こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
48話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狂おしき刻印
部屋に入ってきて、ドアを閉めるや否や、ロクサナがカシスのあごに小鳥がくちばしで突くようにキスをする。
まるで、彼に何かをせがむように。
カシスは返事をするように、すぐにロクサナの赤い唇を飲み込む。
吸気と呼気が混ざる。
熱い舌のもつれた音が耳を刺激した。
一息に体から熱が吹き出していく。
あっという間にロクサナはベッドの上で寝ていた。
その上にカシスのしっかりとした体が重なる。
「うんっ・・・」
ロクサナの口から猫が喉を鳴らすような呻き声が漏れてきた。
カシスの肩に乗っている手が彼の背中に滑り落ちる。
ロクサナの腰をぐるっと巻いていたカシスの腕もいっそう強く締まった。
カシスはその間も、彼を押さえつけていた手綱が解けたように、目の前にいる女性を激しく欲しがっていた。
綺麗に開いていた前の部分を解いて、とうとう現れた白い首筋に埋めると、耳に小さな呻き声が充満する。
それすらも、ひどく香ばしくて甘くて、そのまま酔ってしまいそうだった。
今、この瞬間だけは、他の全ての本能を圧倒している。
カシスは雌に自分の痕跡を刻み込む猛獣のように、ロクサナの首筋に刻みの跡を残した。
彼の心には既に昨夜の刻みが残っている。
その隣にも新しい痕跡が残されていた。
熱い唇が鎖骨を通り、徐々に下に下がっていく。
「あ、カシス・・・」
熱っぽい声がカシスの名前を囁いた。
押し出したのか引っ張るのか分からない手で、彼の髪を痛くないように握りしめる。
「さっき言ったことをもう一度言って」
ロクサナの問いに、カシスは手を動かして彼の腰回りにある彼女の足を撫で下ろした。
手にかかっている服の裾が次第に下に押し出されて白い肌が露出する。
「あなたが私の人だってこと?」
白いシーツの上に金色の髪を乱したまま横になったロクサナは、心臓が痛むほど美しかった。
熱に浮かされた目頭としっとりと輝く唇には、花水が滲んだように思える。
彼女の赤い瞳が彼を下から見上げていた。
しかし、その目の中に込められた鮮やかな輝きが、まるで彼女が上から見下ろす人のように感じさせる。
「ええ、あなたは私のものよ」
甘い囁きが世の中でただ一つの真実を告げるかのように、一点の揺れもなく鼓膜を突き破って入ってくる。
カシスはしばらく息を止めた。
「最初に見た時から・・・。カシス、あなたはずっと私のものだった」
喜悦に似た感情が、頭からつま先までカシスを飲み込んだ。
ロクサナの口から改めて確認したその言葉に非常に満足した。
カシスは満腹の動物になったような気分で、再び彼女にキスをする。
ありとあらゆるものが二人を飲み込むかのように流れ込んできた。
彼らはひどく意地悪くお互いに何かを奪い取られ、奪い取る行為をする。
カシスとロクサナは一点の譲歩もなく、恐ろしいほどに自身の欲望を根こそぎ解放して相手を台無しにした。
まるで頭のてっぺんから足の先までが熱でベトベトに溶けて、このまま一つの塊になっていくような気分に。
二つを分けていた境界が徐々に消えていく。
触れ合う相手だけが唯一の世界であるかのように、異なることは何も考えられなかった。
それを世界で最も完全で完璧な充足感と呼ぶべきかもしれない。
カシスとロクサナは何度もその鋭い感覚に身を委ねる。
今この瞬間だけは、このまま世界が滅びても良いようだった。
「ああ、本当に何もないな」
ジェレミー・アグリチェは、ほぼ骨組みだけが残った邸宅の姿を眺めながら、中から罵声を浴びかけた。
沈みかけている時刻。
夕闇の空が精一杯壮厳さを示し、頭上に広い幕を張っている。
赤く染まったアグリチェは、今では荒涼とした廃墟だった。
使用人を避難させた別館は何も起きていないが、ただそれだけで、アグリチェに残っているものは何もない。
本来屋敷にいた者のうち、去る者は去り、残る者は残った。
ジェレミーはアグリチェ滞在を選択した人々を集めて再建に乗り出す。
しかし、何一つ容易ではなかった。
アグリチェをこんな風にすることに一役買った自分が、今はその反対の仕事をするために努力している現実に嘲笑する。
特にこうして日が暮れる頃、昔の栄光は跡形もなく消えてしまったアグリチェを見ていると、まるで彼自身が亡国の王にでもなったかのような気分に。
「まあ、亡国の王というのも悪くないね」
ジェレミーは独り言を言いながら微笑む。
今回の事件を機に、これまでラント・アグリチェが犯した不正と犯罪の一部も同時に明らかになった後なので、ペデリアンがしたことに責任を問うのも妥当ではないだろう。
おそらくそんなことは、ジェレミーの姉のロクサナも望んでいないはず。
彼はアグリチェの恥部を抱えていくことにした。
ジェレミーは今回のユグドラシルの会合に出席し、ようやくアグリチェの首長として認められた。
もちろん簡単なことではなかったし、その過程はジェレミーの立場ではかなり汚れ仕事もしてきたのだが・・・。
しかし、目的のために手段と方法を選ばないのはアグリチェの矜持。
したがって、ジェレミーも望むことのためにはいくらでも本音を隠して彼らの前で這う振りをすることができた。
しばらくはこの屈辱に耐え続けることになるだろう。
それでも大丈夫だった。
そしていつか、ロクサナがまた戻って来たいと思えるアグリチェを作ることができれば。
その時、夕暮れの地点で何か音がした。
もう沈黙に慣れたせいか、騒音が特に大きく鼓膜を突き刺す。
(またあの女か・・・?)
前回もアグリチェの中に入ってきて、魔物飼育場を覗いている女性がいた。
彼女はどうやら魔手のようで、見つかるや否や、黒い鳥の形をした魔物に乗って慌てて逃げたので、ジェレミーは彼女を捕まえることができなかったのだ。
犯人は必ず現場に再び現れると聞く。
あの女が怖いもの知らずにまた侵入したのなら、今度は絶対に逃さない。
ジェレミーは猛烈に眼光を輝かせて地面を蹴り、音の聞こえてきた場所へ移動した。
けれども彼の目に入ったのは、例の女性ではない。
「なんだ、マリアおばさんだったの?」
「まあジェレミー」
ジェレミーはマリアを見て気が抜けたようだった。
そして彼はおかしなことに気がつく。
「どこへ行くつもり?」
マリアは軽い荷物を持っていて、分厚いコートを身につけていた。
まるで軽く散歩に出かけるように片手に日傘を持って。
しかし、ジェレミーはマリアが今から遠い旅に出ようとしていることに気づく。
マリアはいつものように笑顔を浮かべながら答えた。
「シエラを探しに行かなくちゃ」
それを聞いてジェレミーは表情を曇らせる。
「執念深いね・・・」
睡眠の香りを嗅いで眠っていたマリアは、後になって状況を知り、しばらく発狂していた。
何よりも彼女はロクサナに母親であるシエラがいなくなったことに大騒ぎしていたのだ。
夫のラントが亡くなり、アグリチェがこのような有様になったうえ、デオンまで行方不明になったことには少しの関心もないらしい。
マリアが夜叉のように大騒ぎしたせいで、その勢いにジェレミーすら気が引けるほどだった。
「シエラおばさんを探してどうするの?」
「当然・・・」
シェレミーの問いにマリアは躊躇わずに答える。
「そばで守ってあげないと」
その答えを聞いて、ジェレミーは表情を歪めた。
「おばさんはデオンの生死が気にならないの?一応息子じゃないか」
もちろん、ジェレミーはデオンのことなど心配していない。
それでも常識的にマリアの関心事はシエラではなく息子であるデオンであるべきではないかと思い、いったん話を切り出したのだ。
「あの子が簡単に死ぬわけないじゃない」
マリアは気乗りしない反応を見せる。
「デオンは自分の死ぬ場所くらいは自分で決めれる子よ。けれど、シエラは違うから」
これはジェレミーとしても少し意外だった。
これまでもマリアはアグリチェで暮らす間、シエラの番人役を自負していた。
それが単なる余興ではなく、本当に本気だったとは。
「勝手にしろ。その代わりに外に出た瞬間から、おばさんはアグリチェじゃないから」
「心配しないでちょうだい。私はシエラさえいればいいのだから」
マリアは微かな目つきで首を横に振り、そして、いきなりジェレミーに微笑む。
「いつか子供ができたら連絡しなさい。幼い君の時のように可愛がってあげるから」
「いいからさっさと行け!」
ジェレミーは怒鳴ってマリアを追い払うように追い出した。
それでもアリアは笑顔でジェレミーに背を向けてアグリチェを去っていく。
長い挨拶も余韻もなく、ただ淡白でさっぱりと。
彼らにピッタリの別れだった。
光一つない暗黒。
果てしなく吸い込まれるように四方が暗く静かだった。
もしかしたら、今自分がいる場所は真っ暗な深海なのかもしれない。
騒音一つない完全な沈黙の世界。
それはある意味で安息とも似ていた。
驚くべきことに、塵一つ存在しないようなこの空間が、この上なく平穏に感じられる。
これまで一度も感じたことのない感覚。
確かに慣れないが悪い気分ではなかった。
しかし、彼が魂を依託しているこの空間は、そうは思っていないようだ。
体は捩りながらもがいている。
無形の世界は、彼を吐き出すのに必死だった。
やがて虚空が歪み亀裂を描き始める。
バサバサ!
そして砂金のように粉々に割れ始めた空間が彼を外に吐き出した。
「・・・」
デオンは石のように重い瞼をゆっくりと持ち上げる。
彼が寝ているベッドの大きさは、それほど大きくないように思えた。
全身が痛み、首には特に鋭い痛みが走る。
これは父親のラントによって受けた傷だ。
外から話し声が聞こえるが、その内容までは識別できない。
周囲にいる人は最低3人。
外で話している2人と、今デオンのいる部屋に待機している1人。
今、この部屋にデオンは一人でいなかった。
誰かの微かな寝息が耳に食い込む。
そして、ふと息を飲み込む音が聞こえた。
ガタンっ!
びっくりしたように何かを落とした後、椅子が床を引っ張るような音が静寂を破る。
「き、気がつきましたか?」
「・・・」
女性の当惑した気持ちが震える音声に乗せられ、波紋のように伝えられてきた。
心なしか、女の顔にどこか見覚えがある。
彼女はしばらくの間スカートの裾を握りしめて、途方に暮れて急いで出口に向かう。
「し、少々お待ちください」
女性はデオンに待つことを告げたが、彼がそうする理由はなかった。
デオンは立ち上がるために体を動かす。
しかし、彼は思い通りに上体を動かすことができなかった。
全身を巡る痛みに顔を歪めることしかできない。
ドアの外から近づいてくる足音が聞こえた。
デオンはベッドに横になったまま冷ややかにドアの方を見る。
その後、部屋に入ってきた人物の顔を確認したデオンは、思わず目元を震わせてしまった。
「お目覚めのようですね」
落ち着いた女性の声が耳元に響く。
彼女はロクサナの専属メイド、エミリーだった。
さらに驚くべきことに、しばらくするとロクサナの母シエラが部屋に入ってきたのだ。
「本当に、目が覚めたのね」
彼女は目が覚めたデオンを見て一瞬表情を小さく変えた。
しかし、すぐにそのような気配を消して、彼に話しかける。
シエラの女中ベスは静かに後方に退き、エミリーはシエラのすぐそばについていた。
表向きの気配は静かだが、デオンがもし危険なことをしたら、すぐに静止しようとする意志がエミリーから感じられる。
「医者に状態を見せたら、急所を深く刺されて危険だったと言われたわ。もう少し遅れていたら本当に死ぬところだったって」
シエラの話し方は温もりのない単調で無味乾燥だった。
デオンを見下ろす目つきも同じ。
「十分な休息が必要だというから、もう少し横になっていて」
奇妙な状況だった。
デオンは手足を拘束する枷を壊そうとしたが、体が思うように動かない。
「ここはどこ?」
酷いガラガラ音が外に吐き出される。
「ラント・アグリチェはどうなった?」
デオンの問いかけに誰も返事をしない。
シエラは、湿り気と乾きを同時に抱いたような目で静かに彼を見つめていた。
「・・・やっぱり、もう少し寝ていた方がいいと思うわ」
そう言って、彼女は部屋を出て行こうとする。
デオンはシエラの横顔を見て、再びゆっくりと口を開いた。
「どうして連れてきた?」
「・・・」
結局、シエラはデオンに何の返事もなく部屋を出ていく。
ベスは火をつけた蝋燭をテーブルに置いた。
拒否できない強烈な睡魔に飲み込まれ、デオンを瞼を落とす。
(・・・そうか、もしかしたら彼女は復讐のために自分を連れてきたのかもしれない)
徐々に目の前がぼやけてきた。
デオンは自分の体を深淵まで引き寄せる柔らかい手を拒まずに目を閉じた。
side ニックス
「見つけた」
ノエルの人形のニックスは、鼻先に甘い香りを味わうように目を閉じる。
太陽の光を溶かしたような金色の髪が風に沿って細かく舞った。
彼が立っている場所は、空まで届くように高くそびえる森の木のてっぺん。
彼の目は両方の色が違っていた。
片方の瞳が紫水晶のような光を放つと、遠くにあるペデリアン内部の姿が微かに視野に入ってきた。
「彼女」がいる場所は、爽やかな緑に満ちた庭。
蝶の赤い残像と薄緑の木の葉に隠れて、顔はハッキリとは見えない。
だけど彼女はノエルが欲しがっていたロクサナ・アグリチェに間違いなかった。
彼女のいた場所はかなり意外だ。
両家は敵対的な関係ではなかったか?
しかも、あのロクサナ・アグリチェが魔手師だって?
あんな変な蝶を使うとは聞いていないが。
ニックスの顔に悪戯をする直前の子供のような笑顔と、それと同時にどこか奇妙に邪悪な感じを漂わせる微笑が滲み出ていた。
「面白そう。ノエルに早く教えてあげないと」
地面に軽く着地したニックスは、すぐにベルティウムに向かう。
近々開かれるお祭りが本当に楽しみだった。
いつの間にか部屋の中は暗い闇に包まれていた。
「はぁ・・・」
結んだ唇からグチャグチャに濡れた音が響く。
弱い粘膜を擦りながら舌を巻き上げる動きに、熱っぽい呻き声が渦巻いた。
ロクサナの手はカシスの銀色の髪の間で絡み合っていた。
二人はまだベッドの中に。
昼から夜遅い今まで、嵐のようにひっきりなしに吹き荒れる快楽に疲れ果てていた。
もう何時間も経ったのか、もう何度カシスを受け入れたのか分からない。
行為を行っている間、外はずっと明るい日中だったが、二人ともそんなことは眼中になかった。
カシスの背中に巻いていたロクサナの腕がスルスルと滑り落ちる瞬間、動きが止まる。
今彼らは二人とも、体に一糸も纏っていなかった。
カシスが腕を支えにして上半身を少し上げると、バランスの取れた筋肉が食い込んだ上半身が視野に入ってくる。
カシスの首筋には、さっきロクサナが興奮のあまり噛みちぎった跡がそのまま刻まれていた。
カシスはロクサナよりも酷い振る舞いをされていたが、今や彼女の体の方が酷い状態だ。
「・・・大丈夫?」
襟足が逆立つほど低く沈んだ音声が、ロクサナの耳元に流れた。
彼女を見下ろす瞳には、まだ熱が溜まっている。
カシスは呼吸をするロクサナの下唇をもう一度吸い上げた。
その後彼は、彼女の髪を撫でながら頭を垂らして耳たぶを舐めた。
そうしているうちに、交わる体を通して清潔な気運が流れていく。
その一連の行為は非常に優しかったが、それには騙されてはならなかった。
その証拠としてカシスはロクサナの足を取り直してさらに大きく広げ、今度は彼女の首筋を吸い始める。
「どうせ勝手にするくせに・・・、どうして聞くのよ・・・」
巨大な刺激が再び強く燃え上がった。
「ふふ」
浅はかな笑いがロクサナの顔の上に舞い散る。
「それもそうだ」
その後、さっきよりも深く体が重なって、ロクサナは抑えられた息を吐き出した。
「辛いと言えば止める」
カシスの言葉は嘘だ。
すでに何度も彼は彼女の意思を無視していた。
そのくせにロクサナが反応するところだけを、執拗に見つけ出して刺激している。
今もカシスが手と唇を利用して体を少し触るや否や、拒否の意味とはかけ離れた呻き声が無意識に口から出てしまう。
ロクサナは少し気まずくなってカシスに噛み付く。
「うっ・・・」
するとカシスは一瞬、眉をひそめた。
彼から漏れた荒く押された音が鼓膜を引っ掻く。
普段、潔癖に感じられるほどストイックで端正だったカシスは、今この瞬間、どこにもいなかった。
情欲に囚われた男が、燃えるような視線で彼女を見下ろしながら食らうような荒いキスを浴びせるだけ。
ようやくロクサナはカシスから解放され、再び快楽の頂点に達した。
ロクサナは疲れ切って指一本も動かせなかった。
ぼんやりとした視界で窓の外を眺める。
カーテンの間から現れた外は、一寸先も見えないような暗闇。
このまま何も考えずに少し眠りたかった。
カシスはロクサナを寝かしつけるつもりがないかのように、今度は彼女の細い足首を掴んで噛み始める。
以前、ロクサナに靴を履かせてあげた時、衝動に駆られて思わず手を出した、まさにその部分。
足首を捻りながらロクサナを見下ろす彼の瞳は暗く光り輝いていた。
「まだまだ足りない」
カシスは、頭のてっぺんからつま先までロクサナの体に自分の痕跡を刻み込んで初めて満足できそうだった。
「いい加減にして」
ロクサナはカシスの手から足首を振り解く。
もちろん、最初はロクサナもカシスと似たような積極性を見せながらこの行為を楽しんだ。
しかし結局、彼女が先に白旗を掲げてしまった。
完全にコントロールが切れたカシスは、本当に容赦ない。
一体今まではどのように我慢してきたのか、さっぱり分からない。
ロクサナがこれ以上は無理という風に押しのけると、カシスは彼女の意見に比較的従順に従った。
ロクサナの足首を手放す手には、残念そうな感情が残っている。
これまでカシスは、ロクサナに先に接触することに格別に注意してきた。
もちろん、これまで生気を分け与えるために毎日のように唇を突き合わせ、またロクサナの足が底につくことさえ許せないように、いつも彼女を抱いて移動していた。
しかし、なぜ本当に我慢できなかった場合を除いては、性愛の意味を込めた接触に極度に気をつけてきたのか。
その理由はまさに今のようになりそうだったから。
カシスは自分が節制だということを今まで知らなかった。
しかし、その考えは今日に至って完全に壊れる。
カシスはロクサナの額に溢れた髪を彼女の横に移す。
愛情のこもった手と視線がロクサナに注がれた。
それを感じたロクサナの表情が柔らかくなる。
くたびれた彼女を見たカシスの表情が奇妙に。
「やり過ぎたか?」
「もしかして・・・、それを今知ったの?」
しかし、カシスは反省するどころか、むしろ低い息づかいを吐きながら言った。
「君はやはり体力をつけなければならない。疲れやすいのだから」
「・・・狂ったんじゃないの?」
ロクサナは思わず反抗心に満ちた上目遣いでカシスを睨みつける。
(私が疲れやすいんじゃなくて、あなたが異常なのよ・・・)
けれど、問い詰める力もなかった。
だから彼女はカシスの胸に顔を隠す。
カシスもロクサナをもっと近くに引き寄せて抱きしめた。
彼の手は優しく彼女の頭と襟足を撫でる。
「ロクサナ」
しばらくして、カシスがロクサナの名前を呼んだ。
何となく、彼が返事を望んでいるのではなく、ただ単にそばにいる人が彼女だという事を一人で確認しているような気がした。
それでロクサナは答えなかった。
「ロクサナ」
しかし、どうやら彼女の考え方が間違っていたようだ。
カシスは彼女をもう一度呼ぶ。
だから今回はロクサナも答えた。
「うん、カシス・・・」
ベッドに横になっているカシスの胸は、大きくて温かい。
そのせいか、少しずつ目が閉じてきた。
ところが気のせいなのだろうか?
頭を撫でていた手が少し下に下がったところまではいいのだけど、どんどん背中の方に移動して・・・。
体の輪郭を描くようにゆっくり滑った手が鋭敏な部位を刺激するように撫でる瞬間、ロクサナはぎくりと体を震わせてしまった。
どうも彼女の勘違いではなさそうだ。
一瞬で眠気が覚めた。
「ちょっと、もしかしてまだする気じゃないわよね?」
ロクサナはまさかと思って尋ねる。
いや、もちろんさっきも自分の足首を放すとき未練を覗かせていたけれど、それでも・・・。
しかし、カシスはロクサナの考えが間違っていないように、髪の毛を捲って現れた彼女の白い首筋に、細かく唇を合わせながら囁く。
「一度だけ」
その後、目が合った瞬間、なぜか拒否の言葉が出なかった。
夜のカシスは昼より致命的な魅力が溢れ、こう見るとまるで彼女を魅了するために訪れた夢魔のようだった。
ロクサナが言葉を失った瞬間、カシスは彼女にキスをする。
とても甘美で濃密な口づけ。
入り混じって飲み込まれた唾液が、まるで中毒性のある麻薬にでもなったかのように体が熱くなっていく。
こうなってしまうとロクサナも諦めてしまい、彼女はカシスを拒否するのを諦めてキスに応じた。
太ももを優しく撫でられ、もっと内側に食い込んだカシスの手が深いところに触れる。
ロクサナは小さく呻き、カシスの体を押しのけて彼の上に乗り込んだ。
視野が変わり、今度はロクサナがカシスを見下ろすようになる。
カシスは眼を顰めたままロクサナの腰を掴んで彼女を見上げた。
彼女の口元に微かな笑みが浮かぶ。
やっぱりこっちの方が気に入る光景だ。
「今度は私が上ね」
頭を下げると、金色と銀色の髪が一箇所に混ざっていた。
ロクサナはその状態でカシスに唇を合わせ、彼に命令するように傲慢に囁く。
「ただ大人しく私に敷かれて呻き声を上げなさい」
その瞬間、暗く感じられるほど濃い欲望が滲んだ瞳に熱い閃光が通り過ぎた。
カシスの金色の瞳に光る火種が飛んでいるようだった。
ロクサナはそんなカシスの反応を楽しみ、焦らすようにゆっくりと動き始める。
結局そうして始まった行為が一度で終わらなくなったのは、ある意味でロクサナの自業自得ともいえる。
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【カシスとロクサナの情事と深まる絆】
カシスとロクサナは互いへの強い独占欲と感情を剥き出しにし、昼から夜にかけて濃密な時間を過ごすことで、確固たる充足感と絆を確かめ合った。
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【アグリチェの再建と去りゆく人々】
壊滅したアグリチェの首長となったジェレミーが再建に乗り出す一方、シエラを追うマリアは屋敷を去り、かつてのアグリチェは完全に解体へと向かっている。
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【デオンの目覚めと新たな影の接近】
瀕死の重傷から目覚めたデオンはシエラたちの保護下におかれ、一方でペデリアンに潜むロクサナの存在を捕らえたノエルの人形・ニックスが暗躍を始めようとしている。