こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

100話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- この世界は②
一人の女性がいた。
「わあ、私の書いた小説が出版されるなんて!」
一冊の紙の本を手にしている女性は純粋に喜んでいた。
その姿を見るだけで、フィローメルにもはっきりとその感情が伝わってきた。
白々と建ち並ぶ昼の都市と昼の通り。
女が家へ帰る途中でも、興奮は簡単には収まらなかった。
それでだろうか?彼女が道路の向こうからまっすぐ向かってきた物体を避けられなかった理由は――
『トラックだ。』
エレンシアの記憶をかすかに見たのか、フィローメルは初めて見るその物体の正体を理解した。
ドンッ、という音とともに、女の体が宙に舞い、地面に落ちた。
『痛い……。私はこんなふうに死ぬのかな……。』
彼女の心の声が聞こえてくる。
『いやだ!死にたくない!』
これまで「幸せ」という感情すら感じたことがない人生だった。
いつも寒々しく、苛立ちばかりが募る日々。
そんな彼女の目に、一冊の本が飛び込んできた。
彼女はかすかに力を込めて、自分の書いたその本に手を伸ばした。
彼女のすべての理想がそこに詰まっていた。
『私もエレンシアのように……』
手は本に触れたが、彼女はそのまま目を閉じた。
そして再び目を開けた時。
彼女は不思議な形の岩の上に横たわっていた。
不思議と、体には何の痛みも感じられなかった。
すぐそばの澄んだ泉に顔を映してみると、彼女は驚きで目を見開いた。
「エレンシアじゃない!」
自分の顔を手探りしていた彼女は、周囲を見回した。
あまり時間も経たないうちに、新しく手に入れた日差しが、驚きと歓喜で満たされた。
「ここは、ここは……!」
そこまでだった。
フィローメルの体が跳ね飛ばされた。
しかし、予想していた衝撃はなかった。
「大丈夫?」
カーディンが身を投げ出して彼女を受け止めてくれたおかげだ。
フィローメルは震える声で答えた。
「……え?あ、はい。大丈夫です。」
振り返ると、まばゆい光がエレンシアの体を包み込んでいた。
フィローメルを跳ね飛ばした力、それは彼女の神性の力だった。
「私の記憶を覗かないで!」
エレンシアは、攻撃を受けた猫のように怒りを露わにした。
「フィローメル!あなたなのね!」
彼女の神性の力を真正面から受けたことで、ルグィーンがかけた変身魔法は解けた。
フィローメルは、自分が見た記憶を頭の中で整理してから、口を開いた。
「この本の著者はあなたなんですか?」
いつの間にか、《皇女エレンシア》の本はフィローメルの手の中にあった。
体を貫いて出てくるときに、反射的に掴んだらしい。
エレンシアは、静かにうなずいた。
「本を返して! 私の本を返して!」
彼女の気迫に押され、魔力を引き寄せようとするカーディンとジェレミアを制しながら、フィローメルは尋ねた。
「もう一度聞きます。あなたがこの本の著者ですか?」
エレンシアは一瞬言葉に詰まったのか口を閉ざしていたが、すぐに笑い出した。
「そうよ! 聞こえたなら教えてあげる。この本を書いたのは私、この世界の創造主よ! あんたたちは私の手から生まれた被造物にすぎないの!」
フィローメルは目を細めた。
「本当にあなたがこの世界の創造主ですか?」
「……何ですって?」
「あなたが《黄女エレンシア》の著者ということは実は分かってた。」
真実の涙石が嘘を見せる可能性はほとんどなかった。
この祠に込められた神聖な力は紛れもない本物だった。
「でもその言葉って、つまりあなたがこの世界の創造主って意味になるんじゃないの?」
「……っ!」
堂々としていた相手が、思わずたじろぐ表情を浮かべた。
その表情から、これまでただの疑いに過ぎなかった
フィローメルのある推測が、確信へと変わった。
《皇女エレンシア》には、まだ明かされていない真実がある。
そしてそのとき、突然周囲が騒がしくなった。
「これ、何の光?」
「向こうから来てるみたいだ。」
エレンシアの神聖力から発せられた光があまりにも強烈だったため、人々が集まり始めていた。
エレンシアは舌打ちをして、自分の護衛騎士に向かって叫んだ。
「行くわよ!」
二人はあっという間に姿を消した。
この状況を人々に知られたくなかったようだった。
フィローメルも兄弟たちに引っ張られてその場を離れる。
彼ら一行が宮殿に戻るや否や、ルグィーンが尋ねた。
「フィル、体は大丈夫か?」
「ぼーっとします。」
娘の様子を丁寧に確認した後、彼は別の質問を投げかけた。
「それでさっき、あの祠で何か見たのか?創造主がどうとか言ってたけど、あれは何の話なんだ?」
「それは……」
フィローメルは何と答えればいいのか分からず、周囲の人々を見回した。
4人とも、彼女とエレンシアが交わした会話の内容が気になっている目だ。
自分が実際に見たことではあるが、言葉にするのは難しかった。
フィローメルは躊躇しながら、テラスの方へと歩みを進めた。
「申し訳ないけど、まだ結論を出すには早すぎます。」
「どうして?」
「その前に確認しておきたいことが一つあります。」
「何を?」
「星模様の岩です。」
南宮の庭園。
フィローメルを含む五人は、星の形をした岩の前に立った。
『エレンシア……いや、あの女性が初めてこの世界に来たときに横たわっていた岩だ。』
フィローメルは以前、異常現象を経験したときにその上に横たわってみたが、何も起こらなかった。
撫でてみたり動かしてみたりしても結果は同じだった。
岩の周りをうろつくフィローメルの前にルグィーンが出た。
「少しどいて。魔力を注入してみれば何か反応があるかも。」
フィローメルが横に少し避けて岩をルグィーンが手で触れると、彼の手から光が放たれた。そして……。
パチッ!
ものすごいスパークが起きた。
「うわっ!」
予想外の反応にルグィーンは後ろに吹き飛ばされた。
兄弟たちも数歩後ずさる。
唯一フィローメルだけが、突如として生じた力にほとんど影響されることなくその場にとどまっていた。
ファアアアアア!
岩から放たれたピンク色の光がフィローメルを包み込んだ。
今回は意識だけでなく、体ごと光にのまれた。
「フィル!」
・
・
・
ルグィーンの呼びかけを聞きながら、フィローメルは姿を消した。
そして、まったく別の場所で目を覚ました。
「……あれ?」
いつの間にか、フィローメルは暗闇の中にいた。
「ルグィーン?」
返事はない。
フィローメルは少し声を大きくして、少し前まで一緒にいた仲間たちの名前を呼んだ。
「ルグィーン! ジェレミア! レクシオン! カーディン!」
何度か4人の名前を呼んでみたが、周囲は静まり返っているだけ。
『確かにさっきまでは一緒にいたのに……。まさか、私だけ別の場所に移されたの?』
「そうだとすれば、原因は星型の岩から出た光だろう。」
明らかにその光は、他の人々を押し出すように見えた。
ほんの一瞬のことだったが、魔塔主であるルグィーンですら対応できなかった。
『あの岩はいったい……?』
フィローメルは岩の正体について考えながら、じっとその場で時間を過ごしていた。
もし事故に遭っていたのなら、他の人が救助に来るまで、元の場所で待っているのが得策だと判断した。
しかし、体感としてはかなりの時間が経っているように思えたにもかかわらず、何の兆しもなかった。
「こわい!」
暗くて狭い空間の中でひとりぼっちでいると、恐怖心が湧き上がってきた。
何かしていた方がマシだと思い、彼女は無目的に歩き始める。
数歩も進まないうちに、「それ」が現れた。
服を着たままこちら側を歩いてくる雌のキツネだった。
『獣人族?』
しかし獣人族と言うには、あまりにも姿が可愛すぎた。
顔のサイズは手のひらの半分くらいで、目も大きい。
一言で言えば……かわいい。
よく見ると、本物のキツネというよりは、童話に出てくるイラストのようなキツネだった。








