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オークの木56話




 

こんにちは、ピッコです。

今回は56をまとめました。

 

 

 

 

 

ネタバレありの紹介となっております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

各話リンク こんにちは、ピッコです。 ネタバレありの紹介となっております。 ...

 




 

56話

オークの木55話 こんにちは、ピッコです。 今回は55話をまとめました。 ネタバレ...

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 一つの可能性

まだ帰ってきていないかもしれないと憂慮したのとは違い、図書館の中には当然そうしなければならないというようにルースが座っていた。

マックは素早く彼の前に走る。

その姿を見て、ルースが驚いた表情をした。

「今日、またお越しになるとは思いませんでした。また何か問題でも生じたんですか?」

マックは首を横に振り、息を切らした。

勢いよく走ってきたことまではよかったが、いざ彼を目の前にすると、何を話せばいいのか分からない。

彼女のぎこちない顔を見て、ルースは苦笑いして反対側の席を指差した。

「とりあえず、お座りください。そうでなくても追いかけるべきなのか迷っていたところでした。カリプス卿が門前払いをするのが目に見えていたので、やめましたが・・・」

彼は言葉を濁して長いため息をつく。

「カリプス卿の怒りは収まりましたか?」

「す、少しだけ・・・」

ルースはマックの自信のない返事に苦笑いする。

「でしょうね」

「あの・・・、き、騎士様の、け、怪我は大丈夫なのですか?」

「カリプス卿に殴られたわりには良好です。まともに打たれたらあごの骨が潰れていたでしょう・・・。あざだけで、それなりに調節してくださったようです」

その言葉を最後に妙な沈黙が舞い降りた。

マックは視線を向けて赤く染まっていく空を眺めているうちに魔法使いの痩せた顔、そして本が散らかっている机に次々と視線を移す。

彼に聞きたいことが棘のように喉に引っかかって出てこなかった。

結局、ルースが先に口を開いた。

「さっきは、悪いことを言わせてすみません。奥様を連れて行く前に、事前に騎士団に説明をして協力を求めておけばよかったという思いが後になって頭の中をよぎりました。最近、奥様に対する騎士の態度がかなり和らいだようで、私があまりにも安易に考えていたようです」

「いいえ、違います。ル、ルースのせいじゃないです」

思いがけない謝罪に、マックは慌てて手を振る。

「わ、私は・・・、だ、大丈夫です。き、騎士たちが私のことをあ、あまり好きじゃない・・・、と、ということぐらいは、ずっと前から知っていて、じ、実際・・・、わ、私でも・・・、し、信用が持てな、なかったと思います」

「それにしても、リカイド卿の態度は無礼でした。他の騎士もいる前で貴婦人を公に侮辱したのですから。リカイド卿も内心ではやり過ぎだと後悔していることでしょう」

マックはぎこちない笑みを浮かべた。

敵意を込めて自分を睨んだ男の態度を考えると、ルースの最後の言葉はまったく信憑性があるように聞こえなかった

辛辣に思っているのに気づいたのか、ルースが苦笑いを浮かべる。

「奥様は信じないかも知れませんが、ああ見えても酷い人ではありません。気難しい方ですが、一途で忠実な騎士です。カリプス卿に対する忠誠心もすごくて、以前は一度もあのようなやり方で対抗したことがありません。むしろカリプス卿に誰よりも盲目的に従ったのです。ですがあのこと以後、事あるごとに反発するようになって・・・」

「あ・・・、あのことですか?」

いぶかしげな顔で反問すると、ルースの顔にふと躊躇いが浮かんだ。

魔法使いはしばらくためらった後、すぐにため息のように吐き出した。

「アグネス王女との縁談を断ったのです」

突然飛び出した名前にマックは背筋を固める。

ルースはしばらく彼女の表情を見て,淡々とした口調で話し続けた。

「リカイド卿は、名門貴族家の御子息です。幼い頃からドラキウム宮殿を出入りしながら王族たちと親交を築いてきました。そのため、リカイド卿はレムドラゴン騎士団員の中でも最も王室に対する忠誠心が深い方です。騎士の叙任式をした日に、すぐにアグネス王女にゲッシュを捧げたほどです」

「ゲッシュ」とは、騎士が一生に一度だけ、最も大切な人に捧げることができる最上の敬愛と尊敬、欽慕の表示だった。

マックは顔色を曇らせる。

ウスリンが王女にゲッシュを捧げたなら、あれほど自分に敵対的なことも無理はなかった。

「あ、あの方は・・・、ア、アグネス王女とリ、リプタンが、け、結婚することを望んでいたの、ですか?」

「率直に言って、その通りです。実は・・・、今さら言いますが、レムドラゴンの騎士団員は皆そうなることを望んでいたでしょう。二人は戦闘時に呼吸が合った上に、見た目もとてもお似合いだったんですよ。そこにカリプス卿があまりにも本音を言わない方なので・・・。皆、討伐が終われば良い知らせがあるのではないかと騒いでいました。皆がほとんど既成事実だと思っていたので、縁談を断られた時はびっくりして・・・」

そこまで言ったルースは彼女の顔色をちらりと見る。

マックは平然としていたが、硬くなる顔面のこわばった筋肉をどうすることもできなかった。

 



 

よほど酷い顔をしていたのか、ルースが咳払いをしながら急いで話を変える。

「無駄な過去のことで話がもれましたね。私が言いたいことは・・・、リカイド卿があんなに棘を立てるのには理由があるということです。盲目的に信じて従っていた騎士が、自分がゲッシュを捧げた貴婦人を断って、最も軽蔑する男の娘を選んだのだから、腹が立つのも無理はないでしょう」

「そ・・・、そ、そうですね」

マックは憂鬱にうなずいた。

そうでなくても、アグネス王女と結婚した方が、リプタンにとってより有盆だったと思い、落ち込んでいたところだった。

ルースの口からその事実を再度確認してもらうと、心が限りなく重く沈んだ。

彼は自分との結婚のために王室とわだかまりを作っただけでなく、騎士たちの反感まで買ったのだ。

途方に暮れて机の角をじっと見つめていたマックは、震える声でやっと口を開く。

「も、もしかして・・・、そ、そのために騎士団でな、内部に分裂が生じ、生じるのは・・・」

「そんな心配は要りません。レムドラゴン騎士団の結束力は、奥様が思っているよりもはるかに硬いです。リカイド卿を祭る他の騎士たちも、奥様にそんなに敵対的でもないようです」

その言葉に少しは安心する。

言いたいことは何でも言ってる人だから、本当のことだろう。

「でも、できれば奥様にはカリプス卿の心を晴らしていただきたいのです。今の索漠とした雰囲気があまり良くはないんですよ」

「そ、そうします」

マックは自信のない口調で答える。

リプタンの恐ろしい勢いを目の前で見ていたので、ルースも大きな期待はしていないのか、ため息ばかりついた。

疲れた顔をちらりと見ながら、マックは部屋から飛び出した用件を思い出す。

口がからからになるほど乾いた。

彼女は乾いた唾を飲み込んだ後に、開かない唇をなんとか広げる。

「あ、あの・・・、と、ところで・・・」

ルースは不思議そうな目をした。

マックは視線をそらし、訳もなく本棚を持ち上げるふりをした。

まるで恥部を自分の手であばいて見せるように心臓がドキドキした。

「も、もしかして・・・、と、と思って、き、聞くんだけど・・・」

「どうしたんですか?」

マックは勇気を集めてやっと話を続ける。

「ル、ルースのま、魔法で・・・、わ、私を・・・、な、直すことはできないでしょうか?」

「直す?」

リフタンが瞬きしながら聞き返すと、マックは顔を真っ赤に染める。

その姿を見てやっと何を言っているのか気づいたように、ルースが「ああ・・・」と短いため息を漏らした。

「治癒魔法は先天的な障害には何の効果もありません」

その辺は彼女も知っていた事実だ。

魔法で解決できたなら、父親はとっくに手を打っていただろう。

しかし、彼女は最近、世の中には新しい魔法を作り出す魔法使いがたくさんいることに気づいた。

がっかりするのが怖くて今までどうしても聞けなかったが、ルースなら自分を直す魔法を作ることもできるのではないかという密かな期待感を抱いていたところだった。

マックは頬を赤くしながらぶら下がるように言った。

「そ、それは私も・・・、し、知っています。で、でも・・・、ル、ルースは新しいま、魔法を開発す、することもあ、あるじゃないですか。ほ、方法をさ、探してくだされば・・・」

「奥様の言うとおりに研究をすれば、いつか解決方法を見つけることもできるでしょう。実際、目や耳、足の不自由な障害を治す魔法式を研究する人も多いです。しかし、これまでのところ、身体の欠陥を永久に治療する魔法式は見つかっていません。たとえ私が研究に邁進したとしても、今後数十年はかかるでしょう」

「そ・・・、そ、そうなんですね・・・」

がっかりした様子を見せないようにしたが、自ずと肩がぐったりする。

彼女は訳もなく乱れた髪を撫でるふりをして、平気なふりをした。

「そ・・・、そうだと思ったんです。た、ただ・・・、念のため、き、聞いてみただけです」

「・・・」

 



 

またもや気まずい沈黙が訪れる。

びくびくしていたマックはそっと椅子からお尻を引き離した。

「じゃ、じゃあ・・・、えっと、私はこれで、帰ります。リ、リプタンがすぐに戻ってくると言って、ま、ましたから」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

ルースは向きを変えて外に出ようとする彼女を急いでつかんだ。

珍しく慌てた姿にマックは目を大きく開ける。

彼はう~んと低いうめき声を上げ、力の抜けた口調で吐き出した。

「こんなふうに帰らせれば、私が悪いことでもしたようじゃないですか」

「そ、そんな意図は・・・」

「まあ、ちょっと座ってみてください。もう少し考えてみましょう」

彼の断固たる口調に目を丸くしたマックは、たじろぎながら再び椅子に座る。

ルースが何から話せばいいのか分からないように腕を組んで座り、しばらく天井だけを見上げた。

「自分で吃ることを直そうとしてみたことはありませんか?」

苦心して言い放った言葉にしては、実に無神経な問いだった。

マックは顔を赤らめて彼を睨みつける。

「わ、私が・・・、わ、わざとこうやって、は、話していると?」

皮膚が腫れるほど鞭打ちを受けて矯正を受けたが、日が経つにつれて手探りの症状は酷くなっていった。

マックは恥辱に顔を歪める。

ルースはそれを見て両手を防御的に持ち上げた。

「侮辱するつもりで言ったのではありません。発音や口癖は、訓練である程度矯正ができるのではないかと思って聞いた言葉です」

「きょ、矯正訓練は・・・、お、幼い時から・・・、じゅ、十分受けてきました!で、でも少しもよ、良くならないから・・・」

「どんな訓練を受けましたか?」

マックは父親の前で本を読んでいた恐ろしい記憶を思い出し、そっと身震いする。

父親は.彼女が吃るたびに乗馬用の鞭で背中を激しく殴っていた。

その恐ろしい記憶を頭の中から消し去り、一部分の真実だけをうわの空で流した。

「し、詩を詠んだり・・・、せ、聖書文をろ、朗読したり・・・、口、ロエムの文学を・・・」

「まったく、日常的な会話も苦手な方が古語を詠む練習をしてどうするのですか?」

羞恥心でマックの顔はほとんど紫色になる。

いつも伏せて無視してきた自分の恥部を、こんなにあからさまに話題にすると、すぐにでもこの場から逃げ出したい気持ちばかりだった。

マックは余計な話を切り出したことを後悔して、出口を切なく眺める。

しかし、ルースは彼女を解放する勢いではなかった。

「いっそ日常的な会話を繰り返して練習したほうがいいのではないですか?」

「そ、それも・・・、れ、練習し、しました!で、でも・・・、し、舌が硬くて・・・、思い通りに、う、うまく動かないんですよ」

「最近はかなり好転したようですが?」

マックは驚いて大きな目をばちばちと鳴らした。

その呆然とした表情に、ルースが苦笑いする。

「自覚していませんか?とても戸惑ったときや緊張したときを除けば、最近はずっとリラックスして話していますよ。リラックスした雰囲気で、ゆっくり、きちんと話す練習を繰り返しているうちに、完璧に直すのは大変でも、前よりずっと良くなるでしょう。魔法で解決するより、そちらの方がずっと早いはずです」

「か、簡単に、言わないで!直そうと頑張って、ど、努力してみなかったように、い・・・、言わないでください。ど、努力したけど・・・、う、うまくいかなくて今まで・・・!」

多少乱暴に言った言葉にルースは眉間にしわを寄せた。

助言をしてくれると言った言葉に過敏に反応したのが気まずくなり、マックは肩をすくめる。

「と、とにかく、ア、アドバイスはありがとう。い、一度考えてみて、みます」

ルースはもっと何かを言おうとしているかのように唇を甘やかし、すぐに固く閉じた。

マックはすぐに席を立って逃げるように図書館を出ていく。

だが、実際にそのように飛び出してみると、心の中にかすかな疑問が押し寄せた。

本当に直す見込みがないのだろうか。

自らも時々話すのが前より良くなったようだと思ったのではないか。

廊下をすばやく横切っていたマックは階段の前で立ち止まる。

父親は自分が人前で口を開くのを極度に嫌っていた。

そのためマックは主に家庭教師と部屋の中に閉じこもって授業を受けてきた。

厳しい教育から解放された後も、必ず必要な場合でなければ口を開くことはない。

人々の目に足りない顔で映るのが恥ずかしかったし、もどかしそうな目つきも不快だった。

辛うじて絞り出した言葉に、誰かが間き取れないようにしかめっ面をしたり、あざ笑うような表情をすると、死にたいという気さえした。

年を取ってからは数ヵ月間、一言も言わなかったこともある。

そこまで回想していたマックは、ふと最近は話をするのがそこまで恐ろしく感じられないということに気づく。

たまには対話をするのが面白く感じられる時もあった。

それは信じられない変化だ。

(口を閉じている間に、症状がさらに酷くなったんじゃ・・・)

マックは唇をかんだ。

もしかしたら父親と一緒に過ごす間、自ら自分の可能性を全て踏み潰してきたのかもしれないという気がした。

ルースには努力したと言ったが、本当にそうだったのかも確信が持てなかった。

実は自分は、長い間諦めてばかりいたのでは。

「でも・・・、いまさら自力で直せるはずが・・・」

彼女は絶望的な希望に打ちひしがれるのを恐れて躊躇う。

そうするうちに、ふとリプタンの顔が思い浮かんだ。

自分のせいで恐ろしく怒っていた彼の姿が浮び上がると、胸が苦しく締め付けられた。

自分が侮辱されるたびに彼に人を殴らせることはできない。

それだけではなかった。

非常に多くの貴族が、どもりのある妻を持つと彼をあざ笑うかもしれない。

曇った目つきで欄干の下をじっと見つめていたマックは、スカートの裾をぎゅっと握る。

 



 

そもそも、マックの吃音症が酷くなったのは全て父親のせい!

完治は難しいかもしれませんが、マックには諦めずに頑張ってほしいですね。

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