ヤンデレを演技していたら本物に執着されました

ヤンデレを演技していたら本物に執着されました【61話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「ヤンデレを演技していたら本物に執着されました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

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61話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 隠された涙

「バイウードでミスリルが出たというのか?」

私は側近たちの口から次々と飛び出す言葉を聞き逃すまいと、ひたすら耳を澄ませていた。

バハルト帝国がバイウードをあっさりと手放したのは、あの土地に何の価値もないと踏んでいたからだ。それなのに、ミスリルなどという伝説の鉱石が眠っていたとなれば話はまったく変わってくる。あのケリオンが怒りに任せ、土地を奪い返しに攻め込んでくる可能性だって十分に考えられた。

(あの書信に、そんなとんでもないことが書かれていたなんて……!)

私自身、まったくの初耳だった。まさかバイウードでそんな書信が見つかるとは思いもしなかったのだ。

『レマンの伝説譚』第4章5節、8行目――。
だが、その伝説譚は入手が困難で、現在も捜索の真っ最中だった。市場に出回っていた数冊も、誰かが買い占めて全て焼き払ってしまったらしく、内容を把握することすらできていなかったのだ。

衝撃のあまり呆然と立ち尽くす私を余所に、会議は終わりを告げようとしていた。

「では、今日はここまでにして会議を終えよう。皆、下がってよい」
「はい、陛下。温かいご配慮に感謝いたします」

レシウスは、バイウードの件よりもさらに優先すべき急用でもあるかのように、早々に会議を切り上げた。

「ほう! バイウードにミスリルとはな。噂通りの役立たずどころか、宝の山ではないか」
「まったくですとも。……これまでのお振る舞いは、すべてベレウェン公爵様の壮大な計算だったのでしょうか!」

声の上がった方角へ視線を向けるが、心の中では激しく首を振っていた。
違う、絶対に違う! 私だって、たった今知ったばかりなのだから!

だが、それをここで大声で弁明するわけにもいかず、私はただ静かに虚空を見つめるしかなかった。
(ああ、いっそのこと空気になりたい……)

「マルトス公爵様、こちらへどうぞ」
「分かっている」

不快感を隠そうともせず私を睨みつけていたマルトス公爵は、ふんと鼻を鳴らして大殿を去っていった。
あの男は、なぜこうも私を目の敵にするのだろう。先日、マルトス公爵邸の付近で計画されていた道路増設計画に私が反対し、白紙に戻したことが原因なのは火を見るより明らかだった。
だが、あんな無駄な公共事業に投じる金があるなら、貧民数千人を救う方に回すべきだ。人の威光と公金で好き勝手やろうとするからそうなるのだ、と私は胸の中で吐き捨てた。

「はあ……」

口から漏れた熱い溜め息と重なるように、ドン、と巨大な大殿の扉が重々しく閉まる音が響いた。
ハッと周囲を見回すと、広大な大殿にはいつの間にか私とレシウスの二人だけが取り残されていた。

(待って、みんな戻ってきて……!)

孤児院を出てから、彼とこうして二人きりで向き合うのは初めてだった。
気まずさと居心地の悪さが、じわじわと身体を蝕んでいく。

「ルーウェン」

玉座の階段を静かに下りてきたレシウスが、私の目の前で足を止めた。
まるで己の身が削られるかのような、痛切で心配に満ちた眼差しで私の顔を覗き込んでくる。

「……もしかして、泣いていたのか?」

実際、涙は流した。自分がもうすぐ命を落とすかもしれないという事実は、あまりにも突然で、受け止めるには重すぎたからだ。

「いや」
「……」
「くしゃみを我慢していただけだ。だから、そう見えるんだろう」

まさか、侍従長に叱られて泣いていたなどと口が裂けても言えるはずがなかった。私は彼の視線を背けるようにして、誤魔化しながら頬を掻いた。

「そうか。……そうだったんだな」

言葉とは裏腹に、まったく信じていない顔だ。この男の前では、どんな嘘も容易く見破られてしまう。

気まずい沈黙が大殿を包み込む中、レシウスがそっと手を伸ばし、私の小指に触れようとした。

「っ……!」

思わず跳ね起きるように手を引いて避けてしまった。
な、何なのだ。急にこんなスキンシップをしてくるなんて。

「……昔の君なら、こんな風に驚きはしなかったはずだ、ルイン」
「……」
「私たちは昔、このくらいの触れ合いは当たり前にする友人だっただろう?」

彼は避けた私の手に再び指を伸ばし、その小指に己の小指をゆっくりと絡めてきた。そして、逃がさないように優しく持ち上げる。

「これからは、一人で泣かないと約束してくれ。いいな?」

まっすぐに見つめられ、念を押される。

「だから、泣いたんじゃないって。ただ、あくびを我慢していただけだ」
「分かった。なら、これからはあくびも我慢しないこと」

レシウスの深緑の瞳の奥に揺れる切実な懸念を見て取り、私は拒みきれずに首をこくりと縦に振った。
幼い頃に二人で交わしたおまじないのように、彼は己の親指を私の親指へ強く押し当て、判を押した。

「約束したからな。もう誤魔化すなよ」

レシウスは目線を合わせるようにふわりと身をかがめると、そのまま額と額をぴったりと押し当ててきた。

「泣かないでくれ、ルウェン。君が泣くと、私の胸が引き裂かれそうになるんだ」

呼吸が届くほどの近距離で、彼の美しい緑色の瞳が私を射抜いていた。
体温が伝わり、次第に自分の顔が火照っていくのが分かる。

「は、はは! そうだな、友人として! 何か悩みがあったら、絶対に真っ先に相談するよ!」

私はわざとらしく『友人』という言葉を強調し、大げさに距離を取って後退りした。

「友人……そうか、友人か」

真っ赤になった私の顔を見つめながら、レシウスは絡めた小指を器用に動かし、くすぐるように私の指先を突いた。

「きゃっ……くすぐったいって!」
「友達同士なら、このくらいの戯れ言は許されるんじゃないか?」

彼は悪戯っぽく微笑みながら、じっと私の目を見つめてくる。

「ダメなのか?」

うっ、ずるい。そんな捨てられた仔犬のような悲しげな表情をされたら、断れるはずがないではないか。

「そ、そうだな! 友達同士ならこれくらい普通だよな……!」

火が出そうなほど熱くなった頬を隠すため、私はわざと大きな動作で彼の肩をポンと叩いた。そして、逃げるように大殿の分厚い扉を力任せに押し開けた。

(……まだ熱が引かないのか?)

振り返ると、耳の先端まで真っ赤に染まった彼が立っていた。お互いに冷却期間が必要なのだと悟り、私たちはそのまま城の外廊下を無言で並んで歩き始めた。

しばらく歩いても一向に耳の赤みが引かないレシウスの横顔を盗み見ながら、私は思わず問いかけた。

「レシウス……何をそんなに考えているんだ?」
「ん?」
「いや、本当に何を考えているんだ? 正直に言ってみろ」
「……今の行動について、何回考えたと思う?」
「……43回?」

(おい。この男、本気で私を殺す気か?)

一方、バハルト帝国――。
新皇帝ケリオンは、爛れた態度で贅沢な玉座にだらしなく寝そべっていた。

寝巻の上に羽織っただけの歪な礼服姿は、皇太子時代のだらしなさを何一つ変えていなかった。

「陛下」

だが、その傲慢で不遜な立ち振る舞いを指摘できる者など、この国には一人も存在しなかった。
大臣たちの脳裏には、いまだ鮮明に焼き付いていたのだ。この大殿で返り血を浴びたケリオンが、先代皇帝の生首を鷲掴みにしたまま床を引きずり回していた、あの戦慄の光景が。

「……バイウードにて、ミスリルの存在が正式に確認されたとのことです」
「ハイルレン帝国の視察団が現地入りし、すでに一部の採掘を完了させ……」
「……本物であると確認が取れた模様です」

かつては役立たずと蔑まれ、皇太子領として捨て置かれていたバイウード。
そこが突如として絶大な価値を持つ鉱山へと変貌を遂げたという報せに、バハルト帝国の大臣たちは連日夜も眠れぬ焦燥に駆られていた。

内戦の混乱に乗じて奪われた土地とはいえ、今からでも返還を要求すべきではないか――大臣たちがそう揉め立てる中、玉座のケリオンは心底退屈そうに鼻を鳴らした。

「それほど欲しくもないのだがな」

皇帝の一言に、先ほどまで息巻いていた大臣たちは一瞬で固まり、露骨に前言を撤回し始めた。

「は、はい! 陛下のおっしゃる通りでございます!」
「左様でございますとも! ミスリルなど、我が国の他の領地でも稀に採掘される程度のものでございますし……」

「これ以上口を開けば叩き殺す」と言わんばかりのケリオンの冷酷な視線に射抜かれ、大臣たちは恐怖に慄きながら口をつぐんだ。

「鬱陶しい。全員叩き出せ」

不機嫌そうに手を振って大臣たちを追い払うと、ケリオンは薄暗い影の底に潜む配下に向かって短く問いかけた。

「それで、ハイルレンの内部事情は探れたのか?」

闇から滑り出た部下が、深く頭を下げて報告を始める。

「はい。やはり陛下の見立て通り、内部では激しい派閥争いが勃発しております」

ケリオンは口元を歪めた。読める展開だった。
軍部を牛耳るベルトウェンと、商業の頂点に立つマルトス。ハイルレン帝国はこの二大公爵家によって均衡が保たれていた。
だが現在、その均衡は崩れつつある。ベルトウェン公爵家が急速に勢力を伸ばし、もはやハイルレン帝国から独立すら果たせるほどの力を蓄えつつあった。

「マルトス公爵家の動きもさることながら、最も焦りを募らせているのは皇帝の側近たちでございます」
「なにしろ、ベレウェン公爵こそが現在の皇帝勢力の中核ですからな」

側近たちは恐怖しているのだ。ベレウェン公爵が己の絶大な力を背景に皇帝を裏切るのではないか、あるいは帝国を割って独立するのではないか、と。

「そのため、皇帝の側近たちの間では、ベレウェン公爵を繋ぎ止めるべく、ハイルレン皇女との婚姻を急がせる動きが急速に高まっております」
「……はあ? 何だと?」

頬杖をついていたケリオンの眉が、ピクリと跳ね上がった。

「ベレウェン公爵が……結婚だと?」

途端に、腹の底からドロリとした不快感が湧き上がってきた。
だが、即座に思い直す。そんなことが起こるはずがない。

「ハイルレン皇帝が、そんな真似を大人しく許すはずがないだろう」

伝聞を聞いた自分ですらこれほど胸糞悪いのだ。当のハイルレン皇帝の怒りは察するに余りある。何があろうと、その婚姻を全力で潰しにかかるはずだ。
何しろあの男は、ベレウェン公爵に異常なまでに執着し、狂っている男なのだから。

(……だが、狂っている奴ならもう一人いたな)

ケリオンの脳裏に、伏兵として浮上した第8皇子サビアンの青白い顔が浮かんだ。
死を覚悟してレクティスの深淵へと足を踏み入れた少年。
そして、彼がいまだ命を落としていない証拠に、レクティスの地はいまもなお激しく脈動し続けていた。

(もし……あの餓鬼がドラゴンの力を継承したのだとしたら)

バイウード。そこはミスリルという富をもたらす地であると同時に、恐ろしいドラゴンの領域と隣り合わせの諸刃の剣。

「くだらんことを考えたものだ」

ケリオンは鼻で笑い、黄銅で作られた玉座の肘掛けをコンコンと叩いた。
あの弱小な第8皇子が、レクティスの主になれるはずなど万に一つもないのだから。

バイウードに本当にミスリルが存在した――その事実は視察団の帰還とともに裏付けられ、ハイルレン帝国全土を揺るがす大ニュースとなった。

「まあ! では、あの広大な鉱脈の発見も、すべてベレウェン公爵様の深謀遠慮だったのですか?」
「ふふ、そういうことですわ。本当におそろしいお方ですこと」

城内のあちこちから聞こえてくる噂話に、私は激しい頭痛を覚えた。
違う! 全然違うのだ! 私がサビアンを矢面に立たせ、裏でコソコソとバイウードを手に入れたなどという陰謀論を、どうして誰もかれもが信じ切っているのか。

「レクティス近郊の変貌ぶりも凄まじかったそうだぞ」
「ああ、地鳴りと共に恐ろしい大風が吹き荒れたらしい」

大殿の前で歓談していた貴族たちが、私に気づくやいなや一斉に姿勢を正した。

「これはベルトウェン公爵様!」
「公爵様、本日もお見事な手腕でございます!」

用もないのにわざわざ近寄ってきては、もみ手をして深々と頭を下げる。そのお辞儀の角度は、以前よりも明らかに深くなっていた。

(……ただ事ではないわね)

権力の天秤が、音を立てて傾いていくのを感じる。
貴族や大臣たちは、生き残りをかけてどちらの陣営に付くべきか、露骨に様子を探り合っていた。

特に不安を募らせているのは、皇帝の側近たちだ。彼らは私が野心からバイウードを手に入れたと確信しており、いつ皇帝を裏切って離反するかとヒヤヒヤしているようだった。
私がレシウスを裏切るなど、天地がひっくり返ってもあり得ないというのに。

当のレシウス本人はといえば――。
大殿に入ってくるなり、臣下の目を盗んで口の形だけで「ル・イ・ン」と呼びかけ、楽しそうに私をからかってくる始末で、まったく意に介していない様子だった。

『こんな余計な騒動になるくらいなら、バイウードを皇帝直轄領として差し出したらどうだ?』

そう提案したこともあったのだが、レシウスは「その必要はない」と即座に却下した。
ならば、この騒ぎが自然に鎮火するのを待つしかない。私が揺るぎない忠誠を皇帝に捧げ続ける姿を見せれば、臣下たちの疑念もいつか晴れるはずだ。

そう楽観視していたのだが――事態は思いもよらない方向へと転がり始めた。

「陛下! 臣に、どうしても申し上げたい儀がございます!」
「申してみよ」

臣下の一人が前に進み出て、朗々とした声を響かせた。

「我が帝国の光であられる皇女殿下と、帝国の絶対なる盾であられるベレウェン公爵様。お二人はご承知の通り、お年頃も非常に近くいらっしゃいます」

(ん……? なぜ私とロザリンの名前が、ここで出てくるのだ?)

一瞬の違和感のあと、私は大臣たちの真の企みに気づき、背筋が凍りついた。

(そういうことか……! こいつらは私をハイルレンの血縁で縛りつけ、裏切りを防ぐ鎖にしようとしているんだ!)

未婚の皇帝レシウスに直接婚姻の話を振るわけにはいかないため、ターゲットを皇女ロザリンと私に絞ったのだ。

「今こそ、お二人が固い絆で結ばれる絶好の機会かと存じます!」

皇帝側近たちが一斉に平伏し、声を揃えた。

「どうか、ベレウェン公爵様と皇女殿下のご婚約を、前向きにご検討くださいますようお願い申し上げます!」

静まり返る大殿の中で、私は一人、絶望に頭を抱えそうになっていた。

(待ってくれ……私、中身も体も完全に女なんだけど!!)

 



 

  1. バイウードの「ミスリル」発掘による権力構造の変動と誤解
    バイウードで伝説の鉱石ミスリルが確認されたことで帝国中が大騒ぎとなり、周囲は「ベレウェン公爵(ルイン)の計算された計画」だと勘違いして深くひれ伏すようになります。一方で皇帝の側近たちは、勢力を増すベレウェン公爵家が裏切るのではないかと警戒と焦りを強めます。
  2. レシウスとルインの親密な関係と心の距離
    大殿に二人きりとなった際、レシウスはルイン(ルーウェン)の隠された涙や異変を察して深く心配し、指を絡めて「一人で泣くな」と切実な約束を交わします。ルインは必死に「友人」であることを強調して距離を取ろうとしますが、互いの存在の大きさと甘い雰囲気に照れを隠せずにいます。
  3. 周囲の思惑と皇女ロザリンとの婚姻提案
    ベレウェン公爵の離反を恐れる皇帝の側近たちは、公爵を皇室の血縁に縛り付けるため、皇女ロザリンとの婚約を皇帝に申し出ます。しかし、本来の性別が女性であるルイン(ルーウェン)は、その予期せぬ提案に密かに絶望し頭を抱えます。

 

 

【ヤンデレを演技していたら本物に執着されました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「ヤンデレを演技していたら本物に執着されました」を紹介させていただきます。 ネ...