こんにちは、ピッコです。
「幼い旦那様の黒幕妻です」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
51話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 黄金の宝物
『悪女はお金でなければ嫌』では、チェシャはヒーローにあっさり殺される役どころだったにもかかわらず、とんでもない生命力を見せていた。
「それから、デル様が昇天なさった時は……」
「『亡くなった』でいいよ。」
どうせ覚えていないことだし――そう心の中で呟きながら、チェシャは寂しそうに目を伏せた。
「……養父母の方々には、デル様がいつか生まれ変わることも伝えておきました。」
私はそこで初めて、チェシャをまじまじと見つめた。
「ローズを知ってるの?」
「はい。デル様が転生なさるまでお世話しようと思っていたんですが、嫌がられてしまいまして。それで、侯爵領にはどういったご用件で? まさか私を始末しに来たんじゃありませんよね?」
チェシャの声には、おびえた色がにじんでいた。私は首をかしげ、率直に問いかける。
「私がどうしてここへ来たのか分かる? 情報屋なんでしょ?」
「デル様に関する情報じゃなければ興味ありません。読まずに捨てていたので、ゴミ箱はそんな情報でいっぱいですよ。」
「……。」
「これから何をなさるおつもりですか? 帝国中の宗教を滅ぼす? それとも世界征服?」
「どっちもしないわ……。」
私が呆れ顔をすると、チェシャは本気で困惑したような顔をした。そのとき、階下から皇太子が壁を叩く音が聞こえてくる。
(まずい、長居しすぎた。)
私はチェシャに手を差し出した。
「さっき言ってたアーティファクトをちょうだい。」
チェシャはすぐにアーティファクトをかき集めて持ってきた。さらに、宝石まで私の前に山積みにする。
「全部持って行ってください! ついでに私も!」
私はチェシャの叫びを無視して、一番大きな指輪を手に取った。
「これもアーティファクト? 傷物になりそうだけど。」
チェシャは勢いよく説明を始めた。
「それは私が持っている中で最高の品です! 神官どもの中途半端な神聖力なんかとは比べものにならないほどの、自然の回復力が宿っています。集めるのは本当に苦労しました。でもデル様がお使いになるなら、少しも惜しくありません!」
私はその指輪を持って立ち上がった。それを受け取る意思表示だと受け取ったのか、チェシャは嬉しそうに言う。
「私も荷物をまとめましょうか? 実は侯爵領、あまり好きじゃないんです。」
いつの間にか、チェシャは旅行かばんを手にしていた。すでにかなり酔っているのに、そのかばんからも強い酒の匂いが漂っている。私は、この帝国にもアルコール依存症の治療施設はあるのだろうかとぼんやり考えながら口を開いた。
「ごめん、今は君を連れて行けない。」
「えっ……どうしてですか?」
チェシャの瞳が大きく揺れた。彼が何度も私を「デル様」と呼ぶのが気になっていたので、私は正直に打ち明けることにした。
「私はデルだった頃の記憶がないの。アーティファクトが必要だから取引しに来ただけで、あなたが誰なのかも分からない。」
「これから知っていけばいいじゃないですか!」
チェシャは即座に言い返したが、途中でぴたりと動きを止めた。
「……ちょっと待ってください。じゃあ、キブリン様も記憶がないんですか?」
(あれ?)
私は自然とキブリンのことを思い浮かべた。その瞬間、チェシャの顔色がみるみる青ざめていく。彼は荷物を放り出すと、私の肩をがしっとつかんだ。
「記憶もないのに、どうして結婚なんてしたんですか!?」
(あなたの言う「人間の盾」ってキブリンのことだし、それに災害って……もう頭が痛い!)
私が正体を明かしたことと、キブリンの正体を明かすことは別問題だと黙っていると、チェシャが私の肩を激しく揺さぶった。
「私のことは忘れても、ジェヘ様のことは忘れちゃだめです! あんなに大好きだったじゃないですか! 出会ってたった一日で離婚を考えてるなんて、本気でおかしくなったのかと思いましたよ!」
よりにもよってチェシャに正気を疑われるなんて、なんとも言えない気分だった。チェシャは宝石のついた指輪と、冬でも咲く不思議な花を持ってきて、私の手に無理やり押しつける。
「これ、有名な幸運の指輪なんです。ぜひジェヘ様と仲直りしてください! 私は近くにいると巻き込まれそうなので、また後日お会いします。それから、これも持っていってください……これも、それも……」
チェシャーは私の首に、首飾りを七つもかけてくれた。その中には、サブリナが手に入れたがっていた首飾りも含まれていた。私は半信半疑な目で見つめる。
「今にもついて来そうな勢いだったのに、どうしたの?」
チェシャーは酔いの残る顔のまま、ぶるっと身震いした。
「ジェヘ様は怖いんです。相手がデル様じゃなければ、とりあえず殴るか殺すかしてから話を始める人なんですよ。しかも嫉妬深いから、デル様が結婚したと聞いたら気が狂ってしまいます。……いや、もうとっくに狂ってるのかもしれませんけど?」
「……。」
チェシャーがぶつぶつつぶやいていると、皇太子がまた壁を叩いた。今度こそ本当に戻らなければならない時間だったが、私はふと足を止める。
(キブリンは、デルが死ぬ直前に何を経験したのか知らない。だから封印を解くのは、しばらく保留にしておこう。)
ジェヘのことまで知っているチェシャなら、デルの死因も知っているのでは?
「ねえ、あなた、デルがどうして死んだのか知ってる?」
その瞬間、チェシャの表情が真剣になった。
「……少々お待ちください。」
そう言うと、陳列棚から酒瓶を取り出す。一本を勢いよく飲み干すと、まだ足りなかったのか言った。
「もう一本だけ飲ませてください。それから話します。」
「ごめん! やっぱり聞かないから、もう飲まないで!?」
昇天したと言おうとして飲みすぎで死んだ、なんてオチだったらどうしよう! 私は慌ててチェシャを止めた。チェシャは複雑な感情を宿した目で、私を見下ろす。
「確認のためにお聞きしますが……今、私の腕をつかんでいますよね? どうしてそんなに力が強いんです?」
「……。」
(この人、ちょっとムカつく……。)
チェシャは床にしゃがみ込んだ。私と目線の高さが同じになると、緊張が解けたようにへらっと笑う。
「本当にデル様なんですよね?」
「そうよ。」
チェシャはぶつぶつとつぶやいた。
「今度は死なないでください。」
「……。」
「あのときも……今度こそ幸せに暮らしてほしいと思ってたのに……うぅ……。」
突然、チェシャがぽろぽろと泣き始めた。
(どうやって慰めればいいのよ! この人もロズと同じくらい、デルのことを可愛がっていたのかな?)
酒気を帯びたチェシャの体が、ゆらゆらと傾き始めた。
「あっ。」
私は慌てて手を放した。しかし、私の小さな力ではチェシャを支えきれず、彼はそのまま床へどさりと倒れ込んでしまう。
「チェシャ、大丈夫?」
幸い、呼吸は規則正しかった。私はチェシャの服を引っ張ってみたが、まったく反応しない。仕方なく、私は皇太子を呼ぶことにした。
床に倒れているチェシャを見下ろした皇太子は、何とも言えない表情を浮かべる。
「……これでも一応、この店の主人ですよね。ソファまで運びましょうか?」
「……お願いします。」
皇太子は少し手荒にチェシャをソファへと運んだ。チェシャは目を覚ますこともなく、ソファの上で小さく体を丸めて眠り続けている。
「見た目は幼いですが、かなり強い気配を感じますね。ただの情報屋ではなさそうです。」
「危険そうに見えますか?」
皇太子は首を横に振った。
「完全に警戒を解いています。今なら刃物で刺されても気づかないでしょう。」
「……。」
「試してみても構いませんが。」
まだ一言も話していないのに、皇太子はすでにチェシャーを嫌ってしまったようだった。私は慌ててチェシャーをかばう。
「お酒には酔っていますけど、私には親切にしてくれました。」
「酔っていたから親切だった、ということですか?」
「そ、それは……どうでしょう……。」
(なんだか余計に印象が悪くなった気がする……?)
私は皇太子が本当にチェシャーを刺してしまう前に話題を切り上げ、毛布を探してチェシャに掛けてあげた。貴重な品を山ほど持っているくせに、まともな布団は一枚もないんだね。チェシャは本当にデルの信奉者だったのだろうか。これが最初で最後の出会いになればと思っていたのに、どうやらまた会うことになりそうだ。
私は、チェシャが目を覚ましたら読むようにと簡単な書き置きを残し、宝石店を後にした。
チェシャは眠りながら、過去を思い出していた。
デル様はいつも一人だった。だからなのか、捨てられたものを放っておけない人だった。養子たちもそうだったし、自分もそうだった。あの時代は土地は豊かで、人も多かった。そんな広大な土地を独占していたデル様が、人々から好かれるはずがなかった。
その後まもなく、デル様を討伐するための大規模な討伐隊が編成されるという噂が世界中に広まった。チェシャーは討伐隊も、そしてデル様に敵対する人間も皆殺しにしてしまおうと提案した。しかしデル様は、逆に彼を領地の外へ追い出した。
――「頭を冷やしてこい。」
そう言い残して。チェシャーは充血した目をこすった。彼が戻ってきたときには、もうデル様の姿はなかった。群がるハエのように押し寄せた人々は、デル様の領地を奪おうとして戦争を始めていた。チェシャーはデル様の遺品を整理しているうちに、ふと立ち尽くす。
――私も死ぬのかな……。
彼がそう考えることまで見越していたかのように、デルは言い残していた。
「長い時間が過ぎれば、私は必ず戻ってくる。」
それだけが、彼に残された唯一の希望だった。
――生きなきゃ。
チェシャはそう決意して笑みを浮かべた。故郷もまた、突然手に入れた広大な土地へ移り住めることになり、お祭り騒ぎだった。
――お前、どこへ行くんだ?
村人の問いに、彼はあっさりと答えた。
――「冬眠するためだ。」
彼は「何を馬鹿なことを」とでも言いたげな顔で、チェシャーに言った。
――「さっさと冬眠して戻ってこい。デルと知り合いだったなんて、絶対に悟られるな。」
――「世界最強のデル様って呼べよ。この生意気なガキが。」
――「……そうしたら、お前まで討伐されるぞ?」
チェシャーは一年中寒い場所で、長い眠りについた。そして目を覚まして世に戻ると、すぐにすべてが終わっていたことを悟った。どれほど時が流れても、デル様の存在だけは決して忘れられなかった。
あまりにも不細工だとか、心根が高潔だとか、さまざまな噂が飛び交っていた。しばらくの間、チェシャはその噂を流した者たちを一人ひとり訪ね歩き、確かめて回った。特に「怪物のような肖像画を量産して、これこそデル様だと吹聴していた男」は、死ぬまで彼につきまとった。
その後、彼は再び深い無気力に陥った。
――死のうかな……。
その時、ネクタリアン公爵家で奇妙な子どもが生まれたという知らせが届いた。チェシャは慌てて公爵家へ向かう。
――……ご当主様にお会いしたい? 挙動が怪しいが、身分証はあるのか?
そんなことは、もちろんあり得なかった。その時になって初めて、彼は自分の姿を見た。服はぼろぼろで、髪は足首まで伸びていた。「デル様が見れば合格と言うだろう」と言われた顔も、泥や汚れにまみれていた。靴も履いていないチェシャーを見た公爵家の者が、数枚の銅貨を手渡す。
――「今回は見逃してやる。二度目はないと思え。」
親切な人だった。受けた恩を仇で返すのが信条のチェシャーは、その場で決意した。しかし、公爵家の当主は、たとえチェシャーの時代に生まれていたとしても、片手で倒せる程度の実力しかなかった。
さらに、「子どもが怪物だ」という噂のせいで、常に神経をすり減らしていた。
――聞けば、すぐには死ねそうにないな。下手をしたら、私まで巻き込まれるんじゃないか?
そう口にしながらも、背筋が寒くなった。チェシャはきっぱり諦め、靴や服を新調した。そして、貴族たちが興味を持ちそうな品々を集め始めた。数年後、「そろそろ近づいても大丈夫ではないか」と考え、少しずつ公爵領で店を開くようになった。領地の管理がずさんだったため、身分証も適当に作ることができた。
そのうえ運にも恵まれ、やがてキブリン・ネクタリアンは牢獄から脱出した。公爵家の者たちが聖騎士に連行されたという話を聞くたびに、チェシャは夢の中でさえ飛び上がるほど驚いていた。
紫色の髪を見つけるまでは。
公爵家に関する噂にはいつも耳を傾けていたので、それが誰なのかは知っていた。なんと、ネクタリアン公爵令嬢だった。とても可愛らしく、病弱で、公爵家の人々から宝物のように大切にされているという話だった。私を見つめる丸い瞳は、夜明け前の星空をそのまま閉じ込めたように輝いていた。
――「私がデルです。」
チェシャーはしばらく呆然とした。
「じゃあ公子は何なんだ? ……いや、それはともかく、こんな形で結婚なんてして大丈夫なのか? あの人が知ったら、デル様以外はみんな殺されるぞ?」
デル様の伴侶になろうとしていたその人物は、とても性格が悪かった。デル様の前では尻尾を振る狐のように従順だったが、裏では異能を持つ者たちを盗賊のように狩っていた。それほどまでに切迫していたのだ。
デル様が戻ってきたのだから、たとえ地獄に落ちても這い上がってくる勢いだった。しかも結婚を目前にして、そろって出家してしまったのだから、ショックも相当なものだっただろう。
チェシャはため息をつきながらソファから立ち上がった。デル様が掛けてくれた毛布を大事に抱えたままぼんやりしていると、ようやく置き手紙に気づく。
「わあ、悪口……じゃなくて、褒め言葉でしたね。」
思わず漏れた本音を、チェシャは慌てて言い直した。
「また会いましょう」という短い一文だけなのに、胸がじんわりと温かくなった。
「いや、それでも離婚はしなきゃ!」
ジェヘとキブリンが同一人物だと知らないチェシャは、そう思い込むしかなかった。
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デルの正体発覚とチェシャの動揺
主人公が「デルである」と明かしたことでチェシャは驚愕し、記憶がないことやキブリン(ジェヘ)と結婚していることに激しく動揺しながらも、幸運の指輪や数々の首飾りを無理やり押しつける。
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チェシャの過去とデルへの深い忠誠
泥酔して眠り込んだチェシャの回想を通じ、かつてデルに仕え、彼女の死後に深い絶望と長い眠りを経て再会を待ち望んでいた切実な過去が明かされる。
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置き手紙と新たな決意
目を覚ましたチェシャは、デルが残してくれた温かい置き手紙に胸を熱くする一方で、正体を知らぬままキブリンとジェヘが同一人物だとも気づかずに「離婚させるべきだ」と思い直す。