シンデレラを大切に育てました

シンデレラを大切に育てました【246話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

246話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 6年の恋②

「王子妃殿下がお見えです」

侍女の報せに、アトリエでキャンバスに向かっていたリリーは弾かれたように立ち上がった。姉のアイリスが来たのだ。

えっ? 連絡もなしに、一体どうして?

何か一大事でも起きたのかと胸騒ぎを覚え、彼女は作業着のまま慌てて一階へと駆け下りた。

「アイリス!」

応接室のソファには、すでに姉の姿があった。しかし、その姿勢は少しだらしなく、ぐったりともたれかかるような、普段の彼女からは想像もつかないものだった。

息を切らせて駆けつけたリリーは、その様子に思わず足を止める。彼女の後ろからは、書斎にいたアシュリーも心配そうに追うようにして入ってきた。

「どうしたの?」

最初に口を開いたのはアシュリーだった。気遣わしげな面持ちでアイリスの隣に腰を下ろす。

疲労の色を隠せないままソファに深く身体を沈めていたアイリスは、二人の妹を見て力なく微笑んだ。そして、両腕をそっと広げて見せた。

「いらっしゃい、私の妹たち」

「本当にどうしたの?」

「何かあったの?」

アシュリーとリリーが座れるように、アイリスは行儀悪く両足を持ち上げた。二人は姉を挟むようにして両脇に腰を下ろし、いつもよりずっとやつれて見える姉の顔を覗き込んだ。

結論から言えば、何があったわけでもなかった。

アイリスは愛おしそうに妹たちを両脇から抱き寄せ、その頭にそっと自分の頭を預けた。

――ああ、楽だ。

自然と、そんな吐息が漏れる。

「昔はね、お母様が靴を脱いでいるのが理解できなかったけど」

三姉妹の母であるバンス伯爵夫人は、家族だけの空間になると、よくスリッパさえ脱ぎ捨てて裸足で過ごしていた。当時は「その方が楽だから」と言われてもピンと来なかったが、今ならその気持ちが痛いほどよく分かる。

アイリスはそのままの流れで靴を脱ぐと、なんと足をテーブルの上へと乗せた。

「アイリス!?」

アシュリーが驚いて声を上げたが、リリーはくすくすと笑いながら、姉に倣って自分も靴を脱いだ。二人の姉が同じように足をテーブルに乗せるのを見て、アシュリーも観念したように苦笑し、靴を脱いでその後に続いた。

「やっぱり、家が一番だね」

アイリスのしみじみとした言葉に、リリーとアシュリーは顔を見合わせた。やはり、何かあったに違いない。

リリーがそっと、探るように尋ねる。

「お城で、何かあったの?」

「いつも通りよ」

「それなのに、どうしてそんなに疲れているの?」

アイリスは「大したことじゃないから」と言いたげに口を噤んだ。ちょうどその時、メイドがお茶を運んできたため、三人は慌てて足を下ろす。

姉が口を閉ざしてしまったため、リリーとアシュリーは様子を窺いながら、場を和ませようと別の話題に切り替えた。

話題は、アシュリーが営む石けん工房の件だ。事業は順調そのもので、ますます質の良い商品が作れるようになっていた。バンス伯爵も試験的に、その石けんを粉末状にして販売することを提案したらしい。

その試みは大成功を収め、市場で大きな反響を呼んでいた。おかげでバンス家の石けんは、用途に合わせて細かく分けて売られるようになった。洗濯用、美容用、入浴用。そこからさらに原料や形、香りで細分化されているのだという。

アイリスが再び口を開いたのは、アシュリーが洗濯用から発展させた「入浴用の粉石けん」について熱心に話している最中だった。

「普通は、結婚すると実家が居心地悪くなるっていうけれど……私はそうでもないみたい」

唐突なその一言に、アシュリーとリリーの会話がぴたりと止まった。

王子妃になってからのアイリスは、以前よりも口数が減っていた。それは暗くなったというわけではなく、落ち着きを払い、より人の話に深く耳を傾けるようになったという印象に近かった。

リリーはアシュリーと視線を交わし、そっと言葉を返した。

「そう?」

「そういう話はよく聞くわよね。実家は居心地が悪くなって、結婚して新しく住む家こそが『自分の家』になるって」

けれど、この場で結婚の経験があるのはアイリスだけだ。リリーとアシュリーには、それ以上何も言えなかった。もし母がここにいれば、きっと気の利いた言葉をかけてくれただろうに。

リリーは、自分が姉に何もしてあげられないことに小さなもどかしさを感じながら、努めて明るく言った。

「でも、それっていいことじゃない? この家も家だし、お城も家だって思えるんでしょ?」

「そうね」

アイリスはリリーを見て、ふっと微笑んだ。そういう意味では、自分は恵まれているのかもしれない。

そして今度は、アシュリーの方を向いて静かに告げた。

「お城は確かに私の家なんだけど、あそこでは……私は常に、王子妃であり、母親でいなきゃいけないの。……でも、この家は……」

言葉を濁したアイリスに、二人は顔を見合わせる。

「この家は?」

「ここにいるとね」アイリスは二人を見て、少し寂しそうで、けれどどこか救われたような表情を浮かべた。「今でもただの“バンス家のアイリス”のままでいられる気がするの」

「お姉さまは、どこにいたってずっとバンス家のアイリスだよ」

リリーの言葉に、アイリスは柔らかく笑った。それが何よりも嬉しかった。どこにいても、母であり王子妃である重い役割を、すべて脱ぎ捨てていられる場所がここにはある。

「誤解しないでね、王子妃であることも、母であることも嫌なわけじゃないのよ。むしろ愛しているわ」

分かっている、と言うようにアシュリーが安心させるように微笑み、深く頷いた。

リリーもアシュリーも、よく知っている。アイリスが王子妃としてどれだけ完璧に振る舞っているかを。どれほど血の滲むような努力を重ねてきたかも、そして自分の立場や務めをどれほど大切に誇っているかも、二人は誰よりも理解していた。

最初は「バンス家の娘では王子妃には少し力不足では」と不安視する声も確かにあった。けれど、アイリスは誰よりも的確に公務をこなし続け、その圧倒的な実力で周囲の評価を引っ繰り返していったのだ。もちろん今でも、バンス家の出自を理由に彼女を冷遇しようとする者は僅かにいる。それでもアイリスは、そんな雑音をものともせずに突き進むだけの強さと聡明さを身につけていた。

「でもね……時々、私が王子妃だからという理由で、あなたたちが不利益を被っているんじゃないかって考えると、少し申し訳なくなるの」

――それこそが、今日彼女がここへ足を運んだ本当の理由だった。

その言葉を聞いて、リリーはデジャヴを感じた。最近、どこかで同じような話を耳にした気がする。そしてそれは、アシュリーも同様だった。

実際、アシュリーの事業には「王子妃である姉の後ろ盾を利用しているのではないか」という穿った疑いの目が向けられることもあった。

アシュリーは慌てて肩をすくめ、大したことではないという風を装って言った。

「王子妃の姉がいることで得られる利益に比べたら、そんな不利益、ちっぽけなものよ」

そんな利益、あったかしら?

リリーは妹の言葉に一瞬考え込み、記憶をたどった。思い返してみれば、確かにゼロではない。たとえば王立劇場で、ロイヤルボックス席に同席して最高峰の公演を観られること。それも一種の“特権”と言えなくもない。

――もっとも、バンス家専用の特等席が別にあることを考えれば、それが本当に「得」なのかは微妙なところだが。

「そうなの?」

アイリスも意外そうな顔で尋ねた。王族ではない人間にとって、王族の身内がいるということは、利益よりもむしろ面倒やしがらみの方が多いのではないか。そんな気がしていたからだ。

だが、アシュリーは真面目な顔のまま、妙に明るく言い放った。

「じゃあさ、街で変な男に絡まれてイラッとしたら、お姉ちゃんの名前を出せばいいんだよ」

それだ。リリーは思わず身を乗り出してアシュリーに同意した。

「それな!」

似たような手で、「母の名前を出す」という必殺技もある。

きょとんとするアイリスに向かって、リリーはくすくすと笑いながら言葉を続けた。

「いるでしょ、ああいうの。こっちには話す気なんて微塵もないのに、しつこく声をかけてくる男」

ぼーっと考え事をしながら散歩を楽しみたいだけなのに、気づけば横に並んでベラベラと喋りかけてくる。芝居に誘ったり、お茶に誘ったり、理由は様々だ。

そして、そういう男たちに限って、こちらがやんわりと断ろうとしても空気を読まずにしつこく食い下がってくる。ひどい時には、いきなり自分の馬車に乗れなどと、あり得ない暴挙に出る連中までいるのだ。

「私たち、もう若くないから焦っていると思われて、舐められているのかもね」

アシュリーは肩をすくめて苦笑した。リリーもアシュリーも二十四、二十五歳。社交界の基準で言えば、結婚適齢期を少し過ぎた年頃だ。放っておけば「売れ残り」扱いされる二十五歳を目前に控え、ろくに考えもせず声をかければ、誰でも喜んで飛びついてくるとでも思われているのだろう。

「あり得ないわ!」

アイリスは思わず声を荒らげた。リリーが望めば、いつでも結婚などできる。今だって、彼女の側にはダグラスがいるのだから。たとえダグラスでなくとも、リリーを慕う男はいくらでもいる。その多くは芸術家だが――。

しかし、その男たちの多くは、彼女自身というよりは芸術そのものに強い関心を持つ風変わりな連中ばかりだった。

アシュリーもまた、例外ではない。アイリスは彼女にまつわる噂を思い出し、思わず吹き出してしまった。恋愛にはとんと興味のなさそうなリリーとは対照的に、アシュリーはかなり多くの男性と会っているという話だった。中には、彼女に求婚した男を三人同時に呼び出し、同じ席で会わせたことがある、なんて手荒な噂まである。もちろん、男たち三人の同意を得た上でのことらしいが。

「そういう時に使う“魔法の言葉”があるのよね」

「それそれ」

リリーの悪戯っぽい言葉に、アシュリーも楽しそうに笑って頷いた。気が乗らない相手にしつこく迫られた時は、その言葉をぶつければいい。本当に使っていいのかどうかは――今、こうして姉本人に確認すればいいのだ。

「じゃあ、それを言えばちゃんと引き下がってくれるの?」

半信半疑のアイリスに、二人は顔を見合わせ――お腹を抱えて笑いながら、コクコクと激しく首を縦に振った。

「驚くほど効くのよ! 『あなたとお付き合いしても良いか、王子妃殿下にお伺いを立ててもよろしいですか?』って微笑みながら聞くと、十人中八人は『あ、いや、それはちょっと……』って青くなって逃げていくわ」

リリーの得意げな説明に、アイリスはぽかんとした顔で問い返した。

「でも、それじゃあ……本当に素敵でいい人まで、恐縮して逃げちゃったらどうするの?」

「……ああ、アイリス」

アシュリーは呆れたように深くため息をつき、首を振る。リリーはソファの背もたれにゆったりと身体を預けながら、さらりと言ってのけた。

「お姉ちゃんの名前を出したくらいで逃げ出す男が、まともである確率なんてどれくらいあると思う?」

「でも、いちいち王室の許可が必要だと思って、身を引く誠実な人もいるんじゃないかしら?」

「アイリス。私たちに本気で求婚しようとする男はね、母が国初の『女伯爵』で、姉が『王子妃』だっていうその重すぎる現実を、丸ごと受け入れる覚悟がなきゃいけないの。許可がどうこう以前の問題だわ」

「……それもそうね」

アイリスは降参したようにため息をつき、もう一度ソファの背にもたれかかった。そして妹たちを交互に見つめ、ぼやくように言った。

「十人中八人が逃げるなんて……私の名前、そんなに恐れられているの?」

「むしろ魔除けとして感謝してほしいくらいよ」

「この国には、そんなにまともな男がいないってこと?」

アイリスの深刻な嘆きに、アシュリーとリリーは顔を見合わせた。

正直なところ――“いないわけではない”。むしろ、それなりには存在する。

ただし問題は、二人の「男を見る基準」が天高くに設定されすぎていることだった。

ダニエル、リアン、そしてダグラス。

身近にいる男たちのスペックが規格外すぎるせいで、並の男では最初から視界にすら入らないのだ。

そしてもう一つの問題は、アシュリー自身にあった。リリーには結婚する気がなく、アイリスはすでに既婚。だからこそ、必然的に次の出会いを求められるのはアシュリーなのだが――。

「いないわよ。少なくとも、私の周りにはね」

アシュリーは小さくため息をついて言った。

ヘンリーという男との手痛い失敗を経験してから一年ほどが経ち、彼女はようやく前を向いて人と付き合えるようになっていた。「人を見る目を養いなさい」という母ミルドレッドの助言を、素直に受け入れたのだ。読書会や音楽会、観劇にも積極的に顔を出し、そこそこ良さそうな相手ならデートの誘いにも応じた。中には「これは」と思える相手も二人ほどいた。

――それでも、決定打にはならなかった。

「事業を手がける男って、だいたいどこか変人よ。お姉ちゃんたちの周りはどう?」

アシュリーの問いに、アイリスとリリーは顔を見合わせる。先に口を開いたのはリリーだった。

「芸術家も全く同じ。変人の巣窟よ」

詩人は言うに及ばず、特に画家は酷いものだった。彼女より経験のある大家ならまだしも――デビューしたばかりの若手ほど、妙なプライドと癖をこじらせている。新人の画家が、天才であるリリーに向かって偉そうに絵を教えようとする姿など、もはや極上の笑い話でしかなかった。

「アシュリー、もう分かっていると思うけれど――芸術をやっている男なんて、絶対に付き合うもんじゃないわよ」

当の芸術家本人の口からそんな辛辣な台詞が飛び出し、アシュリーは思わず吹き出した。そしてそのまま、アイリスへ視線を向ける。

「お姉ちゃんは?」

「うーん……貴族もかなり微妙ね」

「それ、範囲が広すぎるでしょ!?」

アシュリーの鋭いツッコミに、応接室はドッと大きな笑いに包まれた。確かに、貴族も芸術家も事業家も選択肢から外してしまったら、この世にはもう男がほとんど残らない。

「はあ……」

アシュリーはソファにもたれ、わざとらしく大袈裟なため息をつくと、冗談めかして言った。

「結論。私たちが一番避けるべきなのは――貴族で、事業家で、その上芸術にも手を出している男、ね」

「いいえ、それも違うわ」

リリーのきっぱりとした否定に、アシュリーはきょとんとした表情を浮かべた。「誰のこと?」という妹の視線を受け、リリーはくすっと悪戯っぽく笑って答える。

「男爵様は、とっても素敵じゃない?」

「男爵様? 誰のこと……」

アイリスとアシュリーは一瞬きょとんとしたが、次の瞬間、ハッと息を呑んだ。

「……あ」

「リリー!」

三人の頭に同時に浮かんだのは、母の夫であり、自分たちの保護者でもある――ダニエル・ウィルフォード男爵の姿だった。

五年という歳月が流れても、彼は全く変わっていなかった。年を重ねた衰えも見せず、相変わらず若々しく冷徹に整った容姿で――妻であるミルドレッド以外の人間には、どこか冷たい印象すら与える男。その冷ややかな空気は、アイリスやリリー、アシュリーに対しても例外ではなかった。

彼はあくまで「ミルドレッドの娘たちだから」という理由、ただそれだけで、最愛の妻を喜ばせるために三人と関わっているように見えた。つまり、彼女たちが頼めばどんなことでも完璧にこなしてくれるが、自分から個人的に連絡を取ったり、必要以上に距離を縮めたりは決してしないということだ。

彼から来る連絡といえば、月に一度、三人それぞれの口座に律儀に振り込まれる十分すぎるほどの生活費くらいだった。「もう自分たちで稼げるから、これ以上はいらない」と三人が断っているにもかかわらず、ダニエルは自分がバンス伯爵の夫であり、彼女たちのもう一人の保護者であるという義務感から、毎月きっちりと振り込み続けていた。

冗談半分にリリーは、その定期的な振り込みを「ダニエルがこの世界に生存している証拠」だとか、「私たち三人と、お母様をまとめて一括で養っているという男のプライドの代金なんじゃないか」と言って笑い合ったこともある。

「仮にこの世に残った最後の男があの方だとしても、私にはちょっと無理かな……」

アシュリーは、かつて財務資料を一緒にチェックしていた時のダニエルの冷徹な眼差しを思い出し、身震いしながら言った。

「でも、もう一人同じ条件の人がいるわよ」

「誰?」

ダニエルと似たような、極上の条件を持つ男が他にいると聞いて、今度はアイリスも興味深そうに身を乗り出した。リリーはくすくすと笑いながら答える。

「フィリップおじ様」

「リリー!」

事業を営む貴族であり、なおかつ芸術への造詣も深い――確かにフィリップ・ケイシー卿も、ダニエルと酷似した条件を持っていた。アイリスは呆れたようにため息をつき、リリーの肩を軽く小突いた。

そのまま三人は顔を見合わせ、声を合わせてくすくすと笑い出す。まるで全員が結婚する前の少女時代に戻ったかのような、穏やかで懐かしい、温かな空気が応接室を満たしていく。

姉妹の笑い声を聞きながら、リリーの胸にも同じ愛おしさが込み上げていた。高名な天才画家でもなく、社交界の異端児でもない――ただの“バンス家のリリー”に戻れたような感覚。

彼女はソファの上で足を崩して膝を抱え込み、アイリスを見つめながら言った。

「さっきお姉さまが言っていたこと、なんだか分かる気がする」

「何の話?」

「“バンス家のアイリス”と、“王子妃であり母であるアイリス”は違うって話。そして、この家に来ると本当の自分に戻れる、っていうのも」

リリーも今、まさに同じことを肌で感じていた。彼女は、かつて母がいつも定位置として座っていた一人掛けのソファに愛おしげな目を向けながら、言葉を続ける。

「私たちがあの特等席に座らないのも、きっと同じ理由よね」

応接室に入った瞬間、三姉妹は昔と変わらず――自然と自分たちの“居場所”を守るように座っていた。アイリスが王子妃でもなく、リリーが画家でもなく、アシュリーが若き社長でもなかった頃の、あの頃の距離感のままで。

あの輝かしい日々の中心には、いつもあの一人掛けのソファに腰掛ける母の姿があった。

「お母様、いつこちらにいらっしゃるの?」

アイリスの問いに、アシュリーが肩をすくめて答える。

「来月くらいかしら。社交シーズンが始まってから首都に戻ってくるみたいよ」

現在、ミルドレッドとダニエルは、それぞれの領地を精力的に行き来しながら統治にあたっていた。アイリスは興味深そうに身を乗り出す。

「領地はどう? ずいぶん変わったの?」

アシュリーとリリーは、毎年社交シーズンが終わると母の領地へと赴き、ひと月かふた月ほどをそこで過ごして戻ってくるのが恒例となっていた。アイリスも数年前に訪れたことはあったが、最近は王子妃としての公務が忙しく、なかなか足を運べずにいたのだ。

「うん、ほとんど首都みたいな大都市に変貌してるよ」

「まあ、悪くはないわね」

アシュリーとリリーから、全く異なるニュアンスの答えが同時に返ってきた。“首都レベル”と評したアシュリーに対し、“悪くない”と一段落とした評価を下すリリー。

「どっちが正しいの?」

アイリスが目を丸くすると、“悪くない”と言ったリリーが肩をすくめて弁明した。

「絵を描く環境としては最高よ。でも、劇場は小さなものが一つあるだけで、まともな公演もほとんど行われないの」

つまり、最先端の文化や芸術を楽しむには、まだまだ物足りないということだ。

「それは仕方が無いでしょ。首都に比べたら規模が小さいんだから。他はどうなの?」

アイリスが尋ねると、今度はアシュリーが嬉々として答えた。

「本当に首都と遜色ないわよ。道路は完璧に舗装されていて綺麗だし、水道などのインフラ設備も驚くほど整っているの」

地方の領地としては、それだけでも信じられないほど優秀だ。そう感心するアイリスの表情を見て、アシュリーがくすっと笑って付け加えた。

「それから、食べ物も素晴らしいわ」

「へえ、お抱えの料理人が優秀なの?」

「ううん、お屋敷の料理のことじゃなくて、あの土地に住む領民たちの普段の食事のこと。お母様の方針で、領民は少なくとも週に二回は必ず『肉』を食べられるように経済を回しているのよ」

「えっ……」

思わずアイリスは絶句した。

領地の“全員”が、週に二回以上も肉を食べられる生活。それがどれほど凄まじく、困難なことか、国政に関わる王子妃である彼女には痛いほどよく分かる。裕福とは言えない一般家庭において、それを実現させるのは並大抵の政策ではない。

それでも――あの底知れない母なら、平然とやりかねないとも思えた。

「それ、本当なの?」

アイリスはリリーの顔を見て確認するように尋ねた。だが、リリーもまたアイリスと同じように、どこか他人事のように戸惑った表情を浮かべている。そこまでの内情は把握していなかったのだ。

領地経営の細かな数字など、芸術家である彼女にはほとんど関心がなかった。リリーにとってあの場所は、あくまで「母の領地」であり、一年のうち数ヶ月を滞在して創作活動に没頭するためのアトリエに過ぎない。

「去年、大規模な養鶏場を作ったんだけど、それがかなり上手くいっているらしいのよ」

「養鶏場?」

それが何なのか分からず首を傾げるリリーに、今度はアイリスが代わりに説明した。

「鶏をひとまとめにして大量に育てる専門の施設よ。いわば、鳥のための小さな牧場のようなものね」

普通、鶏といえば各家庭の庭先で数羽ほど飼われるのが一般的であり、そんな形で大規模に組織化して育てるという発想は、リリーには馴染みがなかった。

一方でアシュリーは、母が領地をどう発展させているのかに強い関心を持ち、その経営手腕をつぶさに学んでいた。ミルドレッドが畜産の専門家を高給で雇い入れ、研究を奨励していく様子を、彼女はリスペクトの眼差しで見守っていたのだ。

末の妹の口から、母の領地経営のビジョンがまるで水が流れるように自然に語られる。

その様子を見て、アイリスとリリーは思わず静かに視線を交わした。

これまで二人は、母の伯爵位を継ぐのは当然リリーだろうと暗黙のうちに考えていた。この国初の女伯爵という偉大な名跡。たとえ「三十歳まで未婚であること」という厳しい条件が課せられていなかったとしても、だ。

なぜなら、リリーもアイリスも内心ではこう思っていたからだ――気弱で心優しいアシュリーには、伯爵という重すぎる立場は荷が勝ちすぎるのではないか、と。

だが――。

どんなに困難な状況からでも、長女の自分を王子妃の座へと押し上げた怪物のような女。

皇帝の御前で、堂々と自らの爵位を要求した凄まじい胆力の持ち主。

二度も夫を亡くしながら、それをいささかも恥とせず、さらに五歳も年下の美しい男を再婚相手として娶った強靭な女性。

それこそが、彼女たちの母、ミルドレッドだった。

宗教界の異端とされる次女リリーを抱えていながらも、世間の目など一顧だにせず、まったく恥じる様子のない図太さ。

アイリスとリリーは、かつて母に向けられていた数々の噂や中傷、蔑みの視線や非難をよく知っていた。それでも一切傷つくことなく、決して折れずに前を向き続けた母を、二人は心から尊敬していた。

そして同時に――母がそこまで批判される理由の一端が、自分たちの存在にあるという事実に、消えない後ろめたさも感じていたのだ。

「私、そろそろフィリップおじ様と約束があるの」

アシュリーの話が一段落したところで、リリーが時計を見て立ち上がった。例の裁判の件で相談があるらしい。

アイリスもそろそろ城へ戻る時間だった。彼女はアシュリーを優しく抱きしめると、リリーと共に屋敷を後にした。

「私はね、あなたが次のバンス伯爵になるものだとばかり思っていたわ」

馬車に揺られるなり、アイリスがぽつりと言った。それは本心からの言葉だった。

バンス伯爵の座を継ぐということは、三十歳まで未婚を貫くということであり、それはすなわち「結婚を諦める」に等しい選択だ。もし三姉妹の誰かがその重責を担うとすれば、消去法で見ても、また順番から言っても、リリーが次の当主になるのが一番自然な流れだと考えていた。

そして、それはリリー自身も同じだった。

「うん、私もそのつもりでいたよ」

「アシュリーは……あの子は、本当に爵位を継ぎたいのかしら?」

「正直に言っていい?」

リリーの問いに、アイリスは静かに頷いた。リリーは綺麗に足を組み、はっきりと言い切った。

「私はね、爵位なんてこれっぽっちもいらないの」

やっぱり、そうよね。アイリスは小さくため息をついた。

自分の絵を描く時間を奪われるのが嫌で、あのケイシー侯爵夫人の座(フィリップとの結婚)さえきっぱりと断った妹だ。そんな彼女が、今さら伯爵位などという縛りをおとなしく望むはずがない。

「私、領地経営にも全く興味がないし、領民が何を食べて生きていようが、正直そこまで関心を持てないの。そういうことに――」

「そういうことに貴重な時間も労力も奪われて、毎日帳簿の計算に追われるなんて、まっぴらごめんだって言いたいのね?」

「そう。それでも、もし他に誰もいなくて、それが義務だというなら引き受けるつもりだった。お母様やあなたたちに対する、最低限の家族としての礼儀だと思っていたから。ケイシー侯爵夫人の件と同じで、やれと言われれば完璧にこなす自信はあるわ」

だが、“できること”と“やりたいこと”は完全に別物だった。

「でも、だからといってアシュリーが継ぐと言い出しても、それはそれで問題だけどね」

アイリスの懸念に、リリーは薄く目を細めた。その意見には、完全に同意だった。

バンス伯爵という特別な立場は、常に社交界の好奇の目に晒される。三十歳まで未婚であること、そして女性として唯一の爵位継承者であること――それだけでも十分に目立つのだ。さらには、貴族会議に参加することを許される唯一の女性という、前代未聞の特権までついてくる。

「正直に言うとね、あなたがバンス伯爵になるなら、私はそこまで心配しないと思うのよ」

続くアイリスの言葉に、リリーはふっと不敵に笑った。もちろん、自分がその立場になれば、どれほどの批判や悪意ある噂に晒されるかは百も承知だ。それでも――自分なら、アシュリーよりは遥かに上手く耐えられる。

「私は周囲の雑音なんてあまり気にしないしね」

そこに執着がないからだ。爵位や領地に対して責任は持つが、過度な思い入れはない。だからこそ、外から向けられるいわれのない非難も、彼女の心を深く突き刺すことはないのだ。

けれど、アシュリーは違う。

「あの子は、真面目で優しい分、きっとずっと傷つき続けてしまう」

たとえそれが、理不尽極まりない批判であったとしても。かつてリリー自身が、自分の絵や生き方を否定されて深く苦しんだように、アシュリーもまた傷を負うに違いない。

「じゃあ、お姉様はアシュリーが継ぐことに反対なの?」

リリーのストレートな問いに、アイリスは両手で顔を覆った。ふと、偉大な母の背中を思う。どうしてあの人は、あんなにも迷いなく、険しい道を前に進めるのだろう。

私たちは、あの子を支えてあげられるだろうか。もしあの子が、あえて自ら茨の道を選ぶと言ったとき――今の自分には、迷わずにその背中を押し、守り抜いてやれるという絶対の自信が持てなかった。

「私はただ……アシュリーに、これ以上傷ついてほしくないだけなのよ」

アイリスの痛切で率直な言葉に、リリーはそっと手を差し伸べ、姉の細い手を強く握り締めた。

アシュリーはもう、その短い人生の中で十分に傷ついてきた。実の父親に、そして父親を名乗って近づいてきた卑劣な詐欺師に。それだけではない。アイリスやリリーという強烈な個性の影に隠れながら、彼女は常に割を食い、彼女の周りに近づく人々さえも騒動に巻き込んでしまった。

このバンス家の中で――一番多くの痛みを静かに抱え込んできたのは、間違いなく末っ子のアシュリーだった。

「それに、あなただって――」

続けようとしたアイリスの言葉に、リリーはきょとんとした表情を浮かべた。アイリスはその手をしっかりと握ったまま、心配そうにリリーの顔を見つめていた。

「ごめんね、リリー」

「え、何が?」

「あなたは本当に才能のある、立派な画家よ。私は芸術の世界のことはよく分からないけれど……」

そこまで言って、アイリスは自嘲気味にふっと笑い、言葉を補った。

「宮廷画家が、そう絶賛していたわ」

正確には――その宮廷画家は、フィリップ・ケイシー卿のことを心から尊敬していると熱弁していたのだ。リリーという天才的な女性画家を見出し、その才能をここまで育て上げた彼の確かな審美眼と実績を。

リリーには、本物の才能がある。そして何より、周囲のくだらない嫉妬や悪意に決して押し潰されないだけの強靭な運と、彼女を全力で支える家族がいた。それは単なる幸運ではない。

宮廷画家はこうも言っていた――リリーは、この国の硬直した芸術界の流れを根底から変えるために生まれてきた、本物の天才なのかもしれない、と。

「なーんだ。お姉様に気に入られようとして、大袈裟にお世辞を言っただけじゃないの?」

リリーの軽口に、アイリスの表情がすっと引き締まった。少しだけ眉をひそめ、静かに、しかし毅然と答える。

「違うわ。あの人たちはね、あなたに良く思われたいなんて、これっぽっちも考えていないのよ」

「そうなの?」

それでも一応、国を代表する王子の妻――未来の王妃なのだから、多少は機嫌を取ろうとするものでは。首を傾げるリリーを見て、アイリスは苦笑し、唇を引き結んだ。

王子妃という最高峰の地位に就いて、彼女は初めて理解したのだ。この世界は、目に見えないほど細分化された無数の評価基準によって、人の立場を決定している。貴族か平民か、王族か否か――それは、ただの表面的な大枠に過ぎない。

あの高慢な宮廷画家や楽師たちにとって、アイリスは「自らの能力で王子妃にのし上がった傑物」ではなく、単に“芸術にこれっぽっちも関心のない、無粋な女”にしか見えていないのだ。

彼らにとっての絶対的な評価基準は、権力ではなく「芸術への理解」という別の場所にある。その基準の中では、王子妃といういかめしい肩書きさえ、大した意味を持たない。

いつか本物の王妃になれば多少は変わるのかもしれないが、少なくとも現在の彼らにとって、アイリスという人間に大した価値はなかった。

けれど、それでいいのだ。すべての人に価値を認められる必要など、どこにもないのだから。

そう思い至り、アイリスは真っ直ぐリリーに視線を向けた。

「とにかく、私は本気よ。あなたには確かな才能があるし、世界でもっと評価されるべき画家だと思っている。……でもね、私の王子妃という立場が、あなたのその輝かしい道の邪魔になっている気がしてならないの」

その言葉に、リリーの目が大きく見開かれた。

――ああ、だから今日、お姉様はあんなに疲れた顔をして家に来たのか。

すべてを察したリリーは、じっとアイリスを見つめ、それから愛おしそうに小さく笑った。そして、背もたれに身体を預けるようにして、軽く肩をすくめて見せた。

「それ、普通は私のほうが言うセリフじゃない?」

皮肉交じりに返しながらも、その声には隠しきれない優しさが混じっていた。

――むしろ、リリーのほうこそ、アイリスの存在にどれほど助けられているか分からない。本気でそう思っていたからだ。

世間の一部からは、「姉の王子妃はただ傍観しているだけだ」と批判されることもある。未来の王妃でありながら、妹たちが商売や絵画でこれほど目覚ましい活躍をしているのを、“何も手を貸さずにただ眺めているだけだ”と。

けれど、それは決定的な間違いだ。リリーも、そしてアシュリーも、アイリスという大きな存在が我が家の「盾」として王室に君臨してくれているからこそ、何の憂いもなく今の場所に堂々と立っていられるのだ。

アイリスは世間のそんな的外れな批判など、全く気にしていなかった。肩をすくめて、あっさりと言い放つ。

「どうせあの人たちはね、何かしら理由をこじつけて私を批判したいだけなのよ。たまたま、今回のその理由があなたたちになっただけ」

改めて言うが、すべての人に認められる必要などない。どうせ批判するための人生を送っている人間に、その声を抑え込もうと躍起になるだけ時間の無駄だと、アイリスはすでに偉大な母から学んでいた。

「私も全く同じ気持ちよ。あの人たちが“あなたを理由に私を叩く”ってことは、逆に言えばね、私自身の絵や実力には、もう文句のつけようがないって証明しているようなものでしょ?」

リリーはそう言って、いたずらっぽく完璧な笑みを浮かべた。それはつまり、自らの圧倒的な実力に対する絶対的な確信の表れでもあった。

ダグラスもかつて言っていた。――彼女は、それだけで既に完成されている、と。

だからこそ凡俗どもは、彼女の作品そのものではなく、彼女の外側にある環境に無理やり理由を探して、欠点を作り出そうとするのだ。

「次にまたあの人たちが私を口実にしてあなたを叩くなら、こう言ってやればいいわ。『私の妹はどうしようもない変人だから、私にもどうにもできない』ってね」

リリーの頼もしい言葉に、アイリスは誇らしげな妹の横顔をじっと見つめた。こういうブレない強さこそが、自分とリリーの決定的な違いなのだと思う。二人とも自尊心は人一倍強いが、リリーはそれに加えて、自分の腕一本に対する確固たる「誇り」をはっきりと持っていた。

「あなたが私の妹で、本当に良かったわ」

思わずこぼれた本音に、リリーはパチクリと目を丸くした。今日はやけに素直で甘えん坊だ――そう言いたげに、くすくすと笑う。

「私もよ。あなたが私の姉で、本当によかった」

アイリスがリアンと結婚して城へ上がったとき、リリーがどれほど深い寂しさを胸に抱えていたか、本当のところは誰にも分からない。

姉であることに変わりはない。けれど、ずっと同じ屋根の下で、お互いのくだらない愚痴を言い合って過ごしていた大好きな姉が、誰かの妻となり、手の届かない別の場所で暮らすようになる――その環境の変化は、十代の少女だったリリーにとって、思った以上に大きな喪失感を伴うものだった。

それでも。アイリスが自ら望んでいた最高の場所に辿り着き、今こうして幸せそうに戦っているのなら――それでいい、とリリーは心から祝福していた。

変わらないのだ。どんなに立場が変わろうとも、アイリスはリリーの姉で、リリーはアイリスの妹。二人は言葉にできない絆を確かめ合うように互いをきつく抱きしめ、そっと安堵の息を吐き出した。

「それで、結局爵位はどうするつもりなの?」

フィリップの邸宅の前で、静かに馬車が止まった。アイリスが別れ際にそう尋ねる。

降りる準備を整えていたリリーは、一瞬だけ窓の外の空を見上げてから答えた。

「……正直、私にもまだ分からないわ」

「さっきは、あんなに頑なに『継ぎたくない』って言っていたじゃない」

「そうよ。でもね――あの伯爵位は、元々私たちのものじゃないでしょ。お母様が自分の力で勝ち取った、お母様のものよ」

アイリスは細い目をさらに細めた。その通りだ。

“バンス伯爵”という輝かしい地位は、三姉妹の誰のものでもない。母が自らの知略と胆力で、血を流しながら掴み取ったものなのだから。

「でもお母様のことだから、あなたが『絶対に継ぎたくない』って突っぱねたら、あっさりとアシュリーに譲っちゃうと思わない?」

「それは確実にそうね」

馬車の中に、今日一番の楽しげな笑い声が広がった。母なら間違いなくそうする。嫌がる子供に無理やり押しつけるような無粋な真似はせず、「あらそう? じゃあアシュリーに聞いてみなさい」と、実にあっけらかんと言ってのけるはずだ――それが、彼女たちの愛すべき母親なのだから。

 



  • 1. 姉妹の再会と実家での「素の自分」

    王子妃としての重責に疲れた長女アイリスが実家を訪れ、妹のリリーとアシュリーとともに靴を脱いでくつろぎながら、立場や役割を忘れて「バンス家の娘」に戻れる実家の居心地の良さを分かち合いました。

  • 2. 王子妃の立場による影響と強い姉妹愛

    自分の立場が妹たちに不利益や批判をもたらしているのではと懸念するアイリスに対し、妹たちは彼女の存在を「魔除け」や「盾」として誇りに思っており、互いの能力や立場を認め合って深く励まし合いました。

  • 3. 次期バンス伯爵位の継承をめぐる思い

    三十歳まで未婚が条件となる伯爵位について、芸術に専念したいリリーも優しく繊細なアシュリーも簡単には選べず、母ミルドレッドが自力で掴み取った爵位の重みと今後の選択について思いを巡らせました。

 

 

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