悪役令嬢の推しに選ばれました

悪役令嬢の推しに選ばれました【33話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「悪役令嬢の推しに選ばれました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【悪役令嬢の推しに選ばれました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「悪役令嬢の推しに選ばれました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

33話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 公女様のお気に入り

「もしかして今日の朝、太陽が西から昇ったの?」

私は呆然とした表情で、テーブルの上に山積みになった招待状を見下ろした。

「そうでもなきゃ、こんなにたくさんの招待状が私に届くはずないでしょ?」

先日のクラウディウス公爵家のサロンの一件に加え、公女様と公爵様がアンシ作家のパーティーに出席したという噂が広まった。それによって私の評判も多少は上がっただろうとは思っていたけれど、それにしてもこの数は多すぎる。私は思わず口をあんぐりと開けてしまった。

「クラウディウス効果、すごすぎる……」

ちなみに、その山の中には、元婚約者のグレゴリーが送ってきたベントナー男爵家のお茶会の招待状まで混ざっていた。どうせ、またいつものようにくだらないことが書いてあるのだろう。

『うちの叔母が主催するお茶会なんだ。私も参加するから、お前も必ず来て顔を見せろ』

――要するに、そんな感じの内容だ。見なくても内容は分かりきっていたので、私は招待状をそのままぐしゃっと丸めて捨てることにした。

すると、公女様が私のほうへ身を乗り出してきた。

「何ですか? 誰からです?」

「グレゴリーです」

私が気のない声で答えると、公女様は「うわ」と露骨に顔をしかめ、私の手から招待状をひったくった。

まるで汚いものでも触るかのような嫌そうな顔で、丸められた紙屑を見つめたかと思うと――次の瞬間、彼女は怒った猫のように、それをビリビリと細かく引き裂いてしまった。

「この人、どうしていつもレディ・アンシに親しいふりをするんですか?」

公女様は破いた招待状の切れ端をゴミ箱へ放り込み、手を軽く払って、いかにも気が済んだという様子で鼻を鳴らした。

「二人が婚約破棄したのなんて、いつの話ですか!」

「本当に、その通りです」

私は大きくため息をつき、公女様の言葉に深く頷いた。本当にうんざりする。いったいいつになったら、私たちがもう婚約者同士ではないという現実を認めるのだろう。

そうして大量の招待状を仕分けていると、一通の手紙がふと目に留まった。

「ん?」

私はその招待状を手に取った。社交界の華やかなそれと比べると、封筒からしてずいぶんと質素な作りだった。

【レディ・アンシ様へ

はじめまして。私はサウス伯爵家のケイトと申します。

ご迷惑でなければ、私が所属しておりますワトキンス読書会へ、レディ・アンシをご招待したく存じます】

「ワトキンス……って、あの歴史学者であり作家として有名なワトキンス?」

私は思わずきょとんとした。なんというか、ずいぶん学術的な名前の読書会だ。

社交界で伝統的に人気のあるサロンや読書会の名前は、「カメリア」や「ピオニー」など、花の名前が付けられていることが多い。

「そういえば、セラフィナが所属していた読書会も『ピオニー』だったわね」

私は肩をすくめながら、続きを読み進めた。

【現在、私どものワトキンス読書会には、私を含め三名の令嬢が定期的に参加しております。私どもの読書会は、令嬢同士の親睦を深め、知識を養うことを目的としております。そのため、選定した本を題材に、二週間に一度集まって感想を語り合っております。ぜひレディ・アンシにもご参加いただき、私どもの読書会に花を添えていただけましたら幸いです】

「『ワトキンス読書会』か……」

私はしばらく考え込んだ。サウス伯爵家の一人娘であるケイトは、社交界ではあまり目立つ存在ではなかった。理由は単純で、彼女は社交会よりも本を読むことを好む物静かな性格だったからだ。自ら読書会を運営していることからも分かるように、ケイトは読書に対する情熱が人一倍強い。

正直、私はそういう趣味を悪いとは思わない。ただ、社交界の主流は、お茶会や各種パーティーなどを通じて派手に交流を深めることだ。そう考えると、読書会はどちらかといえば少数派の集まりだった。

「まあ、それでも私には合っているかもしれないわね」

今の社交界の催しは、セラフィナを中心とした「花形」の令嬢たちが牛耳っている。当然、彼女たちはセラフィナと縁を切った私を快く思ってはいない。けれど、この読書会はそうした令嬢たちとは少し毛色が違うようだった。趣味は少し世間の流行から外れているが――。

「サウス伯爵家は、それでも中央貴族だからね」

それなりに名の知れた伯爵家の令嬢だ。そのくらいの身分があれば、主流派の令嬢たちに気兼ねする必要もない。実際、それだけの影響力がなければ、このような読書会が今まで続いてきたはずもないのだ。

「それに、本は私も好きだし……よし」

私が心の中で決心した、ちょうどその時。公女様が招待状を覗き込むように顔を近づけてきた。好奇心いっぱいの青い瞳が、文字を追っていく。

「ワトキンス……読書会? うっ」

公女様は露骨に顔をしかめた。まあ、そういう反応になるだろう。お嬢様は普段から、本とはまったく縁のない生活を送っているのだから。

「レディ・アンシ、読書会に参加するおつもりですか?」

「ええ、そのつもりよ」

「どうしてです? わざわざ読書会なんて入る必要があります? 私が隣にいるのに……」

お嬢様は、捨てられた子猫のような目で私を見つめた。けれど、それもほんの一瞬。何かに気づいたように、お嬢様の顔がみるみる青ざめていく。

「ま、まさか……わ、私一人じゃ足りないってことですか!?」

裏切られたような声が震えながら響いた。

「わ、私はレディ・アンシさえいればいいのに!」

「え?」

「もう私じゃなくて、別のお友達が必要なんでしょう!?」

「え?」

私は戸惑いのあまり、「え?」としか返せなかった。何これ。まるで、野良猫に気を取られた飼い主を責める飼い猫のようではないか。

しかし、とにかく今は誤解を解くのが先決だった。

「そんなことありませんよ。私はお嬢様と一緒に過ごす時間が本当に楽しいですから」

優しくなだめると、お嬢様はこの世の終わりのような顔で言い返した。

「私といるのが楽しいって言うのに、どうして急に読書会なんて行くんですか!」

「ええと……それはですね」

少し言葉を選んでから、私は慎重に切り出した。

「私たちの本来の目的は、お嬢様の評判を良くすることでしたよね?」

「あっ」

お嬢様はようやく思い出したような顔になった。ぽかんと目を瞬かせるお嬢様に、私はゆっくりと説明を続けた。

「その点、この読書会はかなり良い選択肢なんです。私たちの目的は、『お嬢様が社交的な一面を見せることで評判を上げる』ことでしたよね? この読書会は小規模な集まりですが、参加している方々のご実家は、社交界の顔色をうかがう必要がないほどの力を持っている、とも言えるんです」

いつの間にか興味津々に目を輝かせているお嬢様へ向けて、私はにっこりと微笑んだ。

セラフィナを見ても分かる。彼女だって社交界の主流の集まりに参加するため、わざわざ誰かに媚びを売ったりはしていない。それに対して、お嬢様は――。

「お嬢様がアンシ作家のパーティーに参加したというだけで、社交界は大騒ぎになりました。それだけ、クラウディウス公爵家の影響力が絶大だということです」

私はさらに続けた。

「もちろん、招待状は私宛てに届きました。でも実際には、お嬢様を招待しなかったというより、お招きしたくても恐れ多くてできなかった、という方が近いでしょう」

帝国随一の権勢を誇るクラウディウス公爵家の、たった一人の令嬢。そのお立場にふさわしく、お嬢様は非常に――勝手気ままに社交会へ顔を出すタイプだった。正確に言えば、気が向いた時だけ、ごく限られた有名な集まりに参加する程度で、その「気が向いた時」があまりにも少ないのが問題だったのだが。

そんなお嬢様に、あのような小規模な読書会が直接招待状を送れるはずもない。だからあの招待状は結局、私を招待することで、お嬢様にも一緒に来てもらいたいという意味なのだろう。

「うーん」

しばらく考え込んでいたお嬢様は、ちらりと私の様子をうかがった。

「で、読書会って……本を読まなきゃいけないんですよね?」

「たぶん、そうだと思います」

「うぅ、本を読むの嫌いなのに」

唇を尖らせてぶつぶつ文句を言っていたお嬢様だったが、やがて何かを決心したようにつぶやいた。

「でも、レディ・アンシが一緒に行こうって言うなら、行ってもいいかも。私は本を読むのは大っ嫌いだけど、レディ・アンシのお願いなら聞いてあげてもいいかな」

はぁ、と私は心の中でため息をつき、口を開いた。

「これは私個人の考えですが、お嬢様にも参加していただけたら嬉しいです」

その一言で、お嬢様の顔はぱっと花が咲いたように明るくなった。

「レディ・アンシが、一緒に来てほしいって言ったんですよね? そうですよね?」

「はい。私が一緒に来てほしいとお願いしたんです」

「分かりました! レディ・アンシがそこまで言うなら、断るわけにはいきませんね」

お嬢様は得意げに胸を張った。

そうそう、お嬢様がその気になってくだされば、それでいい。私は、にこにこと満足そうに笑うお嬢様を、愛おしさを込めて見つめた。

こうして、初めて読書会へ参加する日。

外出の準備をほとんど終えた私は、一つの宝石箱を手に取っては置き、また手に取っては置きながら、鏡の前で考え込んでいた。

(……いつ、このイヤリングを着ければいいんだろう?)

箱の中には、公爵様から贈られたバラ水晶のイヤリングが入っていた。

もちろん、頭では分かっている。公爵様は、お嬢様をよく支えてくれているお礼として贈ってくださっただけで、特別な意味があるわけではないことくらい。

それでも……せっかくいただいた美しい贈り物だ。このイヤリングを身に着けた姿は、贈ってくださった公爵様に最初に見ていただきたいと思ってしまう。

(そ、正直そういうものじゃない?)

別に公爵様に特別な好意があるからではない。贈ってくれた相手に、最初に見てもらうのが礼儀として自然だと思うだけで……!

(よし。このイヤリングは次の機会に着けよう)

しばらく悩んだ末、私は別のイヤリングを身に着けて階下へ降りた。

我が家のリビングを自分の部屋のように占領してくつろいでいたお嬢様は、私の姿を見つけると手をひらひらと振った。

「来ましたね、レディ・アンシ」

「はい」

私はお嬢様の手首に目を向けた。細い手首には、鮮やかな青いターコイズのブレスレットが輝いていた。先日南部を訪れた際、公爵様がお嬢様に贈られたあのブレスレットだ。

私がそのブレスレットをじっと見つめていると、お嬢様は目を細めて私に尋ねた。

「ほら。お兄様がプレゼントしてくれたイヤリングは、一体いつ着けるつもりなんですか?」

「え、えっ?」

図星を突かれた私は、思わず肩をびくりと震わせた。するとお嬢様は、案の定という顔でため息をついた。

「まさか、大事にしまい込んで引き出しに入れっぱなしにしてるわけじゃないですよね? きれいなものほど、たくさん身に着けたほうがいいんですよ。それとも……あのイヤリング、お気に召しませんでした?」

「いいえ、そんなことありません!」

私は慌てて首を横に振った。

「じゃあ、どうして着けないんですか?」

「そ、それは……」

口ではそう言ったものの、いざ答えようとすると言葉に詰まってしまう。何て答えればいいのだろう。普通なら、プレゼントをもらったら深く考えずに喜んで身に着けるものだ。いつ着けようかと悩むこと自体が、むしろ不自然なのだ。

(で、でも……公爵様を意識しているなんて、悟られたら……)

できるだけ平静を装い、胸の高鳴りを必死に抑えながら口を開く。

「その……私、男性の方から贈り物をいただくのは今回が初めてなんです」

「へえ?」

お嬢様は少し眉を上げた。なんだか言い訳をしているみたいで――いや、本当に言い訳なのだけれど。

「それはそうですけど……嘘ではありませんから!」

私は顔が熱くなるのを感じた。

「グレゴリーだって、私にハンカチ一枚くれたこともありませんし……。もちろん、公爵様も特別な意味ではなく、礼儀として私にも贈り物をくださっただけなんでしょうけど……だから……」

話せば話すほど、「私、公爵様のことをすごく意識してます!」と全身で叫んでいるような気がしてくる。ああ、頭がくらくらする……。

一方、お嬢様はしばらく無言で私を見つめていたが、やがて静かに口を開いた。

「それは違うと思いますよ」

「え?」

「そのイヤリング、公爵様はただ礼儀で贈ったわけじゃありません」

……その言葉は、一体どういう意味なのだろう。私は戸惑いながらお嬢様を見つめた。

「まったく、二人ともじれったいんだから」

お嬢様は首を左右に振ると、すっと立ち上がった。そして私を置いて、足早に部屋を出て行ってしまう。

「急ぎましょう。このままでは読書会に遅れてしまいます」

いえ、お嬢様。あのお言葉は、一体どういう意味だったのですか!?

「さあ、どうぞお入りください」

「クラウディウス公女殿下、お待ちしておりました」

予定より少し遅れて姿を現したクラウディウス公女に、読書会へ集まっていた令嬢たちは一斉に立ち上がった。

……あれ、この光景、どこかで見たような。まるで、お嬢様が初めて我が家へいらしたときの、あの緊張感漂う雰囲気そのものだった。

ただ、今日のお嬢様は口をきゅっと結んだまま。以前、私の両親と顔を合わせたときのような愛想の良い社交性を発揮するつもりは、まったくなさそうだった。

「皆さま、このように歓迎してくださりありがとうございます」

私は慌ててその場の会話に加わった。

「読書会にお招きいただき、本当にありがとうございます、レディ・サウス」

「そのように言っていただけて、こちらこそうれしいです」

我に返ったレディ・サウス――ケイトは、慌てて私の言葉に応じた。

「それでは、中へどうぞ」

そうして令嬢たちがそれぞれ席に着くと、主催者であるケイトが代表して口を開いた。

「まずは、公女殿下とレディ・アンシに本日の読書会へご参加いただけたこと、心より感謝申し上げます。私たちの読書会では毎回一冊の本を選び、その本についての感想や意見を語り合う場として――」

歓迎の挨拶がよどみなく続くあたり、事前にしっかり練習してきたのだろう。しかし、会場の空気はどこか落ち着かない。その理由は明らかだった。

(まさか公女殿下が本当にこの読書会へ来るなんて!)

(うれしい……! こんなに近くで公女殿下にお会いできるなんて……!)

残る二人の令嬢は、すっかり興奮している様子だった。まあ、その気持ちは正直分かる。実際、この読書会のメンバーは社交界でも特に目立つ派手な令嬢たちではない。どちらかといえば、物静かで控えめなタイプだ。だからこそ、セラフィナのような「花形」の令嬢たちの前では、少し気後れしてしまうのだろう。

(うーん……)

セラフィナのことを思い浮かべた私は、思わず気分が沈んだ。もちろん、読書会の令嬢たちは皆それぞれ名門の出身なので、露骨に見下されるようなことはない。それでも、何というか……主流派の華やかな世界とは、自然には打ち解けられない雰囲気があったのだ。

そのとき、一人の令嬢が胸の前で両手を組み、うっとりと口を開いた。

「公女殿下が私たちの読書会に来てくださって、本当にうれしいです……」

その感激に満ちた声を聞いて、公女殿下は顎に手を当てた。そして、淡々と尋ねた。

「レディ・アンシは?」

「も、もちろんレディ・アンシも大歓迎です!」

「そうですよ! でなければ、どうして招待状をお送りするんですか!?」

慌てた令嬢たちが口々に言った。

「そうです! 私たち、レディ・アンシにもぜひ一度お会いしたかったんです!」

主催者のケイトまでそう続けた。

……あれ? みんなが私を見る目が、思っていた以上に真剣だ。

(え、私?)

私は思わず目をぱちぱちさせた。私はただ、公女様をお連れするための「付き添い」として招待されたんじゃなかったの?

「最近のレディ・アンシは、とても有名なんですよ」

「わ、私が……有名なんですか?」

「ええ。以前とはずいぶん変わられましたもの。性格も昔よりずっと明るくなられましたし……」

そう言いかけた一人の令嬢は、そっと私の表情をうかがった。

「それに、ずいぶん綺麗になられましたし」

そ、そうかな? まあ、私自身も、人々が私を見る目が以前とはかなり変わったことには気づいていた。ただ、公女様があまりにも有名だから、そのおかげで私まで注目されているだけではないかとも思っていたけれど。

(……嬉しい)

少し照れくさかったけれど、それでも素使に嬉しかった。私がぎこちなく微笑む一方で、公女様はといえば――。

『それ、全部私がプロデュースした成果なんだけど?』

とでも言いたげな誇らしげな表情で、私の隣でふんぞり返っていた。

「以前はレディ・ロペスのお世話でお忙しかったので、私たちもなかなかお話しする機会がなかったんです」

「でも最近は、ほかの方々ともよく交流なさっているようなので、私たちも思い切ってお声をかけることができました」

……ずいぶん遠回しな言い方をするものだ。要するに、「以前はセラフィナの侍女役を一生懸命やっていて近寄りづらかった」ということなのだろう。

はぁ、本当に。私はどうしてあんな情けない生き方をしていたんだろう。私は少しの間、過去の自分を苦々しく思い返した。

「だから、私たちはレディ・アンシを歓迎していないなんて、まったくの誤解なんです」

「ええ。そんなふうには思わないでいただけたら嬉しいです」

互いに顔を見合わせていたレディたちが、次々と言葉を続けた。私は穏やかにうなずいた。

「そんな誤解はしていません。ご安心ください」

「そう言っていただけて、本当に嬉しいです」

「これからも仲良くしてくださいね」

そんなふうに、和やかな空気が流れ始めた、そのとき。

(あれ?)

なぜだか背中にすうっと寒気を感じて、私はそっと横へ視線を向けた。そして心の中でぎょっとした。

見ると、公女様が信じられないほど冷たい目でこちらを見つめていたのだ。

(ものすごく冷たい視線で私を睨んでいる!? いったいどうして!?)

けれど、公女様の不可解な行動はそれだけでは終わらなかった。彼女はすっと立ち上がると、そのまま私のすぐ隣へ来て、ぴったりと体を寄せるようにして腰を下ろしたのだ。

(どうされたんだろう? 私、何か失礼なことをした? ……いや、心当たりはない!)

私が頭の中で必死に弁明していると、レディたちが目を輝かせながら私に声をかけてきた。

「レディ・アンシ!」

「はい、何でしょう?」

「あの……この前、南部でのお話なんですが」

質問したレディは頬を赤らめ、少し恥ずかしそうに口を開いた。

「クラウディウス公爵様が、レディ・アンシとダンスを踊られたという噂を聞いたのですが……本当なんですか?」

「あ……」

私は思わず言葉に詰まった。どう答えようかと少し戸惑い、返事をためらっていると――。

私が返事に困っている様子を見ていた公女様が、なぜか少し不機嫌そうな声を割り込ませた。

「ちょっと。私も南部のパーティーに参加していたんだけど?」

「こ、公女様?」

「クラウディウス公爵家の人間は兄だけで、私は違うっていうの?」

……なんだか、今日の公女様はやけに棘があるような気がする。

私はちらりと公女様を見やったが、場の空気が悪くならないよう、慌てて話題をそらした。

「あはは、公女様もいらっしゃったので、とても楽しいパーティーでしたよ」

私は無理に笑顔を作ると、急いでケイトへ視線を向けた。

「ところで、今回選ばれた本は何という題名なんですか?」

「あっ、はい。今回の本は――」

そうして会話に意識を向ける私を、公女様は一度も瞬きをしないまま、じっと横から見つめ続けていた。

 



 

 

  • 主人公の評判向上と「ワトキンス読書会」への参加

    クラウディウス公爵家との交流により主人公(レディ・アンシ)の社交界での評判が急上昇し、大量の招待状が届く。その中から、主流派とは一線を画すものの、実力ある中央貴族の令嬢が主催する「ワトキンス読書会」への参加を決める。

  • 公女様の独占欲と同行

    最初は本嫌いから難色を示していた公女様だったが、主人公から「お嬢様の評判を上げるための戦略」であることや「一緒に行ってほしい」という本音を告げられると一転して大喜びし、同行を承諾する。

  • 公爵様からの贈り物と読書会での波乱

    主人公は公爵様から贈られたイヤリングを意識しすぎて着けられずにいたが、公女様から「ただの礼儀で贈ったわけではない」と意味深な指摘を受ける。その後、参加した読書会では、主人公が他の令嬢たちと親しくなったり、公爵様とのダンスの噂を振られたりしたことで、公女様が強い嫉妬(独占欲)と不機嫌さを見せる。

 

 

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