こんにちは、ピッコです。
今回は9話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
9話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 領地アナトール
翌日、彼らは日が中天に昇る頃になってようやく山の麓にたどり着いた。
谷間の間に入って庶子の狭い道の横に小さな望楼一軒がぽつんと位置しているのが目に入る。
そこで歩哨に立っていた衛兵4人があたふたと飛び出してきて、騎士たちを迎えた。
衛兵たちの案内で見張り小屋に入ったマックは、久しぶりに食卓に座って食事をすることができた。
熱いシチューとローストポテトでお腹いっぱいになった後、彼らは再び馬に乗る。
日が暮れる前に到着するためには、一番早い道に移動しなければならないという理由で、マックも馬車から降りてリフタンの馬に一緒に乗った。
ポニーや小さな子馬の上に乗ったことはあるが、群馬の上に乗ってみたのは初めてで緊張する。
彼女が中腰で馬の鞍にしっかりとしがみつくと、リプタンは後ろから片腕で腰を上げたをぎゅっと抱きしめて自分の胸にもたれた。
「近道だから地形が荒いだろう。私に気楽に寄りかかっていろ」
彼に負担をかけたくなかったが、慣れない乗馬で険しい山道を登ろうとすると、どうしても彼にしがみつかざるを得なかった。
今にも転げ落ちそうな恐怖で、彼女は彼の腕を必死につかんだ。
邪魔で重いはずなのに、リプタンは文句を一言も言わない。
「団長! 2スラジオン(約360メートル)前方にウェアウルフが5匹います」
どのくらい進んだのだろうか、先を走っていた騎士が大声で叫ぶと、騎士たちが一斉に剣を抜く。
マックはパニックに陥り、彼の裾をしっかりとつかんだ。
リプタンは前方に向かって叫んだ。
「ここまで順番を来させるな!」
「心配しないで。うずうずして死にそうだったから!」
ヘパロンという名の騎士が猛烈に前に走り大声で叫んだ。
それとほぽ同時に、猛獣の鳴き声が鳴り響く。
マックは息を殺してぶるぶる震えた。
リプタンは彼女の後頭部を押さえつけ、自分の胸に顔をうずめる。
「すぐ終わるから、目を閉じていなさい」
彼女は聞き覚えのある子供のように耳をふさいで目を閉じた。
しかし、剣が激しくぶつかる音や、怒った動物の鳴き声が鼓膜中に突っ込むのをとても防ぐことができなかった。
「団長!上に!」
誰かの叫びに思わず頭をもたげたマックは、鋭い悲鳴を上げた。
木の枝の上に上がっていた真っ黒な怪物が彼らに向かって稲妻のように駆け寄ったのだ。
しかし、その生物は彼らにたどり着く前に、空中で二つに裂けてしまう。
彼女は何が起こったのか理解できず、ぽんやりと床に散らばっている黒い怪物を見下ろした。
リプタンはローブの裾に飛び散った血を見て舌打ちをする。
「ガペル、数字も数え方を知らないのか?5ではなく6だ」
後から追ってきた騎士が照れくさそうな顔で後頭部を掻いた。
「ブラックウェアウルフは隠匿術を使うことができるんですね」
リプタンは軽く鼻で笑うことで言い返し、馬に拍車をかけて前方に移動する。
もつれた蛇のように曲がりくねった木の根の上に、人間の体にオオカミの頭を持った魔物が転がっていた。
騎士たちは剣から血をぬぐい、馬にまた乗り込んだ。
マックは彼らのとんでもない強さに唖然とした。
数年前に本でウェアウルフに関する内容を読んだことがある。
明らかに体が鋳鉄のように硬く、皮は鎧のように丈夫で鋼鉄の剣を振り回しても切るのが難しい」と措写されていた。
そんな怪物をリプタンはあっという間に一刀両断してしまったのだ。
「近くにこいつらの群れがいるかもしれないから急ぎましょう」
ルースが周りを見回して話すと、他の騎士たちが一斉にうなずいた。
馬たちは坂を曲芸でもするかのように速く走る。
マックは舌を噛まないように歯を食いしばった。
そのように岩と木で覆われている山道を走る途中、高い峰を越えると突然覗界が開けた。
彼女は急な丘の下に広がる風景を取り憑かれたように眺める。
広い草原の下には灰色の城壁に囲まれた大きな町が位置していた。
彼は指先でその場所を指さす。
「あそこが私の領地、アナトールだよ。領地民たちは大部分が傭兵か鉱夫たちだ。農奴らもいるが、農作業をするのに地盤が適していないので、ほとんどの領地民が羊や鶏、ヤギを育ててそれで食べて生きている」
リフタンの説明を聞きながら、マックはこれから自分が生きていくかもしれない土地を注意深く調べる。
高くそびえる城壁入口の前面には広い草原が、後方には急に伸びた高い山峰が障壁のように位置しており、山腹にはゴーレムが体を半分に折って座ったような形状の巨大な要塞があった。
その孤高な姿を見た瞬間、彼女は背後にかすかな戦慄が走るのを感じた。
カリプス城は夫の分身のようだ。
孤独で威圧的な巨人・・・。
「見た目は派手ではないが、内部は使えそうだ。あれくらいの規模ならまあまあ大きい方だし」
彼女の視線が城に固定されて落ちることを知らず、リプタンは緊張感のある口調で話した。
マックは信じられないという目で彼を振り返る。
まあまあだなんて。
山の半分を覆っている巨大な石造りの建物をそのように表現できるということにただ驚くばかりだった。
どうやら父の城を念頭に置いて言っているようだ。
クロイソ城は、あの2倍の規模で、ロエム帝国の建築様式に沿って、葦やか極まりない外観を備えていたのだ。
それをよく知っているリプタンがいらいらして付け加えた。
「君が気に入らなければ、内部をもっと飾ってもいい。飾りや品物を買って、あなたのお父さんのお域と同じくらい華やかにしてあげることもできるよ。外観を変えるのは大変だけど・・・。ちっ、見た目はちょっと索漢としていても安全のためには仕方がない。この地帯は魔物たちもたくさん住んで・・・」
「ま、魔物が・・・、多いのですか?」
不安そうな顔で聞き返すと、男が低いうめき声を上げ、切迫して叫んだ。
「心配いらないよ!あんなに城壁を高く積み上げたの見えないの?この領地をもらってすぐ私がしたことがあれだって。何年もかけて町全体を保護するために域壁を築いた。くだらない魔物なんか一匹も侵入できない!」
「それは、心配ですよ・・・」
彼女は彼の激しい反応に忍び寄る声で答えた。
リプタンが言ったように、域壁に囲まれた領地は非営に堅固で安全に見えた。
「団長、おしゃべりはいい加減にしてください。お腹が空いて死にそうです!」
少し離れたところに待機して立っていた騎士の催促にリプタンは手綱を振る。
すると、巨大な.群馬が丘の下をよどみなく走った。
フードが脱げて、ぐるぐる巻いておいた髪の毛が長く吹き荒れた。
「レムドラゴン騎士団だ!門を開けろ!」
一気に城門の前に到着した騎士たちが叫んだ。
衛兵たちは、彼らが着ている鎧とローブに刻まれている文章を見て、文句を言わずに門を開ける。
城門の前には悪龍を退けた偉大な領主を迎えるために多くの領地民が集まっていた。
彼らはリプタンを見て一斉に歓声を上げる。
「ロセム・ウィグル・ド・カリブス!」
マックは耳をつんざくような音に驚き、リフタンの懐に食い込んだ。
偉大なる英雄ウィグルの現身。
騎士に送ることができる最高の賛辞であり、敬意の表示だった。
働きかけに駆けつけた農夫たちがまるでつるはしを旗のように振りながら「ロセム・ウィグル」を連発し、きれいに着飾った女性たちは色とりどりのハンカチを頭の上で振っている。
車の上に上がって両腕を激しく振る鉱夫たちと屋根の上に上がって歓呼する建築家たち、顔に黒をつけて白い歯を明る<むき出しにして笑う子供たち・・・。
目まぐるしいほど多くの人々が、誰かが指揮棒でも振り回しているように、領主の名前を叫んだ。
マックは圧倒されたままその光景を眺める。
こんなのは見たことがなかった。
恐怖と服従だけを表した使用人たちと華麗だが冷淡さが漂っていた父親の領地とは全く違う世界が広がっている。
ダイナミックな活気があちこちにあふれ、人々の顔には喜びと誇りが満ち溢れていた。
「団長!領地民たちが歓迎式を準備しました!勝戦の知らせを聞いた時から準備していたのです!」
騎士の1人が興奮した声で叫んだ。
リプタンは自分でやれと言わんばかりに手を振る。
「私はすぐに域に行ってみなければならない。君たちだけで思う存分楽しんで」
それから馬に拍車をかけた。
軍馬が前足を力強く持ち上げて遍楽な石を敷いて作った広い道路の上を走っていく。
道路の左右に集まった人々が彼らに向かって野花をまいた。
マックは震える目で舞い散る花びらを眺める。
自分への声ではないが胸が躍った。
しかし、いざリプタンは何の感興もないかのように無表情な顔で馬を走らせている。
(ある時は、すごく感情的なんだけど・・・)
時には岩でできているのではないかと思うほど、無心な姿を見せる。
彼女は彼の周りを見回すことに夢中になり、まるで自分が無知な人だと思っていた。
アナトールは、下町に位置している村とは思えないほど大きく、躍動感に満ちている。
広い道と広場周辺には3、4階建ての石造建物と商店、そして旅館がびっしりと立ち並んでおり、村を横切る小川のそばには居酒屋が並んでいた。
騎士たちはまっすぐそこに走っている。
美しく着飾った女性たちが窓の外に身を乗り出して、彼らに向かってキスをしていた。
何人かはドレスの裾を引きずり下ろして、胸をむき出しにすることも。
その衝撃的な場面に自ずと口があんぐりと開いた。
「ちょっと急ぐね」
リフタンは通りにどんどん近づいてくる人たちに目を通して耳元で囁く。
マックはうなずくと、彼は素早く広場を横切った。
小川を越えて木がびっしりとしている緩やかな上り坂をしばらく登ると、すぐ長い堀と灰白色の城壁が姿を現す。
城主の到着の知らせを聞いた近衛兵たちが素早く渡橋を下してくれた。
彼女は遠くから見たよりも大きな城に目を丸くする。
橋を渡って城壁を通過し、広い庭と練兵場、そして衛兵所と見える建物が一番先に目に入った。
城というよりは軍事要塞のような風景だ。
「さあ、到着だよ」
城主を迎えて左右に長く並んでいる衛兵たちを経て、2番目の城門に入る。
急な進入路を通過すると、ついに本城が現れた。
マックは寂真とした庭園とどっしりとした石造りの建物、そしてその後ろに高くそびえる巨塔を一つ一つ調べる。
本城に上がる階段の前には、約50人ほどの人々が秩序整然と並んでいた。
「無事に帰ってこられたことを歓迎します」
「久しぶりだね」
リプタンは丁寧に頭を下げる使用人たちにうわの空で答え、馬の上から軽く飛び降りる。
そうしてすぐ彼女を床に置き、一番前に出ているがっしりした体の老人に手綱を渡した。
「タロンを十分休ませてくれ。かなり苦労したから」
「分かりました。他の騎士様は・・・?」
「村で祭りを開いたそうだ。今日は飲み屋か旅館に泊まるつもりだろう。もしちゃんと帰ってくるやつが.いたら、綺麗な部屋を出してくれ」
「いらっしゃるという知らせを聞くや否や、訓練所と宿舎の両方をきれいに整理しておきました。ところで、旦那様、その方は・・・?」
老人の覗線が自分に向かってくると、マックは知らず知らずのうちに緊張で肩を固めた。
頭上から彼の淡々とした声が聞こえてきた。
「私の妻だ。帰国するやいなや連れてきた」
「・・・はじめまして、奥様。私はクネル・オスパンといいます。この城の馬小屋の番です。旦那様の軍馬はすべて私が管理しています」
「お、お会いできて嬉しいです。マクシミリアン・・・、カ、カリプスです」
彼女は使用人たちの覗線を避けながら静かな声でぶつぶつ言った。
リフタンは彼女の手を握って階段を上る。
近くで見ると、城ははるかに殺風景に見えた。
通常、グレートホールの入口周辺は花や低木、彫刻像などで華やかに装飾するものだ。
しかし、広い中庭には使用しているのか疑わしい古びた椅子と葉一枚も生えていない裸の木一本がぽつんと立っているだけで、どこにも造園に努めた跡は見当たらない。
それは城の内部も同じだった。
マックはリフタンの後をついて薄暗いホールに入り、そっと肩を震わせる。
城内は屋外とほとんど変わらないほど寒かった。
床には大理石ではなく石板が敷かれており、天井には今にも落ちそうな古いシャンデリアがかすかな光を照らしている。
入口から宴会場へと続く中央階段の上にはカーペットも敷かれていなかった。
「これはどういうことだ?」
ホールの真ん中に立って周りを見ていたリプタンが背中を向けて殺伐と唸り声を出す。
彼を遂行するために後から入ってきた使用人たちの顔が青くなった。
「私がお城をきちんと造っておくために、帰還するやいなや電報を打ったんじゃないか」
「仰せの通りにしました。応接間に新しいカーペットを敷き、新しい家具と油、そして高価なキャンドルを大量に・・・」
「私が要求したのはそうではなく、もっと豪葦にお城を作れという意味だった!」
リプタンの声が高まり、彼は息苦しそうに髪をかきあげながら続けた。
「くそっ、十分な量の金貨を送金したじゃないか」
「・・・まさかあのお金が全部、城を造るのに使うように送られた予算だったのですか?」
老人が戸惑いを隠しながら言った。
「あの、私たちはそんなに大金を勝手に使う.ことができません。旦那様の意向も聞かずに・・・」
「執事の裁量に任せると言わなかったか。いくらなんでも、これは何だ!」
彼が不機嫌なまま薄暗い城の内部をざっと目を通し、使用人たちを急き立てた。
使用人たちは青々とした顔でお互いの顔色だけをうかがうだけ。
確かにカリプス城は口先でもよく管理したとは言えない状態だった。
階段の手すりは所々に足が抜けた状態であり、窓にはガラスの代わりに黄色く色あせた白い煙幕が覆われており、カーテン一枚付けず外部の冷気がそのまま城の中に漂っている。
いや、むしろ城の外がもっと暖かく感じられるほとだ。
「主人がいないので、とてもひどい目にあったね」
「あの、私たちは命令された通り、域を飾るために最善を尽くしました。旦那様が帰ってきたらお域でゆっくり休めるようにベッドも新しく変えて古い家具も全部・・・」」
「言い訳を・・・」
「リ、リプタン・・・!あの、私はこの辺で休みたいです」
マックは険悪な雰囲気に耐えることができなくて彼の裾を引っ張った。
リプタンはぎょろりと彼女を見下ろして、すぐに両腕で彼女を抱き上げる。
マックは鵞いて足をばたつかせた。
「リ、リプタン・・・!」
「ちょっと待って。疲れたんだろう?」
「自分の足で行け、行けます!お、降ろしてください!」
彼は聞いているふりもせずにてきばきと階段を上った。
一番上に着くと、華やかな柄の赤褐色のカーペットが敷かれた広いホールとオークの木でできた大きなドアが見えた。
リフタンはホールを横切ってドアの前に立つ。
それから片手でマックの背中を支え、もう一方の手でドアノブを引っ張った。
「部屋はそれでも少しましだね」
彼は彼女をベッドの上に置きながら言った。
マックは好奇心に満ちた目で部屋を見回る。
きれいで居心地の良い部屋だった。
部屋の真ん中には天井を支えている古風な模様の木の柱があり、ベッドの横にはアーチ型の大きな窓と暖炉が。
夕焼けがあふれ出る窓際には背もたれのない長い椅子と棚が置かれていたが、その下には華麗な文様のカーペットが敷かれている。
マックはベッドの角にかかっているベールを掃いた。
チェリーの首で作られた豪華なベッドの上には、羊毛で作られたシートが厚く敷かれている。
少なくとも寝室だけは、使用人たちが格別に気を使ったのが明らかに見えた。
「君が見るにはまったくみすぽらしいだろう?」
静かに部屋の中を鑑賞していると、リプタンがぎこちない顔で尋ねる。
マックは当惑した視線を送った。
彼は顔をなでおろしてひどい悪口を言った。
「あのろくでなしめ、あんなに何度も何度も何度そ何度も何度も何度も何度も何度も」
「いいえ、違います。す、素敵な部屋です。お城も素敵だし・・・、ベ、ベッドも素敵です」
「苦労する必要はない。私がクロイソ城をよく訪問したことを忘れたの?君のお父さんのお城に比べれば、クソの納屋に他ならないだろう」
「そんなことないです!そ、そんなことないですよ・・・」
急いで否定したけど男の顔は晴れないまま。
ただお世辞だと思っているようだった。
マックは自分の愚かな舌を恨んだ。
適当な答えを見つけられず目を伏せると、リフタンが急にいらいらした表情をする。
「そもそも家を飾るのは君の仕事じゃないか!もし君がとっくにこの城に泊まっていたら、こんなにめちゃくちゃになることもなかっただろう。域主が席を外したら、妻が域を管理するのが義務じゃないのか」
「ご・・・、ご、ごめんなさい」
「それは、私が言いたいことは・・・、そう、君の好きなようにここを飾るのはど?お金はいくらでもあるから、君の気に入ったものなら何でも買っていい。高い飾りでもいいし、新しいカーペットを買ってもいい。代金はいくらでも出すから」
思いがけない申し出にマックはぽうっと目を瞬かせた。
リプタンは少し興奮した口調で話し続ける。
「女性は飾り付けとか好きじゃないか。働き手たちをもう少し雇えば大変でもないだろう」
期待感のこもった目に背筋に冷や汗がにじんだ。
乳母に貴族女性がしなければならない道理を学んだが、実際にそのようなことをする機会が来ると考えたことがないため、真剣に耳を傾けなかった。
理論的にはある程度知識は持っていたが、実践に移したことはない。
できるという自信は塵もなかった。
「嫌なの?」
リフタンは彼女から返事がないので目を細める。
マックは急いで首を横に振った。
どうしても嫌だという言葉が出てこない。
彼女は少しも、自分に対する夫の好意が離れるようなことはしたくなかったのだ。
数日間の旅でマックは一つの事実に気づいた。
リプタン・カリプスはクロイソ城で自分がどんな扱いを受けたのか少しも気づいていないようだ。
彼はマクシミリアンが高い水準の教育を受けて育った貴婦人であり、豪華な環境で育った金枝玉葉娘だと固く信じているのだ。
そして、下手だがそのようにもてなしてくれるために努力していることを感じる。
マックは乾いた唾を飲み込んだ。
その信心は必ず富親による可能性が高い。
クロイソ公爵は、長女がどもるという事実を隠すために、彼女を貴族社会に披露せず、ほとんど城の中に閉じ込めて育てた。
そして、その理由を病弱な娘を保護するためであるかのように見せかけてきた。
世間で彼女は公爵が大事にする病弱な淑女として知られていたのだ。
リフタンは、そのような噂をありのままに信じている様子だった。
自分が非常に愚鈍で不格好な女だということを両目で確認しながらも、どうしてその錯覚が起こらなかったのかは疑問だが、とにかく彼女はできるだけ彼の錯覚を続けていくつもりだ。
自分が貴婦人どころか、虫も同然の扱いを受けてきたという事実を知ったら、騙されたと感じるかもしれない。
望まなかった結婚のために3年間険しい遠征生活を耐えなければならなかったことだけでも十分に無念なことだが、そのように苦労して得た妻が公爵家の厄介者だったということを知ることになれば、どれほど虚しいことだろうか。
自分に対する態度もきっと変わるだろう。
マックはいらいらしてスカートの裾をつかんだ。
リプタンが自分を軽蔑したり同情したりするかもしれないと思うとゾッとする。
卑屈な考えだが、彼女は彼に高貴な貴婦人として見られたかった。
マックは目下の者を操ることが苦手で,大金を使って物を買ったこともなく,こんなに大きな城を管理する方法など身につけていないことを彼に率直に明かす代わりにぎこちなくうなずいた。
全部。
「ああ、お望みなら・・・」
リプタンの顔が目に見えて明るくなる。
「執事には私が前もって帳簿を渡すように言っておくよ。費用はいくらかかっても構わないから、好きなようにしてみて」
彼は彼女の髪が乱雑で、彼女の髪を軽く指先に握りしめながら言った。
「もうここは君の家だから」
私の家。
淡々と言い放ったその言葉が、予期せず胸の中に入り込み、マックは息を止める。
胸がどきどきした。
ただ言ってるだけだよ。
あまり多くの意味を付与するな。
マックは気を引き締めて平然と答えた。
「できるだけ穏やかに・・・、飾ってみます」
「うん」
リフタンは満足げに微笑みながら私の頬の上に軽く唇を押した。
マックはぎこちなく首を縮める。
その時やっと寝室に二人きりでいることが強く意識された。
ここ数日、きちんと洗うこともできず、服も着替えていなかったため、体から酸っばい匂いが漂っている。
マックは躊躇いがちに彼から離れた。
「あの、あの・・・、お、お風呂に入りたいのですが・・・」
「ああ、そうだね」
男が首を回して本人の体から匂いを嗅いでみて、きまり悪い顔をする。
「下女たちにすぐにお風呂のお湯を用意するよう伝える」
それから外に出て、下女に洗う水と着替え用意してくるよう命令を下した。
彼女はベッドから起き上がり、汚れたロープを脱いで片隅に置く。
しばらくして、女中4人が部屋の中に大きな仕切り板と木でできた浴槽を持って入ってきた。
熱いお湯が満たされる間、リプタンは侍従の助けも受けずに鎧を全て脱ぐ。
「お風呂の世話はいらない。必要なものがあれば呼ぶから、お風呂が終わった後に食べる食事や準傭しておいて」
「分かりました。着替えはここに置いておきます」
メイドたちが外に出ると、リフタンは汗と埃で汚れたチュニックをさっと脱ぎ捨てた。
そして、ズボンの紐を解くと、マックは当惑した顔でさっと身をかわす。
すると、リフタンが背後に近づき、ドレスの紐を緩めてくれた。
「リ、リプタン・・・!」
「一緒に体を洗おう」