影の皇妃

影の皇妃【332話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「影の皇妃」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

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フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。

皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。

そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!

自分を陥れた大公家への復讐を誓い…

エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。

リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。

フランツェ大公:ベロニカの父親。

クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。

イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。

レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。

フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。

ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。

アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。

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332話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 慌ただしいスケジュール⑦

『エド? 聞き覚えがない名前だ。』

彼の言葉に耳を傾けるエレナだったが、特徴的な部分は見当たらなかった。

公用語を流暢に話す外国貴族らしいが、特有のアクセントも感じられない。

「エド卿ですね。お会いできて光栄です。」

エレナは戸惑いながらも優雅さを失わずに挨拶を返した。

もともと貴族社会では、相手に敬意を払うのが当たり前とされている。

「……。」

エドはエレナをじっと見つめた。

彼のその行動は、あまりにも礼儀正しくエレナにとっても予想外だったため、少し驚きを覚えたほどだ。

「エド卿?」

「ああ、これは大変失礼しました。」

「私の顔に何か付いているかと思いました。」

「失礼しました。噂というものは常に誇張されがちだと知っていましたが、実際にL様を拝見し、その噂を改めなければならないと思いました。」

エレナは静かに微笑んだ。

『紳士ね。』

一目惚れしたかのように目を離さない彼の視線や、褒め称える流れるような口調まで、どこか洗練された雰囲気が漂っていた。

知らない人が見れば、この程度の男性がこんなにも接近するならば、ほとんどの女性が好感を抱くに違いないだろう。

しかし、彼女にはその基準が当てはまらなかった。

「……無理なお願いですが、もしも可能であれば、レディの手の甲に口づけする栄誉を頂けないでしょうか?」

「ここでですか?たくさんの人が見ているのに?」

大胆なエドの提案に、エレナの目が驚きから柔らかな怒りへと変わった。

「失礼だとは承知していますが、L様にお会いできたこの日を忘れたくないという小さな望みです。どうか拒絶なさらないでください。」

「……。」

エドは自分をさらに低姿勢にしながら、エレナの手の甲に口づけすることを切望していた。

『王国出身なのかしら?』

エレナの眉がわずかに動いた。

手の甲に口づけをするという行為は、ロイエ王国においてレディへの愛情や尊敬を示す礼儀として行われるものだ。

エレナの沈黙を承諾の意と誤解したエドは、一歩前へ進み、ひざまずいてエレナの手を取ろうとした。

「止めろ。」

「……。」

その瞬間、レンとヒュレルバードが前に出てエドを制止した。

エレナとエドの間に割り込んだ二人の鋭い対応にエドの目が大きく開いた。

まるで許可を得る必要があるかのような、二人の威圧的な態度にエドは戸惑いを隠せなかった。

「これは…。Lにここまで夢中になっている護衛の方々がいらっしゃったとは気づきませんでした。」

エドはゆっくりと手を引っ込め、控えめな笑みを浮かべる。

予想外の反応に若干気まずさを覚えながらも、それが当然のことだと考えた。

彼女がそれだけ価値のある人物であることを物語っているのだから。

「我々は監視役ということでしょうか?」

エドは視線を向け、レンをじっと見据えた。

微笑んでいるものの、彼の目は笑っていなかった。

「誰が見たら、私たちが親しい仲だと誤解しそうですね?」

「そんな誤解なら大歓迎です。レン伯爵のような方なら、誰でも友人にしたいと思うでしょう?」

レンは薄く笑った。

自分の名前が知られていることに驚いた。

最初から自分の存在に気づいていたということだ。

「私は社交的な性格ではないので、友達を作るのが苦手なんですよ。」

「それは残念ですね。私たちは相性が良いと思っていたのですが。」

「君と私?全く反対だろう。互いに気まずいだけさ。」

微笑みを浮かべながら話しているものの、二人の間には微妙な緊張感が漂っていた。

エドが肩をすくめたのを見て、ヒュレルバードが視線をそらしながら言った。

「主にふさわしい隙のない素晴らしい騎士をお持ちですね。賞賛に値します。」

「過分なお言葉です。ヒュレルバード卿にはいつも感謝しています。」

エレナの目元が和らいだ。

表向きにはヒュレルバード卿の実力を知る者はそう多くはない。

誇るべき宮廷近衛隊とリンデン伯爵の騎士団の一員だと推測されるが、それよりも騎士の名声よりエレナのそばに仕えることが名誉だと感じているのだろう。

『ヒュレルバード卿の実力を見極めたと?』

エレナの立場では、そんなふうに考えることはできなかった。

言葉には出さなかったものの、一国のサロンの主人でありながら、無骨で過剰に忠実な彼女の騎士を見て感嘆の言葉を述べることはできなかった。

「大変お時間を取らせました。近いうちにまた正式にお会いし、ご挨拶いたします、L。」

「またお会いしましょう、エド卿。」

エドは淡々とした別れの挨拶を残し、その場を後にした。

エレナとのやりとりにおいて、彼の態度は慎重であり、無駄な言葉を避ける姿勢が、他の貴族たちの軽薄な態度と対照的だった。

「レン、少し付き合ってくれる?」

エドが去るのを見届けると、エレナはレンを引き連れて静かに講堂の後ろへと移動した。

レンは何か良いことでもあったのか、くすくす笑いながら彼女についていった。

「今、私を叱ろうとしてるの?」

「冗談で言っているわけじゃないんです。あの人が誰なのか、レンは知ってますよね?」

エレナが腕を組みながら尋ねると、推測を促すような口調でレンを見つめた。

「知らないけど?」

「レン。」

「本当に知らないよ。」

「ちょっと真面目に答えてもらえません?」

「無理だね。名前がエドだってことだけ分かれば十分じゃない?それ以上知ってどうするの?全部ぶち壊してほしいわけ?」

笑顔を浮かべた顔とは裏腹に、レンの口から出る言葉と目つきには少しも真剣さが感じられなかった。

理由は分からないが、非常に苛立ちを覚える様子が見て取れた。

「どうしてですか。あの人は私のことをよく知っているのに、私は何も知らない。それがどれだけ不安か分かります?」

「君が不安にならないようにするべきだな。でも、それを言いたいわけじゃないんだけどさ。」

レンが意味深な言葉を投げかけ、ぐしゃぐしゃな前髪をかきあげる。

エレナの目線が彼に向けられた。

「私を監視しているという人がエド卿なんですか?」

「その通り。」

「ずっと私のそばでちょろちょろしていて、目についていたんですね。」

「そうだ。」

その言葉は、エドという人物が密かにエレナを見守り続けていたことを示していた。

『どうして私を監視していたの?』

エレナは疑問を抱くよりも、まず相手を把握することが優先だと考えた。

「これだけ教えてください」

「何?」

「ロイエ王国のエドモンド王子のことですよね?」

天性の高貴さ、王室を象徴する優雅さ。

空気のように自然に体に染み込んだ王国の礼儀。

じっと見られるのを嫌うエレナだったが、いくつかの要素が頭に浮かんだ。

レンの同意するような返答に、エレナは確信した。

エドは歴史的背景からすると、現在ロイエ王国の王になるべきエドモンド王子であることが明らかだった。

『結局、大したことない人物ね。』

王位に就いてからわずか2年で、彼は「ライオン」という称号を得るに至った。

王位に就く際に生じた混乱を克服し、北部と南部の親睦を勝利で収め、王国を象徴する存在となったのだ。

エレナの歴史的な知識と個人的な推測によれば、現在のナビ効力によって王子の地位に留まっているものの、いつかロイエ王国の王位に就く人物であると見なされていた。

「理解できません。エドモンド王子が何のために私を注視しているのですか?遠く離れたこの帝国まで来て、それも直接?」

エレナが最も理解できない点だ。

単なる興味や好奇心で片付けられる話ではなかった。

しかし、それでもこのような手間を惜しまず自分に注目する理由があるのだろうか。

「おい。」

考え込んでいるエレナを、レンが声をかけて起こした。

「あいつを考えるのはやめなよ。」

「どうやってやめられますか。どんな意図で近づいてきたのか、知る必要があります。」

ようやく貴族の生活から抜け出し、きちんとした生活を送っているエレナにとって、この状況を無視するわけにはいかなかった。

「やめておけ。」

「……。」

「全部だめだ。やめておけ。」

「いや、私が何かするつもりだと思って止めているんですか?」

「それすらだめだ。」

エレナは言葉を失い、驚いた顔でレンを見つめた。

不条理にもほどがある。

「いったいどうしてなんですか?」

「面倒だから。」

「エドモンド王子ですか?どうして?」

「面倒なことに理由が必要か?あいつ、問題を起こす気しかしない。嫌いだし、声も嫌いだし、お前に話しかけるのも嫌だ。」

エレナが呆れたように見つめる中、彼は肩をすくめ、言葉を続ける気もなく口を閉じた。

「まあいいわ、最近のことでも聞かせて。元気だった?どこか体調を崩したりしてない?」

「別に別れる時に聞くようなことじゃないわ。」

「聞かれないよりはマシだろう。じゃあ行くね。」

エレナは微笑みながら軽く手を振った。

ここでこれ以上時間を無駄にするわけにもいかないし、式典の時間に遅れるわけにもいかない。

 



 

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