こんにちは、ピッコです。
「悪女の姉を救う勇敢なわんこです」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
47話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 歪んだ愛と認知歪曲
カーテンの隙間から差し込む月光が、静まり返った部屋を淡く照らしていた。
社交パーティーが終わり、ココやルースたちと共に屋敷へ戻った後。一人きりになったクロエは、そっと手紙型の魔道具を取り出した。
「今日は探知能力を使えなかった。心証を確認するししか選べなかったわ……」
彼女の持つ探知能力を使えば、相手が霊獣を殺めたかどうかを見抜くことができる。しかし、この力は生き物以外には作用しない。だからこそ、能力を使えば対象となった相手にも必ず気づかれてしまうというリスクがあった。
『ダリアを気絶させて、無理やり連れて来ようか』
そんな物騒な考えが頭をよぎったのは、ほんの一瞬のこと。
クロエは今日、ダリアと対面した瞬間から胸の奥に燻り続けていた疑念を、静かに魔道具の紙面へと書き記していく。
【近いうちにダリア・メロマンドを詳しく調査する予定です。】
クロエがダリアにここまで執着するのには、いくつもの明確な理由があった。
ダリアの能力は〈物理歪曲〉。だが、それをただの異能と片付けるには、あまりにも違和感が強すぎた。これまでは、せいぜい「手を触れずにハンカチを動かす」程度の他愛のない力だったはずなのだ。
しかし、今日のパーティーは明らかに異質だった。
人々は、彼女の言葉に吸い込まれるように、あまりにも容易く説得されていた。
「ダリアが私を侮辱して、私の婚約者を奪ったのよ? 本来なら、誰が見てもおかしいと眉をひそめるはずなのに」
もちろん、全員が盲信していたわけではないだろう。ダリアに疑いの目を向ける者も少なからずいたはずだ。
「でも、あの場にいた人たちの目は、まるで……」
そう、まるで何らかの術中に嵌まっているかのようだった。
〈歪曲〉とは、有形・無形を同時にねじ曲げることができる能力。
「もしかすると、彼女は話し合っている最中に〈認知歪曲〉を使っていたのかもしれないわ」
もっとも、自分より格上の能力者には通用せず、本人の力が弱ければ見破られる性質のものではある。それでも――。
「ダリア程度の魔力で扱えるにしては、あの効果はあまりにも強力すぎる」
そして何よりクロエの心を苛むのは、ダリアが過去に子犬のココと親しく接触できる立場にいたという事実だった。彼女は何度も、クロエの屋敷へ出入りしていたのだから。
調べる理由は十分だった。そこまで書き終えて、ようやく胸の奥の恐怖が現実味を帯びてくる。
――ココは、本当にあの女に殺されたのかもしれない。
ココが姿を消してからの日々は、地獄のようだった。
時折、見知らぬ誰かにすがりついて狂ったように泣き叫びたくなる衝動に駆られた。抑えきれない恋しさに、胸が張り裂けそうになった夜は数え切れない。指先がしびれるたび、全身を鋭い激痛が走り、ただ床にうずくまることしかできなかった長い時間。
それでも、自分の苦しみなど、あの子の痛みに比べれば大したことではなかった。
「私の寿命を半分、あなたに分けてあげられたらいいのに……」
「ワン……」
「どうして、それができないんだろう。どうして私たちは、こんなにも早く別れなきゃいけないの?」
私たちは家族なのに。どうして片方だけ、こんなにも生きられる時間が短いの?
あまりにも不公平じゃない。私にとっては、まだ出会ったばかりの赤ちゃんなのに。
年老いて死んでしまいそうな体を、まるで枯れた木の枝のように細くなってしまった小さな体を。冷え切っていくその温もりを、震える手で何度も、何度もさすりながら――。
「愛してる」
愛している。その言葉を何十回、何百回と交わしてきた愛おしい日々を、彼女は涙の奥で思い返していた。
その時、手紙型の魔道具の上に、じんわりと新たな文字が浮かび上がった。
【数日後、皇宮で舞踏会が開かれるそうだ。貴族が一堂に会する大きな催しだから、霊獣密猟団やその取引相手も警戒を緩めて動く可能性が高い。注意深く探ってほしい。それから、君が話していたダリア・メロマンドについては、こちらでも確認する方法がある】
その確認方法を読み終えた後も、彼女の興奮と不安は収まらなかった。その夜、クロエは長い間眠れず、何度もベッドの中で寝返りを打ち続けた。
「し、師匠! 師匠!」
バタバタと足音を立てて、アルドス公爵邸の一角にあるビリフの執務室へと飛び込む。
ビリフは徹夜で書類仕事に追われていたのか、ひどく疲れた様子でようやく机から顔を上げた。目の下には、冗談抜きで濃いクマがくっきりと刻まれている。
今の師匠は、誰の目から見ても完全にオーバーワークの状態だった。
(……うぅ、その様子を見ていると、なんだか罪悪感がこみ上げてくる……)
『そのクマも、今日から私が何とかしてあげます!』
私は心の中でそう固く決意し、一呼吸置いてから師匠に切り出した。
「師匠、今日の社交パーティーで、とっても不思議なものを見たんです! 『魔晶石』っていうんですけど」
「おや、ずいぶん勉強熱心だな、我が弟子よ。魔晶石について興味が湧いたのかい?」
「いえ、そうじゃなくて。ビリフ様が持っている、あのロキ鉱山の話なんです」
「……うん?」
ビリフの手が止まる。私は彼の目を真っ直ぐに見つめながら、さらに言葉を紡いだ。
まさか「未来の記憶で知っている」とは言えないので、ここは少し遠回しな……というか、かなり都合のいい嘘を交えることにした。
以前、師匠のお手伝いでロキ鉱山へ行った時、ある鳥が綺麗な石をくわえて飛んでいくのを見た。その鳥に「それ、なぁに?」と尋ねたら、「これは魔晶石っていうんだよ」と教えてくれた――というストーリーだ。
私の話を聞き終えたビリフは、呆然とした顔で呟いた。
「まったく……光の能力だけでなく、動物と自由に会話までできるなんて。単なる『動物との親和力』というレベルではないな……」
(……しまって、完全に墓穴を掘っちゃった!)
「ど、どうしよう……」
感心しきった師匠の熱い視線を浴びて、私は思わずパチパチと瞬きを繰り返した。慌てて話を合わせる。
「……は、はい! 鳥たちの間では、もうすっごく有名な話みたいですよ!」
嘘をつくことに良心はチクチクと痛んだけれど、どうせ今の師匠には鳥の言葉は分からない。無力石を使った後の師匠は、もう動物の言葉を理解できなくなっているのだから、確かめようがないのだ。
私は勢いよく窓を大きく開け放った。
すると、待機していたかのように一羽の小さな妖精(のような小鳥)が部屋へ飛び込んできて、私の肩にちょこんと止まった。そして、くちばしを小さく開けて「コトン」と床に石を吐き出した。
「これです!」
「……本当に、魔晶石のようだな」
「はい! たぶん、間違いありません!」
「しかし、魔晶石の中でも、こ、こんな純度と形状をしたものは、極めて珍しいはずなんだが……」
師匠は感嘆の声を漏らしながら、拾い上げた石を何度も光に透かして確かめている。
「本当にロキ鉱山に、この規模の魔晶石があるというのか?」
「はい!」
私は自信満々に胸を張った。
「なるほど。だが、山脈の奥深くに埋まっている魔晶石を本格的に採掘するとなると、まだ少し準備に時間がかかりそうだな」
「でも師匠、動物たちが先に掘り出して、一箇所に集めていたみたいなんです!」
「何だって?」
「見てください、この鳥のくちばしにはほとんど土が付いていないし、翼の内側も綺麗ですよね? こんなに簡単に運んでこられたということは、もう地表近くに誰かが掘り出したみたいにゴロゴロ転がっている状態なんだと思います! 鳥たちの間では、みんな知っている宝箱みたいな場所なんです!」
私の言葉を聞くや否や、師匠の目の色が変わった。彼は猛烈な勢いで机の引き出しをあさり始める。
「今すぐロキ鉱山へ行こう」
師匠の目が、学者のそれへと鋭く光った。
「……は、はい! 道案内の小鳥さんも一緒に行きます!」
転移石を使って移動した後、さらに険しい山道をしばらく歩き、私たちは小さな茂みの前へとたどり着いた。
案内役の小鳥は、私の肩の上で「知っている道なのに、今初めて案内しているふりをするのは、ちょっと恥ずかしいです」と、ちゅんちゅんと照れくさそうに鳴いていた。
「ここは、いわゆる鉱山の中心部ではないようだが……」
ビリフが周囲を見渡す。それは当然だった。
「きっと動物たちが、キラキラして綺麗だからって、掘り出してそのままここに集めていたんだと思います!」
「不思議なこともあるものだな」
「ええ! でも、この動物たちの行動の痕跡を逆にたどっていけば、大元の鉱山の正確な場所も、すぐに分かると思いませんか?」
「ああ、その通りだ。素晴らしい着眼点だよ」
その時、ビリフがふと動きを止め、少し疑わしそうな目を私に向けた。
「……それにしてもココ、お前はどうしてそんなに鉱山開発のことに詳しいんだ? 少しばかり、子供にしては詳しすぎる気もするが……」
(一瞬、心臓が跳ね上がった。けれど――)
「まあ、いずれにせよ、我が公爵家に本物の『福の神』が転がり込んできたということだな。ははは!」
師匠が快活に笑声を上げたので、私はホッと胸をなで下ろした。
よし、ここからが本番、次の作戦だ!
「そうだ! 師匠、魔晶石って、自分たちの家族で使う分だけ残して、余った分は外に高く売っちゃえばいいんじゃないですか?」
ある意味、鉱山開発における定番の、そして最も王道な利益の出し方だ。
「今日聞いたんですけど、メロマンド家の令嬢も、自分のところの鉱山でそうするつもりらしいですよ!」
ビリフはしばらく顎に手を当てて考え込むような表情を浮かべた後、静かに頷いた。
「そうだな、それが賢明だ。魔晶石は採掘されてから約一年という使用期限がある。我が家だけで使い切れないほどの埋蔵量なら、市場に売却して利益に変えるのが一番いい」
「じゃあ、さっそく販売計画を立てるんですか?」
「本当に売ると決めるならな。その場合は、競合に先手を取られないよう、できるだけ早く動いたほうがいいだろう」
(やった……! 私は心の中で思いきりガッツポーズを突き出した。『ダリア、覚悟してなさいよ!』)
――だが、勝ち誇ったのも束の間、師匠が真面目な顔で書類を取り出した。
「ココ、とりあえず今日はまず『契約書』から作ろうか」
「……はい? 契約書、ですか?」
「君と動物の仲間たちが魔晶石を見つけてくれたんだ。私は何もせず、ただその利益だけを受け取るなんて、契約もなしでは大人として失格だからね」
「えっ、でも……」
「ショベル一台を借りるのだってレンタル契約があるんだ。さあ、まずはしっかり書こう」
私が目を丸くしてパチパチさせている間に、彼はポケットから万年筆と紙を取り出し、実に見事な手際で真剣にサラサラと書き込み、私に差し出してきた。
【契約内容】
ココ: 魔晶石の一部を受け取る権利 / 売上ロイヤリティ50%
動物の仲間たち: チーズ1塊、ワイン1杯、米など
「わあ……!」
売上ロイヤリティ50%という破格の条件も凄いが、何より「動物の仲間たち」への報酬欄を見て、私は思わず吹き出してしまった。
(みんな、きっと大喜びするね! 特にネズミさんたちは、チーズを見たら大はしゃぎで踊り出すに違いないわ!)
私は満面の笑みを浮かべて頷いた。
「ありがとうございます!」
でも、一つだけ、絶対に譲れない大切なことがあった。私は自分の前足――ではなく、人間の小さな手をそっと差し出して言った。
「それと、師匠。もう一つだけお願いがあります」
「うん? 何だい?」
「私の能力のこと……動物と話せることも、魔晶石のことも、全部秘密にしてもらえますか?」
未来の記憶が頭をよぎる。他の誰かにこの特別な能力を知られ、利用され、また命を落とすようなことだけは、絶対に避けたかった。
ビリフは私の意図を察したように、優しく目を細めて微笑んだ。
「……分かった。約束しよう」
こうして私は、差し出された契約書に、自分の小さな手をインクに浸して「ぽん」と手形(印)を押した。さらに、ビリフの聖化の力によって、窓の外にいた動物の仲間たちの小さな足形まで、契約書の横に可愛らしく並んで押されたのだった。
問題は、その後に起こった。
私の師匠であるビリフは、私なんかよりもずっと、交渉事に関しては「したたかな大人」だった。そして、その大人はさらに、とんでもない大物をこの場に呼び寄せてしまったのだ。
「最近は朝食も一緒に食べてくれないし、食べてもすぐ居眠りしてしまう。どうしたんだ、ん?」
いつの間にか現れたアルドス公爵が、私の体をひょいと大きな腕で抱き上げた。その少し寂しそうな、拗ねたような表情を見ていると、なんだか子供心がくすぐられて、何かしてあげたい気持ちになってしまう。
「義父上、これを聞いたら、きっとすごく喜ぶと思いますよ?」
すかさず、隣にいたビリフが楽しげに口を挟んだ。
「はい、兄上。とんでもない朗報を持ってまいりました」
「何だ? 私は大抵のことでは驚かんぞ。山賊討伐も、宮廷での血生臭い権力争いも、すべて経験してきた身だからな」
アルドス公爵は、どこか余裕の笑みを浮かべている。そこへ、ビリフが極上の爆弾を平然と投下した。
「私が以前滞在していた小屋の近くで、魔晶石を発見しました」
公爵は、耳をほじりとかけていた手をピタリと止めた。
「……何だと?」
「天然資源が何一つないと言われていた我が領地に、魔晶石鉱山ができた、ということです」
「……」
「はい、兄上。しかも、現在市場に流通している既存の魔晶石の、少なくとも2倍以上の効果(純度)があります。私が個人的に所有していたあのロキ鉱山は、実は世界屈指の魔晶石鉱山だったのです」
アルドス公爵はしばらくの間、魂が抜けたように呆然とした表情を浮かべていた。しかし、事態を完全に理解した瞬間、その顔に悪魔的な、不敵な笑みがじわじわと広がっていく。
「ベルラン公爵のやつめ……あとで泣き面を拝んでやるぞ。……それで、その鉱山は一体どうやって見つけたんだ?」
「ココが、ほとんど一人で全部やってくれました」
「へっ……?」
公爵の視線が、腕の中の私に注がれる。
「まったく、5歳のちびっ子のくせに! よくやった! 二人とも、本当によくやったぞ。この欲張りな天才どもめ!」
そして、この場で一番大人であるはずのアルドス公爵が、誰よりも子供のように大喜びし始めた。
「すぐに全国の新聞へお触れを出さねばならん! 『我が領地にて未曾有の魔晶石鉱山を発見!』とな!」
「はい!」と私は力いっぱい頷いた。あの高慢なダリアがこれを知ったら、一体どんな顔をするのか、想像するだけで今から楽しみで仕方がなかった。
「いや、待てよ……」
公爵は急に顎を押さえ、何かを思いついたようにとんでもないことを言い出した。
「今は、ココを養女として迎えたばかりの時期だ。まずは陛下に、私の愛しい娘をお披露目しなければならんな」
「えっ、皇宮……?」
「……に、兄上?」
ビリフも思わず声を裏返している。
「まあ、家の中だけで隠すようにして暮らしたい気持ちも分かるが、いつまでもお披露目しないわけにもいかん。……せっかくだ。この機会に陛下へ娘を紹介するついでに、魔晶石鉱山のことも皇宮のド真ん中で華々しく発表してしまおう。どうだ?」
「……」
まさか、ここまで話の規模が大きくなるなんて。
ダリアはせいぜい、地方の小さな社交パーティーで得意気に発表しただけなのに、こちらは国の最高峰である皇宮だ。
『やっぱり、これが本物の“金と権力”の力なのかな……?』
私は人間社会の圧倒的な力関係というものを、身を以て思い知らされていた。そして同時に、一つの問題に気がつく。
(あ……これじゃあ、『お姉ちゃんが見つけた』っていう設定にするのは、ちょっと難しそうだな……。でも、ここまで国家規模の話になっちゃったら、ダリアはきっと悔しさで、ものすごく怒るだろうな……!)
ドクン、と胸が大きく高鳴る。
いよいよ明日。
あの嫌味なダリアが、自分の計画を完璧に叩き潰されて大騒ぎする姿を想像すると、期待と興奮で胸がはち切れそうだった。
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クロエの疑惑と決意
社交パーティーでのダリアの異常な説得力に「認知歪曲」の疑いを抱いたクロエは、愛犬ココの死への関与も視野に入れ、魔道具の仲間と共にダリアを徹底的に調べる決意を固めた。
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ココの機転とビリフとの契約
未来の記憶を持つココは、過労の師匠ビリフを救うため「鳥の案内」を装ってロキ鉱山から超高純度の魔晶石を発見。能力の秘匿を条件に、動物たちへの報酬も含む正式な利益分配契約を結んだ。
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アルドス公爵の参戦と皇宮での大発表へ
報告を受けたアルドス公爵は大喜びし、ダリアの小規模な発表を遥かに凌駕する「皇宮での娘(ココ)のお披露目と魔晶石鉱山の国家的大発表」を画策。ダリアの計画を根底から覆す舞台が整った。