こんにちは、ピッコです。
「悪役令嬢の推しに選ばれました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
34話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 独占したい公女様
読書会の初日は、何とも言えない微妙な空気のまま幕を閉じた。
「今日は本当に楽しかったです!」
「また2週間後にお会いしましょうね!」
笑顔で他の令嬢たちと挨拶を交わしている最中も、私は背中に嫌な冷や汗が流れるのを感じていた。
(うっ、背中が熱い……)
それもそのはず、先ほどから公女様がじっと、刺すような視線を私に送り続けているのだ。
(さっきからずっと、公女様の機嫌が良くない気がする。いっそ何が不満なのかはっきり言ってくださった方が、まだ気が楽なのに……)
唇を固く結んだままの公女様は、とても話しかけられるような雰囲気ではなかった。私は心の中で深くため息をつき、彼女に続いて馬車へと乗り込んだ。
馬車が走り出しても、車内には重苦しい沈黙だけが流れていた。
いつもの公女様なら、今頃は「今日の読書会はね!」と楽しそうに振り返っているはずだった。しかし今の彼女は、頬杖をついたまま、不機嫌そうな目でじっと窓の外を眺めている。
「公女様」
私は恐る恐る声をかけた。
「何ですか」
返ってきたのは、予想通りのぶっきらぼうな声だった。私は困ったように眉を下げて微笑んだ。
「今日の読書会は、あまり楽しくありませんでしたか?」
私の問いに、公女様はさらに唇を尖らせる。
「いいえ? 楽しかったですよ?」
……あの態度で楽しかったと言われても、説得力は皆無だった。
(これは放っておいちゃ駄目だわ。本能がそう警鐘を鳴らしている……!)
私は慌てて、彼女の機嫌をなだめるように言葉を重ねた。
「私には遠慮せず、正直にお話しくださって大丈夫ですよ?」
すると公女様は頬杖をついたまま、視線だけをこちらへ向けた。しばらく唇をもごもごと動かしていたかと思うと、唐突に問いかけてきた。
「それより、レディ・アンシはどうだったんですか?」
「私ですか? 私は……楽しかったですよ」
何気なくそう答えた瞬間、私はぴくりと肩を震わせた。
(今、公女様……一瞬、眉をひそめなかった!?)
まずい、と直感した私は慌てて言葉を繋いだ。
「でも、公女様がお望みでないのでしたら、次からは読書会にいらっしゃらなくても大丈夫ですからね。もともと私のせいで参加されただけなのですから」
誰が帝国随一の公女に参加を強制できるというのだろう。私は慎重に言葉を選んだ。
「次回からは……私一人で参加しますので――」
「嫌です」
「え?」
私は思わず目を丸くした。すると公女様は、拗ねた猫のようにぷいっと再び顔を背けてしまう。
「私も一緒に行きます」
本当に、何を考えていらっしゃるのか分からない。私はただ戸惑いを隠せないまま、その横顔を見つめるしかなかった。
その日の夕方。エヴァンジェリンは夕食も取らずに自室へ閉じこもっていた。
(正直、悪いことなんて一つもないはずなのに)
ベッドに大の字になって横たわりながら、エヴァンジェリンは今日あった出来事を振り返る。
ひとまず、レディ・アンシの評判はかなり回復した。それは当然の成果だった。これまでクラウディウス公爵家の人間は、社交界の誰とも一定以上の深い付き合いをしてこなかった。しかし最近になって、ディートリヒとエヴァンジェリンの兄妹がラリートと親しく交流するようになり、その事実だけでラリートは社交界の注目の的となっていた。
(それに、私だって……)
エヴァンジェリンの目が少しだけ曇る。
今回の読書会では、控えめな令嬢たちが自分にも少しずつ歩み寄ってきてくれた。
『お嬢様が私たちの読書会に参加してくださるなんて!』
『こんなに近くでお嬢様を拝見するのは初めてかもしれません!』
顔を赤らめていた令嬢たちの姿が、脳裏によみがえる。
それだけでも、エヴァンジェリンは当初の目的を果たしたも同然だった。もともと彼女は、「傲慢で冷酷だ」という世間の悪評を和らげるためにラリートと親しくするようになったのだ。そのために、友人契約書まで交わすほど周到に準備を重ね、ついに求めていた成果を手に入れた。
それなのに――胸の奥がちくりと痛む。エヴァンジェリンはぎゅっと唇を噛んだ。
(レディ・アンシ、今日は他の人たちとも打ち解けて、本当に楽しそうだった)
ラリートは楽しい時間を過ごし、自分も評判を取り戻した。二人ともそれぞれの目的を果たしたのだ。
「だから……私も喜ばないといけないのに」
いつもは澄み切っている青い瞳が、曇天の空のようにかすんでいく。
(どうしてこんなにも気分が晴れないの?)
他の令嬢たちと楽しそうに笑い、和やかに語り合っていたラリート。あのとき、彼女は間違いなく自分のすぐ隣にいた。それなのに、ひどく遠く感じられて仕方がなかった。
(もしかして、レディ・アンシは……私よりも、他の友達を作ったほうがいいと思っているのかしら?)
心の奥底へ押し込めていた暗い疑問が、不意に顔を出す。だが、エヴァンジェリンはすぐに激しく首を振った。
(そんなこと、私には関係ないわ。私とレディ・アンシは、あくまで契約によって友達になっただけ。契約の内容さえ守ってくれれば、それで十分)
確かに、そう割り切っているはずだった。
「……本当に腹が立つ」
ハリネズミのように棘だらけになってしまった自分の心が、どうにも理解できない。エヴァンジェリンは苛立ちを募らせると、やり場のない思いをぶつけるように枕に顔をうずめた。
帝国の社交界には、まさに星の数ほどの社交サークルが存在する。その種類は多岐にわたるが、その中でも頂点に君臨するサークルが一つだけあった。
その名は――「ピオニー」。
社交界で「最も華やかな」令嬢たちだけが集うサークルであり、そこに所属しているというだけで、超一流の令嬢として認められる名誉ある集まりだった。そして、その「ピオニー」のメンバーの中でも、とりわけ有名なのがセラフィナ・ロペスだった。
領地すら持たない下級貴族・ロペス男爵家の令嬢でありながら、その美貌と穏やかな人柄だけで社交界の女王にまで上り詰めた女性。しかし、その華やかな名声とは裏腹に、現在のセラフィナの内心は激しい焦りに満ちていた。
最近、彼女の影響力が目に見えて衰え始めていたからだ。原因は、以前ならセラフィナの一言に盲従していた令嬢たちが、小さくはあるが致命的な変化を見せ始めたことだった。
「今回、クラウディウス公女様がアンシ作家のパーティーにご出席なさったそうですね?」
お茶会の席で、そんな話題が上る。セラフィナは公女への敵意を表に出すときは細心の注意を払っていたが、彼女が公女をひどく嫌っていることは誰もが知っていた。それなのに、令嬢たちはセラフィナの前であるにもかかわらず、その話題をまったく避けようとしなかった。
「そうなんです。それに、公爵様がレディ・アンシと最初のダンスを踊られたそうですよ!」
その言葉を聞いた瞬間、絵に描いたような笑みを浮かべていたセラフィナの口元が、ほんのわずかに引きつった。
(本当におかしいわ……。ラリートが私から離れていってからというもの、何もかもが思い通りに進まなくなっている)
まるで、これまでは自分がこの世界の主人公だったのに、今ではその座を誰かに奪われてしまったかのような――奇妙な喪失感だった。
一方で、ラリートとクラウディウス兄妹の話題は尽きることなく続いていく。
「実は、私の叔母が南部の方でそのパーティーに出席していたんですけれど」と、一人の令嬢が大きな秘密を打ち明けるように声を潜めた。「レディ・アンシが、ものすごく綺麗だったそうなんです!」
「えっ? あの地味なレディ・アンシがですか?」
「でも、クラウディウス公爵家のサロンでも、かなり評判が良かったって噂になっていましたよね」
ラリート、ラリート、ラリート。――いったい、あと何度その名前を聞かされれば気が済むのだろう。
(クラウディウス公女の後ろ盾でもなければ、取るに足らない女のくせに……!)
セラフィナは今すぐこの場から立ち去りたい衝動を、必死に押さえ込んだ。
「ところで、グスト伯爵家のサマーパーティーはあまり盛り上がらなかったそうですね?」
「ええ。やはりアンシ作家のパーティーの方が、ずっと人気だったみたいです」
そう言った令嬢は、どこか嘲るような目でセラフィナをちらりと見た。
「それに、有名な方々もたくさんいらしていたそうですし」
この言葉を社交界風に翻訳するなら、こうだ。
『レディ・ロペスでは、グスト伯爵家のパーティーに大物を呼べるほどの影響力はありませんものね?』
(よくも……!)
ギリッ、と扇子を握り締めたセラフィナの手の甲に青筋が浮かび上がる。それでも彼女は、懸命に笑顔を崩さなかった。この世界では、先に感情をあらわにした者が負けなのだ。
「そういえば、レディ・ロペスはグスト伯爵家のサマーパーティーにも毎年欠かさず出席なさっていますよね?」
「私も聞いたことがあります。レディ・ロペスは南部でもとても有名なんですって」
「やっぱり、レディ・ロペスほど美しくて心優しい令嬢はいませんもの。そうでしょう?」
その瞬間、セラフィナの瞳が冷たく細められた。その褒め方は、かつてセラフィナ自身が他の令嬢を貶めるときによく使っていたやり方そのものだった。相手を持ち上げるふりをしながら、『そんなに優秀なあなたなのに、これくらいのこともできないの?』と、遠回しに突き刺す言い方。
(これは……まずいわ)
セラフィナは口の中がからからに乾いていくのを感じた。かつては自分を持ち上げるだけだったこの集まりも、今では彼女をさりげなく見下そうとする空気が漂い始めている。
それも当然だった。一つの集まりに「女王」と呼ばれる存在は、一人しかいられない。今までセラフィナは社交界の女王の座を揺るぎなく守ってきたが、今は公女とラリートの存在によって、その立場が目に見えて揺らぎ始めていた。
「それはそうと、レディ・ロペスがクラウディウス家のサロンに招待されなかったのは……私は少し意外でしたわ」
「ああ、私もです。私はてっきり、レディ・アンシが何とかしてレディ・ロペスも招待してくださるものだと思っていました」
令嬢たちの鋭い言葉が、再びセラフィナの胸を容赦なく突き刺す。
「本当に、レディ・ロペスはレディ・アンシのことをいつも気にかけていらっしゃいましたものね」
「恩を仇で返されたようなものですよね?」
『怒らないでくださいね? 私たちは本当にあなたを心配して言っているだけなんです』という態度を装いながら、彼女たちは好き勝手に言葉を重ねていく。
「まあ、レディ・アンシも公女様のお気持ちに逆らうわけにはいかなかったのでしょうけれど」
「それでも以前は、レディ・アンシはレディ・ロペスに本当に献身的でしたよね。お二人の友情は、本当に素敵でしたのに」
「正直、とても羨ましかったんです」
セラフィナは、その言葉に隠された本音を鋭く見抜いていた。
『思っていた以上に、二人の友情は脆かったようですね?』
『レディ・ロペスは、レディ・アンシの献身がなければ、本当に何者でもなかったんですね?』
――要するに、そういう意味だった。
(はあ、本当に……!)
セラフィナは、煮えたぎる怒りを必死に押し殺した。ここで感情を爆発させた瞬間、すべてが終わる。誰もが「セラフィナは神経質だ」と決めつけ、冷静さを失った彼女を笑いものにし、さらに追い詰めるだろう。だからこそ、どれほど腹が立っても、余裕のある表情と態度を崩してはいけなかった。
「それはそうと、レディ・アンシは最近、公女様とワトキンス読書会に参加されたそうですね」
「ワトキンス? あの読書好きの集まりに?」
セラフィナは片方の眉を上げた。セラフィナ本人もそうだが、「ピオニー」のメンバーたちも内心では見下していた、地味な集まりではなかったか。
しかし、その読書会に「クラウディウス公女」の名前が加わった途端、風向きは一変する。
「まあ、私も行ってみたいですわ!」
「読書会だなんて、知的で素敵ですわね」
その読書会は、あっという間に「ぜひ参加したい高尚な社交の場」へと格上げされたのだ。そしてその流れは鋭い矢となって、再びセラフィナへ向けられる。
「そういえば、今回もレディ・ロペスは招待されなかったのですか?」
(……どうして急にその話になるの?)
セラフィナが嫌な予感を覚えた、その瞬間。予感は最悪の形で的中した。
「実は、私は次回から参加することになったんです」
そう話したのは、セラフィナ派であり、「ピオニー」の実質的な二番手だったレディ・サンチェスだった。彼女は、ワトキンス読書会から届いた招待状をこれみよがしに持ち上げて見せた。
「正直、以前はあまり興味がなかったのですけれど、公女様が最近とても積極的に社交界で活動なさっていますでしょう?」レディ・サンチェスは意味深な笑みを浮かべた。「公女様に一度お会いしてみたかったですし、それに母とサウス伯爵夫人が親しい友人なんです。今回、そのご縁で母を通じて招待状をいただきましたの」
「まあ、うらやましいですわ!」
「私もぜひ参加したいです。今度、私にも紹介していただけませんか?」
集まっていた令嬢たちは、羨望の眼差しでレディ・サンチェスを見つめた。
「もちろんですわ。友達なんですもの」
肩をすくめたレディ・サンチェスは、勝ち誇ったような視線をセラフィナへ向けた。
「そうそう、念のため先にお伝えしておきますけれど……レディ・ロペスは少し難しいかもしれませんわ」
「……」
セラフィナの瞳が冷たく細められる。レディ・サンチェスは気遣うふりをしながら、さらに彼女を追い詰めた。
「やっぱり公女様のお気持ちも考えないといけませんもの。ご理解いただけますわね?」
「ご心配なく。最初から、招待してほしいなんて厚かましいことを言うつもりはありませんでしたから」
セラフィナは、一輪の白百合のように優雅な微笑みを浮かべた。
「身の程をわきまえないおねだりなんて、少し……子どもっぽいと思いません? 私には私の場所がありますもの」
もちろんセラフィナ自身も、かつてラリートに公爵家のサロンへ招待してほしいと頼んだことがあった。しかし、その記憶を無理やり心の奥底へ押し込み、精いっぱい余裕のある態度を装った。
「それより、私はレディ・サンチェスの意図の方が気になりますわ」
「私の意図、ですか?」
「ええ。私は最初から参加するつもりなどなかったのに、どうしてわざわざ私を話題にされたのでしょう?」
本来なら、そこで話を終えるのが最善だった。だが、あまりにも腹が立っていたセラフィナは、つい余計な一言を口にしてしまった。
「まあ、お気を悪くされましたの?」
レディ・サンチェスはその隙を逃さず、わざとらしく目を丸くして、セラフィナを心の狭い人間であるかのように仕立て上げた。
「私としましては、もしかしたらレディ・ロペスが誤解なさるかもしれないと思って……先にお伝えしておいた方がいいかと思っただけですの。もしお気を悪くされたのなら、ごめんなさい」
「レディ・サンチェス、それは――」
「なんというか、仲間外れにされたようなお気持ちになるのではないかと心配していたんです。レディ・ロペスほど気高いお方なら、こんな招待状なんて必要ないことくらい、考えれば分かることでしたのに……私の早とちりでしたわね」
その声は綿毛のように柔らかかったが、言葉には無数の棘が隠されていた。
「今日はいつもより静かでいらっしゃったので、もしかして気を悪くされているのではと心配してしまって。私の思い違いだったようで安心いたしましたわ」
「……」
セラフィナは笑みを浮かべたまま、奥歯をぎりっと噛み締めた。
(失敗したわ……!)
レディ・サンチェスに付け入る隙など、最初から与えるべきではなかったのだ。
(……本当に癪に障る。以前の彼女なら、私の顔色をうかがって、こんなふうに好き勝手に口を開くことなどできなかったのに)
しかし今日、この場で会話の中心になっていたのはセラフィナではなかった。それ自体が、今やこの集まりの主導権をセラフィナが失ってしまったことを物語っていた。その事実に、彼女の胸はますます重く沈んでいく。
「それはそうと、公女様は最近ずいぶん雰囲気が柔らかくなられましたよね」
「ええ。以前よりよく笑われるようになりましたわ」
「前は近寄ることさえ難しい印象でしたけれど、今はそんなことありませんものね。この前、偶然公女様とお会いしたんですけれど、なんと公女様の方から私に挨拶してくださったんですの!」
かつてセラフィナと一緒になって公女の悪口を言っていた令嬢たちは、今では手のひらを返したように彼女の味方をしていた。そのうえ――
「レディ・ロペスがおっしゃるものですから、公女様はとても冷たい方なのだとばかり思い込んでいましたけれど……もしかすると、それは私たちの思い込みだったのかもしれませんね」
すべての悪評を、さりげなくセラフィナのせいにしようとする空気。
(耐えなきゃ。ここで引いたら負けよ……)
セラフィナはぎゅっと目を閉じ、心を落ち着かせた。まだこの集まりでは辛うじて影響力を保っているのだから、何としてもここに居続けなければならない。セラフィナにとって最大の基盤の一つが、この「ピオニー」なのだ。とにかく集まりに顔を出し続け、いつかレディ・サンチェスを追い落とす機会を待つしかない。
もはや利用できるラリートもおらず、ロペス男爵家はあまりにも力が弱いため、実家の助けを期待することもできなかった。それに、グレゴリーも最近は彼女によそよそしくて……。
「グレゴリー……」
その名を思い浮かべたセラフィナは、胸が詰まるような苦しさを覚えた。
(最近、本当にグレゴリーが私を避けている気がする)
南部での出来事以来、グレゴリーはセラフィナを避けるようになっていた。彼女への関心を完全に失ってしまったかのようだった。以前はうんざりするほどセラフィナを訪ねてきたのに、最近はぱったり姿を見せなくなった。我慢できず、セラフィナの方からグレゴリーを訪ねても――
『セラ、お前がここに来るなんて珍しいな』
そんなふうに、彼女への関心のなさを隠そうともしなかった。
『ラリートは一緒じゃないのか?』
目の前でその言葉を聞いたときの絶望といったらなかった。それだけではない。セラフィナを隣に座らせたまま、彼はぼんやりと物思いにふけったり、彼女を一人残して席を外すことも日常茶飯事だった。あるいは――
『セラ、最近ラリートについて何か聞いてないか?』
ラリートについてだけは、いつまでもあれこれと尋ねてくるのだ。
(いや、きっと私の思い過ごしよ……)
セラフィナはぎゅっと拳を握り締めた。
ラリートが公女と親しくなっただけでも、これほど大きな打撃だったのだ。ここでグレゴリーまで失ってしまったら、自分の足場は完全に崩れてしまう。
(それだけは絶対に駄目。絶対に……)
考えるだけでも耐えられなかった。彼女は引きつった笑みを浮かべながら、迫りくる破滅の足音に怯えていた。
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公女様の独占欲と葛藤
読書会からの帰り道、公女様(エヴァンジェリン)は不機嫌な態度を見せる。彼女は主人公(ラリート)の評判回復や自身の悪評払拭という「契約上の目的」を果たせたものの、他の令嬢と楽しそうに話すラリートを見て、「自分以外の友達を作ってほしくない」という契約以上の独占欲と嫉妬心に一人で苦悩する。
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セラフィナの権威失墜と焦燥
社交界の頂点サークル「ピオニー」の女王だったセラフィナは、ラリートが離れたことで目に見えて影響力を失っていく。かつて従順だった令嬢(レディ・サンチェスなど)から、遠回しな嫌みやマウンティングを受け、主導権を奪われつつあることに強い焦りを感じる。
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「ワトキンス読書会」の格上げとグレゴリーの変心
地味だったはずの読書会は、公女様の参加によって一躍「憧れの社交場」へと格上げされ、セラフィナ派の令嬢までもが鞍替えを始める。さらに、心の支えだった元婚約者グレゴリーまでもが自分を避け、ラリートのことばかりを気にするようになり、セラフィナは孤立と破滅への恐怖を募らせる。