こんにちは、ピッコです。
「ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
どういう訳か小説の中の悪の一族、アグリチェ一家の娘「ロクサナ」に生まれ変わっていた!
アグリチェは人殺しをものともしない残虐非道な一族で、ロクサナもまたその一族の一人。
そして物語は、ロクサナの父「ラント」がある男を拉致してきた場面から始まる。
その拉致されてきた男は、アグリチェ一族とは対極のぺデリアン一族のプリンス「カシス」だった。
アグリチェ一族の誰もがカシスを殺そうとする中、ロクサナだけは唯一家族を騙してでも必死に救おうとする。
最初はロクサナを警戒していたカシスも徐々に心を開き始め…。
ロクサナ・アグリチェ:本作の主人公。
シルビア・ペデリアン:小説のヒロイン。
カシス・ペデリアン:シルビアの兄。
ラント・アグリチェ:ロクサナの父親。
アシル・アグリチェ:ロクサナの4つ上の兄。故人。
ジェレミー・アグリチェ:ロクサナの腹違いの弟。
シャーロット・アグリチェ:ロクサナの妹。
デオン・アグリチェ:ロクサナの兄。ラントが最も期待を寄せている男。
シエラ・アグリチェ:ロクサナの母親
マリア・アグリチェ:ラントの3番目の妻。デオンの母親。
エミリー:ロクサナの専属メイド。
グリジェルダ・アグリチェ:ロクサナの腹違いの姉。
ポンタイン・アグリチェ:ラントの長男。
リュザーク・ガストロ:ガストロ家の後継者。
ノエル・ベルティウム:ベルティウム家の後継者
56話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 女王の審判
「ダンテ、これ飲んでみる?」
ダンテはニックスが差し出したものを見て傲慢な表情を浮かべる。
「いくらあなたでも私を毒殺することまでノエル様は許さないでしょう」
彼の目の前に突きつけられたのは毒の入ったお茶。
ニックスの手にあるお茶だけでなく、トレイの上にある各種デザートにも少量の毒が入っていた。
「残念、ここで死んでもいい人間は君だけだから、君が食べて効果を確認してくれればいいのに」
「死んでもいい人間だなんて、すごく侮辱的な発言ですね」
「この建物にいる人間は君とノエルだけなのだから、これをノエルに食べさせるわけにはいかないじゃないか」
「だから私なら食べてもいいと?」
「本当に死ぬほどの量は入っていないよ」
ニックスの厚かましい言葉に、ダンテは後の祭りを感じなければならなかった。
「今からでも他の方法を探してみましょう」
ニックスが用意した薬は少量だけでも効果が確実なことで有名だ。
ところが、なぜかロクサナには通じない。
ニックスとしては非常に怪訝で困惑することだった。
「彼女、今ノエルと一緒にいるんだよね?」
「ええ。一緒に花園に行くのを確認しました」
現在、ベルティウムはロクサナに表れる脅威を与えてはいない。
ロクサナが彼女の意志でベルティウムに残ることを選択することを望むノエルのとんでもない夢のためだった。
「変だよね。毒を昨日の2倍も注ぎ込んだのに、どうしてあんなに平然としているのかな?」
ニックスはトレイの上のデザートを見下ろして悩んだ。
やはりこの前、アグリチェの近くで会った男をすぐに殺さず、ロクサナに対する他の情報も少し掘り下げればよかったという気がしてきた。
小さく舌を巻いたニックスが皿の上のクッキーを持った後、席から立ち上がる。
「ちょっと待ってて。後園に行ってくる」
「え?急にどうしたのですか?」
ダンテは眉をひそめて首を傾げた。
しかし、ニックスはすでに遠ざかっている。
「ちょっと待て、ニックス!」
切羽詰まった呼び声にもニックスは飛ぶように軽く走り、瞬く間にダンテの視界から消えた。
結局、ダンテが再び彼を発見した時には、すでに息が切れて気絶する一歩手前の状態。
そして続いて視野に入ってきた光景を見て、彼は思わず目を瞑ってしまう。
「うっ・・・!」
「うーん、まだ反応がないね。もう少し待ったほうがいいのかな?それとも、もう一つ食べてみる?」
ニックスの明るい声が頭上に差し込む白い日差しの中に浮かんだ。
ニックスは男の首を掴んで、彼の口に毒入りクッキーを押し込んでいた。
男はそれを食べないようにもがいていたが、ニックスの愚かな力の前では意味を持たない。
その後、ニックスから抜け出そうとしていた男の体から力が抜け始めた。
それを見たニックスの目が光り輝く。
「何だよ、これ。効果抜群じゃないか」
しかし、副作用も少なくなかった。
男は口に泡を立ててふらつき始める。
「これはどういうことだ!」
その時、男の後ろから怒りのこもった声が飛んできた。
ニックスの視線はその音に沿って前に向けられる。
ニックスが手を離すと、首を掴まれていた男が藁のように力なく倒れた。
「お前・・・!一体何を食べさせた!?」
花木に隠れてよく見えなかったが、後園に繋がった道の端にこじんまりとした建物が一軒ある。
ニックスを発見し、その中から抜け出した人々がザワザワと集まってきていた。
その後、彼らは床に倒れた男を見て驚愕する。
「別に。ただ確認することがあっただけさ」
ニックスは大したことのないように話す。
動揺しながら怒る人々とは反対に、ニックスは毒の効果を直接確認できてスッキリした状態だった。
「大丈夫、死ぬほど危険な薬じゃないよ。まあ、下手したら痴呆くらいにはなるかもしれないけど」
もちろんそれはニックス基準での親切。
遠くからその姿を眺めていたダンテは、頭痛を感じてしまった。
この事態を一体どう収拾すればいいのか考えると、じわじわと頭が痛くなってしまう。
現在、ベルティウムは2つの領域に分けられていた。
後園と繋がったこの場所はベルティウムの血を引く人々が住んでいる。
本来彼らはノエルのいる本館で過ごした人たちだ。
しかし、いつからかノエルは血による繋がりより自分が作った人形に偏った愛情を注ぎ始めた。
そのため、他のベルティウムの人々は日増しに増えていく人形に押され、後園にある建物に生活の基盤を移すことになったのだ。
「あえて私たちを毒殺しようとするなんて、ノエルもこの事を知ったら黙っていないはずだ!」
「その通りだ!私たちも今回は絶対に見過ごさない!」
現在、ベルティウムの人間たちの間で人形に対する感情は当然良くなかった。
その中でもノエルの寵愛をほとんど独占しているニックスがこのような行為をしたので、騒ぎが簡単に収まるはずがない。
「うん?このまま見過ごさないとは?」
「今すぐにお前を廃棄するように要求する!」
ニックスの問いに、人々は蜂の群れのように立ち上がり、悪を糾弾するように叫び始めた。
「そうだ!お前なんか今すぐに処分されるべきだ!」
「生意気な人形め!ノエルの人形の中でも、特にお前は以前から気に入らなかったんだ!」
普段抑えられていた長年の感情の大きさだけ待っていたかのように、人々から露骨な悪口が溢れ出る。
けれど、ニックスの表情は平穏を極めていた。
そうするうちに彼の口から笑い声が聞こえてくる。
「そうそう、私は人形だ。そして、君たちは偉大な人間様」
しかし、続いてニックスの顔に表れたのは鮮明な嘲弄。
「だけど本当に変だよね。そんなに偉い君たちは、どうして私より良い部分が一つもないのだろうか?」
「まあ・・・!」
「呆れた人間たちだ。いくら偉そうに振る舞っても、お前たちは神様が作った失敗作だ。そして、私はノエルが作った成功作」
ニックスの瞳にゾッとするような光彩が流れる。
その姿を見た人たちは無意識に躊躇した。
「残念ながらノエルはあなたたちより私をもっと大切にしているからね。普段から関心が全くなかった人間一人を殺したからといって、私をどうこうすることもないと思うけど___」
「そこまでにしましょう、ニックス」
これ以上はダメだと判断したダンテが近づき、ニックスとベルティウムの人々の間を遮る。
彼は冷ややかな視線をニックスに投げかけた。
これ以上刺激するなという警告だ。
「分かったよ。これくらいにしようか」
それを見て、ニックスは少し前に何かあったかのように肩をすくめて口元を引っ張る。
「じゃあ後片付けは君に任せるね、ダンテ」
彼は励ますようにダンテの背中に軽く触った後、足取り軽く離れていく。
敵の幼い強烈な視線がそんなニックスの後ろを貫いていた。
ダンテはしばらくの間で10年は老けたような気分を感じながら、低い呻き声を流してしまう。
「雰囲気が少し落ち着かないようだけど・・・」
花の影になった赤い瞳がそっと横に滑る。
「うん?そうなの?私にはよく分からないけど」
ロクサナの言葉に、ノエルが不思議そうに反問した。
現在、二人はベルティウムの花園を一緒に歩いているところだった。
ノエルが「美しいベルティウムの姿をロクサナに見せたい」と強く主張したからだ。
空言ではなく、ノエルは少し前から空気の波動が変わったことに気づいていない様子だった。
ロクサナと目が合った瞬間、彼の顔が再び赤くなる。
「そういえば、後園側にも道が一つあるのを見かけたのだけど」
通り過ぎるように彼女が流した言葉にノエルの足が止まった。
「あそこにも建物が一軒あるみたいね」
「うん、あの建物は他の人が使う場所だから、私はほとんど行かないよ」
「そうなの?」
ノエルは嘘をつかないで素直に答える。
「後園にある散策路もかなり整理されていたから気になるわ」
しかし、付け加えられたロクサナの言葉には目に見えて当惑した。
もし彼女が後園側に行こうと要求するのではないかと不安に思っているのが如実に感じられる。
「い、いや!あの場所は私が管理していないから、ここみたいに綺麗でもないし、あまり見るものもないよ!ルナ、そっちじゃなくてあっちに行こう!」
ノエルが露骨に話を変えながら、ロクサナの注意を他のところに引くために必死だ。
その反応を見たロクサナの瞳が一瞬だけ細くなる。
二人は再び花が咲き乱れた花園を歩いた。
「あの・・・、ルナ」
ロクサナの顔色を伺っていたノエルが突然近づいてくる。
その後、彼女の髪に擦れるように手が触れた。
先ほどまで彼の手に持っていた赤い花が、ロクサナの金色の髪の間で目立った存在感を示す。
耳元に花をつけたロクサナを見えてノエルは微笑んだ。
「ルナ、綺麗だよ」
彼の手が彼女の髪をゆっくり巻きつける。
「もちろん、このような花もあなたの美しさには足元にも及ばないが・・・」
先ほどとはっきり違う感じを漂わせた。
大人の男性の雰囲気だったので、危うく少し驚くところだった。
今の状況に多少作為的な匂いが漂っていなければ、おそらくそうだっただろう。
「本当に真心が感じられるプレゼントです」
「やはり美しい方には花がよく似合いますね」
「本当にお綺麗です」
「このように並んでいるのを見ると、お二人はとてもお似合いです」
今までずっと存在感なくついてきた使用人たちが待っていたかのように、ノエルとロクサナに相次いで大袈裟な褒め言葉を飛ばした。
パチパチパチ!
宴会場でもそうだったように、手厚い拍手の音が鼓膜を刺して入ってくる。
ノエルは彼らを背後に置いて嬉しそうな表情を浮かべた。
ロクサナは、彼の好みが幼稚だということを今はっきりと理解する。
「行こう、ルナ。内園に席を用意しておいた」
ロクサナがベルティウムを離れるまで残り僅か。
ノエルは時間が経つにつれて焦りを感じていた。
そのため彼はどうにかしてロクサナの心を掴むために色々な努力をしている。
美しい人形を集めてロクサナを支えるのもその一環だ。
「こちらにお座りください。陰の下に席を設けておきました」
「今日は日差しが少し強いですね。暑ければ扇がせていただきます」
「今の季節にだけ楽しめるベルティウムの珍しい果物です。一度召し上がってください」
「冷たい飲み物をお持ちしましょうか?蜂蜜に漬けたレモンを入れて、その上に花びらを浮かべます。温かいお茶がよければ仰ってください」
「楽団を事前に準備させておいたのですが、お聞きしたい曲はありますか?」
「体に手を触れるのを許してくださるのなら、私がマッサージをして差し上げます」
美しい人形に囲まれて手厚いもてなしを受けるロクサナは、本当にベルティウムの女王のようだった。
そのような姿が少しもぎこちなく不自然に見えないので、なおさらだ。
ロクサナとしては、「どこまでするのか一度見てみよう」という心境で黙っているだけなのだが。
しかし、ノエルは彼女は気に入っていると思ったのか、満足げな笑みを浮かべている。
「ルナは指一本動かす必要はないよ。何でも望むことがあれば言葉だけ言って」
「そういえば、最初に私の世話をしてくれた女中たちが見えないわね?」
「うん。君に粗相をしたと聞いたから交代させたよ」
「そうなの?大したことなかったのに」
平然と流したロクサナの言葉に、ノエルが一瞬止まった。
「あの子たちが気に入ったのなら、もう一度呼ぼうか?」
先に世話をしていた人形はすでに壊れたが、再び直すことはそれほど難しくない。
もし復旧に時間が長くかかりそうなら、顔だけ優先的に直した後、他の人形の顔と入れ替えてもいいのだから。
どうせ世話をする人形たちの中身は似たり寄ったりだ。
しかし、ロクサナは断った・
「そこまでする必要はないわ。訳もなく煩わしいだけじゃない」
「一つも煩わしくないよ。ルナが望むことは何でもできる」
「どうせ私は明日出発するのに?」
その瞬間、ノエルの口が塞がった。
ロクサナは顔に刺さった視線を感じられなかったように、手を動かして髪の毛を耳の後ろに梳き流す。
その優雅な手振りにノエルの視線がついてきた。
「ここで働く人たちはみんな人形なの?」
「どうして分かったの?」
視線を浴びた人形たちがにっこり笑う。
それもやはり非常に作為的に感じられる微笑だ。
しかし、ノエルは本当に分からないように首を傾げている。
「一様に手が氷のように冷たいわ」
「あ」
ノエルはそのことを思いつかなかったように動揺した。
ひょっとしてロクサナが新しい人形からの世話を断った理由はそれなのだろうか?
「じゃあ、これからは体温を持った人形を作れるように研究するよ!」
ノエルはやる気を出したが、ロクサナはどうでもいいと言わんばかりに紅茶を飲む。
ここベルティウムはノエルの王国であることが正しい。
毒蝶を送ってみると、ベルティウムは二つの大きな空間に分かれていた。
今この建物にはノエルと彼の腹心であるダンテ、そして人形が住んでいて、他のベルティウムの人々は後園の別棟で生活しているようだ。
人々の間では、ノエルと彼の人形に対する不満が日々積もっている実態だった。
そのような理由で、二つの群れの間では時々摩擦があるらしい。
平和で美しく見えるベルティウムの裏面とも言えるだろう。
もう一つ、やはりノエルはロクサナの毒蝶について知っているようだった。
ここに来た初日、歓迎パーティー前からニックスの存在を隠そうとするように仮面をつけていた使用人だけを見ても見当がつく。
ロクサナはノエルと花園を散歩している間、ダンテとニックスの会話を事前に植えておいた毒蝶で聞いていた。
後園にある離れでニックスと他のベルティウムの人々の間に起きた出来事も把握済みである。
アグリチェとは違う意味で、現在のベルティウムの状況もかなり混乱しているように見えた。
月明かりがさす窓の外の風景を静かに見つめていたロクサナは、やがてカーテンを閉めながら振り返る。
明日、彼女は予定通りベルティウムを離れるつもりだ。
「もう今日が最後の日だね」
香ばしい匂いを漂わせる液体が金縁をまとった白い茶碗に注ぎ込まれた。
「もう少し深い話をする時間があれば良かったのだけど、残念だ」
そう語るニックスは、今日も相変わらず大人しい顔をしている。
彼は自分の手で最後の茶菓子を用意していた。
「今日は特別にもっと気を遣って準備したんだ。気に入ってくれると嬉しいよ」
そう言いながらニッコリ笑う顔は、昨日、毒蝶を通じて見た姿とは全く異なっている。
ロクサナは思わず失笑した。
昨日、花園でノエル・ベルティウムが一瞬見せた目つきもそうであり、今まで自分に出してくるものの中に着実に毒を入れてきたニックスの行動からも感じられるところ。
彼らは最初に脅迫状を送るときを除いて、表面的には自分を強制する姿は見せていない。
けれど、それは本心ではないのだろう。
ロクサナはニックスが淹れたお茶を飲まず、ゆっくりとした手振りでティーカップに触れる。
ニックスは相変わらず笑顔のままだ。
少しの焦りも、動揺も見せない姿は、主人のノエルよりましだろう。
ロクサナは昨日より長く蒸して、前のガラス瓶に入っていた角砂糖を湯飲みに入れた。
1つ、2つ、3つ・・・。
お茶に溶け込む角砂糖の数が多くなるほど、2人の間に流れる沈黙を濃くなっていく。
甘いのを嫌うはずなのに、今日のロクサナは異常なくらいに湯飲みに砂糖を入れている。
「もし最後に言いたいことがあれば言ってよ」
しばらくロクサナの手に沿って視線を動かしていたニックスが、優しい言葉遣いで囁く。
「言いたいこと?」
砂糖が溶け込むティーカップを見つめていたロクサナの視線が動き、二人の視線が触れ合った。
「私があなたに?」
「とにかく、私の外見は全く同じだからさ」
単調な反問に、ニックスはいっそう濃い穏やかさを顔にかぶせる。
「かなり突然の死だったから、兄が死ぬ前に伝えられなかった言葉のようなものがあっただろう?だからもし望むなら、今だけでも私を兄だと思っても良いという意味だよ」
微笑む唇から穏やかな音声が付け加えられた。
「昨日のようにね」
「そうね・・・」
無表情のまま、ロクサナは口を開く。
「私があなたを見守ることに決めた理由が何か知っている?」
ニックスが口を開いたが、ロクサナは最初から彼の返事を必要としなかった。
「アシルの体を持ったあなたに関心があったから?生きて動くあなたを見て、薄っぺらな慰めを得ようとしたから?」
獲物の近くを徘徊する獣のように茶碗の上をゆっくり這っていた細い指が初めて動きを止める。
「いいえ」
花のような笑みが視界に突き刺さった瞬間、ニックスの顔が凍りついた。
「あなたを殺すか、放っておくか決めようと思ったからよ」
今、視線を合わせている相手の命が自分の手にかかっていることを、微塵も疑わない声と目つき。
それがニックスの心の中にある一部分を深く突いて入ってきた。
「それはどういう意味?」
しかし、彼はロクサナの言葉がどういう意味なのか分からないように、表情に困惑感を描き入れる。
「急にどうしてそんなことを言うの?あ、もしかしてさっきの私の話が不快だった?」
「そうね」
ロクサナは簡単に納得した。
「だから、ご存知のように演技をするのはやめてちょうだい。どうせ似合いもしないのだから」
冷ややかな笑みが浮かんだ唇から辛辣な言葉が溢れ出る。
「演技だなんて、どうしてそう思うの?これが僕の本来の姿なんだけど」
それでもニックスは訳が分からないように困った顔をした。
次第に曇っていく顔が中々に尤もらしい。
何も知らない人が今のニックスを見たら、彼を可哀想に思うだろう。
ロクサナの口元に描かれた冷たい笑みが一層深まった。
「こんなものを出してきたくせによく言えるわね」
彼女はティーカップを持ち上げてテーブルの上にこぼす。
液体が白いテーブルクロスを濡らす。
しかし、ティーカップからこぼれたのはそれだけではない。
湿ったテーブルクロスの上に散らばった何かを見て、ニックスは表情を固める。
砂糖や塩の粒ほどの黒い塊。
ロクサナが入れた角砂糖と化学反応を起こした毒が固体状態になって固まっていたのだ。
ニックスが今日用意した毒は昨日までとは違うもの。
昨日後園の人間に直接効能を確認した後、なぜかロクサナにだけ毒が効かないことを知り、効き目が同じな他の種類の薬に変えたためだった。
しかし、ロクサナが毒と共にした歳月は1、2年ではない。
彼女は茶菓に混ざった微かな匂いだけで、今この茶碗の中に入っているものが何なのか簡単に分かったのだ。
-
ニックスの毒殺未遂とベルティウムの内部事情
-
ニックスはロクサナに効かない毒の効果を検証するため、後園の別棟に住むベルティウムの人間(本館から追いやられた人々)に毒入りクッキーを無理やり食べさせ、激しい副作用を起こさせる。
-
その現場を目撃した人々が激怒し、ニックスの処分を要求して大騒ぎになるが、ニックスは人間たちを侮辱して冷笑し、ダンテがその場を収める。
-
-
ノエルの焦りとロクサナへの過剰なおもてなし
-
ノエルは明日出発するロクサナの心を何とか掴もうと必死になり、花を贈ったり、美しい人形たちに手厚いもてなしをさせたりしてアピールを続ける。
-
しかし、ロクサナは「どこまでするのか」と冷静にその様子を観察しており、ベルティウムが本館と後園の2つの領域に分断されている裏事情や、人々の不満、ノエルたちの企みを見抜いていた。
-
-
ニックスの正体と最後の茶会
-
出発前日、ニックスは兄・アシルと同じ姿をした身体でロクサナの前に現れ、親しげな態度で毒入りの最後のお茶を差し出す。
-
ニックスは「兄の代わりに言葉を伝えてもいい」と巧みに演技をして同情を引こうとするが、ロクサナはその偽りの演技を冷たく一蹴する。
-
-
毒の看破とロクサナの宣言
-
ロクサナはニックスが淹れたお茶に大量の角砂糖を入れ、昨日とは違う新しい毒が化学反応を起こして固形化する様子を目の前に突きつける。
-
長年毒と共に生きてきたロクサナには匂いでその正体がすべて見抜かれており、「あなたを殺すか、放っておくか決めようと思ったからよ」とニックスの命を握る冷徹な言葉を告げるのだった。
-