こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
169話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 永遠の幸福
仕事の合間を縫ってすっきりした気分でシュペリオン領へと戻ってきたオスカーだったが、胸の奥にはどこか拭いきれない不安が漂っていた。
(友人たちに子どもたちを預けてくるなんて、本当に大丈夫だったのだろうか……)
妻のレリアは「彼らならとてもよく面倒を見てくれるわ」と全幅の信頼を寄せていたが、父親であるオスカーの考えは違った。過保護で癖の強い友人たちの手元に大切な我が子を置いておくなど、不安でたまらない。
シュペリオン城に到着するやいなや、オスカーは真っ先にレリアの研究室を訪ねた。
「おい、フレスベルグ皇城に行ってくるって言っていたのに、もう戻ったのか?」
「うん。忙しい?」
「ちょっとだけね」
レリアの手を止めてしまわないよう、オスカーは彼女の頬に軽く口づけをして体を離した。
「リアンとヘルナのところへ行ってくるよ」
「ええ、子どもたちなら叔父さんたちと楽しく遊んでるはずよ」
「……」
レリアの能天気に思える言葉にどこか納得がいかない表情を浮かべつつ、オスカーは研究室を後にした。足早に向かったのは、子どもたちがいつも遊んでいるプレイルームだ。重厚なドアに手をかけ、カチャリと音を立てて開ける。
部屋の中では、ヘルナと遊んでいたカーリクスがふと顔を上げた。
「なんだ、オスカー。帰ってたのか」
道端に転がる石ころを見つめる時ですら、もう少し弾んだ表情をするだろう。だが、カーリクスにとってはこれが最大限の歓迎の反応だった。カーリクスはすぐにオスカーから興味を失うと、ヘルナに向き直った。
「ヘルナ、これを見てごらん。すごいだろ?」
「わぁっ! かっこいい! おじさん最高!」
いつの間にかロミオが作り出した色鮮やかな魔法の幻影に、ヘルナは目を輝かせてきゃっきゃと歓声をあげている。二人は完全に自分たちだけの世界に没頭しており、帰ってきた父親の存在などまるで目に入っていないご様子だった。
オスカーは言葉を失い立ち尽くしたが、さらなる衝撃が彼を襲う。
「ぼく、グリフィスおじさんが一番好き!」
部屋の隅でグリフィスに膝抱かれていたリアンが、突然彼の両頬を小さな手でむぎゅっと挟み込み、そのままほっぺたにチュッとキスをしたのだ。
(っ……!?)
オスカーの心臓に、目に見えない衝撃波が突き刺さる。
膝の上のリアンから愛らしいキスを受けたグリフィスは、ちょうど読んでいた絵本のページをめくる手を止め、固まっているオスカーに視線を向けると、フッと優越感に満ちたニヤリ顔を浮かべた。
「そうかい? じゃあ今度は、おじさんが別の絵本を読んであげようか」
「うん!」
グリフィスは当然のような顔でリアンを抱き直すと、ゆっくりと絵本を読み聞かせ始めた。
オスカーはうつむき、敗北感に肩を落としながら部屋の隅の本棚へと寂しく歩み寄るしかなかった。
「……ちっ」
プレイルームの中で唯一オスカーの惨状に気づいたカーリクスは、少し気まずそうに彼を見つめた。「元気出せよ」と声をかけてやるべきか一瞬迷ったものの、余計に傷つけるだけだと察したカーリクスは、舌打ちを数回繰り返すとあえてオスカーを無視することにした。
「ヘルナ、今度は飛行機ごっこをしてあげるよ!」
「わーい! やったー!」
「…………」
無邪気にはしゃぐ子どもたちの声と、友人たちの満足げな笑い声。
誰にも相手にされない父親の背中に、どこか切ない午後の光が静かに差し込んでいた。
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それから数年の月日が流れた。
ある日のフレスベルグ皇城は、朝から騒然とした空気に包まれていた。青ざめた顔のアンセン伯爵が、風を切るような勢いで廊下を駆け抜けていく。彼が辿り着いたのは、執務室の重厚な扉の前だった。息を大きく整え、ノックもそこそこにドアを開け放つ。
「皇后陛下! 大変です!」
「……」
執務室で書類に目を通していたレリアは、静かに視線を上げた。慌てふためくアンセン伯爵とは対照的に、彼女の表情は氷のように冷静だった。この数年、試練を乗り越えて皇省を支えてきたレリアにとって、アンセン伯爵がオーバーに騒ぎ立てるのは日常茶飯事だったのだ。
「今日は何事ですか?」
「今回は本当に、本当に大変なことです! ヘルナ皇女殿下が……!」
「……ヘルナがどうしたのですか?」
娘の名が出た瞬間、レリアの眉がぴくりと動き、瞳に真剣な光が宿った。
「リアン皇子殿下が参加される予定だった『錬金術キャンプ』のことです! シュペリオン領で募集していた、あの!」
「それが何か?」
「それが……ヘルナ皇女殿下がリアン皇子殿下を連れ出して、ご自身で直接行かれてしまったのです! 『皇太子の名前を貸しなさい!』と言って……! 今、現場は大混乱です!」
ここ数年、シュペリオン領が中心となって進めている錬金術事業は、大陸全土を巻き込む一大産業へと成長していた。各国で錬金術への関心が高まったことを受け、アカデミーでは特別に諸国の王族や貴族の子どもたちを集めた「錬金術短期キャンプ」を開催することになったのだ。
今年11歳になる双子のうち、フレスベルグ帝国の皇太子の資格として参加するはずだったのはリアンだった。もちろん、当のリアン本人はあまり乗り気ではなく、むしろ活発なヘルナが行きたがっていたのだが……。
本来ならヘルナが参加しても良さそうなものだったが、彼女はすでに皇城で本格的な「帝王学」の勉強を始めていた。幼いながらも将来皇帝になるという意志が明確だったため、早期教育を受けている最中だったのだ。
「ふぅ……」
レリアは小さくため息をついた。錬金術キャンプはセキュリティが厳重で、外部者の出入りは厳しく制限されている。今から連れ戻しに向かったところで遅すぎるだろう。もちろんレリア自身が現地へ出向いて権力を使えば入れないこともないが……。
「放っておいてください」
「ええっ!? じゃ、じゃあヘルナ皇女殿下の今後の勉強スケジュールがすべて狂ってしまいますよ!?」
「そんなに行きたかったのなら仕方ありませんわ。教育なんて後からいくらでも挽回できます。今はまだ、遊ぶことの方が大切な年頃なのですから」
「もうやめてください……! それ以上は私の胃が……!」
話が長くなりそうな気配を察したレリアは、頭を抱えるアンセン伯爵を容赦なく部屋の外へと追い出した。
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その頃、シュペリオン領のキャンプ会場。
11歳になったヘルナは、口を小さく尖らせながら周囲を観察していた。今回のキャンプには、大陸各地から選りすぐりの若い王族や貴族の子どもたちが集まっている。
「さあ、みなさんこちらへお越しください」
引率を担当するアカデミーの関係者が声をかける。彼は一瞬、ヘルナの顔を見て「おや?」というような視線を向けたが、ヘルナはサッと目を伏せて素知らぬ顔を決め込んだ。
(フフン、ロミオおじさんに習った変身魔法は完璧だわ!)
今のヘルナは魔法の力で髪の長さも瞳の色も変え、双子の兄である「リアン皇太子」になりすましていた。
「リアン皇子殿下でいらっしゃいますね?」
「うん、そうだ」
低めの声で淡々と答える。滞在期間中、彼女は「リアン」として振る舞うつもりだった。堂々とした足取りで割り当てられた居室へと入ったヘルナは、満足げに室内を見回した。
『さーて、そろそろ将来の旦那様候補の探索を始めようかしら!』
実のところ、ヘルナが帝王学の勉強を放り出してまでここへ潜り込んだ最大の理由は、城の侍女たちがしていた「噂話」だった。
『ねえ、シュペリオン領のキャンプにローズベリー帝国で一番裕福な貴族の若様が来るらしいわよ』
『えっ、あのすごくイケメンだって噂の!? まだ10歳にもなってないのに有名なお坊ちゃまでしょ?』
『ニケア帝国からも、すごく綺麗な王族の子が来るんですって!』
『まあ! うちのヘルナ皇女様に行っていただいて、将来の旦那様候補を物色してほしいわねぇ。皇女殿下は大物になるお方だから、夫が四人……いや五人くらいいてもいいんじゃないかしら?』
そんな侍女たちの会話を盗み聞きしたヘルナの脳裏に、かつてグリフィスおじさんと交わした会話が蘇っていた。
『ねえ、グリフィスおじさん! ヘルナね、パパと、グリフィスおじさんと、ロミオおじさんと、カリクスおじさんの全員と結婚したいの!』
『……』
『でもママが、結婚相手は一人だけだって言うの。じゃあヘルナは誰と結婚すればいいの?』
『……とりあえずパパは絶対にダメだし、おじさんたちもダメだよ、ヘルナ』
『えー! じゃあ誰と結婚するの? リアンは嫌だもん!』
『将来、ヘルナのために良い相手がたくさん現れるさ。その中から選べばいい』
『でも、一人だけに絞れなかったらどうするの?』
その時、グリフィスはヘルナの頭を優しく撫でながら、事も無げに言ったのだ。
『何人選んでもかまわないよ。ヘルナは将来、皇帝になるんだから』
『本当!?』
『もちろんさ。その代わり、すっごく慎重に選ばないとね。おじさんたちが厳しく審査してあげるから』
思い返せば、他の叔父たちも同じようなことを言っていた。
『うちのヘルナは皇帝になるんだから、ちまちま悩む必要はないんだよ』
『そうよ。旦那は一人じゃなきゃいけないなんて誰が決めたの?』
『カリクス、お前は子どもになんてことを教えてるんだ……まあ、グリフィスがそう言ったんなら間違いなさそうだけど』
『でしょ? だからヘルナ、お母さんみたいに一人に決めないで何人かキープしておきなさい。その代わり、変な男を連れてきたらおじさんたちが叩き出すからね!』
叔父たちの偏った(しかし愛情過多な)教えを真に受けたヘルナは、固い決意を抱いていた。
(よし! このキャンプで、私にふさわしい最高の夫候補を見つけるのよ!)
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キャンプが始まって数日。ヘルナが目をつけてキープした「夫候補」は三人いた。
一人目は、ローズベリー帝国の超有名貴族、ブレンダ。
眩しいほどの白金髪に神秘的な金色の瞳。初めて彼を見た日、ヘルナはあまりの顔の良さに心臓が破裂しそうになったほどだ。
二人目は、ニケア帝国の貴族、ルイ。
艶やかな黒髪に淡い紫色の瞳。同年代とは思えないほど背が高く、落ち着いた声と物腰にはすでに品格が漂っていた。
三人目は、アスカード帝国の貴族、レノックス。
輝く金髪に少し小麦色の肌。少し派手好きで生意気だが、思わず息をのむほどの華やかな美少年だった。
ヘルナは「面倒見の良いリアン皇太子」として、彼らと自然に親しくなっていった。特にブレンダと仲良くなったきっかけは劇的だった。ある日、ブレンダが体の大きな男の子たちにいじめられているのを発見したヘルナは、迷わず割り込んだのだ。
「ちょっと、何してるのよ!」
「なんだぁ? このちっこいのが……っ!?」
襲いかかってきた大きな男の子たちを、ヘルナは幼少期から鍛え上げたズバ抜けた魔法の才で一瞬にしてひざまずかせた。
『これからブレンダをいじめたら許さないからね!』
その時、後光を背に受けるヘルナを見つめていたブレンダの目は、まるで夜空の星のようにキラキラと輝いていた。
(ふふん、間違いなく私に夢中ね!)
ヘルナがドヤ顔で満足感に浸ったのも束の間、ブレンダは尊敬の眼差しで彼女をこう呼んだのだった。
「すごいよ……隊長!」
(……たいちょう?)
そう、彼らはヘルナのことを「男であるリアン皇太子」だと信じて疑っていなかったのだ。こうしてヘルナは、美少年三人組を従える「隊長」になってしまった。
ある日の夕方、レノックスがふと思い出したように言ってきた。
「そうだ、隊長。俺さ、フレスベルグ帝国にめちゃくちゃ綺麗な皇女様がいるって聞いたんだけど。君の妹?」
「えっ!?」
ヘルナの口元がピクッと跳ね上がる。自分の美名の噂がもうここまで届いているとは!
「私はすごくおてんばだって聞いたよ」とブレンダがくすくす笑う。
「私も聞いたな」と冷静なルイまで頷いた。
思わぬ評価に戸惑ったヘルナは、大きく息を吸うと熱弁を振るい始めた。
「い、妹じゃなくてお姉さんだよ! それに……ヘルナはそんなんじゃない! すごく冷静で優しくて、趣味は読書と絵を描くことなの! お母さんに似てすごく賢くて綺麗で、お父さんに似て目元が……!」
口が渇くほど自分(ヘルナ)のことを絶賛しまくる「リアン(ヘルナ)」に、三人は半信半疑の目を向けた。だが話を聞くうちに、彼らはその「比類なき完璧な皇女ヘルナ」という存在に引き込まれていった。
「あとで君たちにも見せてあげる。うちのヘルナを見たら、一目で好きになるよ!」
「じゃあ隊長、そのお姉さんって君に似てるの?」
「……私とそっくりだよ。双子だからね」
その瞬間、三人の少年の表情が複雑に変化した。
特にルイは、淡い紫の瞳でヘルナをじっと見つめると、低い声でぽつりと呟いた。
「ほんとに、一目惚れなんかするのかな……」
「え?」
「君と、そっくりなんだろ?」
意味を遅れて理解したヘルナの顔が、一気に熱くなった。
「私も会ってみたいかも。いつ紹介してくれるの、隊長?」
「俺も! 早く見せてくれよ!」
レノックスとブレンダまでがからかい始め、ヘルナは冷や汗をかいた。
(や、やばい……あとで真実を知ったら『嘘つき』って怒られるんじゃ……!?)
翌日、さらなるピンチが訪れる。
アカデミーの総責任者であり、ヘルナの祖母であるシュペリオン公爵夫人(エリザベス)が現地視察に訪れたのだ。ヘルナは「スパイごっこだ!」と言って少年たちを従え、壁の陰に隠れながら必死に祖母を回避しようとした。
しかし、運悪く角を曲がった瞬間、祖母と正面からぶつかってしまった!
「おや、すまないね。大丈夫かい……?」
慌てて手を差し伸べた祖母だったが、ヘルナの顔を見た瞬間、固まった。すべてをお見通しのような深い瞳で見つめられ、ヘルナは生きた心地がしなかった。だが祖母はニヤリと意味深な笑みを浮かべると、「気をつけなさいね」とだけ言って立ち去ってくれたのだった。
(ふぅ……なんとか助かった……)
胸を撫で下ろしたのも束の間、数日後に最大級の災難がやってくる。
「隊長、あの綺麗なお客さん、隊長のお母さんじゃない?」
ブレンダの言葉に振り向いたヘルナは、幽霊でも見たかのように目を見開いた。
遠くから、優雅な足取りでこちらへ歩いてくる美しい女性——母、レリアだった。
(ママだー!! 私を捕まえに来たんだわ!!)
パニックになるヘルナの視界に、母の後ろからトボトボついてくる「もう一人の人物」が映った。あまりの光景に、ヘルナは口をぐうの音も出ないほど開けた。
母の後ろにいたのは、可愛らしいフリルのドレスを着て、メソメソと鼻をすするリアンだったのだ!
魔法で髪と瞳の色を変え、完璧に「ヘルナ」になりすましているリアンだったが、その姿は反則的なまでに愛らしく、美しかった。
遠くからレリアの視線がこちらに向かい、バチッと目が合った。
「……!」
レリアはパッと楽しそうに微笑むと、こちらへ歩み寄ってきた。
「リアン、元気にしてた?」
「……う、うん……」
母が自分を「リアン」と呼んだことで、ヘルナは察した。母は自分を叱りに来たのではなく、この状況を面白がって合わせにきてくれたのだと。
「後ろの子たちはお友達かしら?」
「は、はい! はじめまして、リアン隊長のお母様!」
少年たちが元気よく挨拶すると、レリアは目目をぱちくりさせた。
「隊長……? リアンが?」
クスッと笑いながら、レリアは後ろに隠れていたドレス姿のリアンを前へと押し出した。
「こちらはヘルナ。リアンの双子の妹よ」
「えっ!? でも隊長は『お姉さん』だって言ってたけど……」
「まぁ、そうなの?」
レリアは、ヘルナがいつもお姉さんぶりたがる癖を思い出して可笑しそうに笑った。
「さあヘルナ、お友達に挨拶しなさい」
ドレスを着せられたリアンは、気まずそうにモジモジしながら「……こんにちは」と呟いた。
実はリアンは、無理やりキャンプに行かされるのが嫌だったため、ヘルナが代わりに行ってくれた時は嬉しかったのだ。ヘルナのドレスを着て「ヘルナごっこ」をするのも最初は楽しかった。
だが、いざ現場に来てみれば、大好きな妹が知らない男の子三人と「隊長!」などと呼ばれながら親しげにしている。
(あの子たち、なんで私のヘルナとそんなに仲良くしてるの……? ヘルナの一番の親友は私なのに……)
嫉妬と寂しさで胸がいっぱいになったリアンは、ついに耐えきれなくなり、ポロポロと涙をこぼし始めてしまった。
「あらあら、ごめんなさいね。ヘルナは少し疲れているみたいだから、また今度にしましょう」
レリアは泣き出したリアンを優しく抱き上げると、そのまま引き返していった。
去っていく二人を見送り、本物のヘルナが安堵のため息をついたその時だった。
「……なぁ、隊長」
「ん?」
レノックスが、ぽかんと口を開けたまま、恍惚とした声で呟いた。
「隊長の妹……めちゃくちゃ可愛いな……! 俺、あんなに可愛い子、生まれて初めて見たよ! 胸がドキドキする!」
「……え?」
「可愛すぎて泣きそうになったよ! 俺、決めた! 立派な大人になって、絶対にヘルナちゃんを守ってあげるんだ!」
我が妹(実質自分)を絶賛され、ヘルナの口元がむず痒そうに緩む。
「君がなんで僕の妹を守るのさ?」
「だって俺、隊長の友達だろ!? もしかしたら将来、ヘルナちゃんと結婚するかもしれないじゃん!」
「け、結婚!?」
レノックスが「将来の夫候補」として立候補してきたことにヘルナがドギマギしていると、隣からブレンダが澄んだ声で割り込んできた。
「じゃあ、僕もヘルナちゃんと結婚する」
「はあ!? ブレンダお前まで何言ってるんだよ!」
突然始まった「ヘルナ争奪戦」に、ヘルナは顔を真っ赤にして固まった。
すると、これまで静かに静観していたルイが、心底がっかりしたようなため息をついた。
「思っていたより、大したことなかったな」
「「えっ!?」」
全員が驚いてルイを振り向く。ルイは冷めた瞳で言った。
「すごく綺麗で優しいって聞いて期待していたけど、そうでもなかった。……私は、リアン(隊長)の方がずっと可愛いと思う」
「「はぁぁぁっ!?」」
言葉の意味を理解したヘルナの顔が、沸騰したように赤くなった。
「うん……実は僕も、リアン隊長の方が可愛いと思うな」とブレンダまで頷く。
「お前ら正気か!? 節穴かよ! ヘルナちゃんの方が圧倒的に可愛いに決まってんだろ!」とレノックスだけが一人で怒り狂っている。
「……っ!」
赤くなった顔を隠すため、ヘルナは素知らぬ顔でサッサと歩き始めた。後ろからは「手伝ってくれよ隊長!」「将来お義兄さんって呼んでいい!?」と叫ぶレノックスの声が追いかけてくる。
(もう……一体どうなっちゃうのよーー!!)
身代わりから始まった未来の夫探しは、想定外の方向へと大迷走を始めるのだった。
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その頃、シュペリオン城。
連れ戻されたリアンは、レリアの部屋でベッドに潜り込み、ぐすぐすと泣きじゃくっていた。部屋に入ってきたオスカーは、妻と息子の様子を見て静かに口を開いた。
「リアン、もう大丈夫かい?」
リアンを抱きかかえて走ってくれたオスカーが尋ねると、リアンは少し落ち着いた様子でコクリと頷いた。
「うん、パパ……。でもね、ヘルナに新しくお友達ができたの。三人も……」
「それがどうしたの?」
「ヘルナが……もう私と遊んでくれなくなったら、どうしよう……?」
活発で物怖じしないヘルナに比べ、リアンは控えめで繊細な性格だった。成長するにつれ、両親に対してもどこか丁寧な言葉遣いをするようになっている。
オスカーは目線をリアンと合わせると、ポンポンと優しく頭を撫でた。
「そんな心配はしなくていいんだよ。ヘルナにとって、一番大切な友達はいつだって君だ」
「……ほんと?」
「ああ、本当だ」
大好きな父親の力強い言葉に安心したのか、リアンはオスカーの腕の中で小さな寝息を立て始めた。オスカーはリアンを自分の部屋のベッドまで運んで寝かせると、静かにレリアの元へと戻ってきた。
部屋に戻るなり、レリアは今日現地で起きた「身代わり事件」と少年たちのバタバタ劇をオスカーに説明した。
オスカーはレリアの隣に腰掛けると、話を聞きながら彼女の美しい髪をそっと耳の後ろへと outline(かきあげ)た。だが、どこか上の空で聞いており、レリアは少し唇を尖らせた。
「……ねえ、ちゃんと聞いてるの?」
子どもを叱るようなレリアの愛らしい仕草に、オスカーは耐えきれず小さく笑うと、そのまま彼女の唇を優しく塞いだ。
「ん……っ」
「ヘルナがキャンプに行ってくれたおかげで、久しぶりに静かな午後だね」
オスカーはレリアの細い腰に腕を回し、首筋へと深くて甘いキスを落とした。
「リアンの気持ち、すごくよく分かるよ。僕だって、君が他の男と一緒にいるだけで……耐えられないくらい嫉妬してしまうから」
首筋に顔をうずめ、少し掠れた声で甘えてくる夫の温もりに、レリアはくすぐったそうに、そして幸せそうに微笑んだ。
窓の外からは、柔らかな午後の日差しが部屋を優しく包み込んでいる。
子どもたちの成長がもたらす賑やかな騒動と、変わらない愛に満ちた二人の時間。シュペリオンの風は、今日もどこまでも暖かく、穏やかに吹き抜けていくのだった。
要点を3つにまとめました。
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オスカーの不憫な午後
フレスベルグから戻ったオスカーは子どもたちが心配でプレイルームへ向かうも、双子はグリフィスやカーリクスに夢中で完全に放置され、人知れずショックを受ける。
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ヘルナの「身代わりキャンプ」と未来の夫探し
数年後、11歳になったヘルナは変身魔法で双子の兄リアンになりすまし、錬金術キャンプへ密かに参加。叔父たちの「夫は何人いてもいい」というアドバイスを胸に、美少年3人組(ブレンダ、ルイ、レノックス)を配下に収めて夫候補の品定めを始める。
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ドレス姿のリアンと大混乱の結末
母レリアがドレスを着せたリアンを連れて現れたことで事態はカオス化。少したくましくなったリアンが妹への嫉妬で泣き出す一方、男の子たちは「ドレス姿のリアン」と「凛々しい隊長(ヘルナ)」の間で好みが割れて大争論に発展する。