こんにちは、ピッコです。
「幼い旦那様の黒幕妻です」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
46話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 焼きとうもろこしと、雲月の異変
しょんぼりしていると、キブリンが「ろ、ローズを呼んできます」と言って、慌てて席を外した。
部屋には私と、あの白いフクロウだけが残される。ふわふわとした姿がとても可愛い。
私はそっと手を差し出してみた。
「私のところにもおいで?」
しかし、白いフクロウは私を警戒し、テーブルの上のクルミを一つずつ隠し始めた。
「取ったりしないよ!」
このチェリアを何だと思っているの!
それでも白いフクロウは、ふかふかのクッションの中にクルミをせっせと隠すと、私をじっと見つめていた。キブリンに甘えるのとは、まるで正反対の態度だ。
なんだか悔しくなった私は、ポケットの中を探った。
「これ食べる? 私もたくさん持ってるよ」
気づけば私は、白いフクロウと「どちらが非常食を多く持っているか」で真剣に勝負を始めそうになっていた。
そこへ、キブリンがローズと一緒に戻ってきた。ローズの手には私の上着がある。
「はい、メラ様がお持ちするようにと」
私はローズから受け取ったコートを羽織った。すると彼女は、さらに動物の耳が付いた毛皮の帽子をかぶせ、マフラーを丁寧に巻いてくれた。手袋をはめ、毛皮のブーツまで履いて、ようやく外出の準備が整う。
「私、ちょっと着込みすぎじゃないですか……?」
私がもごもごと言うと、ローズは真剣な表情で答えた。
「どれか一つでも外せば、外出はできません」
あまりにも強引だった。
私は抵抗できず、そのまま部屋を出た。白いフクロウは名残惜しそうな目で遠ざかるキブリンを見つめると、クルミを隠したクッションの上にどさっと寝転がった。私は近くにいた侍女へ、日記を部屋へ持ってきてもらうよう頼んだ。そして、第二皇子からもらった二つ目の機会(魔道具)も持って、馬車へ乗り込んだ。
「そうだ、公爵様からお小遣いをいただいたんです。公子様が欲しいものがあれば、何でも買ってあげますよ」
一か月以内に使い切らなければならないという制限はあったが、それでもお小遣いはありがたい。私は手提げ袋から封筒を取り出した。
「まだ中は確認していませんけど、少ない額ではないと思いますし……」
ん? これ、何?
私は封筒の中をのぞき込んだまま、そのまま固まってしまった。
「どうしたの?」
ローズが不思議そうな顔で尋ねる。私は震える手で中身を取り出した。
「これ、お小遣いの額じゃないんだけど……?」
なんでここで白紙小切手が出てくるの!?
メネリクもウィンターと同じくらい、私を大切に思ってくれているのは分かった。ネクタリアン公爵家がお金が腐るほど裕福なのも理解した。……それでも、これを11歳の子どもに「たった1か月で使え」っていうの!?
「たくさんあるんだから、足りなければもっと言いなさい」というメネリクの声が脳裏に再生される。もう一度お小遣いをお願いしたら、私名義のお城まで買えてしまいそうだった。私は慌てて白紙小切手を封筒の中へ押し戻した。
私が慌てているのを見て、キブリンが言った。
「そ、それじゃあ商店街へ行きましょう。お金なら私もありますし……身分を明かせば、お会計はじ、自分でしなくても大丈夫です」
ローズは「お願いね」と言いたげな視線をキブリンへ向けた。
キブリンは人が多い場所を苦手としていた。人よりずっと多くの音が聞こえてしまうこともあるが、鱗に覆われた顔が人目を引いてしまうことも理由の一つだった。だから今日の外出も、せいぜい城を出てすぐの、鼻の先ほどの距離にある商団支部――ガシンが運営する店へ行く程度だと思っていた。
キブリンは照れくさそうに笑った。
「わ、私も行ってみたいです。マフラーで顔も隠していますし……さ、さっきチェリア様が、人は私の顔をみて『素敵だ』って言ってくださる、と言ってくださいましたから、大丈夫です」
か、かわいい……!
かわいくて、頼もしくて、とにかく良いところを全部持っているキブリンは、御者に行き先を告げた。
しばらくして、私たちは商店街の近くへ到着した。店も人も多かったが、通りには木の葉一枚落ちていないほど綺麗だった。清潔さだけなら、首都の広場よりもきちんと管理されているように感じる。
私は、通りすがりの人がキブリンに絡んでこないかと警戒していた。けれど、向こうから歩いてくる人たちは、キブリンよりも私のほうをよく見ていた。中には私に向かって微笑みかける人までいる。
……変だな。どうして私のほうが目立つんだろう?
ふと、店のガラスに映った自分の姿が目に入った。
帽子についた動物の耳が、ぴこぴこと勝手に動いている。
「……ローズ、この帽子、すごく目立ってない?」
ローズは笑いをこらえきれなかった。
「いいじゃない。ぴこぴこ動く小動物みたいで可愛いわ」
「…………」
それって褒めてるの? それともからかってるの?
私は慌てて動物の耳を押さえつけた。すると、私の手から逃れようとするように、耳はさっきまでの倍も勢いよくぴこぴこと動き始めた。
「どうりでメラが、あなたの帽子姿を映像記録に残さなきゃって言っていたわけね。そういうことだったのね」
ローズは納得したようにうなずいた。
私はため息をつきながら、耳から手を離した。……まあ、キブリンのほうに視線が集まるよりはマシ、かな。そうやって自分を慰めながら現実を受け入れていると、黙っていた第二皇子が遠慮がちに尋ねてきた。
「ご存じのとおり、私は誰かを護衛することに慣れていないのですが……本当にこんなふうに隣を歩いていてもいいのでしょうか?」
ローズの表情が一瞬で険しくなった。
「私とあんたを一緒にしないで。あんたは後ろを歩きなさい」
その言葉に、第二皇子はすぐ三歩ほど後ろへ下がった。……どっちが騎士団長で、どっちが護衛なのか分からない。
私はローズに近づいて、小声で尋ねた。
「どうして第二皇子にはそんなに厳しいの?」
「自分より弱いくせに、あんたを危険な目に遭わせかけたじゃない」
ローズはぶつぶつと不満そうにつぶやいた。私はあきれて口をへの字にした。
「私があなたを心配したときは、『母親みたいに口うるさくするな』って言ってたくせに?」
「……うっ」
ローズは図星を突かれたように、ぎくりと足を止めた。
「さ……考えてみれば、騎士団長の言うことにも一理あるわ。私たちは後ろを歩くから、二人で楽しく過ごしてきなさい」
私は第二皇子を連れて少し離れていくローズを、ぽかんと見送った。
「もしかして、公子様も私が心配すると、お母さんみたいに口うるさく感じますか……?」
「いいえ」
私が言い終わる前に、キブリンが真剣な表情で答えた。そして、もう一度はっきりと言った。
「絶対に違います」
そう言うとキブリンは近くの店へ行き、焼きトウモロコシを買ってきた。それを私の手に持たせるだけでなく、親切にも一口ずつ食べやすいように口元まで運んでくれた。私がお腹を空かせていると思ったのだろうか……。でも実際、お腹は空いていたし、とてもおいしかった。
私が何も言わずにもぐもぐ食べ続けると、キブリンの表情が少し和らいだ。
「し、使用人たちがここでよ、よく買って食べているって言っていました。でも、食べ過ぎはよくありません。チェリア様は、あ、あまり健康によくない食べ物がお好きなので……。ほ、ほどほどにしてください」
いつ知ったの!? メラでさえ、私が好き嫌いなく何でも食べるから偉いって言っていたのに!
私は衝撃を受けながらも、焼きトウモロコシをもぐもぐ食べ続けた。
ふと、入口が派手に飾られたおもちゃ屋が目に入った。そういえば、キブリンの誕生日ももうすぐだったはずだ。
「公子様、誕生日プレゼントで欲しいものはありますか?」
「……はい、あります」
私の質問に、キブリンはあっさりと答えた。私は勢いよく振り向いた。
「何が欲しいんですか?」
「そ、その時になったらお話しします」
こんなに迷わず答えるなんて、よほど欲しいものがあるんだろう。今はメネリクがお金をたくさんくれたおかげで助かっている。多すぎるから返した方がいいかなとも思ったけど、もう少し預かっておこう。
キブリンが私の誕生日を誰よりも早く祝ってくれたから、私もそれに見合う贈り物をしてあげたかった。今回は義父のお金に頼ることになるけれど、次は自分で稼いだお金で買ってあげよう。そのためには外で活動できるようにならなきゃいけないし、まずは体力を回復することが最優先だ。どれだけ知識があっても、体力がなければ活かせないというのは、本当に悲しいことだから。
突然、キブリンが足を止めた。
「ん?」
キブリンは空を見上げた。私もつられて顔を上げる。
最初は気のせいかと思った奇妙な音が、だんだん近づいてきていた。やがて、数え切れないほどの鳥の群れが空を覆い尽くした。
な、何……?
通行人たちも足を止め、ざわめき始めた。「森の奥に住む鳥だ」という声が聞こえてくる。……今、森にはお義母様が行っているはずなのに。これはあまりにも嫌な予感がする。
しばらくすると、鳥たちの影で一瞬暗くなった世界は、再び明るさを取り戻した。
私は無意識のうちに掴んでいたキブリンの腕を、そっと放した。キブリンは周囲の音に耳を澄ませるように、じっと耳を動かしている。
「きょ、今日は帰ってくるのが難しいかもしれません。ま、魔物が、とてもたくさん集まっています」
「お義母様は大丈夫でしょうか?」
ウィンターが傷つくなんて、想像するだけでも嫌だった。キブリンは私を見て、それから森のある方向へ視線を向けた。
「い、行ってみましょう」
「私も行きます」
護衛騎士も二人いるんだから! 二人とも力不足だったとしても!
私たちが馬車へ戻ろうとすると、ローズとセジャルもすぐに駆け寄ってきた。馬車で「雲月の森」へ向かう間、キブリンは何度も表情を曇らせては、また引き締めるのを繰り返していた。
私は『悪女は金儲け以外お断り』の中で描かれていた魔物討伐の場面を思い返した。姉もこれまで何度も魔物討伐をしていた。だけどいつも、聖女が現れて、魔物を一掃して、あっという間に終わる──そんな展開だった。そして後始末は知らないふりをして、その場を去るだけ。
……ここまで来ても、やっぱり頼りにならないのね、お姉ちゃん。
私はキブリンの肩にもたれかかった。キブリンは少しだけ身じろぎしたが、いつものように何も言わなかった。
目的地が近づくと、ローズも何かを感じたのか、眉をひそめた。
「うわ、あの状態なら森ごと焼き払ったほうが早いんじゃない? 魔法使いを連れて来るべきじゃないの?」
「も、森は第一の防壁でもあります。環境や、とくに……環境のこともありますし、簡単には破壊できません……。あとあと、もっと大変になるんです」
セジャルは沈んだ表情でつぶやいた。
「私はまだ何も感じませんが……」
「大丈夫です! 私も同じです!」
私が励ましても、セジャルは顔を上げられなかった。
別の励ましの言葉を考えていると、ふとローズの方を見た。
「でも、なんで魔法使いが必要なの? あなたがいるじゃない。燃やす魔法は使えないの? 火炎放射器みたいに……」
私は最後の言葉を飲み込んだ。ローズは肩をすくめる。
「あなたの焼きトウモロコシくらいなら温められるわ」
「……」
私は、焼きたてのように湯気を立てるトウモロコシを、じっと見つめた。
せっかくキブリンが買ってくれたものだから、一口かじると、セジャルの声が聞こえた。
「私には、そんな能力すら……」
いや、その能力は別になくても困らないと思いますけど。
私が焼きトウモロコシを半分ほど食べ終えたころ、馬車が止まった。「雲月の森」という名前にふさわしく、森はどこか薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせていた。小説でも魔境やダンジョンのような場所として描かれていただけあって、深い闇に包まれており、一歩足を踏み入れれば道に迷ってしまいそうだった。
ランタンを持ったセジャルが言った。
「ようやく私にも魔物たちの気配が感じられます」
私もただならぬ雰囲気は感じていたが、とりあえず気づかないふりをしておこう……。
いくら辺境とはいえ、公爵家の騎士団長であり、シレンチウム侯爵家の息子でもあるのに、セジャルの評価はどんどん気の毒な方向へ向かっていた。
装備を整えたセジャルが、キブリンに尋ねた。
「こちらは集落から離れているため、道は整備されていませんが……行かれるのですか?」
「公子様はそうお考えのようです。遅れないよう、しっかりついてきてください」
ローズが代わりに答え、私を抱き上げた。厚着をした私が、平地ですらふらついていたことを気にしていたようだ。セジャルは怒るどころか、神妙な面持ちでうなずいた。
「はい」
森の中は外よりも暗かったが、キブリンは迷わず先頭を歩いていた。耳が良いとはいえ、道に迷うこともないんだ。
「公子様、以前にもこの森へ入ったことがあるんですか?」
「い、今みたいに魔物が集まる時に、す、少しだけ……」
何だか妙だった。
「少しの間、この森で何をしていたんですか?」
キブリンはまだ幼く、自分専用の武器すら持っていなかった。ウィンターもメネリクも、魔物が押し寄せる状況で、わざわざキブリンを連れて来るはずがない。セジャルも、知らないという表情をしていた。
戸惑う私を見て、ローズがなだめるように言った。
「ただ魔物たちを上手く誘導して、追い返していたのかもしれないじゃない?」
そんなことができるのかと思った、その時だった。
ドン、ドンと地面が震えた。木が倒れるような轟音も聞こえてくる。
「追い返す、というよりは……に、似たようなものです」
しばらく進んだところで、キブリンが足を止めた。そして、ゆっくりと後ろを振り返った。
「こ、ここで待っていていただけますか」
私はローズの肩を軽く叩いた。ローズは私を地面に下ろしてくれた。
「私も一緒に行きます」
「そ、それは……あまり、お見せできるような、よ、良い光景ではありません」
「だったら、なおさらついて行きます」
「…………」
キブリンは困ったように私を見つめた。何よ、その目は! その程度じゃ私は引かないんだから! 危ないことをしたら、お義母様に言いつけるわよ!
私が睨み返すと、キブリンはどう説明すればいいのか分からないという表情で言った。
「て、手をつないで差し上げようと思ったんです……。こ、転ばないように」
ああ、そういうことだったのね。
その時になってようやく、キブリンが私に手を差し出していたことに気づいた。私は照れくさそうに、その手を握った。
キブリンと二人で歩いていても、不思議と沈黙は気まずくも居心地が悪くもなかった。
やがて木々の間に開けた場所が現れた。キブリンは私の手を離し、数歩前へ進むと手袋を外した。そして、まだ気がかりなのか、私の方を振り返って言った。
「う、後ろにいても大丈夫ですけど……」
「平気よ。絶対に目は離さないから」
「……そ、そんなに見張らなくても、に、逃げませんよ」
キブリンは笑いをこらえながら、静かに作業を始めた。
私がじっと見守る中、キブリンの片手が変化し、自分の体の二倍ほどもある猛禽類の足へと姿を変えた。鋭い鉤爪が地面へ深く突き刺さる。まるで大地の脈に触れたような感覚だった。
地面が震え始め、その足元から奇妙な波動が四方へ広がっていく。感電したように木々が震え、鋭い鳴き声を上げた。続いて、大型の獣たちが一斉に逃げ出すような轟音が森全体に響き渡る。
追い払うというより、脅して追い出しているんじゃないの!?
私はキブリンに見られる前に、思わずすくめた肩を慌てて伸ばした。大丈夫! このチェリアは、ぜ、全然怖がってなんかないんだから!
――それなら、蛇や他の生き物にも変身できるの?
「え?」
――「いいえ……?」
――「おかしいな。キブリンなら、本気を出せばできそうだって言ってたのに」
その時になって、ようやくウィンターの言葉の意味が分かった。もしかして、ウィンターがいる場所では魔物たちも逃げ出していたのだろうか。
私は地面の揺れが収まるのを待ってから、キブリンの様子を見た。
いつの間にか、キブリンの手は元の姿に戻っていた。しかし、その手からは、ゆらゆらと黒い煙が立ち上っていた。
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白紙小切手のお小遣いと「耳ピコ」帽子でのお出かけ
メネリクからお小遣いとして「白紙小切手」を渡されて困惑しつつも、キブリンと商店街へ。メラが仕込んだ「耳がぴこぴこ動く」目立つ帽子をかぶったチェリアは、周囲の視線を集めながらもキブリンと焼きトウモロコシを食べて楽しい時間を過ごします。
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「雲月の森」の異変と魔物討伐への同行
空を埋め尽くす鳥の群れからウィンターのいる森の異変を察知し、二人は護衛(ローズ、セジャル)を連れて馬車で現地へ急行。頼りないセジャルを尻目に、チェリアはキブリンの手を握って不気味な森の奥へと進んでいきます。
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キブリンの異能の発動と残された謎
森の開けた場所で、キブリンは片手を巨大な猛禽類の足へと変化させ、地面に突き刺して波動を放つことで魔物たちを一斉に威嚇し、追い払います。元の姿に戻ったキブリンの手からは、なぜか不穏な黒い煙が立ち上っていました。