こんにちは、ピッコです。
「悪女の姉を救う勇敢なわんこです」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
57話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 狩猟大会
狩猟大会〈キャピタル・カーニバル〉の当日を迎えた。毎年1泊2日で開催されるこの催しに参加するため、各地の貴族たちが帝都へ集まり、都の交通は麻痺するほどの混雑となっていた。皇帝は、この祭典に合わせて自らの離宮である「東宮」を開放し、大会に参加する者や観戦に訪れる大勢の貴族たちを収容した。
私は堂々と狩猟大会の参加者名簿に名前を書いた。
「もう、来るなって言ったのに。本当に人の話を聞けないんだから」
「でも、カリゴも来いって言ったんですよ!」
そういえば、カリゴはどこにいるんだろう。私は姉の手を引いて、「東の別宮」の中へ入った。
「ねえ、聞いてください! 狩猟大会って聞いて、かわいそうなウサギとかを狩るのかと思って心配してたんですけど……」
「違うよ。犠牲になる動物はいない。安全に改良された魔物を狩るんだ」
「安全に改良された魔物?」
なんだか、ちぐはぐな話だ。
「ここにいる人たちは皆、貴族だからね。下手をすると……もし魔物が貴族を傷つけでもしたら大変でしょう?」
「わあ……」
「だから、生命もなく、異能も持たない模造魔物が作られたんだって」
「すごい!」
「その異能に触れると、そのまま消えてしまうらしいよ。私も狩猟大会は初めてだから」
「わあ!」
私は足取りを速めながら、東宮の中へ入っていった。すると、お姉様が微笑みながら湖を指差した。
「見ていかない?」
いくつもの屋敷を合わせたほど広大な湖が広がっていた。
「東の別宮と狩猟大会会場の間にある『竜の湖』よ。あそこにまつわる伝説を教えてあげようか?」
「な、何ですか?」
「その湖の中には、危険な魔物が封印されているという伝説があるの」
「わあ、すごい!」
「でも、その魔物が外へ出てくることはないわ。湖を造ったのは、先代皇帝の竜の神獣だと言われているの。だから怖がらなくて大丈夫」
「わあっ、竜の神獣! すごくかっこいい!」
それに、狩猟大会だけでなく、「狩猟大会前夜祭」という祭りも開かれることを姉は教えてくれた。
「最近は実質、狩猟大会そのものに大きな意味はなくなっていて、狩猟大会も舞踏会も、どちらも同じようなものなのよ……なんて話もあるそうなの」
「へえ……」
思っていたよりずっと規模が大きい――。私は急に不安になってきた。もし、この1泊2日の間にお姉様とはぐれてしまったらどうしよう。私は、お姉様とつないだ手をぎゅっと握りながら、小さな声で尋ねた。
「ありますよね、お姉様」
「ん?」
「《永遠の石》、持ってきましたか?」
「……ええ、持ってきたわ。朝からあなたが何度も『忘れないで』って言っていたものね」
私は、お姉様のポケットにしっかりと入っている〈永遠の石〉を見て、へへっと笑った。
「ずっと持っていなきゃ!」
「まったく、変わってるわね……。本当に変わったものが好きなんだから」
でも、この〈永遠の石〉は、どこにいてもお姉ちゃんが私を見つけられるようにしてくれるものだ。だから毎日持ち歩きたいんだ。お姉ちゃんは私の手をぎゅっと握ったまま、東の別宮にある私の部屋まで送ってくれた。
「ココ」
「なあに?」
「危ないから、夜は勝手に外へ出ちゃだめよ。侍女のお姉さんを困らせてもだめ。外へ出たくなったら、騎士のお兄さんに連れて行ってもらうのよ」
今回、アルドス公爵家から連れてきた騎士の数もかなり多かった。私は目を丸くして首をかしげた。
「お姉様は、少し前夜祭に行ってくるわ」
お姉様は優しく私の髪をなでた。私はにこっと笑って、お姉様の腕にしがみついだ。
「狩猟大会の前夜祭ですよね? 狩猟大会の開幕を祝う催しで、狩猟を見学しに来た異能を持つ子どもたちも参加できるんですよね?」
「……」
お姉様は呆れたような表情を浮かべた。
「どうしてそんなに物知りなの?」
「だから、私も一緒に行きます!」
私はお姉様の腕にぎゅっと、ぶら下がるように抱きついた。
—
お姉ちゃんは本当に困ったように、小さく笑った。
「じゃあ、問題を起こさないって約束して」
「問題を起こさないって約束!」
「……それじゃあ、髪ももっとかわいくしてあげようか」
お姉ちゃんが私の髪をなでながらそう言うと、嬉しくて胸が弾んだ。
『そうだよ! 私はかわいいんだから!』
わくわくする!
お姉ちゃんが髪を整えてくれて、侍女のお姉さんはかわいいドレスも用意してくれた。フリルがたっぷりあしらわれたピンク色のドレスを着て、お姉様と手をつないだ私は、東宮のメインホールへ入った。
「ここが今日の前夜祭の会場なんだ!」
壁際にはオーケストラの団員たちが並び、人々は次々と集まって談笑していた。皇宮の舞踏会に似た雰囲気だが、それよりも少しくだけた空気が漂っている。ホールの入口近くにはカリゴの姿があった。
「わあ! カリゴ!」
「え? ココ……?」
いつもよりずっと可愛らしい、フリルがたくさん付いたドレス姿だったからだろうか。
「……今日は可愛いね」
クロエお姉ちゃんは小さく微笑みながら、私の手をカリゴの手に預けた。
「お兄ちゃんはどこにいるの?」
「ああ、お兄さんですか。クロエ様を探しているそうです。さっきあちらの宴会場の中へ入っていったみたいですが……道に迷ったのかもしれません」
「カリゴ」
「はい」
「それじゃあ、ここで5分だけココを見ていてくれる? もちろん騎士たちも見守っているけれど、念のために」
お姉ちゃんの表情は少しだけ慌ただしくなっていた。私は首をかしげた。
『何だろう? 何か企んでいるような顔だな。お姉ちゃんも今日は何か計画していることがあるのかな?』
狩猟大会で優勝する、とかそういうことではなく。何かもっと高度なことを狙っているような気がするけど……。でも、お姉様は私のことを、とてもおバカな子犬みたいな子どもだと思っているから、どんな計画も共有してくれないだろう。
私はカリゴと並んで立ち、その場の様子を見守ることにした。そうすれば、何か分かるかもしれない。
—
ココは気づいていなかったが、クロエは会場に足を踏み入れた瞬間、人々の視線が自分に集まるのを鋭く感じ取っていた。特に、先に到着していたダリアの視線が――彼女はリベラ大公と、狩猟大会の直前に内密で話をする約束があった。
しかし、ダリアはクロエを見過ごせなかった。
「こんにちは、クロエ。元気だった? 久しぶりね」
取り巻きの令嬢たちと一緒だったせいか、ダリアはいつもより少し上機嫌で、クロエを見ながら小さく笑みまで浮かべていた。その笑みの裏には、妙な嘲笑が隠れていた。クロエの黒いドレスをじっと見つめ、彼女は気の毒そうに眉を八の字にした。
「今日はエスコートもなしで、一人で来たの?」
「……」
クロエが彼女を軽く無視して周囲を見回しても、ダリアは相変わらず笑みを浮かべていた。
「愛嬌も魅力も足りないから婚約者を奪われたあなたに、一体何ができるの? 自慢だった能力も、今では昔ほどじゃないし」
周りにいた令嬢たちも、多くが薄く笑みを浮かべていた。クロエは「婚約者に一方的に冷たく接した挙げ句、婚約破棄されてしまった魅力のない令嬢」という印象を持たれていたのだから。
それでもクロエは、そんなことなど少しも気にしていなかった。その表情は、何かを待ち構えているようだった。彼女の視線は、ひたすら会場の入口へと注がれていた。
「いったい、あの入口に何があるの?」
ダリアが苛立ち混じりの視線で入口を見た、その時だった。
遠くからリベラ大公が歩いてくるのが見えた。近くにいた令嬢たちがざわめく。
「えっ、リベラ大公殿下じゃない?」
「大公殿下も今回の狩猟大会に参加なさるの?」
「とてもお忙しい方だと聞いていたけれど」
案の定、彼の登場は同世代の令嬢たちだけでなく、夫人たちの心までときめかせた。
「社交界最高の花婿候補のご帰還か」
「まだ婚約者はいないんでしょう? 今回の狩猟大会が、いい出会いの場になるかもしれないわね」
ところが――リベラ大公がこちらへ歩いてきていた。
ダリアは戸惑いながら周囲を見回した。
『まさか……』
まさか自分のところへ来るの? だったら、どうして? もしかして私に興味があるのかしら? そう考えた彼女は、熱くなった耳たぶをさりげなく指先で触れた。
しかし、リベラ大公は彼女ではなく、クロエの前で立ち止まり、簡潔に言った。
「クロエ・アルドス公女、お久しぶりですね」
「お久しぶりです」
クロエは特に何も思っていないような表情だった。ただ淡々と応じるだけ。その気高く落ち着いた態度が、かえって相手の劣等感を刺激した。
「ずっとお会いしたいと思っていたのですが、バルコニーで少しお話ししませんか?」
「ええ、もちろんです。ただ、カリゴとリベラ大公子、それに私の妹があちらのホールの近くにいるのですが」
「でしたら、あの子たちも一緒に連れて行きましょう。異能を持つ子どもたちも、この前夜祭にはあまり参加していないようですし」
クロエはリベラ大公が差し出した手を取り、ダリアを軽く無視した。リベラ大公は穏やかな微笑みを浮かべたまま、ダリアへ軽く会釈した。もちろん、それは決して親しみを込めたエスコートではなかった――それでも。
二人の冷ややかな視線は、かえって彼女の怒りをあおった。よりによって、クロエごときがリベラ大公に選ばれたのだ。しかも、クロエは大公のエスコートなど何の感慨もないと言わんばかりの態度だった。ダリアは、大公と話しながら遠ざかっていくクロエの背中を見つめた。
振り返ってみれば、クロエはいつも孤独だった。彼女たちがそれなりに友人だった頃も、そうだった。
『メルロマンド令嬢。あ、そういえばクロエは今日も出席しないの?』
『その話、聞いた? クロエ様が今回もアカデミーで……』
『闇魔法のことよ。正直ちょっと怖いけど、それでもクロエ様の態度を見ていると、何というか……尊敬してしまうのよね』
人々はクロエと自分を露骨に比べたりはしなかった。だがダリアは、自分が決して勝てない相手と絶えず比較されているような気分だった。
『クロエも気づいていたのかもしれない』
ダリア自身が劣等感を抱いていたことを。しかしクロエは、その劣等感を埋めてくれることはなかった。ただ、あの鬱陶しい紫色の瞳で、うんざりしたように世の中を見つめるだけだった。
クロエの親友として過ごしているうちに、ダリアは何度も惨めな敗北感を味わってきた。ギレンが自分の恋人になれば、もうそんな敗北感を抱かずに済むと思っていたのに。
『また、もっといいものを手に入れた』
いつも。いつもそうだった。
周囲から、
「クロエ様とリベラ大公殿下って、どういう関係なの?」
「もしかして、お二人が新しく婚約でもなさるんじゃない?」
そんなひそひそ話が聞こえてきた。
『また、憧れの的になってる……』
もし大公が彼女の婚約者にでもなったかのように、切り札みたいに現れてしまったら……。
『そんなの、だめ』
ダリアは嫉妬に燃える目でクロエをにらみつけた。誰もそんなことは言っていないのに、なぜか皆が「ダリアの負けだ」と囁いているような気がして。
ダリアは、クロエとリベラ大公が姿を消したバルコニーの方を見つめながら、必死に心を落ち着かせようとした。
『……そう。だけど、それでも私にはあの人がいる』
彼女が持っているものの中で、いちばん輝いている存在――。
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狩猟大会〈キャピタル・カーニバル〉の開幕
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1泊2日の大会のため帝都は大混雑。皇帝は離宮「東宮」を開放し、主人公(ココ)は姉のクロエと共に東宮へ入る。
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安全に改良された模造魔物や、「竜の湖」の伝説、前夜祭の開催などについて知る。
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ココはお守りの《永遠の石》をクロエに持たせてもらい、前夜祭へ一緒に行く約束を取り付ける。
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前夜祭の喧騒と再会
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フリル付きのピンクのドレスに着替えたココは、クロエと共に入場。ホールの入口でカリゴと合流し、クロエの頼みでカリゴに少しの間見てもらうことになる。
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クロエは何か計画(企み)を抱いている様子だが、ココには明かさない。
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ダリアとクロエの因縁
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会場では、クロエをライバル視し劣等感を抱くダリアが、取り巻きの令嬢たちと共にクロエを嘲笑する。
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しかしクロエはダリアを相手にせず、入口の方を気にかけていた。
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リベラ大公の登場とバルコニーへの移動
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そこへ社交界で注目の的であるリベラ大公が現れ、ダリアの期待をよそにクロエの前へ歩み寄る。
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リベラ大公はクロエをバルコニーでの密談に誘い、カリゴやココ、リベラ大公子も一緒に連れてその場を離れる。
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ダリアの嫉妬と執着
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クロエがリベラ大公に選ばれ、自分を完全に無視して去っていく姿を見たダリアは、かつての友人関係から来る激しい敗北感と嫉妬に駆られる。
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周囲の視線に怯えつつも、ダリアは自分にとって一番輝いている「あの人」の存在を胸に、必死に心を落ち着かせるのだった。
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