こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者

13話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犬と主人⑥
再びカシスを訪れたのは、遅い夕刻だった。
結局、彼が目を覚ましているという証拠を見つけられず、部屋を後にせざるを得なかった。
幸運にも今回は目を開けているカシスと出会うことができた。
扉を開けると、暗闇の中でもはっきりと輝きを放つ金色の瞳が視線を向けてきた。
一瞬足を止めたものの、私はためらうことなく部屋に入り扉を閉めた。
その後、壁に掛けていた燭台を手に取ると、火の明かりが一層部屋を明るくした。
これは特殊な術式を使って、火の大きさを一定に保つようにしたもので、カシスが少しでも快適に過ごせるように配慮した結果だ。
もう少し明るく炎を灯そうかとも思ったが、光が強すぎるとカシスと面と向かうのが少し気まずくなる気がしてやめた。
そのため、部屋の中はお互いの顔がわかる程度の灯りだけで明るくなった。
穏やかな炎の中で、カシスが静かに私を見つめてきた。
彼は、先ほどまで横になっていた場所から少し離れた壁にもたれていた。
燭台との距離がかなりあるせいか、彼の顔の一部は暗い影に沈んでいる状態だった。
その暗がりに身を隠すようにして、音もなく私をじっと見つめる姿は、自分の領域に現れた存在を警戒しつつ見守る野生動物のような印象を与えた。
「傷が浅いようなので、もう少し横になっているほうがいいでしょう。」
彼の体調を気遣って尋ねようとしたものの、なんとなくその一言で済ませることにした。
自分の手でカシスの傷を手当てしてから、まだほんのわずかな時間しか経っていなかった。
だからといって、この状況が彼にとって心地よいものであるはずがなかった。
「治療はさっき医者がしてくれたわ。ほかに痛いところや不便なところはない?」
私の言葉に、カシスはわずかに眉をひそめた。
そして、少しだけ持ち上げられた瞳が私を見つめ返した。
もし私に人の心を読む能力があったなら、彼が今どんなことを考えているのかを知ることができただろうし、さっき会った時のあの態度が本当に演技だったのかどうかも確認できただろう。
しかし、今対峙している彼の顔からは、内面が何一つ見えてこなかった。
しばらくして、カシスが口を開き、短く答えた。
「……特にない。」
ただ、その言葉にはどこか不機嫌そうな響きが含まれていた。
前にいる存在を少し鬱陶しく思っているような、微妙な空気感だ。
「痛み止めを持ってきたけど、飲む?」
私はカシスに向かって少し近づいた。
今回は、彼の返事を待つこともせず、行動を起こした。
「その前に簡単に食べられるものを持ってきたから、まずお腹を満たして。」
今私が持っているトレイには軽食が入っていた。
それは柔らかいパンとスープ程度の控えめなもので、しばらく空腹だったカシスがいきなり油っぽい料理を食べられるわけがないと考えて選んだものだ。
もちろん、栄養補給として薄い飲み物も用意してあったが、それを食事と言えるかどうかは微妙だった。
私はカシスの隣に近づき、そのトレイをそっと彼のそばに置いた。
「ここにはテーブルも椅子もないから、不便かもしれないけど、もともとこの部屋にあった危険な物はすべて片付けておいたから。」
実際、カシスが私を襲うかもしれないという可能性を完全には否定できなかったため、私は最初から少しだけ身構えていた。
地下牢のときとは違い、彼の腕に取り付けられた長い鎖のおかげで、この一定の距離内では自由に動ける状態だった。
しかしカシスは、私の動きをただじっと見守るだけで、その場から一歩も動こうとはしなかった。
「こういうのは下僕にやらせればいいのに。」
彼はただ乾いた声でそう呟いた。
その反応に少しだけ気が緩んだ。
もしカシスが私に対して敵対的な態度を見せたらどうしようと、この部屋に入る前から少し不安を感じていたからだ。
「下僕には服を用意して持ってくるよう命じたわ。」
実際、カシスがこの部屋に入った下僕を襲わないか心配で、私自身が直接来たのだとは伝えなかった。
彼が脱出を試みるつもりで無謀な行動に出るかもしれないという懸念もあった。
いずれにせよ、今のカシスの状態ではアグリチェの外に逃げるのは到底無理だった。
しかし、彼の考えはまた別のものである可能性もある。
もしカシスが騒ぎを起こすようなことがあれば、その問題がアグリチェ一族の耳に入る前に私が解決しなければならなかった。
どうせこの屋敷の下僕たちよりも私の力が上回っているのだから、いざというときにはカシスを再び屈服させるつもりだった。
それに、これからはカシスと私は同じ船に乗ることになるのではなかったか?
だから少し時間をかけて、お互いの顔をじっくり見た方がいいのだろう。
「その服、かなり汚れてるね。破れたところも多いし、そろそろ新しい服に替えたほうがいいんじゃない?」
そんな思いで軽く提案してみた。
すると、その瞬間、カシスの表情が変わった。
ただ、その意味はどこか否定的なニュアンスを含んでいるように思えた。
彼がどんな考えを巡らせていたのか、こちらを見つめるその視線は少し冷たかった。
しかし、不思議なことに、もし私の見間違いでなければ、カシスの目には微かに混じった躊躇やためらいのようなものが感じられた。
また一つ疑問が胸に湧いた。
(一体何だろう。この人、さっきまで眠っていたんじゃなかったの?)
しかし、カシスは長く私を見つめ続けることなく、すぐに視線を外した。
だから私も彼の目を十分に観察することはできなかった。
そして、しばらくしてカシスがゆっくりと口を開いた。
「それで……」
続いて彼の声は彼の表情と同じくらい冷静で断固としたものだった。
「今や私はおもちゃになったんだな。それで、俺がやるべきことは何だ?」
これまでの話の流れから明らかに話題を変えようとしているように感じたが、私はそれを無視して冗談のような話を続けるべきか迷った末に、素直に答えることにした。
「よく食べて、よく眠って、しっかり休んで元気になることだよ。」
カシスはまさか自分がそんな返事を受け取るとは思わなかったようで、驚いた表情でこちらを見た。
予想外の言葉を聞いた人のように、彼はしばらく私を見つめていた。
「まずは食べて。毒なんて入れてないから。」
カシスの視線は床に置かれたトレイの上にある食べ物へと向かった。
「もし疑っているならね。」
私は彼が何か言い出す前に、トレイの上にある食べ物を一口取って口に運んだ。
私の行動を見たカシスの目元が、わずかに動いたように思えた。
私は彼が食べ物に毒がないことをこれで理解してくれることを願った。
彼にそれを示すために少し待つことにした。
もちろん、ここに毒があったとしても私には効かないが、カシスにはそれが分からない。
ただこれは、彼の疑念を和らげるための単なる演技だった。
「それでも信じられないなら、もう一口食べてみようか?」
「必要ない。」
そう言いながら、カシスは静かにトレイを引き寄せた。
そして彼は黙ったまま、腕を組んで私をじっと見つめてきた。
どうやら私がいると食事がしにくいと思ったのか、私は服を取りに行った召使いが戻るのを確認しようと部屋を出ることにした。
一息つける椅子さえないことに気づき、後で椅子のひとつでも持ってくるべきだと考えた。
カシスが危害を加える心配がないと確信が持てたら、彼が必要とする他の物も運んでくるつもりだった。
しばらくして私はカシスに着替えの新しい服を持って再び部屋に向かった。
もちろん直接彼に渡すのではなく、後ろからついてきたエミリーに渡してもらうことにした。
少し前、食事と薬を運んできたときと同じように。
これは成果を得た行動のようにも見えるが、私が直接カシスの世話をしているような感覚が拭えない。
ただ、それを気にしないわけにはいかなかった。
部屋の前で足を止め、私はエミリーを振り返った。
「もう大丈夫よ。行っていいわ、エミリー。」
「はい、お嬢様。」
その後、エミリーから受け取った服を持って、カシスのいる部屋へと入った。
出入りするたびに鍵を開け閉めするのは手間だと感じつつも、閉じ込められている人の立場なら嫌な気持ちになるだろうとも思った。
今のところはどうしようもない問題だが。
私は少し眉をひそめながらドアノブを押した。
そして部屋に足を踏み入れた瞬間、私は立ち止まった。
カシスは先ほどとは違い、座ったままではなく、立ち上がっていた。
ドアにもたれかかり立つ彼の後ろ姿からは、鋭い視線が放たれていた。
私が歩みを止めた理由は、彼が上着を脱ぎ、傷だらけの体を露わにしていたからだ。
離れていても、彼の状態が一目で分かった。
揺れる炎の光が彼の体の見事な輪郭を浮かび上がらせていた。
カシスの体には軍医が巻いた包帯が巻かれていたが、そうでない場所には赤い傷跡がまだ完全に癒えずに残っていた。
しかし、彼の裸の体を目にした瞬間、私の頭を最初によぎったのは「痛々しい」という感情ではなかった。
ドアノブを手放したドアが背後で滑らかに閉じる音が聞こえた。



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