悪党おじさんと暮らしています!

悪党おじさんと暮らしています!【52話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「悪党おじさんと暮らしています!」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪党おじさんと暮らしています!】まとめ こんにちは、ピッコです。 「悪党おじさんと暮らしています!」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹...

 




 

52話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 日曜日の約束

「その家族ブローチも気に入った!」

「着け心地は悪くありませんか、お嬢様?」

「うん、全然!」

朝食を済ませ、ルスフェーへの返事を二枚も書き終えると、私は外出の準備で大忙しだった。朝食を食べながらも、私の頭の中は一番楽しみにしていた「乗馬服」のことでいっぱいだったのだ。

なんと今日の朝届いたのは、あの公爵家のお姉さん――いや、エスメラルダが送ってくれた特製の服だった。香水の匂いは今でも思い出せるほど強烈だったけれど、エスメラルダお姉さんが仕立ててくれた服は本当に素敵だった。

ぴったりしたズボンは少し慣れない感じがしたけれど、窮屈さはまったくない。むしろ、いつものドレスではなく乗馬服を着ると、なんだか風よりも速く走れそうな気がしてくるから不思議だ。

帽子までばっちりかぶって鏡の前でポーズを決めていると、開け放した扉から侍女のお姉さんが入ってきた。

「お嬢様、ケルポディア家の馬車が到着いたしました」

「ルスフェーが来たんだ。私、迎えに行く!」

弾んで駆け出そうとしたその時、ジェンダが黄金の名札を私の目の前でひらひらと振って見せた。

「うぅ……」

やっぱり今日も、そのまま見逃してはもらえなかった。

「……いつか、叔父様にもこれを付けてもらわなきゃ」

頭の中で、叔父様と何かで勝負をして、罰ゲームとして叔父様の首に名札を掛けてあげる不敵な計画を膨らませる。もちろん、私の名前がこれでもかと大きく書かれた名札を、だ。

私は半ばあきらめて、ジェンダに頭を下げて名札を付けてもらった。

「これで名札も、すっかり君の一部になったね」

相棒のセレにからかわれながらも、ようやくルスフェーのところへ行く許可が下りた。

「お嬢様、そんなに慌てて走らないでください!」

「はーい!」

生返事をしながら、私は風のように階段を駆け下りた。玄関を出ると同時に、タイミングよく立派な馬車の扉が開くのが見え、私はさらに足取りを早めた。

「ルスフェー!」

元気よく挨拶をして、新しい乗馬服を自慢しようと近づいた私は――馬車から降りてきたルスフェーを見た瞬間、ピタリと足を止めてしまった。

ルスフェーが、またあの「紳士ピーナッツ」の姿で現れたのだ。

……と、その時、いつだったか叔父様が言っていた「きっちり分けた前髪が今の流行だ」という言葉が、ふと頭をよぎった。

乗馬服を着ているせいか、今日の彼の髪型は前よりもさらにきっちりとした、まるで鋭い剣みたいな分け目になっている気がする。昨日は枕投げのせいで、雲みたいにもこもこしていたルスフェーだったのに。たった一日で、彼の頭に一体何があったんだろう?

「アイカ、こんにちは」

少し呆気に取られていると、彼の後ろからカマエが姿を見せた。

「おはようございます、バルリアート公女様」

「う、うん! ルスフェーも、カマエもおはよう! ルスフェー、見て見て。私、初めて乗馬服を着たの!」

前髪がどうあれ、ルスフェーはルスフェーだ。私は嬉しくなって、彼の前でくるりと一回転してみせた。

「……かわいい。アイカによく似合ってるよ」

ルスフェーは少し頬を染めて、ぽつりと言ってくれた。

「ルスフェーもすごくかっこいいよ! 早く行って、ルスフェーのお家の馬を見たいな。――あっ、そうだ、ルスフェー、これ!」

「うん?」

私は持ってきたカバンの中から、朝一番で書いた手紙を引っ張り出した。

「私もルスフェーの手紙を読んでお返事を書いたから、あなたもこれ、読んでお返事してね」

「手紙で……?」

「うん。でも、今すぐここで開けて読んでもいいよ!」

促すと、手紙を開くルスフェーの手つきは壊れ物を扱うようにとても慎重だった。

彼が立ったまま手紙を読み進めるうちに、白い耳と頬が、白い紙に映えるように少しずつ赤くなっていくのが見えた。

「ルスフェー、どこか暑いの?」

「い、いや! そんなことないよ!」

慌てる彼の姿がおかしくて、私は彼が手紙を読んでいる間、両手をパタパタと動かして一生懸命あおいであげた。

やがて、ルスフェーはにこっと嬉しそうな笑みを浮かべて顔を上げた。

「アイカ」

「全部読んでくれた?」

「うん。手紙が遅れたことなんて、全然嫌な気持ちにならなかったよ。それに……」

「それに?」

「すごく、うれしい。人形劇、日曜日に行こう」

その言葉に、私も心の底からにっこりと笑った。手紙の行き違いのせいで、彼が悲しい思いをしていないか少し心配していたけれど、嫌な気持ちになっていなくて本当によかった。

「じゃあ、今日は馬に乗って、日曜日は一緒に人形劇を見に行こうね!」

「うん!」

約束が成立したところへ、ジェンダとジェラルドもやって来た。私は二人に向かって「早く行こう!」と、ぶんぶん手を振った。

「それでは、そろそろ出発いたしましょうか」

カマエの穏やかな言葉に促され、私はルスフェーと一緒に一足先に馬車へと乗り込み、残りの荷物の準備が終わるのを待っていた。

その時、窓の外にもう一台の別の馬車が、こちらへ向かって敷地内に入ってくるのが見えた。

「お嬢様、少々お待ちください。どなたか確認してまいります」

護衛のジェラルドが一度馬車の扉を閉め、様子を見に向かった。私は窓ガラスにぴったりと張りついたまま、外の様子をじっと眺めた。一体誰だろう?

やがて馬車の扉が開き、相手の姿を認めたジェラルドが、突然深々と頭を下げるのが見えた。

すらりとした長い脚が馬車から現れ、その上に乗る見覚えのある顔が姿を見せた。

「バロン叔父さん……?」

どうしてバロン叔父さんがここへ来たんだろう? 確か叔父様は、今はみんな忙しくて家にはいないはずなのに。

バロンおじさんは馬車から降りるやいなや、ジェラルドに向かって軽く手を振り、しばらく何かを話し込んでいたが、やがてまっすぐこちらへ歩いてきた。

「やあ、うちのかわいい姪っ子たち!」

窓越しに目が合った瞬間、バロンおじさんは目を三日月のように細め、両手を大きく振ってくれた。

直後、馬車の扉が勢いよく開く。バロンおじさんは片腕を馬車の扉に預けたまま、ニヤリと茶目っ気たっぷりに笑った。

「こんにちは、バロンおじさん!」

「こんにちは、バロン様」

ルスフェーと一緒に挨拶をすると、バロンおじさんは車内を見渡した。

「危うく遅れるところだったよ。この前から元気だったかい? おや、ルスフェー、その髪型すごく似合ってるじゃないか」

バロンおじさんが空いた方の手でルスフェーの頭を優しくなでるのを見上げて、私は素朴な疑問を口にした。

「えっと……今日はおじさん(カッセル)、お家にいないんです」

「うん、知っているよ。たぶん、君の叔父さんはこれからもしばらく、目が回るほど忙しくなるだろうからね」

「?」

「それでね。カッセルに直接頼まれて、しばらく君の保護者役としてここへ来たんだ」

「カッセル叔父様がですか?」

「そう。今日はうちのかわいい子たちが乗馬に行くんだろ? このかっこいいバロンおじさん、実は馬に乗るのもものすごく上手なんだ。だから、一緒について行ってもいいかな?」

大好きな叔父様の頼みなら、断る理由なんてどこにもなかった。最初は少し風変わりで怪しい人だと思ったけれど、叔父様とも親しい、何より安全な人だ。

私とルスフェーは互いに顔を見合わせ、それからバロン叔父さんに向かって、弾むように何度も頷いた。

バロン叔父さんはその長い脚で軽々と馬車へ乗り込み、私たちの向かい側に腰掛けた。続いて、外からジェラルドが馬車の扉をカチャリと閉める。

「バロン様、では車内をお願いいたします。お嬢様、私は後ろの馬車でお供いたしますので」

「うん! ジェラルド、気をつけて来てね!」

「はい! それでは閉めます」

完全に扉が閉まり、馬車がゆっくりと動き出すと、私はすぐにバロンおじさんのそばへ寄って尋ねた。

「バロンおじさん。それじゃあ、今日うちのおじさんに会いましたか?」

「ああ、朝早くにね」

「そっか……」

私も朝もう少し早く起きていたら、叔父様に会えたのに、と少し寂しくなる。

バロンおじさんにわざわざ留守中の頼み事までしているということは、やっぱり相当大変な仕事なのだろう。私は少し心配になった。もしかして、私が「予知の力」をうまく使いこなせなかったせいで、叔父様は危険な目に遭う未来を見逃してしまったんじゃないかな、と。

でも、今は私の体もどこも痛くないし、副作用も起きていない。焦らずに、叔父様を信じて待っていればいいよね。

そうやって一人で健気に考えていると、バロンおじさんが人差し指で私の頬を軽くつついた。

「どうしたんだい? なんだか悲しそうな顔をして。カッセルに会えなくて寂しいのかい? それとも心配?」

「いいえ! ただ……叔父様がそんなに忙しいのは、私のせいだから……」

思わず口を衝いた私の言葉に、バロン叔父さんは意外そうに声を上げて笑った。馬車は少しずつ速度を上げていく。

「カッセルが自分からそう言ったのかい? 『うちの姪っ子のせいで忙しい』って?」

「いいえ。ただ……分かるんです」

――私が昨日の夜、全部を話してしまったから。

私はその本当の理由を、ぎゅっと胸の内にしまい込んだ。それでも、私が見たあの恐ろしい未来のことを思うと、叔父様の戦いが早く終わって、平穏な日々が戻ってきてくれたらいいのに、と願わずにはいられない。

バロン叔父さんは腕を組んだまま身をかがめ、私のほうへ顔を寄せた。そして、まるで私と二人だけの秘密話でもするように、小声で優しくささやいた。

「うーん、どうしてうちのかわいい姪っ子の表情がそんなに曇っているのかな……。君は知らないかもしれないけれどね、カッセルはもともと、いつでも死ぬほど忙しい男なんだ。ただ、今はそれが『ほんの少し』増えただけだから、何も心配しなくていいんだよ。だから今日は、かわいい姪っ子たちは一生懸命乗馬を習うこと。分かったね? 上手になって、カッセルが帰ってきたら盛大に自慢してあげようじゃないか」

その温かい言葉に、私の胸の曇りは一気に吹き飛んだ。私は力いっぱい頷いた。

「はい!」

バロンおじさんの言う通りだ。今日はしっかり練習して、叔父様をあっと驚かせてみせよう。

私たちの乗った馬車は、楽しげな笑い声を乗せて、さらに速度を上げて進んでいった。

同じ頃――。

「どうなっているんだ!? なぜ誰からも連絡がない! すぐにチェサレを呼べ!」

ジェミエル・デ・ロンドは、自室で怒り狂った声を上げた。計画の要である報告が一切途絶えていることに、苛立ちは頂点に達していた。

ほどなくして、影のように側近のチェサレが姿を現した。

「主君、お呼びでしょうか」

「どうなっている! なぜ次の報告が来ないんだ?」

「……バルリアート公女の件ですが、途中で問題が発生し、失敗いたしました」

「何だと!?」

ジェミエルの顔が怒りで引きつる。チェサレは淡々と続けた。

「向こう側も、あの花屋を監視していたことが確認されました。しかし途中で花屋の女性が異変に気づき、素早く店をたたんで姿を消したとのことです」

「それで! それでその女はどうなった!」

「幸い、こちらの存在には気づかれませんでした。ただ、後々問題になる可能性を考慮し、花屋の女性はすでに我が方の安全な隠れ家へと避難させてあります」

その報告を聞き、ジェミエルは「フゥ……」と胸をなでおろして安堵のため息をついた。

「よくやった。あの女に口を割られると厄ベえなことになるからな。やはり、端した金をケチらず、最初からまともな工作員を雇うべきだった。安く済ませようとしたせいで余計な面倒が起きたか。さて、これをどうしたものか……」

これ以上の失策は許されない。考え込むジェミエルに対し、チェサレはさらに腰をかがめ、その耳元で短く囁いた。

その内容を聞いた瞬間、ジェミエルは驚愕に見開いた。

「……それは本当か?」

「はい。それから、レギア(レギス)家の屋敷周辺のほうも、手配通り問題なく待機を完了しています。主君からの合図が出しだい、いつでも動けるでしょう」

「そうか……。ククク、ようやく、ようやく全てが手に入るのだな」

ジェミエルの唇が醜く歪み、満足げな笑みが溢れ出た。

「では、もう少し待つとしよう。早くカッセル・デ・レギアが没落し、私の足元に泥まみれでひれ伏す姿を見たいものだ。カッセルさえ消えれば、あのバルリアート家が滅びるのも時間の問題だからな」

ジェミエルは、まるで世界を手に入れたかのような全能感に浸っていた。

長年、自分の目となり耳となって仕えてきた最側近のチェサレが、すでにカッセル側に寝返り、自分にいくつもの「偽りの報告」を流していることなど――目の前の破滅に気づかぬ裸の王様は、夢にも思わずにいた。

バルリアート領の地下深く、冷たく湿った拷問室。

ベルポイ・ロギスにとって、この二日間は一年にも感じられるほど地獄のような時間だった。

ほんの二日前までは、何の異変も感じていなかったのだ。

あの忌々しい子猫(アイカ)がいなくても、「教育資料を作る」というもっともらしい名目さえあれば、領地へ出入りすることに何の問題もなかった。実際、現地調査をして報告をまとめるために長い時間を費やし、本当にそれらしい資料まで作成していたのだから、一度も疑われたことはなかった。

『門番から無事に許可証を受け取りました』

自分と同じように「教師」として領地へ潜入していたセレラという女のほうも、計画は順調だと言っていた。

「あとは、あの子どもが本当に皇帝の隠し子だと確認できれば完璧なんだが……」

何度か隙を突いて子どもの部屋へ忍び込んでみたが、これといった決定的な収穫はなかった。子どもの持ち物はどれも一目で一級品と分かる高価なものばかりだったが、皇帝から特別に下賜されたと一目で分かるような、皇室の刻印が入った品は見当たらなかったのだ。

そこまで突き止められれば、ロンド家からもっと莫大な報酬を受け取れるのに、とベルポイは舌打ちした。

一番確実なのは、本当に皇帝の実子かどうかを確かめること。だが、それは命懸けになるほど危険な橋だった。血を使って皇族の血統を確認する方法があるとは聞いていたが、どんな計画よりも実行は難しい。子どもをわずかでも傷つけた瞬間、レギアの狂犬によって一瞬で八つ裂きにされるだろう。

いや、それだけでは終わらない。

だからこそベルポイは、あまりに危険すぎる一線には手を出さず、命じられた誘拐の手引きという命令だけを確実に遂行しようとしたのだ。

『見ていると、レギアの者たちは皆あの子を非常に大切にしているようです。あの子を狙えば、一族にとって最大の打撃になるでしょう』

『最後まで調べ続けろ。分かることはすべて調べ上げろ』

『承知しました。せめて報酬の半分だけでも前払いしていただければ……。おお、ありがとうございます!』

探索はもうほとんど終わっていた。運よくロンド家から報酬の半額も受け取ることができた。ほぼリアルタイムで潜入情報を送り続けていたので、あとは子どもの誘拐が成功したという知らせを待つだけだった。

そうして、運命の日はあと一日に迫っていた。

誘拐が成功した瞬間、レギアの屋敷中は大混乱に陥るだろう。その隙に乗じて、自分は命令どおりセレラとともに裏門の鍵を開ければ、それで任務は完璧に完了するはずだった。成功は、もう目の前まで来ていたのだ。

「バルリアート家と聞いて大したものだと思っていたが、思ったより隙だらけで、大したことはないな」

多少の後ろめたさはあったが、金のために命じられたことはすべてやった。仕事が終われば、そのまま金を掴んで静かに姿を消せばいい。あとは、楽に手に入る大金を待つだけだった。子どもには少し気の毒だが、生まれついた身分が悪かったと思うしかない。自分はただ、命令されたとおりに動いた、ただの雇われ者に過ぎないのだから。

――だが、現実は違った。

ガッ、と凄まじい力で、身体ごと上へ持ち上げられた。

「ぐっ……! がはっ……!」

一瞬で空気が肺に流れ込み、朦朧としていた意識が強制的に引き戻される。再び鎖がガチャリと重い音を立てて鳴り、身体が宙づりにされた。

「うっ……、あ……!」

頭が床に届きそうで届かない、一番苦しい高さで止まる。安堵して息をついたその瞬間、容赦のない激しい苦苦痛が全身を襲った。

そうして三日間。カッセルが到着するまで、ベルポイとセレラ、そしてロンド家の手先たちは、あらゆる拷問を受け、一分たりとも眠れないまま、絶望の中で耐え続けなければならなかった。

そして、肉体も精神も限界を迎え、本当に死ぬかもしれないと思い始めた頃――ようやく、その男が姿を現した。

「主君がお見えになりました。公爵様へ提出するための証拠はすべて揃っています。また、関連する証人はすべてロドリゴが確保しております」

部下の報告を受けながら、カッセル・デ・レギアは何の感情も読み取れない冷徹な無表情で、彼らの前にゆっくりと立った。

彼がその薄い唇を開くより早く、ベルポイは狂ったように、床へ額を何度もこすりつけるようにして叫んだ。

「す、すべて……! すべてお話しします! ですから、どうか、どうか一度だけ、命だけはお助けください……! 二度とお嬢様の前にも、この領地にも姿は現しません!」

この数日間で、死の恐怖は嫌というほど脳裏に刻み込まれた。カッセルの姿を見た瞬間、今日が自分たちの年貢の納め時なのだと本能で悟った。ここから生きて出られなければ、手に入れた大金も、これから得るはずだった未来も、何もかも意味がない。そのまま地獄行きだ。

カッセルは、這いつくばる男を冷ややかに見下ろした。

「教師として、先生に教わるべき高尚な学問は学ばずに、余計な汚い真似ばかりをしていたようだな」

「申し訳ありません! 私はただ、ロンド家に命じられたとおりに動いただけなのです! 知っていることはすべて、すべてお話しします!」

「……」

ベルポイが必死に命乞いを始めると、それまで隣で沈黙を守っていたセレラや、ロンド家の他の間者たちも――

二人ともこれ以上の拷問には耐えきれなくなったのか、我先にと頭を下げながら、狂ったように必死に命乞いを始めた。

どうせ、この鉄壁の地下室から逃げ出す方法など、天地がひっくり返っても存在しなかった。周囲には、自分たちをこれまでいたぶっていた屈強な拷問官たちが、まるで死んだように床に転がっている。目の前にいるのは、その凄腕の者たちを指一本でねじ伏せ、一瞬で無力化した、本物の「レギアの狂犬」なのだから。

「わ、私が全部お話しします!」

「私の方がもっと詳しく話せます! お願いです、命だけは助けてください!」

虫けらでも見るような、底冷えのする目で泥塗れの人間たちを見下ろしていたカッセルは、しばらくの沈黙の後、ようやく重い口を開いた。

「そこまで誠意を見せるというのなら、話だけは聞いてやろう。……ただし」

カッセルは近くにあった木製の椅子を軽く引き寄せ、優雅に腰を下ろした。

「そのうち、最も役に立つ情報を口にした『一人だけ』を、ここから生きて外へ出してやる」

ゆったりと長い足を組んだカッセルは、昏い愉悦を孕んだ冷酷な笑みを浮かべた。

「時間は五分だ。せいぜい、その浅薄な頭をフル回転させることだな」

その冷酷な宣告を合図にしたかのように、生き残りをかけた三人の凄惨な自白合戦が、一斉に始まったのだった。

 



  • 新しい乗馬服と「紳士ピーナッツ」との再会

    アイカはエスメラルダから届いた素敵な乗馬服に身を包み、ジェンダに名札を付けられてルスフェーを迎えに行く。前髪をきっちり分けた「紳士ピーナッツ」姿のルスフェーに驚きつつも、手紙のお返事を手渡し、日曜日のお出かけの約束を改めて交わす。

  • バロン叔父さんの登場と、アイカの叔父様への信頼

    カッセルに頼まれて留守中の保護者役としてやってきたバロンが合流する。アイカは自分が未来を話したせいで叔父様を忙しくさせてしまったと責任を感じるが、バロンから「カッセルはもともと忙しい男だから心配いらない。乗馬を頑張って自慢しよう」と励まされ、元気を取り戻す。

  • 悪党ロンドの油断と、カッセルによる冷酷な尋問

    悪党ジェミエル(ロンド)は側近チェサレの裏切りに気づかず、計画の成功を確信して悦に浸る。一方、地下室では拘束されたベルポイたちがカッセルの圧倒的な恐怖の前に屈し、命乞いをしながら「5分間の自白サバイバル」へと追い詰められる。

 

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