そのためノエルはかなり幼い頃に首長になったと知られている。
自分の欲望のためにそのような子供と協力したラントや、そのような彼から研究用遺体を手に入れることに成功したノエルも本当に奇想天外だ。
ノエルの話を聞きながら、ロクサナはさまざまな意味で次第に胸が冷めていくのを感じた。
気になるもう一つの部分が思い浮かび、問わざるを得なかった。
「提供された死体が一つじゃないということは、ニックスのような存在が別にいるということ?」
「いいや、成功したのはニックスだけだった。本当に偶然成功したから、どうしても二度目が成功しないんだ。それでも成功したのがニックスで本当に良かったよ」
ノエルの表情を見ると、どうやら今言った言葉はすべて事実のようだ。
ノエルは、ロクサナが聞いていない人形術の原理についても説明を並べた。
直接作った人形の体を覚醒させて使うのは、ベルティウムの後継者にだけ伝わる呪術を利用した方法らしい。
そのように作られた人形は、主人が望む通りに命令を遂行する能力があると言った。
中でも従属が強い人形は本当の人のように対話も可能だというから、実に驚くべきことだ。
しかし、それでも彼らは本当の人間ではないため感情を感じられず、五感が完璧ではなく、体内に心臓もない。
そして、昨日話した人形術と死霊術の共通点と相違点まで、ノエルは嬉しそうに説明した。
そうするうちに彼はふと思い出したかのようにロクサナに尋ねる。
「ああ、私がいない間にニックスに会ったんだってね?少しは会話できた?」
「少しだけ」
彼の顔を見ると、どうも先にニックスに話を聞いてきた後のようだ。
「ベルティウムにもう少し滞在することにしたって聞いたよ。私は大歓迎だよ、ルナ!望むだけいてもいい!このまま一生私と一緒にここで暮らそうよ!」
ノエルは大喜びでロクサナの手を握りしめて目を輝かせる。
赤い瞳がチラッとノエルの顔を滑った。
彼は期待に満ちた目で私を見上げている。
「二日」
しばらくして、ロクサナが自然にノエルの手を叩いて外しながら、細やかに微笑んだ。
「私はあと二日だけ滞在してから帰るつもりよ。それ以上がだめ」
ノエルはロクサナの言葉に失望したかのように両目を振る。
「そっか。じゃあ、二日間でも私と一緒に楽しく過ごそう!」
しかし、彼はすぐに気を引き締めたように口を開く。
ロクサナはそんな彼を少し前とは違う無表情な顔で見ていた。
どこへ行っても花が咲き乱れているベルティウムの春の風景はまさに絶景だった。
「ベルティウムは、本当に美しいと思わないかい?」
けれど、実際に誰かがこう言うと、訳もなく反論したくなる。
だから退屈そうに言った。
「そう?ありふれた風景だけど」
するとニックスは私を見て苦笑いを浮かべる。
私は今日もお茶の世話をしているニックスをじっと見つめた。
今日は応接室ではなく野外で茶菓の時間を過ごしている。
今回もこの席にいるのはニックスと私、二人きりだ。
それを要求したのは私の方。
ノエルは思ったよりも快く許可したが、内心では不満そうだった。
ニックスを見る彼の目には隠すことのできない嫉妬の感情が溶け込んでいたのだから。
ニックスを利用して私をベルティウムに誘き出したのは、明らかにノエルの策だったはずなのに、いざこのような状況になると嫉妬するなんて。
本当に面白いことだ。
それでも夕食会の時には一緒に食事をすると約束したことがあり、ノエルは素直に退いた。
「その左目、本当の人の眼球じゃないようね」
自分の前に置かれたコップにお茶を注ぐニックスを見て口を開く。
「それは義眼?」
羽のように舞う花びらの間からニックスが視線を上げて私を凝視する。
彼の右目は母親に似た青色で、左目は後ろにある花に似た紫色。
「うん。ベルティウムに来た時、私の身体はすでに損傷していて完全ではない状態だったらしい。だから所々復旧が必要だったんだ」
ニックスの言葉通りだ。
アシルは最終的にはデオンによって心臓を貫通されて死んだが、廃棄処分を受ける直前に受けた最後の月例評価で目を大怪我したのだから。
「当時ノエルが持っていた眼球の中で一番相性の良いものを探していたら、結局両目の色が違うものになってしまったよ」
何かを知ってわざとそうしているのか、ありはただ偶然重なるだけなのか分からないが、ニックスは私の前で死んだアシルを思い出させるような姿をよく見せていた。
その反対に、私はニックスと一緒にいる間、彼からアシルと違う点を一つずつ見つけることに意味を置いている。
「今日はお茶がお口に合えば嬉しいな。今回はもう少し気を遣ったんだけど」
私の向かい側に座ったニックスは優しく笑ってお茶を勧めてくる。
私は黙々と茶碗を持った。
味わったお茶は確かに昨日のように甘くない。
そして昨日と同じように、その中で微かに異質な味が感じられた。
昨日と今日の二日間に渡る確認の末、私は確信する。
舌先に漂う特有のほのかな香りから推測すると、これは体の五感を一時的に遮断する毒薬だった。
説明は簡単だが、視力と聴覚を含む体の感覚を全て遮断し、人を完全に無力化させる極悪な効能を持った薬だ。
もちろん毒に耐性のある私には通じないのだが。
しかし、私はそぶりを見せず、何も知らないように淡々と口を開く。
「茶菓の準備は全部あなたがしているの?」
「うん。あなたを接待するのは私の手で直接したいからね」
私がお茶を飲んでも平気そうに見えると、ニックスは一瞬戸惑っている様子だった。
けれど、すぐに彼の顔に自然な笑みが浮かぶ。
笑っているニックスにつられて、私も口元に笑みを浮かべた。
アシルの顔がこんなに憎らしく見えるなんて、今までは想像できなかったことだ。
「えーと、前から気になっていることがあるのだけど、聞いてもいい?」
ニックスが慎重に口を開く。
私はどうぞと言わんばかりに彼を見つめた。
「どうして死んだの?」
その瞬間、ティーカップを持った手が思わず止まる。
「心臓にあった貫通が死因のようだと聞いて。アグリチェで廃棄処分されたって聞いたけど、理由が気になって」
続いてニックスが軽く笑いながら通り過ぎるような口調で付け加えた。
「いっそ死んだ方がいいほど、私は役に立たなかったのかな?」
私を刺激しようとする意図で切り出したに違いない。
その証拠として、今私の目の前にいる人はあえて自分のことを「私」と呼んだのだから。
いずれにせよ、彼がアシルの顔をしているのは事実だ。
一瞬だが、私は仕方なく彼にアシルの面影を感じてしまう。
「使い道がなくはなかったわ」
唇を開いて囁く。
「けれど・・・」
色違いの彼の両目が私を見つめている。
「私の兄は役に立たなかったわ」
私がこの話をしてあげたい人は、もうこの世にいない。
だから今、これは私の自己満足に過ぎない。
今私の目の前にいるアシルの肉体は、私の記憶の中のように15歳の姿で止まっている。
時間が経って大人になった私とは違い、彼は依然として少年時代の姿をそのまま維持していた。
今後もその事実は永遠に変わりはないだろう。
当然のことだったので、今更胸が痛むことはなかった。
手に持っていた茶碗を置いて席を立つ。
「今日飲んだお茶も最悪ね」
空いているティーカップの中に白い花びらが一つ飛んできて、軽く舞い降りた。
ニックスは妙な目つきで私を見ている。
「私があなたに出せる時間は明日まで」
そんな彼を見下ろして最後に言った。
「最後は失望させないことを期待しているわ」
明日、最終的な決定を下すだろう。
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ロクサナとノエルの会話と真実の判明
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ロクサナはノエルから、ニックスの肉体がアグリチェで廃棄処分されたアシル(ロクサナの兄)の遺体であること、そしてノエルがラント・アグリチェからその死体を提供されて人形術の実験に使った経緯を聞き出す。
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ノエルは棺の中の遺体としてアシルを見ただけであり、ラントがアシルを殺したわけではないことが明らかになる。
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ロクサナはベルティウムに滞在する期間を「あと二日」とノエルに告げる。
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ニックスの正体と毒薬の仕掛け
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野外でのティータイムで、ニックスがロクサナに出したお茶には、五感を遮断する毒薬(昨日は少量、今日は多め)が仕込まれていた。
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毒に耐性のあるロクサナには効かなかったが、彼女はそれを隠したまま冷静に対応する。
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ニックスはロクサナを刺激するため、あえて自分のことを「私」と呼び、「私は役に立たなかったのかな?」と質問する。
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ロクサナの心情と決意
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ロクサナは、目の前にいるのがアシルそっくりの姿をした人形(ニックス)でありながら中身は別人であることに複雑な思いを抱きつつ、「私の兄は役に立たなかったわ」と告げる。
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ロクサナはニックスに「私があなたに出せる時間は明日まで。最後は失望させないことを期待しているわ」と告げ、明日最終的な決断を下すことをほのめかす。
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