ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜【２０３話】ネタバレ

「は？」

しばらく話を聞いていたジェレミーの口から当惑する反問が漏れた。

アグリチェの人々がここに来た理由は、フィペリオンとの賭け事を彼に報告するためだ。

私も毒蝶を通じて見た光景を思い出す。

以後、彼ら同士で頭を突き合わせてヒソヒソ話をし、結局はジェレミーにひとまず事実を知らせる方向で結論が出たようだ。

ジェレミーは異母兄弟たちがしたことを頭に抱えているようだった。

「おい、お前ら・・・」

「フィペリオンと、もう仲良くなった見たいね」

ジェレミーがイライラする前に私は口を開く。

静かに座って花を整理していた私が話すと、ジェレミーと異母兄弟たちが私を眺めた。

「だから要は、フィペリオンの人たちと仲良くカードゲームをしたってことでしょ？」

もちろん実際の事実とは少し違うけど。

「フィペリオンとあったことで皆心を痛めたはずなのに、それでもこのように先に親交を深めようとする試みをするなんて偉いわね」

アグリチェの人々には恐怖政治が最も効果的だろうが、元々全てのことは飴と鞭を交互に使うのが最善だ。

しかもそのことを隠さずにジェレミーに告白するなんて、それなりに偉いと思わない？

「そうでなくても、ジェレミーは私にあなたたちのことを褒めていたわよ」

そう言い出すと、ジェレミーが直ちに眉間を狭めながら反論した。

「姉ちゃん、私がいつ・・・」

「そんなに恥ずかしがる必要はないわ、ジェレミー」

「うっ・・・」

私が笑って吐き出した言葉にジェレミーは一瞬言葉が詰まった表情を浮かべる。

耳を疑う表情をしているのは、他のアグリチェの人々も同じだ。

彼らは呆然とした表情で反問する。

「褒め言葉って何？」

「一つを言うと熱を覚まして、別に細かく注意しなくても、みんな期待以上に行動が上手だと言っていたわ」

すると、ジェレミーを訪ねてくる前まではフィペリオンの件をどう言い訳しようとしていたか作戦していた兄弟たちがぎこちなく口当たりを固めた。

「特にユグドラシルではフィペリオンとの摩擦も何度かあったけど、みんな大人しく対処したじゃない」

そう言いながら、私は花瓶の中の花のうち、横に突き出た茎を一つ切り取る。

「正直、私たちがこのような立場に置かれたのは、全部父のせいじゃない？」

テーブルの上に落ちてくる葉っぱに、いくつかの視線が届いた。

「生前も私たちをただ使える賭博碑の一つ、あるいはいつでも利用して捨てることができる消耗品だと思っていたのに」

相次ぐハサミの音が私の声に混じって物静かな部屋の中に響く。

「ところが父が亡くなった今でもこんなに彼の付属物として扱われて足を引っ張られるなんて・・・」

私は手を止めて独り言のように付け加えた。

「本当に死んでも助けてくれない人よね」

「そうだよ。お父さんが行ったことのせいで、今私たちは苦しんでいるだろ？」

ジェレミーは私の考えを読み上げたかのように素早く調子を合わせてきた。

「とにかく、あの人間は昔から気に入らなかった。ともすれば人を処罰の部屋に閉じ込めておくのではなく、廃棄処分させると脅したりもするし。家門のための任務だとか、休む暇もなく外に出して人の骨まで吸い取って何もしてあげなかったし」

しかし、だからといって彼が心にもない言葉を作り出したわけではない。

今時ジェレミーが言ったことは、アグリチェの人々なら誰でも内心抱いている不満だ。

「率直に言って、したくないことでも命令不服従だとか何だかんだで怒鳴りつけてくるから、しょうがなかったこともあるしね」

「そうだね・・・！私もそうだった」

これまで着実に積もってきたことが明らかな悔しい気持ちを刺激すると、アグリチェの他の異母兄弟たちも蜂の群れのように立ち上がった。

私は花瓶の中の花に触れながら、黙ってそれを聞いて彼らに同調する。

群れに共通の敵が生まれれば、彼ら同士の結束はさらに強くなるものだ。

私は昨冬、この手でアグリチェを危機に追い込んだこともなかったかのように、すべての責任をラントに押し付けた。

「先に私たちに近づいてきたのはフィペリオンなのだから、私たちも少しは付き合ってくれても大丈夫でしょう」

さっきとは種類が変わった私の笑顔を見て、腹違いの兄弟たちが目つきを変化させる。

実際、フィペリオンはこれまでアグリチェの悪口を言う姿がかなり頻繁に捉えられた家門だ。

その誹謗対象がアグリチェ自体なら構わないが、そこに新しい首長であるジェレミーに対する露骨な悪口と無視も含まれていた。

そして、それは私の気分をかなり悪くした。

「もちろん、あくまで『親睦』を深めるための目的に話だけど」

英悪なアグリチェの人々であるだけに、私の言葉がどういう意味なのか理解したと考えられる。

（程度を知らずに暴れた者の終わりがどうなのかは、死んだ父を見れば分かるはずだから）

私は手を伸ばして花瓶の中の花を素手で折った。

そして甘く広がる香りを嗅ぎながらアグリチェの格言を囁く。

「すべては光の陰で。どんな場合でもそれを忘れるな」

そしてその翌日。

ついにノエル・ベルティウムがユグドラシルに到着した。